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プロフェッションジャーナル No.187が公開されました!~今週のお薦め記事~

2016年9月29日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.187を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2016/09/29

〈平成28年9月30日施行〉スキャナ保存制度の見直しについて

〈平成28年9月30日施行〉 スキャナ保存制度の見直しについて   税理士 坂本 真一郎   1 スキャナ保存制度の見直し いよいよ、平成28年9月30日以後の申請分から、領収証等をスマホやデジカメにより撮影した画像データにより保存し原本書類を廃棄できるという「平成28年度改正によるスキャナ保存制度」がスタートする。 そもそも、企業等が作成又は受領する仕訳帳等の国税関係帳簿や、決算書類、領収証・請求書等の国税関係書類については、法人税法等の規定により法定保存期間にわたり紙で保存することが義務付けられているが、平成10年7月に国税関係帳簿書類の保存方法等の特例法として「電子帳簿保存法」が施行され、事前に所轄税務署長等の承認を受ければ、企業等が作成した仕訳帳や決算書類などのデータを、一定の要件の下、データにより保存することが可能となった。 その後、平成17年4月の電子帳簿保存法改正により「スキャナ保存制度」が導入され、これにより、事前に所轄税務署長等の承認を受ければ、企業等が取引先から受け取った領収証や、自らが作成し相手方に交付した請求書の写し等の紙の書類を、一定の要件の下、スキャナで読み取った画像データにより保存し、原本書類を廃棄することができるようになった。 しかしながら、平成17年4月に「スキャナ保存制度」がスタートしてから平成27年6月までの約10年もの間に、全国でスキャナ保存の承認を受けた事業者はわずか152件と極めて少ない件数となっている。これは、可能な限り原本との同等性が求められるため、スキャンデータの真正性の担保に必要な法的要件が非常に厳しいことなどが要因であった。 このような中で、経済団体等からのスキャナ保存制度に係る規制緩和要望を踏まえて、国税庁は要件緩和を実施し、平成27年3月に電子帳簿保存法施行規則が改正された。 これにより、それまでは、国税関係書類のうち契約書や領収証については記載金額が3万円未満のものに限りスキャナ保存の対象とされていたが、平成27年度改正後は、金額に関わらず全ての国税関係書類がスキャナ保存の対象となった。また、スキャナで読み取る際に必要とされていた電子署名が不要となり、入力者等の情報さえ確認できればよいとされた。その一方で、適正な事務処理の実施を担保するための措置として「適正事務処理要件(※1)」という内部統制要件が追加された。 (※1) 「適正事務処理要件」とは、国税関係書類の作成又は受領から当該国税関係書類に係る記録事項の入力までの各事務について、その適正な実施を確保するために、「相互けん制」、「定期的な検査」及び「報告連絡体制」に掲げる事項に関する規程を定めるとともに、これに基づき当該各事務を処理することをいい、「定期的な検査」が完了すれば原本書類を廃棄できるとされている。 そして、今年度も平成28年3月に電子帳簿保存法施行規則が改正され、「スキャナ保存制度の見直し」が連年で行われた。   2 平成28年度改正の概要 上記の通り、平成28年度改正では、領収証等の国税関係書類をスマホやデジカメで撮影し電子化できるというのが大きなポイントである。 また、平成27年度改正で追加された「適正事務処理要件」を満たすためには最低でも3名の人員が必要だったが、平成28年度改正により、小規模企業者の場合には「定期的な検査」を税務代理人等に依頼すれば、「相互けん制要件」が不要となった。 例えば、1人で事業を営む者が領収証等を受領した場合、自らが領収証等をスキャニングし、原本である領収証等とスキャン画像の入力確認を行い、タイムスタンプを付与し、顧問税理士等に定期的な検査のみを依頼すれば「相互けん制要件」が不要とされるため、「適正事務処理要件」を満たすための人員は事業主と顧問税理士等の2名のみで足りることとなった。   3 適正事務処理要件に基づく事例 それでは、平成28年度改正を踏まえて「適正事務処理要件」を満たすためには具体的にどのような業務フローが考えられるか。経費精算事務を例に、4つの事例を掲げてみた。 【事例1】 書類の受領者等と、別の者が入力確認を行う場合 経費使用者本人がスキャナ機器でスキャニング(撮影)する場合であっても、原本である領収証等の紙書類のすべてを経理に提出し、経理担当者が当該スキャン画像全数の入力確認を行うというフローである。 この場合においては、「スキャナで読み取りを行う者」が書類を受領等した者とは別な者となることから、特に速やかにタイムスタンプを付与する必要はなく、「速やかに(7日以内)」若しくは「業務サイクル後速やかに(37日以内)」の入力方式を採用できる。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 【事例2】 書類の受領者等以外の者が入力手順の全てを行う場合 経費使用者本人が精算データは入力するものの、証憑である領収証等を経理などの別な者に提出し、別な者がスキャナ機器でスキャニングした場合であれば、「スキャナで読み取りを行う者」が書類を受領等した者とは別な者となることから、特に速やかにタイムスタンプを付与する必要はなく、「速やかに(7日以内)」若しくは「業務サイクル後速やかに(37日以内)」の入力方式を採用できる。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 【事例3】 書類の受領者等がスキャナで読み取る場合 経費使用者本人がスマートフォン又はスキャナ機器でスキャニング(撮影)し、原本である領収証等とスキャン画像の入力確認を行い、タイムスタンプを付与する場合は、領収証等を受領した本人が「スキャナで読み取りを行う者」に該当することになる。この場合には、自らが署名した当該受領等した国税関係書類をスキャナ入力した後、「特に速やかに(3日以内に)」タイムスタンプを付与することになる。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 【事例4】 小規模企業者の場合 前述のとおり、平成28年度改正により、小規模企業者の場合には、定期検査を税務代理人等が行うことにより、相互けん制要件が不要となる。 ただし、この場合は書類の受領者等がスキャナで読み取ることとなるため、タイムスタンプは特に速やかに(3日以内に)付与しなくてはならない。 なお、スキャンデータと原本である領収証等との「入力確認」を外部の者に委託するなどの対応をとれば、「業務サイクル後速やかに(37日以内)」の入力方式を採用できる。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。   4 申請書の提出について 国税関係書類をスキャナ保存するためには、事前に「国税関係書類の電磁的記録によるスキャナ保存の承認申請書(※3)」を所轄税務署長等へ提出し、承認を受ける必要がある。 (※3) 国税庁ホームページ「国税関係書類の電磁的記録によるスキャナ保存の承認申請」 申請書の提出期限は、スキャナ保存を開始する日の3月前の日となる。例えば、平成29年4月1日から国税関係書類をスキャンデータとして保存したいという場合には、平成28年12月31日までに申請書を提出する必要がある。 申請書を提出すると、担当部署において「書面審査」が行われ、記載内容や添付書類に確認事項や記載不備などがあれば必要に応じて問合せがある。そして、保存に代える日の前日(上記日付の例の場合には、平成29年3月31日)までに、取下依頼や却下通知等がなければ、承認があったものとみなされる(「みなし承認」)。 実際に法令要件通りにスキャナ保存が行われているどうかという審査は、みなし承認後の税務調査の際に実施され、その際に要件違反等が確認されれば、改善指導や承認取消を受ける可能性もある。 なお、平成28年度改正前にスキャナ保存の承認を受けている国税関係書類について、平成28年度改正後の要件を適用してスキャナ保存を行いたい場合には、保存に代える日の3月前の日までに、新たに承認申請書を提出して所轄税務署長等の承認を受ける必要がある(※4)。 (※4) 国税庁ホームページ「電子帳簿保存法Q&A」問95参照。   5 おわりに 連年の要件緩和により、「スキャナ保存制度」を導入しやすい環境は急速に整いつつあり、申請件数の大幅な増加が見込まれている。是非、この機会に、領収証等の国税関係書類の電子化を検討し、書類保管コスト等の削減、経費精算業務等の効率化を実現してみてはどうだろうか。 (了)

#No. 187(掲載号)
#坂本 真一郎
2016/09/29

「更正の予知」の実務と平成28年度税制改正【第2回】

「更正の予知」の実務と 平成28年度税制改正 【第2回】   税理士 谷口 勝司   3 加算税と更正の予知の制度趣旨 加算税に関する規定は条数も少なく、また計算規定でもあり、素っ気ない。それゆえ、更正の予知の取扱いを理解していく上では、その規定振り(文理)とともに、加算税や更正の予知の制度趣旨をまず理解することが不可欠であると思われる。 これまで数多くの裁判例でその趣旨が判示されており、これに関する研究もあるが、ここでは代表的と思われる裁判例について簡単に触れておきたい。 (1) 加算税の制度趣旨 最高裁の平成18年4月20日判決(一小)では、「過少申告加算税は、過少申告による納税義務違反の事実があれば、原則としてその違反者に対して課されるものであり、これによって、当初から適法に申告し納税した納税者との間の客観的不公平の実質的な是正を図るとともに、過少申告による納税義務違反の発生を防止し、適正な申告納税の実現を図り、もって納税の実を挙げようとする行政上の措置であり」と判示する。最高裁では、平成18年4月25日判決(三小)や、平成18年10月24日判決(三小)でもほぼ同様の判示をしており、このような考え方は定着しているといってよい。 過少申告加算税は、申告義務違反者に対する措置(行政制裁と理解できる)であって、適法に申告した者との間の不公平の是正等により、適正な申告納税の実現等を図るものといえよう。 (2) 更正の予知の制度趣旨 それでは、過少申告加算税の例外的な免除規定である「更正の予知」は、どのような趣旨によるものであろうか。 この点については、多くの裁判例において、納税者による自発的な修正申告書提出を奨励するもの、といった趣旨が判示されている。 例えば、東京地裁平成7年3月28日判決は、 と判示する。前述した加算税の制度趣旨と併せ考えると、判示された更正の予知の趣旨はもっともであり、また多数意見であると思われる。 また、やや古いが、大阪地裁昭和29年12月24日判決は、 と判示し、国税当局の手数に言及した裁判例も見受けられる。   4 更正の予知における2つの要件と「調査」の意義 更正の予知について国税通則法では、「修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合」と規定しており(通則法65⑤)、この規定振りから、更正の予知は、「その申告に係る国税についての調査があったことにより」と、「更正があるべきことを予知してされたものでない」という、2つの要件があるとの理解が一般的である。 そして、第一の要件については「調査の意義」、第二の要件については「更正の予知の時期」が問題となる。 まず、調査の意義については、国税通則法では調査の定義規定は置かれていないが、「調査」でまず思い浮かべるのが、第24条(更正)の規定である。 第24条では、 と規定している。 国税通則法では、増額更正や減額更正の更正処分を行う前提として「調査」が必要とされ、そして、ここでの「調査」について、大阪地裁昭和45年9月22日判決は、 と判示する。 この判示によれば、調査は、納税者等に質問検査権を行使して行うものはもちろんのこと、課税標準等又は税額等を認定するために行う税務署内での準備調査、申告書の審査検討、法定調書等との資料突合、法令解釈等をも含む相当幅広い概念として捉えることになる。 例えば、提出された申告書の審査検討を行った結果、計算誤り(例えば単純な税率適用誤り等)がある場合に、これを是正しようとするケースでは、署内で行うこの申告書の審査検討そのものが「調査」と理解される。また、このように理解しなければ(仮に、納税者等と接触して質問検査権を行使するものだけが調査と理解すると)、明白な誤りがある申告書であっても国税当局は納税者と接触しない限り更正処分ができない(是正ができず課税の公平が保てない)、という不合理を招来することになる。 また、「調査」で今一つ着目すべきは、国税通則法第7章の2(国税の調査)の規定(74の2~74の13)で、これらは、平成23年度税制改正によって調査手続の法定化が行われ、質問検査権、事前通知や調査終了時の手続等について追加された規定である。 この改正に伴って、国税庁は、平成24年9月12日付課総5-9ほか「国税通則法第7章の2(国税の調査)関係通達の制定について(法令解釈通達)」(以下「調査解釈通達」という)を発遣・公表している(下記参照)。 そしてこの調査解釈通達では、第7章の2における「調査」の意義として、 と定めている(調査解釈通達1-1(1))。これは国税通則法第24条に係る前述の裁判例とほぼ同じ解釈である、と理解できる。 条文が異なるとはいえ同じ国税通則法であり、別に解すべき特段の事情もないように思われることから、更正の予知(通則法65⑤)における第一の要件としての「調査」についても、まずは同様に理解しておきたい。   5 更正の予知の時期 2つ目の要件として、更正の予知の時期、すなわちいつの時点で、「更正があるべきことを予知してされた」と考えるべきであろうか。 この点、裁判例や学説には様々なものがあって分かれている。 品川芳宣教授の研究によれば、この点は、次の3つの説に区分される(『附帯税の事例研究 第四版』(財経詳報社刊)175頁。なお、同書は、酒井克彦教授『附帯税の理論と実務』(ぎょうせい刊)とともに、理論的・体系的にまとめられた優れた研究書である)。 そして、品川教授は、納税者にとって調査の進展過程で調査官が脱漏所得を発見したか否か、あるいはその端緒となる資料を発見したか否かを常に知り得ることではない等と指摘し、「課税の実務においては、調査開始後に提出された修正申告書については、特段の事情のない限り、当該納税者が更正があるべきことを予知して提出したものと推定せざるを得ない」とされている(前掲書176頁)。また、「客観的確実性説が国税通則法第65条5項の文理解釈に最も適うものと解されるが、同説は、前述したように、『特段の事情』を厳格(正確)に解すると、調査過程における時間的位置付けとしては調査開始説に限りなく近づくことになるものと解される。」とされる(品川前掲書178頁)。 また、国税通則法の立法担当者等による著書(『国税通則法精解 第15版』(大蔵財務協会刊)747頁)では、「この『予知してされたもの』とは、納税者に対する当該国税に関する実地又は呼出等の具体的調査がされた後にされた修正申告をいう」とされ、調査開始を基調とした説明がなされていると思われる。 さらに、最高裁昭和51年12月9日判決(一小)では、調査開始後に提出された修正申告書について加算税賦課を認めており、この最高裁判決は、調査開始説(調査着手説ともいう)をとるものと理解されている(品川前掲書170頁、酒井前掲書138頁)。 もっとも、客観的確実性説(端緒把握説ともいう)をとると理解される裁判例(例えば、東京地裁昭和56年7月16日判決、東京地裁平成24年9月25日判決など)や学説がその後も多く見受けられるなど、必ずしも統一されていないと思われる。   (了)

#No. 187(掲載号)
#谷口 勝司
2016/09/29

〈事例で学ぶ〉法人税申告書の書き方 【第8回】「別表6(6) 試験研究費の総額に係る法人税額の特別控除又は中小企業者等が試験研究を行った場合の法人税額の特別控除及び特別試験研究費に係る法人税額の特別控除に関する明細書」

〈事例で学ぶ〉 法人税申告書の書き方 【第8回】 「別表6(6) 試験研究費の総額に係る法人税額の特別控除 又は中小企業者等が試験研究を行った場合の法人税額の特別控除 及び特別試験研究費に係る法人税額の特別控除に関する明細書」   公認会計士・税理士 菊地 康夫   Ⅰ はじめに 本連載では、法人税申告書のうち、税制改正により変更もしくは新たに追加となった様式、複数の書き方パターンがある様式、実務書籍への掲載頻度が低い様式等を中心に、簡素な事例をもとに記載例と書き方のポイントを解説していく。 第8回目は、実務上適用例が増えてきているものの、一般的な書籍等では解説される機会がまだ少なく、かつ最近様式改訂があった「別表6(6) 試験研究費の総額に係る法人税額の特別控除又は中小企業者等が試験研究を行った場合の法人税額の特別控除及び特別試験研究費に係る法人税額の特別控除に関する明細書」を採り上げる。   Ⅱ 概要 この別表は、青色申告書を提出する法人が租税特別措置法第42条の4第1項から第3項までの規定(試験研究を行った場合の法人税額の特別控除)の適用を受ける場合に作成する。 いわゆる研究開発税制は、現在、以下の4つの制度により構成されている。 なお、平成27年4月1日前に開始した事業年度におけるこれらの制度には、上記④の制度を除いて、「繰越税額控除限度超過額等の繰越控除制度」が設けられていたが、平成27年度税制改正によりその繰越控除制度が廃止された。そのため、平成28年度の様式改正においては、上記①から③に対応する旧様式の「別表6(6) 試験研究費の総額等に係る法人税額の特別控除に関する明細書」、「別表6(7) 中小企業者等が試験研究を行った場合の法人税額の特別控除に関する明細書」、及び「別表6(8) 特別試験研究費の額に係る法人税額の特別控除に関する明細書」に繰越控除制度部分の記載が不要となり、3つの様式が1つの様式に統合されて、新たに「別表6(6) 試験研究費の総額に係る法人税額の特別控除又は中小企業者等が試験研究を行った場合の法人税額の特別控除及び特別試験研究費に係る法人税額の特別控除に関する明細書」となったのである。 (※) ④の制度に係る様式は、上記とは別に別表6(7)(改正前別表6(9))が設けられている。 ①から③の制度の概要は次のとおりとなっている。 ① 試験研究費の総額に係る税額控除制度 青色申告法人のその事業年度において損金の額に算入される試験研究費の額がある場合に、その試験研究費の額の8%~10%の金額をその事業年度の法人税額から控除する制度(ただし当期の法人税額の25%が上限)。次の「②中小企業技術基盤強化税制」との重複適用は認められない。 なお、試験研究費割合(※)が10%以上の場合の税額控除割合は10%となるが、試験研究費割合が10%未満である場合の税額控除割合は、 (試験研究費割合×0.2)+8% となる。 (※) 試験研究費割合=その事業年度の損金の額に算入される試験研究費の額÷当期を含む過去4年の平均売上金額 ② 中小企業技術基盤強化税制 中小企業者等である青色申告法人のその事業年度において損金の額に算入される試験研究費の額がある場合に、上記①との選択適用で、その試験研究費の額の12%の金額をその事業年度の法人税額から控除する制度(ただし当期の法人税額の25%が上限)。 ③ 特別試験研究に係る税額控除制度 青色申告法人のその事業年度において損金の額に算入される特別試験研究費の額がある場合に、上記①及び②の制度とは別枠で、その特別試験研究費の額の20%又は30%の金額をその事業年度の法人税額から控除する制度(ただし当期の法人税額の5%が上限)。 なお、本制度を活用するために計上した試験研究費については、上記①及び②の制度を活用するための試験研究費として計上はできない。     Ⅲ 「別表6(6)」の書き方と留意点 (1) 設例 (2) 今回の別表が適用される事業年度 平成28年4月1日以後終了する事業年度。 (3) 別表の記載例 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます。   (4) 別表の各記載欄の説明 〔試験研究費の総額に係る税額控除限度額の計算〕欄 〔5欄〕~〔9欄〕 事例では中小企業者等に該当するケースを扱っており、本欄は記入不要となるため、記載の仕方のみ解説する。 〔特別試験研究費の額の明細〕 (了)

#No. 187(掲載号)
#菊地 康夫
2016/09/29

金融・投資商品の税務Q&A 【Q13】「外貨建預金を払い出して外貨建株式に投資した場合の為替差益の取扱い」

金融・投資商品の税務Q&A 【Q13】 「外貨建預金を払い出して外貨建株式に投資した場合の 為替差益の取扱い」   PwC税理士法人 金融部 パートナー 税理士 箱田 晶子   ●○ 検 討 ○● 所得税法上、外貨建取引とは、「外国通貨で支払が行われる資産の販売及び購入、役務の提供、金銭の貸付け及び借入れその他の取引をいい、居住者が外貨建取引を行った場合には、その外貨建取引の金額の円換算額はその外貨建取引を行った時における外国為替の売買相場により換算した金額として、その者の各年分の各種所得の金額を計算するもの」とされています(所得税法第57条の3)。 また所得税法施行令167条の6第2項において、以下のとおり記載されています(下線筆者)。 この外貨建取引の範囲から除外する規定の趣旨としては、同一の金融機関において、同一の外国通貨で預貯金の預入れと払出しが行われる限り、その金額に増減はなく、実質的には外国通貨を保有し続けていることと同じであるところ、このような外貨の保有状態に実質的に変化がない外貨建預貯金の預入と払出しについては、その都度外貨建取引として為替差損益が認識されることは実情に即さないものであるから、とされています(【Q11】参照)。 本件のように、外貨建の預金をもって外貨建の株式に投資した場合が、上記の施行令を満たしているといえるかどうかですが、実質的には外国通貨を保有し続けていることと同じとは言い難いことから、為替差損益を認識する必要があると考えられます。 国税庁の質疑応答事例(「預け入れていた外貨建預貯金を払い出して外貨建MMFに投資した場合の為替差損益の取扱い」)でも、「新たな経済的価値(その投資時点における評価額)を持った資産(株式)が外部から流入したことにより、それまでは評価差額にすぎなかった為替差損益に相当するものが所得税法第36条の収入すべき金額として実現したものと考えられるから、為替損益の認識が必要」との旨のコメントがなされています。 したがって、おたずねのケースでは、当該外貨建株式の投資金額の円換算額とその投資に充てた外国通貨を取得した時の為替レートにより円換算した金額との差額(為替差益)が雑所得として認識され、総合課税の対象になると考えられます。 〔為替差益〕 (120円-100円)×10,000ドル=200,000円 なお、取得をした外国株式を譲渡(売却)したことによる所得については株式等の譲渡に係る譲渡所得等として申告分離課税の対象となりますが、その譲渡による所得の金額を計算する際には、当該外国株式への投資時の為替レート(本件の場合は120円/ドル)による円換算額をその取得に要した金額として所得を計算することになります。 (了)

#No. 187(掲載号)
#箱田 晶子
2016/09/29

裁判例・裁決例からみた非上場株式の評価 【第16回】「反対株主の株式買取請求②」

裁判例・裁決例からみた 非上場株式の評価 【第16回】 「反対株主の株式買取請求②」   公認会計士 佐藤 信祐   前回では、カネボウ事件のうち、東京高裁平成22年5月24日決定・金判1345号12頁について解説を行った。 本稿では、もうひとつのカネボウ事件である東京地裁平成21年10月19日判決・金判1329号30頁と、会社法施行後の事件である道東セイコーフレッシュフーズ事件について解説を行う。   1 東京地裁平成21年10月19日判決・金判1329号30頁 (1) 事実の概要 本事件は、平成20年11月11日に効力が生じた、相手方を吸収合併存続会社とし、清算会社である旧カネボウ社(平成19年7月1日に商号変更)を吸収合併消滅会社とする吸収合併に際して、反対株主の株式買取請求が申し立てられた事件である。 なお、本事件に先立ち、旧カネボウ社は主要三事業を営業譲渡していることから、営むべき事業がほとんどなくなっているため、清算会社になっている。 (2) 裁判所の判断 (3) 評釈 このように、裁判所は、清算価値に基づいて公正な価格を算定することとした。ただし、純資産価額が110円であるものの、合併交付金として130円を支払っていることから、公正な価格を130円であると判断している。 本事件では、営業譲渡から合併までの間が2年6ヶ月も経過している。営業譲渡の段階で反対株主の株式買取請求をしないでおきながら、合併の段階で営業譲渡における譲渡価額に異議を唱え、公正な価格を引き上げるということは、さすがに期間が長すぎることから認められなかったということが言える。   2 最高裁平成27年3月26決定・金判1466号8頁 (1) 事実の概要 本事件は、相手方を吸収合併存続会社、道東SFFを吸収合併消滅会社とする吸収合併に反対した道東SFFの株主であった申立人が、相手方に対し、申立人の有する道東SFFの株式を公正な価格で買い取るよう請求したが、その価格について協議が調わなかったため、反対株主の株式買取請求権が行使された事件である。 (2) 第一審(札幌地裁平成26年6月23日金判1466号15頁) (3) 控訴審(札幌高裁平成26年9月25日金判1466号14頁) 控訴審は、第一審の判断を踏襲しているため、詳細な解説は省略する。 (4) 裁判所の判断 (5) 評釈 本事件の第一審では、サイズプレミアム3.89%、非流動性ディスカウント25%をそれぞれ用いている。サイズプレミアムは小規模ディスカウントのことをいい、割引率に加算されていることから「プレミアム」という言い方になっている。算定された計算結果に対してディスカウント率を乗じるのであれば、「ディスカウント」という言い方になる。また、マイノリティ・ディスカウントは考慮されていない。 本事件では、非流動性ディスカントを考慮すべきでないと判断した最初の最高裁決定であり、極めて重要性の高い裁判例であると言える。しかし、その根拠が、反対株主の買取請求の事件だからなのか、収益還元法だからなのかは明らかではない。理論的には、カネボウ事件との整合性もあることから、前者と考えるべきであろう。 本稿までで、会社法の主要な裁判例については説明できたと思う。次回以降は、租税法の裁判例、裁決例について解説を行う予定である。 (了)

#No. 187(掲載号)
#佐藤 信祐
2016/09/29

税務判例を読むための税法の学び方【91】 〔第9章〕代表的な税務判例を読む(その19:「「交際費」の範囲②」(東京高裁平15.9.9))

税務判例を読むための税法の学び方【91】 〔第9章〕代表的な税務判例を読む (その19:「「交際費」の範囲②」(東京高裁平15.9.9))   立正大学法学部准教授 税理士 長島 弘   4 萬有製薬事件の概要と争点 萬有製薬は、取引先である医療機関の医師や研究者を相手に医療関係文献の英文添削事業を行っていた。当初、国内業者の平均的な料金である1ページ当たり1,500円の料金の徴収であっても、社内に専門家がいたことから利益が出ていたが、その後その専門家が退社したことにより外部に委託せざるを得なくなり、外部委託の費用が収入金額を超過することが恒常的なものとなっていた。その差額の負担額について、課税庁によりそれが交際費とされ、損金不算入として課税処分されたことから、訴訟となったものである。 争点は、①本件英文添削の依頼者が、萬有製薬の取引先である医療機関の医師や研究者に限られていたことから、「事業に関係ある者」に該当するか否か、②差額負担による支出が、「接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの」に該当するか否かである。   5 萬有製薬事件判決 (1) 東京地裁平成14年9月13日 この裁判例は、裁判所ホームページ等では公開されていない。そこで少し長くなるが、交際費該当性に関する判示部分を、ここに紹介しながら解説したい(下線筆者)。 ① 「事業に関係ある者」の該当性について ここでは、添削対象とされた研究者が、一般の病院等に広告されていたものではなく取引先関係に限られていることから、取引に対する直接的影響力の有無とは関係なく、「事業に関係ある者」に該当するとしている。 ② 「接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの」該当性について この点については、判決は「次に、本件負担額の支出の目的が接待等を意図するものであるか否かについて検討する」として、その該当性の判断につき、接待等の意図をメルクマールとして判断している。 このように、裁判所は、交際費該当性の要件として、「当該支出が事業に関係のある者のためにするものであること」と「支出の目的が接待等を意図するものであること」を満たせば足りるとして、相手方の利益を得ているという認識を問わないとしている。 その上で、本件が、先にみたように「事業に関係ある者」に対するものであり、その内容が「本件英文添削を、添削の依頼者である研究者の所属する取引先との間において、医薬品の販売に係る取引関係を円滑に進行すること」を目的とするものであって、これは、「取引先の医師等に提供するために必要な費用として、医薬品の販売に係る取引関係を円滑に進行する目的で支出したものというべき」であるとして「接待等を目的として行われたもの」と結論付けている。 *   *   * 次回は控訴審(東京高裁平成15年9月9日)を取り上げ、本判決の意義をまとめてみたい。 (続く)

#No. 187(掲載号)
#長島 弘
2016/09/29

〈業種別〉会計不正の傾向と防止策 【第2回】「土木工事業」

〈業種別〉 会計不正の傾向と防止策 【第2回】 「土木工事業」   公認会計士・税理士 中谷 敏久   どのような業種業態か? 土木工事業は、戦後の高度成長期には日本のインフラ整備に大きく貢献し、業界規模も拡大を続けたが、国内の景気変動に大きく左右され、金融危機による民間設備投資の減少や地方公共団体の財政悪化に伴う公共事業の見直しにより、一時低迷が続いた時期もあった。 しかし最近では、東日本大震災の復興需要やアベノミクスによる大規模な公共投資により、業界の受注工事高は増加傾向にある。 公共事業を受注したい業者には経営事項審査を受けることが義務付けられてはいるものの、依然としてどんぶり勘定的な経営をしている業者は少なくない。また、元請業者、下請業者、孫請業者という一種のヒエラルキーが定着しており、これらを悪用した不正が繰り返し行われている。   どのような不正が起こりやすいか? 材料費、労務費、経費等の発生原価は工事の進捗に伴って工事別に台帳に集計される仕組みとなっているが、この工事原価を本来の工事ではなく別の工事に集計する不正が起こりやすい。業界では「原価移動」あるいは「原価付け替え」と称されているものであり、赤字工事を回避するため、あるいはその発覚を遅らせるために行われる。 具体的には、元請業者(又は下請業者)の担当者がその発注権限を悪用し、下請業者(又は孫請業者)に別の工事名での請求書発行を依頼するのである。別の工事名としては、自ら担当する別の利益率の高い工事、進捗率の低い工事、請負金額の多額な工事が利用されるケースが多い。 下請業者(又は孫請業者)としては、工事代金が未払いとなるわけでもなく、また元請業者(又は下請業者)の担当者に対し一種の“借り”を作ることによって、今後の取引を優位に進めることが期待できるため、不正な要請に対しても応じることになる。 なお、このような不正は本社で行われるというよりは、実際の工事現場を管轄する地方の営業所や出張所で実行されるケースが多い。   事例検証 平成26年12月5日に公表された日本道路(株)(東証1部)の不正事例を紹介する。 第三者委員会の調査報告書によると、下記に示すような工事原価に関する不正な会計処理が某出張所において長期間にわたって行われていた。 ① 実態と異なる工事への原価付け替え ①については、前項で説明した典型的な原価移動である。すなわち、自ら担当する特定の工事が赤字になるのを避けるため、取引業者に依頼して別工事の請求書として発行してもらったというものである。 取引業者としても作業工数や工事代金の変更を求められるわけでもなく、単に工事名を変更するだけであり、簡単に応じてしまうのであろう。ただ、別工事の担当者にとっては無関係な工事原価が混入することになり、普通ならば原価移動を拒否するはずであるが、所属する組織の長が関与承諾している場合には、黙認せざるをえない状況に追い込まれるケースが少なくない。 ② 支払保留 ②については、取引業者に工事名を変更することを依頼するという点は①と同様であるが、工事代金の支払いを保留されるところが異なっている。 取引業者は一定の間支払いがストップされるのであるから、資金繰りが比較的良好な取引業者しか応じないであろう。後日別の工事名で取引業者が請求書を発行しそれに対して支払いがされるのであるが、工事代金を少し水増して支払うことにしないと、協力する取引業者は少なくなるものと推測される。 なお、当然のことであるが、不正行為を実施した営業所にとっては支払留保の期間に簿外債務が存在していることになる。原価付け替えを行う先の工事に適当なものが見つからない場合、いわゆる時間稼ぎとしてこの不正が行われるケースが多い。 ③ 別の取引業者への付け回しによる立替払い ③については、①②と異なり、さらに第三の取引業者の協力を仰ぐものである。 工事を行った取引業者が資金繰り上、支払保留に協力することができない場合、当該工事とは全く関係ない取引業者に対して請求書を提出させ、その取引業者に支払ってもらう方法である。 その結果、第三者の取引業者に立替払いしてもらっていることになり、②と同様、不正行為を行った営業所にとっては、立替えしてもらっている期間は簿外債務が存在していることになる。 後日、営業所は第三者の取引業者に対して、当該立替払い分を、別の工事名を使って支払うのであるが、②と同様、原価付け替えを行う先の工事に適当なものが見つからない場合、いわゆる時間稼ぎとしてこの不正が行われるケースが多い。 ④ 得意先(元請)への付け回しによる立替払い ④については、③と同様の方法であるが、立替えしてもらう業者が得意先(元請)である点が異なっている。 一般的に工事代金の支払いをするためには、下請業者の口座登録が必要とされる。したがって、得意先(元請)が工事代金の支払いを行うのは口座を登録している下請業者であり、いくら請求書が発行されても、孫請業者には本来支払いはなされないはずである。 この点どのようにして立替払いが実現されたのか疑問の残るところであるが、得意先(元請)、下請業者、孫請業者の各担当者が結託してなされた可能性がある。 不正行為を行った営業所にとって、立替えしてもらっている期間は簿外債務が存在していることになるという点は②③と同じである。 ⑤ 工事請負金の水増し計上 ⑤については、架空注文書を作成し、又は工事請負金を二重計上して、そこに原価移動を行うものである。 原価の付け替え先となる大型工事がなくなった場合に実行されるケースが多く、①から④の手法では原価移動ができない場合に行われる最終手段とも言える。 ⑥ キックバック ⑥については、取引業者に工事代金を過大請求させ、入金後その一部を不正実行者に返金させるものである。土木工事業に限られた不正ではないが、元請業者、下請業者、孫請業者という一種のヒエラルキーが定着している業界として、不正の頻度は少なくない。   不正の防止策 このような原価移動は営業所や出張所の所長が関与あるいは黙認しているケースが少なくない。工事現場を担当する地方の営業所所長や出張所所長が自らの成績を良く見せるため、あるいは昇進前の部下を応援するために実行される。 したがって、営業所や出張所の内部統制をいくら強化したとしても、その効果にはあまり期待できない。 やはり、不正の仕組みを熟知した本社の監査部が通常の内部監査あるいは抜き打ち監査を実施してチェックすることが、防止策としては最も効果があると考えられる。   同様の不正が起こりうる業種業態は? 請負工事を受注する業界であれば同様の不正が起こりうる。例えば製造業であっても、製品を単品で販売するだけでなく、自社製品を使ったシステム工事を請け負う場合がそれに該当する。 (了)

#No. 187(掲載号)
#中谷 敏久
2016/09/29

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第30回】「IFRS16 リース(借手の会計処理の基本)」

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第30回】 「IFRS16 リース(借手の会計処理の基本)」   仰星監査法人 公認会計士 西田 友洋   【はじめに】 2016年1月13日にIFRS第16号「リース(以下、「IFRS16」という)」が公表されている。IFRS16は、原則、2019年1月1日以後開始する事業年度から適用される。 リースとは、「資産(原資産)を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約又は契約の一部」をいう(IFRS16.付録A)。原資産とは、「リースの対象である資産で、当該資産を使用する権利が貸手から借手に移転されているもの」をいう(IFRS16.付録A)。 ただし、以下のリースは、IFRS16の適用範囲外である(IFRS16.3)。 なお、借手は、上記⑤を除き、無形資産をリースの対象として、IFRS16を適用することができる(IFRS16.4)。 IFRS16の借手の会計処理では、従前のようにファイナンス・リースではオンバランス、オペレーティング・リースではオフバランスといった会計処理はされず、原則、全てのリースについてオンバランスする。この会計処理を「使用権モデル」という。 今回は、IFRS16において大きく変わった借手の会計処理の基本について解説する。 ※各ステップをクリックすると、それぞれのページに移動します。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 IFRS16では、契約の開始時に契約がリースであるか又はリースを含んでいるかを、使用権の支配が借手に移転しているかどうかにより評価する(IFRS16.9)。この評価が見直されるのは、契約条件が変更された場合のみである(IFRS16.11)。 そこで、【STEP1】では、契約にリースが含まれているかどうかを検討するため、以下の5つを検討する。 ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。 (1) 特定された資産の有無 契約上、明示的又は黙示的に資産が特定されている場合(IFRS16.B13)、以下の(2)を検討する。 特定されない場合は、契約にリースは含まれていないため、IFRS16の適用はないことから、以下の検討は不要である。 (2) 経済的便益を得る権利の有無 特定された資産の使用を支配するためには、借手が使用期間全体にわたり資産の使用からの経済的便益のほとんど全てを得る権利を有している必要がある(IFRS16.B21)。 借手が使用からの経済的便益を得る方法としては、資産の使用、保有、転リースなどがある(IFRS16.B21)。 資産の使用からの経済的便益のほとんど全てを得る権利を評価する際には、当該資産の使用から生じる経済的便益を契約において定められた範囲の中で考慮する(IFRS16.B22)。範囲を超える部分は考慮してはならない。 経済的便益のほとんど全てを得る権利を有している場合、(3)を検討する。有していない場合、契約にリースは含まれていないため、IFRS16の適用はないことから、以下の検討は不要である。 (3) 使用を指図する権利 借手は、使用期間を通じて特定された資産の使用を指図する権利を有する場合(IFRS16.B24)、契約にリースを含んでいると判断する。使用期間を通じて特定された資産の使用を指図する権利を有するかどうかを判断するため、以下を検討する。 (4) 適用単位の識別 契約が複数要素から構成されているかどうかを検討する。契約が複数要素から構成され、その一部にリースが含まれている場合には、当該契約をリース要素と、非リース要素に分解して会計処理する。また、以下の両方の要件を満たす場合、各原資産を使用する権利は、独立のリース要素となる(IFRS16.B32)。 非リース要素には、IFRS16は適用しないで、他の適切な会計基準を適用して会計処理する。例えば、非リース要素部分は、リース料総額に含めずに、発生主義に基づき費用処理することが考えられる。 (5) 適用単位への対価の配分 契約で合意した対価を、各リース要素の独立販売価格と、非リース要素の独立販売価格の総額の比率により按分する(IFRS16.13)。独立販売価格が容易に利用可能でない場合には、借手は、観察可能な情報を最大限利用し、独立販売価格を見積る(IFRS16.14)。 ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。 少額資産のリースに該当するかどうかを検討する。 少額資産のリースについては、オンバランスせず、定額法又は別の規則的な方法(当該方法の方が実態に沿う場合)により、純損益に反映する(IFRS16.6)。少額資産のリースについての会計方針の選択は、リースごとに行う(IFRS16.8)。 少額リースに該当するかどうかの判定においては、以下の点に留意する必要がある。 また、少額の数値基準は、IFRS16では、明示されていないが、結論の根拠(IFRS16.BC100)において、少額資産のリースについて簡便的な会計処理を認めるにあたって、5,000米ドル以下というのを念頭に置いていたとの記載がある。 IFRSでは、日本基準の300万円よりもかなり低いラインが想定されていることが伺える。 少額資産のリースに該当する場合、【STEP3】以降の検討は不要である。少額資産のリースに該当しない場合、【STEP3】を検討する。 リース期間は、以下のように決定する(IFRS16.18)。 ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。 【STEP3】で決定したリース期間が、短期リースに該当するかどうかを検討する。 短期リースとは、開始日においてリース期間が12ヶ月以内のリース(購入オプションが付されているものを除く)である(IFRS16.付録A)。短期リースは、オンバランスせず、定額法又は別の規則的な方法(当該方法の方が実態に沿う場合)により、純損益に反映する(IFRS16.6)。短期リースの会計方針の選択は、使用権が関連する原資産の種類ごとに行う(IFRS16.8)。原資産の種類とは、借手が当該原資産を企業活動においてどのように使用するかといった、性質に基づくグルーピングをいう。 なお、契約変更があった場合やリース期間が見直された場合には、これを新規のリースとして扱わなければならない(IFRS16.7)。 短期リースに該当する場合、【STEP5】以降の検討は不要である。短期リースに該当しない場合、【STEP5】を検討する。 ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。 借手の会計処理は、主に(1)当初認識時、及び(2)事後測定時の会計処理に分けることができる。 (1) 当初認識時 借手は、リース開始日において、使用権資産(リース資産)とリース負債を以下のように算定する。 ① リース負債の当初測定 リース負債は、未払リース料の現在価値により算定する(IFRS16.26)。割引率は、リースの計算利子率を容易に算定できる場合は、リースの計算利子率を用い、容易に算定できない場合は、借手の追加借入利子率を用いる(IFRS16.26)。 未払リース料には、以下が含まれる(IFRS16.27)。 ② 使用権資産の当初測定 使用権資産の算定は、以下のように行う(IFRS16.24)。 前払リース料、当初直接コスト、原状回復費用の見積額がなければ、当初認識時とリース負債と使用権資産は同額となる。 会計処理は、以下のとおりとなる。 (※1) 前払リース料 (※2) 当初直接コスト (※3) 原状回復費用の見積額 (2) 事後測定時 事後測定時の会計処理においても、リース負債、使用権資産のそれぞれで検討することがある。 ① リース負債 事後測定時のリース負債の主な会計処理には、(ⅰ)利息の計上と(ⅱ)リース料の支払いがある。 (ⅰ) 利息の計上 リース開始日後において、リース負債に係る利息計上し、リース負債の帳簿価額を増額する(IFRS16.36)。 (※) リース負債残高×上記(1)①で決定した割引率 (ⅱ) リース料の支払い リース料を支払った場合、リース負債の帳簿価額から減額する(IFRS16.36)。 ② 使用権資産 使用権資産は、原則として、原価モデルにより事後測定を行う(IFRS16.29)。具体的な会計処理としては、(ⅰ)減価償却と(ⅱ)減損の検討が必要となる。 (ⅰ) 減価償却 リース開始日から、使用権資産の耐用年数の終了時点又はリース期間の終了時点のいずれか早い方の期間で減価償却を行う(IFRS16.32)。 ただし、リース期間終了時までに原資産の所有権が借手に移転する場合や使用権資産の取得原価に借手による購入オプションの行使が反映されている場合には、耐用年数の終了時までの間で減価償却を行う(IFRS16.32)。 (ⅱ) 減損の検討 他の固定資産と同様に、IAS第36号「資産の減損」に従って、減損について検討する。 *   *   * 以上、5つのステップをまとめたフロー・チャートを再掲する。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 (了)

#No. 187(掲載号)
#西田 友洋
2016/09/29

〔事例で使える〕中小企業会計指針・会計要領《外貨建取引等》編 【第4回】「外貨建資産負債の換算」

〔事例で使える〕中小企業会計指針・会計要領 《外貨建取引等》編 【第4回】 「外貨建資産負債の換算」   公認会計士・税理士 前原 啓二   はじめに 期末時における外貨建資産負債の円換算方法には、その区分される内容によって会計処理と法人税法上の取扱いが異なるものと同じものとが混在しています。 今回は、外貨建資産負債の区分ごとに、期末時における外貨建資産負債の円換算方法を、会計上と法人税法上の両面からご紹介します。   1 当期末決算における換算仕訳 〈普通預金〉 〈売掛金〉 〈1年以内返済予定長期借入金〉 〈長期借入金〉 〈満期保有目的債券〉 〈子会社株式〉 期末時における外貨建資産負債の円換算方法には、その区分される内容によって下記のとおり会計処理と法人税法上の取扱いが異なるものと同じものとが混在しています(中小企業会計指針79)。 上記の会計上の換算方法より、設例の当期末貸借対照表における各資産負債の換算額は、次のとおりです。   2 決算書の金額 〈当期損益計算書〉 〈当期末貸借対照表〉   3 損益計算書の当期純損益から法人税申告書の課税所得を算出する際の加算・減算調整 〈当期法人税申告書別表四〉 〈当期法人税申告書別表五(一)〉 この設例では、期末換算方法についての税務署への届出が提出されていませんので、税務上は法定換算方法によらなければなりません。会計上の期末換算方法と異なる法人税法上の法定換算方法による外貨建資産負債の換算額は、次のとおりです。会計上の期末換算方法による換算額との差額については、税務上加算又は減算調整が必要です。 (《外貨建取引等》編 終了)

#No. 187(掲載号)
#前原 啓二
2016/09/29
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