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《速報解説》 中小企業向けの各租税特別措置、平均所得金額年15億円超の事業年度は適用停止に~平成29年度税制改正大綱~

筆者:米澤 勝

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《速報解説》

中小企業向けの各租税特別措置、

平均所得金額年15億円超の事業年度は適用停止に

~平成29年度税制改正大綱~

 

税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝

 

12月8日に公表された「平成29年度与党税制改正大綱」(与党大綱)には、資本金1億円以下の中小企業に対する課税強化策が明示された。「8 その他の租税特別措置等」の縮減とされる項目の(14)として、以下の記述がある(大綱90ページ)。

法人税関係の中小企業向けの各租税特別措置について、平均所得金額(前3事業年度の所得金額の平均)が年15億円を超える事業年度の適用を廃止する措置を講じる。

(注) 上記の改正は、平成31年4月1日以降に開始する事業年度から適用する。

この次ページにも、地方税の縮減項目として同様の文章が記述されている。

この改正の影響を最初に受ける(適用廃止の対象となる)法人は、資本金が1億円以下である等の一定の要件を満たす中小企業のうち、平成31年3月31日までに終了した3年分の事業年度(3月期決算法人であれば、平成29年3月期、平成30年3月期及び平成31年3月期)における所得金額(大綱に特段の記述がないため、法人税確定申告書別表四における所得金額を示しているものと考えられる)の平均額が15億円を超える法人である。

税制改正大綱には縮減項目についての個別的な記載はないため、本稿では、現在の法人税制において、中小企業に認められている租税特別措置法上の優遇措置を概説することにより、税制改正の影響度を検討したい。

なお、法人税制において、中小企業とは、「中小法人等(法人税法57条)」と「中小企業者(租税特別措置法42条の4、租税特別措置法施行令27条の4)」とに分類されているが、措置法の定めである中小企業者を念頭に検討する。

1 欠損金の繰戻し還付制度(法人税法80条、措置法66条の13)

欠損金の繰戻し還付については、措置法66条の13において、平成30年3月31日までの間に終了する各事業年度において生じた欠損金額については、中小法人等以外の法人について適用しない旨の定めがある。

2 交際費等の損金不算入制度の特例(措置法61条の4)

交際費等は基本的に損金不算入であるが、中小法人等以外は平成26年度税制改正において、接待飲食費の50%については損金算入が認められているところ、中小法人等については年間800万円までの交際費等は損金算入できる規定もあり(定額控除限度額)、いずれか有利な方を選択することが可能である(平成30年3月31日まで)。

3 少額減価償却資産の取得価額の損金算入(措置法67条の5)

中小企業者等が取得した30万円未満(年300万円限度)の減価償却資産(少額減価償却資産)については、取得した事業年度における損金算入が認められている(平成30年3月31日まで)。

4 試験研究費の税額控除の特例(措置法42条の4)

試験研究費の税額控除については、中小企業者等については試験研究費の額の12%を税額控除限度額とする優遇措置が設けられている。中小企業者等以外の法人は試験研究費の額の10%が税額控除限度額となっている。

5 中小企業投資促進税制(措置法42条の6)

中小企業者等が、平成29年3月31日まで(※)に終了する期間において、一定の機械設備等を取得して一定の事業の用に供した場合には、30%の特別償却または7%の税額控除が選択できる優遇措置が設けられており、さらに、生産性の向上に資する一定の設備については、即時償却又は10%の税額控除を選択適用できる。
(※) 大綱に2年延長の記述あり。

6 雇用促進税制の特例(措置法42条の12)

青色申告法人が雇用者数を増加させるなど一定の要件を満たした場合における税額控除限度額について、中小企業者等は調整前法人税額の20%を限度とする優遇措置が設けられている。中小企業者等以外の法人については、調整前法人税額の10%が限度とされている。

7 特定中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の特例(措置法42条の12の3)

認定経営革新等支援機関等の指導及び助言を受けた一定の中小企業者等が、平成29年3月31日まで(※)の期間において、経営改善設備を取得して事業の用に供した場合には、特別償却又は税額控除が選択適用できる。
(※) 大綱に2年延長の記述あり。

8 所得拡大促進税制の特例(措置法42条の12の4)

青色申告法人が従業員への給与支給を増加させた場合において、一定の要件を満たせば、増加額の10%の税額控除(税額控除限度額)を認める制度である。中小企業者等については、増加割合の要件が3%と緩和されており(中小企業者等以外の法人は4%又は5%)、加えて、税額控除限度額は控除前法人税額の20%となっている。

9 生産性向上設備投資促進税制の特例(措置法42条の12の5)

青色申告法人が生産性向上設備等を取得して事業の用に供した場合の特別償却又は税額控除について、中小企業者等については、その適用要件である対象設備の範囲が広くなるなどの緩和措置が設けられている。
(※) 平成29年3月31日をもって廃止が決定。

以上の特例措置については、すでに長年の適用により企業実務にも浸透しているものも少なくない。これらの措置が、該当する事業年度から一度に適用停止となるとしたら、増税分の企業経営への負担については相当なものになると思料する。

すでに廃止が決定している「9 生産性向上設備投資促進税制の特例」以外のどの特例が縮減の対象になるかは、大綱発表時点では不明である。とはいえ、適用廃止の対象となる法人に該当することが予想される中小企業にあっては、平成31年3月期までの事業年度において、新規設備の導入や既存設備の更新などを前倒しで行うといった対抗策を検討する必要が生じることが予想される。

なお、以下に掲げる規定については、租税特別措置法上の優遇規定ではなく、法人税法上の規定であるため、税制改正大綱の建付け(租税特別措置の縮減)からすると対象となる規定ではないと思料するが、「欠損金の繰戻し還付制度」と同様、措置法上に新たな規定を設けて、法人税法上の適用要件から除外することも考えられるところである。

特に法人税収の落ち込みが報じられるなか、中小法人等に対する法人税率の軽減は、税収増加に与える影響が大きいだけに、今後の具体的な法案策定推移を注視する必要があろう。

 法人税率の軽減(法人税法66条)(※)下記追記参照

 欠損金の繰越控除制度の特例(法人税法57条)

 特定同族会社の留保金課税の適用除外(法人税法67条)

 貸倒引当金の損金算入(法人税法52条)

(了)

(※) 編集部追記(2016/12/14)
法人税法66条は中小法人等に対する法人税率19%の規定。租税特別措置法第第42条の3の2に規定された中小法人等の法人税率の軽減の特例(15%)については、上記見直しの対象となります。

【参考図】 (2016/12/19追記)

(※) 中小企業庁ホームページより

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筆者紹介

  • 米澤 勝

    (よねざわ・まさる)

    税理士・公認不正検査士(CFE)

    1997年12月 税理士試験合格
    1998年2月 富士通サポートアンドサービス株式会社(現社名:株式会社富士通エフサス)入社。経理部配属(税務、債権管理担当)
    1998年6月 税理士登録(東京税理士会)
    2007年4月 経理部からビジネスマネジメント本部へ異動。内部統制担当
    2010年1月 株式会社富士通エフサス退職。税理士として開業(現在に至る)

    【著書】

    ・『企業はなぜ、会計不正に手を染めたのか-「会計不正調査報告書」を読む-』(清文社・2014)

    ・『架空循環取引─法務・会計・税務の実務対応』共著(清文社・2011)

    ・「企業内不正発覚後の税務」『税務弘報』(中央経済社)2011年9月号から2012年4月号まで連載(全6回)

    【寄稿】

    ・(インタビュー)「会計監査クライシスfile.4 不正は指摘できない」『企業会計』(2016年4月号、中央経済社)

    ・「不正をめぐる会計処理の考え方と実務ポイント」『旬刊経理情報』(2015年4月10日号、中央経済社)

    【セミナー・講演等】

    一般社団法人日本公認不正検査士協会主催
    「会計不正の早期発見
    ――不正事例における発覚の経緯から考察する効果的な対策」2016年10月

    公益財団法人日本監査役協会主催
    情報連絡会「不正会計の早期発見手法――監査役の視点から」2016年6月

    株式会社プロフェッションネットワーク主催
    「企業の会計不正を斬る!――最新事例から学ぶ,その手口と防止策」2015年11月

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