酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第40回】 「法人税法にいう『法人』概念(その4)」 ~株主集合体説について考える~ 中央大学商学部教授・法学博士 酒井 克彦 (2) 法人該当性と私法準拠 法人該当性を検討するに当たって、我が国私法上の法人該当性を参考にする考え方には、2つのルートが考えられる。 すなわち、第一のアプローチとしては、概念論の見地から「法人」という租税法上の用語の意義の解明に当たり、私法上の理解を参考にする方法が考えられる。第二のアプローチとしては、性質論の見地から租税法上の「法人」と私法上の「法人」を比較して考える構成である。この2つのアプローチは似ているものの、実は理論的には非なるものである。 第一のアプローチはいわば言葉の問題として租税法における「法人」を考えるという構成である。条文上の文言の意義を解明するのに、租税法上固有の意義を持った概念であるとはいえない場合には、法的安定性や予測可能性を担保する見地から、私法における概念と同様に理解しようとする捉え方である。これは文理解釈上の「概念論」の問題である。 これに対して、第二のアプローチは、そもそも租税法上の「法人」とはいかなるものであって、その「法人」と私法上の「法人」は類似の性質を有するものかどうかを検討した上、およそ両者に違いがないのであれば、租税法上の「法人」を私法上の「法人」と同じものとみても差し支えなかろうとする構成である。 このように考えた場合に、さて、前述の最高裁平成27年7月17日第二小法廷判決は、どちらのアプローチによってLPSの法人該当性を判断したのであろうか。 (3) 第一のアプローチ 類似事例といってよいかは意見のあるところかもしれないが、いわゆるLLC事件がこの第一のアプローチを考えるに当たって、参考になると思われる。 これは、米国で組成されたLLC(Limited Liability Company:リミテッド・ライアビリティ・カンパニー)の我が国租税法上の法人該当性が争点となった事例である。 原告は、米国ニューヨーク州LLC法に基づき組成された本件LLCの行った不動産賃貸業に係る収支及び本件LLC名義の預金利息収入を原告の不動産所得及び雑所得として、平成10年分ないし平成12年分の所得税の各確定申告をした。これに対し、被告税務署長は、本件LLCが行う不動産賃貸業により生じた損益は法人としての本件LLCに帰属するもので、原告の課税所得の範囲に含まれないとしてこれを是正し、また、本件LLCが平成10年ないし平成12年に原告に対して送金した本件分配金は原告の配当所得に該当する等として、原告に対し、上記各年分の所得税に係る本件各更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分をしたという事案である。 この事案において、原告は、本件LLCは我が国の租税法上の法人に該当せず、また、本件分配金の一部は出資金の払戻しであり配当所得には当たらないから、本件各更正処分等は違法である旨主張した。 さいたま地裁平成19年5月16日判決(訟月54巻10号2537頁)は、次のように説示した。 ここに、概念論に従った判断枠組み、すなわち、上記第一のアプローチの採用を確認することができよう。 さいたま地裁は、このように説示した上で、次のように続けるのである。 さらに、次のように結論付けて、本件LLCの法人該当性を肯定している(原告の主張は排斥されている)。 ここでは、具体的に、次のように英米法を根拠とした法人該当性の要素を述べている。 さいたま地裁は、これらの判断要素を基礎として、次のような結論を導出したのである。 なお、この判断枠組み及び結論は、控訴審東京高裁平成19年10月10日判決(訟月54巻10号2516頁)においても維持されている(確定)。 (4) 第二のアプローチ これに対して、前述の最高裁平成27年7月17日第二小法廷判決は、結論からいえば、第二のアプローチを採用したものであるといえよう。それは次の説示からうかがえるところである(再掲)。 このように、我が国の租税法において何故に法人が独立した納税義務者とされているかに鑑みてその性質から法人該当性を判断するという上記のアプローチは、明らかに第一のアプローチとは異なるものであることが分かるであろう。 いずれの判断枠組みが妥当なのであろうか。理論的に極めて重要な問題であり、かつ深慮を要する論点でもある。 (続く)
平成28年度税制改正における 減価償却制度の改正ポイント 【第1回】 「改正概要及び経過措置の確認」 公認会計士・税理士 新名 貴則 平成28年3月29日の参議院本会議において、平成28年度税制改正法案が可決され、3月31日には税制改正関連法及び政省令が公布された。施行日は原則として平成28年4月1日である。 この中で、法人税率引下げに伴う財源確保のため、減価償却制度の見直しが行われた。 本連載では、改正法令を踏まえ、その内容について解説していくこととする。 1 改正の概要 従来、平成10年4月1日以後に取得した建物については、償却方法が定額法に限定されていたが、建物附属設備や構築物については定率法も選択することができた。しかし、次のような理由から、平成28年4月1日以後に取得した建物附属設備及び構築物については、建物と同様に定率法を廃止し、償却方法を定額法に限定することになった。 また、同様に平成28年4月1日以後に取得する鉱業用減価償却資産(建物、建物附属設備及び構築物のみ)についても、定率法を廃止し、定額法又は生産高比例法に限定することになった。 【選択可能な償却方法】 (※) 償却方法の選択について特に届出をしていない場合に適用される、法定償却方法のこと。 なお、ここでいう取得時期とは、正確には「事業供用日」を指すことに注意が必要である。例えば、購入したのは平成28年3月31日以前であっても、事業供用日が4月1日以後であれば、改正後の税法が適用されることになる。 2 経過措置 今回の改正に伴い、次の経過措置が設けられている。 ◆償却方法の変更手続の時期 通常、償却方法を変更する場合には、新たな償却方法を採用しようとする事業年度の開始日の前日までに、所轄税務署長に届出書を提出する必要がある。 しかし、今回の改正の施行日(平成28年4月1日)以後最初に終了する事業年度において、建物、建物附属設備及び構築物について償却方法を変更する場合には、当該事業年度の確定申告書の提出期限(仮決算による中間申告書を提出する場合はその提出期限)までに、所轄税務署長に届出書を提出すればよい。 ◆資本的支出の取扱い 資本的支出を行った場合、原則として、新たに資産を取得したものとして既存資産とは別個に減価償却を行う。ただし、既存資産及び資本的支出に定率法を採用している場合は、資本的支出を行った翌事業年度から、既存資産の帳簿価額と資本的支出の帳簿価額を合算して、1つの新たな資産として償却を行うことができるという特例が設けられている。 今回の改正の施行日(平成28年4月1日)を含む事業年度においては、平成28年3月31日までに行った建物附属設備及び構築物に係る資本的支出については、定率法を採用している場合は上記の特例を適用することができる。平成28年4月1日以後の資本的支出については、新たな資産として定額法で償却する必要があり、上記の特例は適用できない。 3 事例に基づく改正前後の減価償却の比較 定率法及び定額法における償却を、事例に基づいて比較すると次の通りである。 これまで建物附属設備や構築物について定率法を選択していた法人では、今後は定額法に限定されるため、償却開始後の数年間は償却額が大幅に少なくなることに注意が必要である。 【 事 例 】 種類:建物附属設備 耐用年数:15年 取得価額:10,000,000円 (※1) 少数点以下の端数は切り捨てている。 (※2) 9年目以降は改定償却率による計算に変わっている。 (了)
改正国税通則法と 新たな不服申立制度のポイント 【第3回】 「証拠の閲覧、謄写権の新設」 ~審理モデルの変更による審査請求実務の対応~ 弁護士 坂田 真吾 1 審判所の審理モデル 今回は、本改正の最重要項目と考えられる証拠の閲覧、謄写権について述べる。 前提として、審査請求の証拠の取扱いは、審査請求の審理モデルに深く関係するので、そこから検討することとする。 2 従前の審査請求の審理モデル (1) 審査請求における職権主義 一般に、紛争解決制度における調査審理のモデルとしては、「職権主義」と「当事者主義」がある。 職権主義とは、争訟手続における主導権を判断機関(裁判所等)に認める原則をいい、当事者主義とは、主導権を当事者に委ね、判断機関は中立的なアンパイアの地位に立って、両者の主張の優劣を判断する原則をいう。 通常の民事訴訟は、当事者主義に基づいている。これに対し、審判所の審査請求は、かなり職権主義的な色彩が強い。 すなわち、通常の民事訴訟において、裁判所は、原告ないし被告が提出する主張と証拠を受動的に受けて判断するが、審査請求においては、審判所は自ら職権調査を実施するなど、積極的に証拠を収集して事案の解明を行うことが多い。 (2) 証拠の取扱いにおける問題点 その中でも、従前の証拠の取扱いは、訴訟と比べて著しい差異がある。 すなわち、民事訴訟においては、原告、被告とも、書証の申出をする際には、相手方に写しを交付する手続を取らねばならない(民事訴訟法219条、民事訴訟規則137条)。 したがって、相手方が裁判所に提出した証拠は、すべて反対当事者の手元にあり、証拠は両当事者及び裁判所において共通である。 これに対し、審査請求では、次に述べるとおり、双方当事者及び審判所において証拠が共通ではない。 すなわち、請求人は、旧通則法96条によって原処分庁が任意に審判所に提出した証拠(任意提出証拠)については、原則として閲覧請求権が認められる一方、審判所が同97条に基づいて提出を求め、原処分庁がこれに応じたという形で提出した証拠(職権収集証拠)については、同96条2項のような閲覧権限に関する条文がないので、請求人に閲覧権がないと解されている。 そうすると、旧通則法の下では、原処分庁は、請求人に閲覧されてもよい証拠は96条で任意に提出し、そうでない証拠は97条により職権行使に応じる形で提出するという選択肢を有することになる。 審査請求が申し立てられた後の時系列に即して言えば、①原処分庁は、審判所に答弁書を提出(通則法93条)するとともに、一定の証拠を任意提出(同96条)し、②これを受けた審判所は、原処分庁に対して幅広く調査関係資料の有無内容を明らかにするよう求め、原処分庁はこの求めに応じてほぼ保管されているままに手持ち証拠を審判所に提出する(同97条)という運営がなされていると言えるだろう。 なお、原処分庁の手持ち証拠としては、当該納税者やその関係者、取引先等の過去の申告書、決算書等や、処分に当たっての調査関係記録(※)などの膨大な資料がある。 (※) 原処分庁が保管する記録には多様なものがあるが、税務訴訟における文書提出命令を巡る裁判例等においては、関係人の質問てん末書、電話聴取書、調査事績書、滞納処分票、事件検討書、原処分関係処理経過表、決議書、重要事案検討事績、重要事案審議会審議表、同業者検討基礎資料等が問題とされている(東京地裁平成16年2月9日決定・税資254号(順号9552)、東京地裁平成17年3月23日決定・税資255号(順号9967)、岡山地裁平成21年1月7日決定・税資259号(順号11114)、東京高裁平成22年9月6日決定・税資(徴収関係判決)(順号22-47)等)。 実務上、原処分庁は、97条で提出した証拠は請求人の閲覧の対象とならないことから、原処分庁が保管する一件記録を網羅的に審判所に97条で提出する傾向がある。 担当審判官等は、審査請求開始後の比較的早期の段階で、このような原処分庁提出資料を網羅的に検討し、調査審理の方針を立てる。原処分に問題がなければ、適宜請求人に必要な主張を促した上、棄却の議決、裁決を行う。 一方で、原処分に問題があり、原処分関係書類からしても原処分庁に検討が不足していると考えられる場合には、自ら職権で証拠を収集し(請求人や関係人からの事情聴取、帳簿調査、預金調査、現地調査等を自ら行う)、法的問題を検討して、結果として取消しの議決、裁決を行うこともある。 (3) 従来の審理モデルにおける合理性とは このような審理モデルは、民事訴訟と比べ、相当に職権主義的であり、良かれ悪しかれ、審査請求の大きな特徴となっている。 私見であるが、筆者が当初任期付職員として審判所に赴任したときは、それまでの弁護士としての実務経験等からして、このような取扱いには大きな違和感があった。民事訴訟では当事者と裁判所で証拠が共通であり、それ故に公正な審理、判断が期待できると考えていたからである。 一方で、筆者が審判所での担当事件数を重ねるにつれ、このような取扱いにも一定の合理性があるのではないか、という発想が生じたのも事実である。 審判所は中立的な機関ではあるが、あくまでも行政組織なのであり、あたかも刑事事件の起訴前の取調検察官のように、調査機関(原処分庁。刑事事件では警察署)から一件記録を網羅的に引き継いで必要な調査を行い判断する、というのは、迅速な判断や真実の早期発見という点から見れば一応の合理性を有する。 また、審判所が原処分を取り消せば、行政内部の最終決定であるから、原処分庁は訴訟提起できず納税者の勝訴が確定するという点で、納税者にとって相当に有利である。 3 改正の内容 (1) 国税通則法97条の3の新設 そうであるところ、上記の取扱いは、納税者から見れば、判断機関である審判所が証拠を抱え、納税者の知らないところで調査審理を行っているという面は否定できず、特に弁護士会等から強い批判がなされていた。 そこで今回の改正では、通則法97条の3が新設され、請求人等の閲覧できる証拠の対象が拡大されるとともに、証拠の写しの交付(謄写)もできることとされた。 (2) 改正の影響 上記改正については、これにより、審査請求人の閲覧、謄写対象が拡大し、納税者にとって有意義な改正であるという評価が多い。筆者としても、基本的にはそのような評価は妥当であると考える。 ただし、上記改正によれば、原処分庁は、これまでと異なり、審判所に提出した証拠は原則として請求人の閲覧、謄写の対象となることから、その手持ち証拠の一部しか審判所に提出しない扱いとされる可能性がある。 そのような原処分庁の不提出証拠の中に、納税者に有利な証拠が混在していた場合、どのように対応するのかが今後の問題となるように思われる(この点についてご興味があれば、拙稿「審査請求における証拠の閲覧対象の拡大と今後の調査審理について」(第38回 日税研究賞入選論文集、税研186号(2016年3月)116頁以降(要約))を参照いただければ幸いである)。 一方で、審査請求に精通した方から、「原処分庁としては、法改正後は96条提出証拠、97条提出証拠のいずれもが審査請求人の閲覧、謄写の対象となるのだから、むしろ網羅的に原処分庁の保管記録を審判所に提出し、あとは、審判所が、請求人の閲覧、謄写申請に対して閲覧等制限(新通則法97条の3第1項ただし書)を行うという実務運営となるのではないか」という意見を受けたこともある。 いずれにせよ、証拠の在り方を巡っては、今後の実務の運営に注目したい。 4 法改正後における納税者の対応 以上のように、証拠の閲覧、謄写規定の改正は大きなインパクトを有するが、税理士、弁護士等が審査請求を納税者の代理人として対応する際には、これまで以上に、原処分庁の提出した証拠に対する閲覧、謄写申請を適切に行うことが肝要となる。 なお、実務上、税理士が審査請求の代理人となる事例では、さほど、証拠の閲覧の申請がなかったという印象がある。弁護士としては相手方が判断機関にどのような証拠を提出しているのかは重要な関心事でありこれを閲覧等しないというのは考えがたいのであるが、税理士にとっては必ずしもそうでないのかもしれない。 しかし、今回の法改正後は、上記のどのような運営になるにせよ、従来よりも閲覧、謄写できる証拠の範囲は格段に拡大するものと思われるのであるから、審査請求において閲覧、謄写の申請をすることは専門家の必須の義務となろう。 また、上記のように、法改正後は審判所も原処分庁が収集した証拠を網羅的に検討しなくなるやもしれず、納税者としては、本来なされているはずの調査、収集されているはずの証拠を想像し、積極的に求釈明を行い、証拠開示を求めていくという姿勢が、これまで以上に重要になってくると思われる。 納税者側としては、原処分庁の証拠を見ると、意外と根拠に薄いといったことが分かることがある(第三者の供述を課税の根拠としつつ、当該供述が客観的事実に反する場合など)。そういった場合には、当該証拠に対して説得的な攻撃を加えることで、処分の取消しにつながる場合もある。なお、取り消される処分の傾向や、説得的な主張、立証の在り方については、本連載の【第5回】で検討する。 (了)
特定株主等によって支配された欠損等法人の 欠損金の繰越しの不適用(法人税法57条の2)の取扱い ~「繰越欠損金の使用制限」が形式的に適用される事例の検討~ 【第7回】 (最終回) 「〈事例5〉買収によって欠損等法人の役員が全員退任、 親族の従業員が退社するケース(第5号事由)」 公認会計士・税理士 税理士法人トラスト パートナー 足立 好幸 〈事例5〉 買収によって欠損等法人の役員が全員退任、親族の従業員が退社するケース(第5号事由) 《検討》 同族経営の会社を買収する場合、オーナーやその親族、古株の役員や従業員の退任又は退職が条件となるケースが多い。この場合、本ケースのように、もともと役員や従業員の数が少ないと、第5号事由に該当してしまう可能性が生じる。 [検討1] A社は欠損等法人に該当するか? 本ケースの場合、A社は、平成24年10月1日(特定支配日)に、P社による特定支配関係を有することになり、特定支配事業年度前の事業年度において生じた繰越欠損金を有するため、欠損等法人に該当する。 [検討2] 特定事由に該当するか? 本ケースでは第1号事由~第4号事由には該当しないが、第5号事由に該当する可能性がある。 ここで、第5号事由は、次の要件に該当する場合をいう(法法57の2①、法令113の2⑲⑳)。 (※1) 「役員」は、社長、副社長、代表取締役、代表執行役、専務取締役若しくは常務取締役又はこれらに準ずる者で法人の経営に従事している者に限る。 (※2) 「退任」には業務を執行しないものとなることを含む。 (※3) 「非従事事業」とは、旧使用人が特定支配日以後その業務に実質的に従事しない事業をいう。 (※4) 「旧事業の事業規模」及び「非従事事業の事業規模」は〈事例2〉における[検討2]の考え方による。 (※5) 欠損等法人の「事業規模算定期間における非従事事業の事業規模」が「当該事業規模算定期間の直前の事業規模算定期間における非従事事業の事業規模」のおおむね5倍を超えない場合は、【要件3】には該当しない。 この場合、当該事業規模算定期間において欠損等法人を合併法人、分割承継法人又は被現物出資法人とする共同事業要件(法令4の3④⑧⑫)を満たす合併、分割又は現物出資(合併等)を行っている場合には、当該合併等により移転を受けた事業に係る部分を除いて、「事業規模算定期間における非従事事業の事業規模」を計算する。 本ケースでは、【要件1】及び【要件2】を満たすことになるが、【要件3】については、次に掲げる非従事事業の事業規模が旧事業の事業規模のおおむね5倍を超えるものとなるかどうかで判定することになる。 ◆旧事業の事業規模 ◆非従事事業の事業規模 ただし、上記に掲げる非従事事業の事業規模が、次に掲げる非従事事業の直前の事業規模のおおむね5倍を超えない場合は、【要件3】には該当しないこととなる。 ◆非従事事業の直前の事業規模 [検討3] 使えなくなる繰越欠損金と繰越欠損金が使えなくなる事業年度は? 本ケースでは、欠損等法人A社において、第5号事由に該当する場合、平成27年4月1日~平成28年3月31日事業年度(適用事業年度)から、平成26年4月1日~平成27年3月31日事業年度以前の事業年度に生じた繰越欠損金が使用できなくなる。 また、平成27年4月1日~平成29年9月30日までの適用期間(適用事業年度開始の日から同日以後3年を経過する日は、平成30年3月31日となる)において生ずる特定資産の譲渡等損失額は損金不算入となる。 以上より、本ケースでは、法人税法第57条の2及び60条の3の適用により、第5号事由に該当する場合、欠損等法人A社の繰越欠損金は切り捨てられ、特定資産の譲渡等損失額が損金不算入となる。 〈事例5〉 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます (連載了)
裁判例・裁決例からみた 非上場株式の評価 【第5回】 「募集株式の発行等④」 公認会計士 佐藤 信祐 前回は、大阪高裁昭和51年4月27日決定、佐賀地裁昭和51年4月30日判決について解説を行った。 【第5回】に当たる本稿では、神戸地裁昭和51年6月18日判決について解説を行うこととする。 5 神戸地裁昭和51年6月18日判決・判時843号107頁 (1) 事実の概要 本事件は、株主総会で事業目的に娯楽場経営を加える議案が否決されたにもかかわらず、ボーリング場建設をしてしまい、かつ、その経営が失敗したことに端を発した事件である。取締役会では、建設会社からの工事代金債権を現物出資として株式100万株を1株当たり230円で発行することが決議された。 そのため、少数株主がこれらの行為が法令・定款に違反するとして、商法257条3項による取締役の解任請求をした事件である。取締役の解任請求と言ってしまうと論点が多くなってしまうが、本稿では、当該現物出資が有利発行に該当するか否かについて裁判所がどのような判断を行ったのかという点に限定して解説を行うこととする。 (2) 裁判所の判断 (3) 評釈 このように、本事件では、類似会社比準方式が採用され、純資産方式、配当還元方式、収益還元方式はそれぞれ採用されなかった。また、支配権プレミアムを加味すべきか否かという点についても判断され、結果的に支配権プレミアムは加味されないという結論になった。 支配権プレミアムをどのように考えるべきであるかという点は、会社法の学者の中でも統一した見解がないため、ここではあえて分析しないが、裁判所としては、経営支配権に関わるわけではないことから、支配権プレミアムを加味しないと判断したようである。 また、前回までの解説と異なり、少しずつ国税庁方式からの脱却が始まったようである。そして、現在では、支配株主にとっての株式価値の算定では収益還元方式やDCF方式が重視され、少数株主にとっての株式価値の算定では配当還元方式(ゴードン・モデル方式)が重視されてきているが、当時は類似会社比準方式が重視された時代でもあった。 なお、純資産方式を採用してしまうと、株価が割高になりかねないという裁判所の指摘についてはあえて異議を唱えたい。このような判断が正しいとしてしまうと、上場会社のPBRは1を下回るのが普通ということになってしまい、妥当とは言い難い。純資産方式を採用した結果、割高になるのか、割安になるのかは、それぞれの企業の収益力によって異なるものであり、純資産方式の特徴とは異なるものである。 また、気配相場が存在し、その値段よりも高かったという点が判決に影響を与えた可能性も否めない。 そのため、本事件が他の判決に影響を与えるかどうかという点については、経営支配権に係る場合であったのか、そうではないのかによって有利発行に該当するか否かが変わるという点のみを理解しておけば十分であると思われる。 次回では、東京地裁昭和52年8月30日判決及び東京地裁昭和56年6月12日判決について解説を行う予定である。 (了)
理由付記の不備をめぐる事例研究 【第9回】 「固定資産評価損」 ~固定資産評価損の計上が認められないと判断した理由は?~ 中央大学大学院商学研究科 博士後期課程 (酒井克彦研究室所属) 泉 絢也 今回は、青色申告法人X社に対して行われた固定資産評価損の否認に係る法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた国税不服審判所平成15年1月28日裁決(裁決事例集65号401頁。以下「本裁決」という)を取り上げる。 1 更正通知書に記載された更正の理由(本件理由付記) (注) 素材とした本裁決の裁決文から読み取ることができる理由付記の一部を筆者が加工している。 2 本件理由付記から読み取ることができる関係図 3 本裁決の判断 本裁決は、大要次のとおり、理由付記に不備はないと判断した。 (1) 求められる理由付記の程度 (2) 理由付記の十分性 (3) X社の主張について 4 私見 (1) 関係法令の確認 内国法人がその有する資産の評価換えをしてその帳簿価額を減額した場合には、その減額した部分の金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入されないのが原則であり(法法33①)、例外的に特定の事実が生じた場合にのみ評価損の損金算入が認められているところ、固定資産については、法的整理の事実がある場合を除くとすれば、次の要件を満たした場合に評価損の損金算入が認められる(法法33②、法令68①三)。 (2) 求められる理由付記の程度 本件理由付記によれば、X社が計上した本件土地に係る固定資産評価損の損金算入を認めないとする本件更正処分の根拠は、上記【1】~【5】のいずれにも該当しないので、法人税法33条1項の規定により、本件評価損を本件事業年度の損金の額に算入することができないものであることがわかる。 そして、帳簿書類に上記【1】~【5】に該当する具体的な事実が記載されていないのであれば、本件は、帳簿書類の記載自体を否認することなしに更正をする場合に該当する。 この場合、理由付記の程度としては、更正通知書記載の更正の理由が、そのような更正をした根拠について帳簿記載以上に信憑力のある資料を摘示するものでないとしても、更正の根拠を更正処分庁の恣意抑制及び不服申立ての便宜という理由付記制度の趣旨目的を充足する程度に具体的に明示するものである限り、法の要求する更正理由の付記として欠けるところはないことになる(最高裁昭和60年4月23日第三小法廷判決・民集39巻3号850頁等参照)。 (3) 理由付記の十分性 次のとおり、本件理由付記に、理由付記の趣旨目的に反するような理由付記不備による違法があるとまでは言い切れないと解しておく。 本件理由付記によれば、本件更正処分の根拠は、上記【1】~【5】のいずれにも該当しないので、法人税法33条1項の規定により、本件評価損を本件事業年度の損金の額に算入することができないものであること、すなわち上記要件〔1〕を満たさないことであることがわかる。 帳簿書類に、本件土地が1年以上にわたり遊休状態にあるなど上記【1】~【5】に該当する具体的な事実が記載されていない場合には、この程度の理由付記でも法の求める理由付記として十分なものであると評価し得るであろうが、仮に、帳簿書類に、本件土地が1年以上にわたり遊休状態にあるなど上記【1】~【5】に該当する具体的な事実が記載されている場合には、その記載されている事実との関係で、上記【1】~【5】のいずれにも該当しないと認定判断した根拠を明らかにする必要がある。 もっとも、課税庁は、素材とした裁決に係る審査請求において、次のような主張を行っている。 これによれば、本件更正処分の根拠は、「1年以上にわたり遊休状態にある」という上記〔1〕の【2】の要件に該当する事実があることは認めた上で、そもそも土地という資産の性質上、遊休状態となったことによりその価額が低下するものではないことから、上記〔2〕の要件を満たさないというものであったことが推察される。 このことからすれば、上記3(3)のX社の主張にも理解を寄せることができるが、ここでは、上記3(3)の下線部分の判断のように、本件理由付記から上記〔2〕の要件を満たさないという処分理由を読み取ることも不可能ではなく、そうであれば本件理由付記に、理由付記の趣旨目的に反するような理由付記不備による違法があるとまでは言い切れないと解しておく。 * * * 次回は、有価証券評価損に係る株式の価額については、当事業年度末において、回復の見込みがないとは認められないことから、当該有価証券評価損の損金算入を否認した法人税更正処分の理由付記の事例を取り上げる。 (了)
税務判例を読むための税法の学び方【80】 〔第9章〕代表的な税務判例を読む (その8:「租税法律主義の意義①」(最判昭30.3.23)) 立正大学法学部准教授 税理士 長島 弘 1 はじめに この判例は、かの大島訴訟最高裁判決(【72】参照)がとって代わるまで、ジュリスト別冊の租税判例百選において、巻頭を飾っていた判例である。よって租税判例百選の初版及び第2版はこの判例が巻頭に掲載されている。 このことからも分かるように、憲法84条との関係において、租税法律主義の意義につき、最高裁の大法廷において明らかにした重要な判決である。 この訴訟自体は、固定資産税における名義人課税主義について争われた事案であるが、その判決の意義は大きいものであるため、今回よりこの事案を解説したい。 2 事案の概要 X(原告・控訴人・上告人)は、昭和26年2月に訴外Aにその所有する土地を譲渡し、同月に移転登記を完了した。しかし大阪市北区長(条例により、市長からの権限移譲があるものと思われる)は、固定資産税はその年の1月1日を賦課期日として固定資産の所有者に課する旨(地方税法343条1項・359条)、また、所有者とは土地については土地台帳若しくは土地補充課税台帳に所有者として登録されている者をいう旨(同343条2項)の地方税法の規定に基づき、Xに対して、昭和26年分の固定資産税を賦課した。これに対して、X(原告・控訴人・上告人)は、土地に対する固定資産税はその各納期当時の所有者に課せらるべきであり、4月以後を納期とする昭和26年度固定資産税は同年2月に所有権を喪失した原告に課せらるべきものではない旨、主張し、当該課税処分が違法であるとして取消を求めて訴えを提起した。 なおXは、昭和26年第4期分の固定資産税の賦課処分に対してその違法であることを主張しているが、同時にすでに納付済みの第2期及び第3期の税額の賦課も違法とし、その納付済みの金額の返還請求も求めている事案である。 3 関係条文 4 裁判所の判断 (1) 第一審の判断 重要な事案であるが裁判所ホームページには掲載されていないため、ここで判決を紹介しながら進めていこう(以下、下線は筆者による)。 なおこの事案では、出訴期限等も問題になっている(この点は「本案前の答弁」として当事者から主張が展開され、判決では「一、本案前の答弁に対する判断」として示されている)が、これは割愛する。よって、「二、本案についての判断」から紹介する。 この第一審判決では、地方税法359条第1項の解釈について「爾後所有者に変動があり、従って又土地台帳若しくは土地補充課税台帳に登録されている者に変動があっても、当該年度内の納税義務者には変更を生ぜしめない趣旨のものと解するのが相当」と判示する。 しかし真の所有者が租税を負担しないという租税負担の公平性の観点からの問題に対しては、「徴税の簡便を計り、以て税収入の確保と徴税費用の節減とを期した已むを得ない制度としてこれを是認するの外はない」というのみであり、何故やむを得ないかという点について、高裁判決や地裁判決に見られるような、憲法や公共の福祉との関係については特に示されていない。 (2) 第二審の判断 この高裁判決は、地裁の判断をそのまま踏襲しているが、真の所有者が租税を負担しないという租税負担の公平性の観点からの問題に対して以下の指摘をしている。 すなわち「月割を以て納税義務者を定めることは、徴税技術上煩瑣(はんさ:筆者注)かつ不便であり、自然徴税費用の増大も必至であるから、むしろ、或る程度公平を犠牲にしても、徴税の簡便を計り、税収入の確保と徴税費用の節減を期することが、多衆を対象とする課税制度としては、結局公共の福祉に適合する」として、この根拠を公共の福祉にあるとしている。 そして、「憲法上の基本的人権、財産権不可侵の原則もまた、公共の福祉のために、ある程度制約は免れない」と基本的人権及び財産権不可侵の原則と公共の福祉の関係について言及し、また「固定資産の所有者は、その所有権の譲渡にあたって、右を見越し、その対価を定める等適当な処置をとり得る」としてその固定資産税相当額を譲渡対価に含める(※)ことができるとして、実態的に課税上の不公平は是正しうる点を指摘している。 (※) この点、現在不動産売買において、譲渡対価に加えて、譲受後の固定資産税相当額を日割りで計算して精算することが慣行化されてきている。そしてこの固定資産税相当額が租税公課か譲渡対価の一部か、すなわち売却者側では消費税法上の課税売上になるか、購入者側では租税公課として即時費用化できるか、または租税公課ではなく、課税仕入となりうるかなどが、これまで訴訟で争われている。 * * * 次回はこの事案の最高裁判決について見ていく。 (続く)
IFRS第16号「リース」の要点と実務への影響 【第1回】 「改訂趣旨と新基準の特徴」 公認会計士 松橋 香里 2016年1月13日に国際会計基準審議会(IASB)からIFRS第16号が公表された。本基準について、要点を解説する。 はじめに 新基準のもとでは借手について原則として全てのリースがオンバランス処理されるという意味で、現行のIAS第17号及び現行の日本基準とは異なる処理が要求される。 特に、航空機、小売、運輸業など、現行の会計基準でオぺレーティング・リースに分類される資産を多く保有する業界では、財務数値及び実務に与える影響が大きくなることが予想される。 1 改訂の経緯・趣旨 現行のIAS第17号「リース」は、30年以上前に導入された古い基準であり、もはやリース取引の実態を忠実に表さなくなっているとの批判が存在していた。 すなわち、リース契約をファイナンス・リースとオペレーティング・リースの2つに分類し、どちらに該当するかで異なる会計処理が適用されることが投資家にとっての比較可能性を害すること、特にオペレーティング・リース取引として会計処理がなされた場合、関連するリース資産及びリース負債がオフバランスになり、財務諸表の透明性を害するといった問題点が指摘されていた。 このため、財務諸表の透明性と比較可能性を高めるべく、借手側について現行の会計基準を大きく改訂し、新基準では原則として全てのリースについてオンバランス処理を要求している。具体的には、一定期間にわたり資産を使用する権利を資産として、リース料支払義務を負債として財務諸表に計上する会計処理が求められる。 米国財務会計基準委員会(FASB)と共同で始まった基準の改訂プロジェクトは、2010年8月に最初の公開草案、2013年に改訂公開草案がリリース、さらに内容が一部見直されるなど通常よりも慎重に審議され、2016年1月にようやく完成に至った。 2 新基準の特徴 IAS第17号ではリース取引と売買取引の経済的実質の類似性に着目し、リースを2つに分類する。すなわち、経済的実質が売買と認められる場合には、ファイナンス・リースとして借手にオンバランス処理を要求する。他方、オペレーティング・リースとして分類された場合には、関連する資産・負債が貸借対照表に計上されない。 これに対し、新基準では、資産の使用から得られる経済的便益のほぼ全てを享受し、顧客が資産を自由に使用する権利を有しているか否か、言い換えれば、借手が資産の使用権に対して「支配」を有しているかどうかに焦点を当て、資産の使用に対して支配を有している場合にはリースとしてオンバランス処理を行う点が特徴的である。 3 発効日及び経過措置 本基準は2019年1月1日以降に開始する事業年度から適用される。また、IFRS第15号(顧客との契約から生じる収益)を適用している会社には、早期適用が認められる。 新基準の適用に際しては原則として遡及適用が求められるが、実務上の負担を軽減するために以下が認められる。 また、初度適用企業に対しては、以下が認められる。 (了)
〔会計不正調査報告書を読む〕 【第44回】 株式会社王将フードサービス 「第三者委員会報告書(平成28年3月29日付)」 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 【第三者委員会の概要】 【株式会社王将フードサービスの概要】 株式会社王将フードサービス(以下「OFS」と略称する)は、昭和42年創業。中華レストラン「餃子の王将」をチェーン展開(直営店470、フランチャイズ店232)。売上高75,820百万円、経常利益6,360百万円。従業員数1,962名(数字はいずれも平成27年3月期)。本店所在地、京都市。東京証券取引所一部上場。 【第三者委員会の設置理由】 OFS前社長大東孝幸氏(以下「大東氏」という)は、2013年12月、本社駐車場で何者かによって射殺された。京都府警による捜査にもかかわらず、いまだに犯人は特定されていない。 事件から2年が経過した2015年12月になって、現場近くに残されていたタバコの吸殻に付着していた唾液のDNAが、福岡の暴力団関係者のものと一致したため、京都府警と福岡県警で合同捜査本部を立ち上げるとの報道が新聞各紙によってなされた。 こうした報道を受け、OFSは、「当社が反社会的勢力と関係があるかどうかを確認することを目的とし、当社のコーポレート・ガバナンスの評価・検証のため」に、第三者委員会を設置することを公表した。 なお、3月29日付「第三者委員会の調査報告書を受けて」と題するリリースには、OFSがどのような意図のもとに第三者委員会の設置を決定したのかが、以下のようにまとめられている。 第三者委員会は、OFSの過去におけるガバナンス上の問題点を示す資料として、OFS役職員で構成された特別再発防止委員会作成の「調査報告書」の内容を確認し、同報告書には「平成5年から平成18年までの間にOFSが行った不適切な取引の内容が記述」されており、その「記載内容は信頼するに足りるもの」と評価している。 本稿では、まず、この不適切な取引内容を確認したい。 【平成25年11月13日付調査報告書】 OFSは、平成24年11月13日の取締役会決議で、再発防止委員会を設置し、社外取締役で公認会計士の資格を有する稲田氏を委員長として、常勤監査役の中村氏と社員4名を委員として活動を始めた。 再発防止委員会の設置目的は、過去の不適切な取引を行うに至った問題点、多額の資金流出を伴う取引等について、事実関係の調査を行い、当時及び現状の内部統制を検証し、改善点があれば、取締役会に報告することであり、一方、特定の役職員の過去の過失等の有無を検討し、責任を追及することを目的としたものではなく、また、外部公表を予定したものではない、というものであった。 1 OFS創業家による経営 創業者である加藤朝雄氏(以下「朝雄氏」という)は、昭和42年12月に王将1号店を開店後、多店舗展開を行い、平成5年3月には株式を店頭登録して、OFSを株式公開企業とした。 平成5年6月に朝雄氏が亡くなり、非同族の望月邦彦氏が2代目代表取締役に就任、朝雄氏長男の加藤潔氏(以下「潔氏」という)が代表取締役副社長に、次男の加藤欣吾氏(以下「欣吾氏」という)が代表取締役専務に、それぞれ就任した。望月氏は、1年間で代表取締役を辞任し、翌平成6年6月からは、潔氏が3代目の代表取締役社長、欣吾氏が代表取締役専務として、平成14年3月に辞任するまでの間、OFSの経営を支配してきた。 なお、のちに4代目代表取締役社長となる大東氏は、朝雄氏の妻である加藤梅子氏の弟である。 2 OFSとA氏との関係 朝雄氏は、昭和52年ころA氏と知り合い、その後、A氏とOFSの関係は続いていた。第三者委員会の認定した関係としては、次の3項目が挙げられている。 3 OFSとA氏及びその関係会社Bグループとの取引 再発防止委員会による調査の結果、OFSからBグループへ流出した資金は、約260億円であり、このうち、代物弁済による回収が約53億円、その他の回収額(主に不動産の売却によるもの)が約33億円となっており、未回収資金は約170億円に達していた。 資金流出の態様を大きく分けると、次のようになる。 (1) Bグループ所有の不動産の購入 購入した不動産やゴルフ会員権などの実勢価格が不明であるため、一概に断定はできないが、Bグループ所有の資産を高値で買い取り、あとから、第三者又はBグループに対して安値で売却するという取引が多く報告されている。 たとえば、OFSは、平成12年3月に福岡県の「ヘルスケアー原鶴」という建物をBグループ会社から4億円で購入しているが、同物件は、平成17年3月、Bグループの他社に5,000万円で売却している。 また、不動産購入を利用した代物弁済としては、平成13年4月、OFSがBグループから雲仙旅館の土地建物を20億円で購入した際、このうち、12億6,000万円については買付資金としてBグループに交付していた金員が充てられているが、残額である7億4,000万円の資金は流出しており、最終的には同じ会社に2億8,700万円で売却して、損失を計上している(平成15年3月)。 (2) 手数料、買付資金の交付 OFSは、店舗取得のための買収交渉をA氏に依頼、手数料として1億円をA氏に支払ったが、この手数料については、取締役会の承認は得られていない。 あるいは、OFSが店舗隣地の買付資金として33億円をBグループに支払ったものの、買付は実現しなかったにもかかわらず、買付資金は返還もされない状態になっていた事案も報告されている(一部は上記(1)の代物弁済として不動産購入代金に充当されている)。 (3) 子会社を通じた貸付 OFSの子会社である株式会社キングランドから、Bグループに対して貸し付けた金員のうち約89億6,000万円が未回収となっていた。 4 コーポレート・ガバナンス上の問題点 再発防止委員会が認定したコーポレート・ガバナンス上の問題点は以下のとおりであった。 5 損失処理について なお、上記の「未回収資金約170億円」については、3月30日付の「一部報道について」というリリースの中で、以下のように処理が終わっていることが公表されている。 【反社会的勢力との関係に関する調査】 OFSが第三者委員会を設置することになった理由は、冒頭に記したように、前社長である大東氏の狙撃事件に暴力団との関係をうかがわせるマスコミ報道があったことがきっかけであるから、本報告書も、OFSと反社会的勢力との関係について、多くの紙数を割かれている。 1 第三者委員会による「反社会的勢力との関係の有無」に調査方法(調査報告書p.51以下) 調査時点における、OFSと反社会的勢力との関係の存在及びその内容を確認するために、第三者委員会が行った調査は、以下の5つの方法により行われた。 (1) 役職員・取引先データ調査 OFSの役職員及び取引先について、新聞記事検索、WEB風評検索、調査会社である株式会社JPリサーチ&コンサルティングのデータベースとの突合の方法により、反社会的勢力に該当しないか、調査を行った。 (2) 電子メールデータ分析 OFSの取締役(社外取締役を除く)及び執行役員について、OFSが貸与している情報機器端末、私用携帯電話、サーバ内のメールデータを保全、復元処理を行ったうえで、電子メールの分析を行った。 (3) 会計データ調査 OFSの会計データ分析により抽出した取引に関し、①取引先に関する反社チェックを実施、②会計伝票及び証憑書類等の確認、ヒアリングを行って、反社会的勢力との取引の有無を確認した。 (4) アンケート調査 OFSの全役職員2,036名に対し、反社会的勢力との取引の有無及びコンプライアンス体制等に係る意識を把握するためのアンケート調査を行い、1,817名から回答を得た(回収率89.2%)。 (5) ホットライン調査 2月12日から同月29日までの間、第三者委員会が設置・管理するメールアドレスを利用し、OFS全役職員とFC各店舗従業員に対し、「反社会的勢力と何らかの商取引をしていること、あるいは、役員または従業員が反社会的勢力から威圧を受けて何らかの金品を提供していることを見聞きした情報」につき、実名・匿名を問わず、通報を募ったが、ホットライン窓口に対する通報件数はなかった。 2 第三者委員会による「反社会的勢力との関係の有無」の調査結果 第三者委員会による上記の調査の結果、OFSと反社会的視力との関係の存在は確認されなかった。 3 OFSの反社会的勢力排除体制に関する問題点 次いで、第三者委員会は、OFSの反社会的勢力排除体制を検証し、以下のような問題点を指摘している。 4 OFSによる平成28年1月29日における制度改正 第三者委員会による調査が進行中の平成28年1月29日付で、OFSは、反社会的勢力排除施策に関連する規程類の改正と運用の一部変更を実施した。 変更内容は以下のとおりである。 【改善提言】 第三者委員会は、報告書の最後に「改善提言」として、大きく分けて「コーポレート・ガバナンスに係る提言」と「反社会的勢力に対する防止体制に関する提言」をまとめている。 【4月8日付「第三者委員会調査報告書提言に対する取り組みについて」】 上記の改善提言に対するOFSの取り組み状況が、4月8日公表された。その中では、3月30日付で全従業員に対する社長メッセージが配信されたこと、4月1日付の臨時取締役会で、「取引先調査実施要領」の改正が承認され、提言に沿った形での運用に向け、マニュアルの策定が進められていることなどが報告されている。 (了)
経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第113回】 減損会計⑧ 「減損処理後の会計処理」 仰星監査法人 公認会計士 横塚 大介 〈事例による解説〉 〈会計処理〉(単位:百万円) ① A店舗の減損 (※1) 固定資産簿価500百万円>割引前将来キャッシュ・フロー250百万円 ∴減損必要 減損損失300百万円=固定資産簿価500百万円-回収可能価額200百万円 ② 翌年度の減価償却費の計算 (※2) 減価償却費15百万円=(減損損失控除後の固定資産帳簿価額200百万円-残存価額5百万円)÷残存耐用年数13年(取得時耐用年数25年-減損計上時経過年数12年) 〈会計処理の解説〉 1 A店舗の減損 A店舗の割引前将来キャッシュ・フローは250百万円であり、固定資産簿価500百万円を下回っているため、減損損失を認識すべきと判定されます。このため、A店舗の固定資産簿価500百万円を回収可能価額200百万円まで減額し、減損損失300百万円を当期の損失とします。 2 残存価額 減損処理を行った資産についても、通常の資産と同様に、企業が採用している減価償却の方法に従って、減損損失を控除した帳簿価額と残存価額、残存耐用年数に基づき減価償却を行います。なお、残存価額は、耐用年数到来時において予想される当該資産の正味売却価額となります。 減価償却費の計算においては、残存価額を現在時点まで割り引く必要はありません。また、残存価額がゼロと見積られた場合、残存価額を10パーセントとして定率法の償却率を計算することはできません。 3 残存耐用年数 資産又は資産グループ中の主要な資産の経済的残存使用年数が、当該資産の減価償却計算に用いられている税法耐用年数等に基づく残存耐用年数と著しい相違がある等の不合理と認められる事情のない限り、当該残存耐用年数を経済的残存使用年数とみなすことができます(指針21項なお書)。 本事例では、主要な資産の経済的残存使用年数と、残存耐用年数とに著しい相違はなく、残存耐用年数を経済的残存耐用年数と用いることに不合理と認められる事情はないため、残存耐用年数である13年を経済的残存耐用年数としています。 (了) ※5月は退職給付を取り上げます。