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これだけ知っておこう!『インド税制』 【第2回】「インドの個人所得税」

これだけ知っておこう! 『インド税制』 【第2回】 「インドの個人所得税」   公認会計士・税理士 野瀬 大樹   前回はインドにおける法人所得税について触れたが、今回より身近な「個人所得税」について解説する。 この個人所得税においても、税金の計算構造は基本的に日本と同じである。 ただし、こちらも法人所得税と同様、細かな点で違いがある。   1 必要経費と各種控除 まず日本においてはサラリーマンであっても「給与所得控除」という形の「経費」が最低65万円認められているが、インドにおいてはこれに該当するものがない。同様に日本においては基礎控除が38万円、結婚して、かつ配偶者が働いていない場合はさらに38万円の配偶者控除が認められているが、これもない。 子どもがいる場合は少しの所得控除が認められているが、その金額も無視してよいほど小さなものなので、あくまでイメージだが「ほぼ額面に税率がかかる」と考えてよいと思われる。 また、数年前に日本でも話題になった「特定支出控除」、これに類似する制度がインドにもあるのだが、仮にインド人の従業員側から、この制度についての依頼を受けたとしても、運用は現実問題としてなかなか難しいと考えらえる。 理由は簡単で、日本の特定支出控除と同様、そのエビデンスとなるインボイスなどが必要になるのだが、従業員側が税金を減らしたい一心で、手書きで修正したり、そもそも架空のインボイスを持ってくるケースが少なくなく、後で税務上のトラブルになるからである。 よほど信頼できる従業員ならよいが、制度上認められているからといってすべてOKとするには問題があるので注意が必要である。   2 税率 次は税率だが、税率は下のように定められている。 最低5%から始まり最大40%、10%の住民税を考慮すると15%~50%の負担である日本と比べるとインドの税率は一見低いよう思われる。 ただし、先ほど述べたように、インドでは日本と異なり給与所得控除や基礎控除、配偶者控除等がなく、少し乱暴だが、ほぼ給与額面そのものにこの税率がかかるとイメージすると、インドの税負担の重さが実感できるかと思われる。 インドに進出している日本企業のほぼ全てが苦しんでいるのがこの「個人所得税」にあると言われる原因もここにある。   3 個人所得税が日本企業の足かせになる理由 日本企業、特に規模の大きな企業には従業員規則があり、インドに駐在する駐在員であっても「日本にいる時の『手取給与』を保証した上で、インドでの給与を決める」という方式を取っているケースがほとんどである。いわゆる「手取保証方式」である。 そういった場合、先述のようなインドの税制を加味すると、グロスアップ計算(注)によりインド法人が負担するべき額面給与が膨大な金額になり、インド法人の利益を圧迫することになる。 特にこの問題はJVの場合顕著で、JV先があまりに高い日本人額面給与に驚き、その負担を拒否するケースも散見される。給与の支払拒否は所得税納税の遅延につながり、駐在員のビザや在留許可にも大きな影響を及ぼすため、事前に入念なシミュレーションが必要となる。 こういった事態を回避するために、日本企業はいくらかの給与を日本本社から払うという対応をとるのだが、その場合にもインドにおけるPEの問題や、日本における寄付金の問題が生じるため、100%全ての問題を解決するのは難しい。   4 対象となる従業員 インドにいるすべての人がインドの個人所得税を納めるということではない。当然だが、たった1週間だけ日本からタージマハル観光に来た人が、インドで確定申告する必要はない。 インドにおいては、個人を3つのカテゴリーに分けて、納税の範囲を定めている。 まず「年182日以上のインド滞在」か「60日以上の滞在かつ、過去4年に合計365日滞在」の人は「居住者」とみなされ、それ以外を「①非居住者」と呼ぶ。 そして居住者のうち「過去10年のうち、9年は非居住者である」または「過去7年において滞在が729日以下」であれば「②非通常の居住者」、そうでなければ「③通常の居住者」となる。 ①から③の所得に対する課税関係は以下のとおりである。   5 計算期間 日本の場合、個人所得税の計算期間は1月~12月で固定されているが、インドの場合は法人と同じ4月~3月で固定である。   6 申告のタイミング 給与については日本と同様、源泉徴収により納税が行われる。 ただし、給与以外の所得を得ている場合は、話は少しややこしくなる。 まず前納制度であるが、年間納付予定額の30%を9月15日までに、60%を12月15日までに、残りを3月15日までに納付する必要がある。 JV先に日本で支払われている給与を隠したい場合は、あえてこの前納制度をとって、納税のみ筆者のような日系会計事務所に依頼しているケースも散見される。 どちらにしても7月31日までには、確定申告書を提出する必要がある点には注意が必要である(ただし、平成27年度は政府から申告書フォームの発表が遅れたため、個人所得税申告期限が8月末に延期されている)。 (了)

#No. 133(掲載号)
#野瀬 大樹
2015/08/27

連結納税適用法人のための平成27年度税制改正 【第10回】「所得拡大促進税制・その他の租税特別措置法上の見直し」

連結納税適用法人のための 平成27年度税制改正 【第10回】 「所得拡大促進税制・その他の租税特別措置法上の見直し」   公認会計士・税理士 税理士法人トラスト パートナー 足立 好幸   [10] 連結納税適用法人に係る所得拡大促進税制の見直し 連結納税制度に係る所得拡大促進税制は、連結グループ全体で適用要件を満たした場合に、連結グループ全体の給与等増加額の10%を連結税額控除額とし、各連結法人の給与等増加額の割合によって個別帰属額を計算することとなる(措法68の15の5、措令39の46)。 1 改正の内容 (1) 改正の概要 雇用者給与等支給額が増加した場合の税額控除制度における増加促進割合の要件について、次の法人の区分ごとに次の見直しを行う(措法68の15の5①・②五)。 ① 中小連結親法人及びその連結子法人 平成28年4月1日以後に開始する適用年度について、3%以上(改正前5%以上)とする。 ② 上記①以外の法人 平成28年4月1日から平成29 年3月31 日までの間に開始する適用年度について、4%以上(改正前5%以上)とする。 (2) 改正後の所得拡大促進税制 連結親法人及び各連結子法人が、適用年度(注1)において国内雇用者(注2)に対して給与等(注3)を支給する場合において、次の3つの要件を満たすときは、連結法人税額(注4)から雇用者給与等支給増加額(注5)の10%に相当する金額(税額控除限度額)を控除する(措法68の15の5①)。 この場合において、税額控除限度額が、連結法人税額の10%(連結親法人が中小連結親法人(注6)である場合には、20%)に相当する金額を超えるときは、その控除を受ける金額は、10%相当額を限度とする(措法68の15の5①)。 [所得拡大促進税制に係る税額控除額の個別帰属額の計算方法] 上記で計算された連結税額控除額は、次のように各連結法人に配分計算される(措法68の15の5⑥、措令39の46⑱)。 [地方法人税における所得拡大促進税制に係る税額控除額の取扱い] 法人税における所得拡大促進税制の税額控除額は、地方法人税の課税標準となる基準法人税額の計算において連結法人税額から控除される(地方法6三)。 この場合、各連結法人の所得拡大促進税制の税額控除額の個別帰属額に4.4%を乗じた金額が地方法人税個別帰属額の計算において減算される(措法68の15の5⑥、地方法15①)。 [住民税における所得拡大促進税制に係る税額控除額の取扱い] 中小連結親法人又は各連結子法人の各連結事業年度の個別帰属法人税額(道府県民税及び市町村民税の課税標準)の計算において、法人税における所得拡大促進税制に係る税額控除額の個別帰属額は個別帰属法人税額から控除される(連結法人税個別帰属額に加算しない。地方税法附則8⑧、地法23①四の三、292①四の三)。 中小連結親法人に該当しない連結親法人又は各連結子法人については、個別帰属法人税額から控除されない(連結法人税個別帰属額に加算する)。なお、この場合、連結親法人が中小連結親法人に該当するかどうかについては、当連結事業年度終了時の現況によって判定するものとする(「地方税法の施行に関する取扱いについて(道府県税関係)の一部改正について」総税都第22号50の6(3)、「地方税法の施行に関する取扱いについて(市町村税関係)の一部改正について」総税市第22号45の6(3))。 2 適用時期 平成27年4月1日以後に開始する連結事業年度について適用される(平成27年所法等改正法附則72)。   [11] その他の租税特別措置法上の見直し 下記について、単体納税と同様の改正が行われた。 (了)

#No. 133(掲載号)
#足立 好幸
2015/08/27

組織再編・資本等取引に関する最近の裁判例・裁決例について 【第33回】「非公開裁決事例④」

組織再編・資本等取引に関する最近の裁判例・裁決例について 【第33回】 「非公開裁決事例④」   公認会計士 佐藤 信祐   今回、紹介する事件は、関連会社に対して非上場株式を譲渡した場合において、時価よりも低廉な価額で譲渡したものとして寄附金として否認された事件である。 非上場株式をどのように算定するのかという点は、実務上も頻繁に問題となる点である。なお、平成22年9月1日の裁決事例は、TAINSコードF0-2-401とF0-2-400の2つがあるが、いずれも非上場株式の譲渡価額について争われた事件であり、その内容も似ているため、本稿では、F0-2-401についてのみ解説を行う。   18 平成22年9月1日裁決(TAINSコード:F0-2-401) (1) 事件の概要 本事件は、審査請求人(以下「請求人」という)が保有している株式を関係法人へ譲渡したことに関し、原処分庁が、当該株式の譲渡価額は時価に比して低廉であり、当該譲渡価額と時価との差額は請求人から上記関係法人への寄附金に該当するとして法人税の更正処分をしたのに対し、請求人が、当該株式の譲渡価額は時価であるとして、原処分の全部の取消しを求めた事件である。 なお、本事件は、請求人がM&Aにより取得した株式を、初期投資額からそれまでに受け取った配当を控除した金額で関係法人へ譲渡しているという点に特徴がある。しかしながら、当該関係法人との出資関係、取引関係等については、黒塗りにされているため、詳細な内容は不明である。 (2) 原処分庁の主張 本件株式の譲渡先である■■■■■は、■■■■が代表取締役を務める法人であり、同社の役員等を■■■■■の代表取締役等として派遣していることから、■■■■■及び■■■■は、請求人の意思決定について大きな影響力があると認められる。■■■■■は請求人に■■■■■■の多額の利益配当(資本金への組み入れを含む。)を行っていることから、本件株式の保有期間中に財務状況が悪化した事実はなく、純資産価額を下回る価額で本件株式を売却することは通常考えられない。 本件株式は、非上場株式であることから、証券市場で取引される株式と単純に比較すべきではなく、また、有価証券発行法人の純資産価額等に占める有価証券の譲渡価額の割合を算出し、低廉譲渡か否かを判断する旨の規定はない。 (3) 請求人の主張 請求人は、本件株式の取得後、業界の不安定性、知識不足及び人材不足から本件株式の転売を考えていたが、■■■■■の他に買手は見つからず、他方で請求人は、本件取引当時、様々な理由で多額な資金を必要としていた。本件取引価額は、■■■■から一方的に押し付けられたものではなく、請求人として必要な検討をした後に、譲歩できるぎりぎりの価額かつ公平な価額と確信して申し出た価額であり適正なものである。 通常の株価の形成は、決算書などによる財務情報だけではなく、株式発行法人の将来性、取扱商品の市場動向及び経済状況の変化などの影響も受けるのであり、証券市場では現に株式の帳簿純資産価額を大幅に下回る価額で株価が形成されているケースも多数ある。 (4) 国税不服審判所の判断 請求人及び■■■■■が算定していた本件株式の純資産価額は、請求人が■■■■■に対して購買代行の引受けをさせることが目的であることから、その評価方式に純資産価額方式を採用することが最も合理的である。 本件取引は、■■■■■にとって■■■■■の子会社化による購買代行業務の効率化の効果を併せて考えると、請求人側に一方的に売り急いでいた等の事情があったとは認めがたい。 本件株式の取得の経緯や■■■■■の収益性からしても、特に低い価額で手放さなければならない合理的理由はない。 本件株式の取引に当たって、第三者間の取引と同視できるような価額を算定できる環境にあったとは認め難い。 値引交渉ポイントの4項目として、①売上げ及び利益の不安定性並びに業界の低成長性、②経営トップの引退懸念、③■■■■■の競合企業への年間売上高、④■■■■在庫を理由として、■■■■■■減額した約■■■■■■を最終の交渉価額として算出しているが、これら値引交渉ポイントの個別的事情、具体的金額の記載はなく、値引交渉ポイントの控除後の価額が■■■■■■という大まかなラウンド数字であることをみてもその価額の合理性に疑義が生じるのである。これに併せて、■■■■■の交渉価額の算定過程において、上記(2)のロの(イ)のとおり、■■■■■は同社のコスト削減というメリットを捨象して本件取引価額を算定したことが不自然であることを考えると、これらの値引交渉ポイントは、通常の取引における市場価格の形成要因としてのバランスを欠くものというべきである。 (5) 評釈 このように、国税不服審判所は純資産価額を下回る金額で譲渡をしたことにつき、低廉譲渡として寄附金認定を行っている。 なお、認定事実を見てみると、「■■■■■は、■■■■■の■■■■■■■の確定決算前の決算書案を基に、本件株式の価額を純資産価額で算出した上で、■■■社長に対し、一般に上場有価証券等以外の株式の時価は純資産価額が最低価額になる旨説明をしたところ」という記載があったことから、当事者の間では、純資産価額を下回る価額で譲渡することについては、寄附金として認定される可能性があるというリスクを認識していたものと推定される。 また、黒塗りが多すぎるため、確定的なことは言えないものの、純資産価額の算定につき、財産評価基本通達に規定する営業権を含めたうえで算定を行っているようである。 現行の法人税基本通達2-3-4では、「法人が無償又は低い価額で有価証券を譲渡した場合における法第61条の2第1項第1号《有価証券の譲渡損益の益金算入等》に規定する譲渡に係る対価の額の算定に当たっては、4-1-4《上場有価証券等の価額》並びに4-1-5及び4-1-6《上場有価証券等以外の株式の価額》の取扱いを準用する。」と定めている。 さらに、同通達4-1-5では、売買事例もなく、公開途上にもなく、類似会社も存在しない場合には、「発行法人の事業年度終了の時における1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」により評価を行うことを定めており、同通達4-1-6では、同通達4-1-5の算定方法に代えて、小会社に該当するものとしたうえで、財産評価基本通達により評価を行うことを定めることができることが定められている。 そのため、実務上、このような算定方法により評価を行うことが多く、請求人の算定方法はややアグレッシブであったと思われる。 これらの通達に定める評価方法よりも安い評価を行うためには、DCF法や類似上場会社法などによる評価が考えられるが、時価純資産価額よりも安い評価額になる場合には、合理的な説明が求められることは容易に想像できる。 いずれにしても、本事件では、そのような第三者による評価を行わずに、安易に取引価額を引き下げたという意味で、請求人の主張は当然に認められるものではなく、国税不服審判所の判断は妥当なものであったと考えられる。  (了)

#No. 133(掲載号)
#佐藤 信祐
2015/08/27

税務判例を読むための税法の学び方【67】 〔第8章〕判決を読む(その3)

税務判例を読むための税法の学び方【67】 〔第8章〕判決を読む (その3)   立正大学法学部准教授 税理士 長島 弘   (2 判決をみるポイント) ② 結果を左右した要素を見極める (1) 真の「論点」は何か 以前、【第45回】にて記したように、判例は「論点に対する判断」であると、ただし論点とは当事者に論点として取り上げられた部分とは限らない。また、審級により論点は異なる。 そこで、その裁判における判決を左右する真の「論点」が何かを見極めなければならない。 それは判決で「争点」と示されたものとも異なる。 そこで、1つ判決を見てみよう。 この判決は、法律による政省令への委任が租税法律主義に違反しているとされた具体的な事例を提供するものとして、重要な先例的意義を有する(佐藤英明「課税要件法定主義一政令への委任の限界」別冊ジュリスト178号『租税判例百選第4版』10頁(ただしこれは控訴審の評釈である))とされる裁判例である。 この高裁判決は裁判所ホームページにて公開されているが(下記リンク参照)、地裁判決(千葉地裁・平成7年2月22日判決)は公開されていない。 処分取消並びに過誤納金還付請求控訴事件(東京高裁平成7年11月28日判決) (裁判所ホームページ) 有料の会員制による法令検索サイトであるTAINSやLEX/DBでは公開されているが、読者の全員が見られるわけではないため、長くなるが全文を紹介する。 ただし公的判例集として紹介した、行政事件裁判例集(【第59回】参照)46巻10・11号には搭載されている。 なお、この事案のTAINS及びLEX/DBのコードは以下の通りである。 TAINSは、現在、日税連の下、一般社団法人日税連税法データベースとして運用されており、税理士は月会費2,000円、税理士以外の者は特別会員として月会費3,000円となっている。 このサイトでは租税法の裁判例・裁決例を多く収録しており(これらに限らず、行政内部の事務運営指針等も情報公開請求等により入手し、収録している)有益であるため、租税実務を中心に行っている者には、強く推奨したい。 この事案の原告は、通常税率による登録免許税を納付して所有権移転登記を受けたが、これは協同組合の組合員への土地譲渡であり、かかる登記については租税特別措置法(平成4年法律14号による改正前のもの。以下「措置法」という。)第78条の3第1項に規定する中小企業者が集団化等のため取得する土地又は建物の所有権の移転登記についての軽減税率の特例の適用が可能であった。登記後にこの軽減規定を知り登記官に対して差額について還付請求したところ、同施行規則により登記申請書に添付すべきとされる知事証明書を添付していなかったことを理由に還付を拒否された。そこで原告は知事証明書を提出したうえで、登録免許税法第31条第2項に基づき所轄税務署長に還付通知をするように請求した。しかし登記官は過誤納付の事実は認められないため税務署長への還付通知はできない旨の通知をした。そこで原告がこの通知の取消と国に対する不当利得の返還を求めたものである。 この事案においては、知事証明書が登記申請書に添付すべきとされているが、それが手続事項として施行規則である省令において規定されていた。なお法律の委任文言を見れば、措置法第78条の3第1項では、土地等の所有権移転登記について、「これらの登記に係る登録免許税の税率は、政令で定めるところにより、登録免許税法第9条の規定にかかわらず、1000分の25とする。」と定めていた。そして、同法施行令第42条の9第3項においては、「第78条の3第1項の規定は、事業協同組合等が前項各号に掲げる土地又は建物を当該各号に規定する貸付け又は譲渡しの条件に従って譲り渡すことができることとなった日から1年以内に大蔵省令で定めるところにより登記を受ける場合に限り、適用する」と規定されていた。そしてこれを受けた大蔵省令である同法施行規則第29条1項では、「法第78条の3第1項の規定の適用を受けようとする者は、その登記の申請書に・・・都道府県知事の証明書を添付しなければならない。」と規定していた。 地裁では「憲法の定める租税法律主義の原則上、課税要件は法律によりできるだけ一義的明確に定められていなければならない。そして、このことは、本件軽減規定のように、通常の課税要件よりも納税者に有利な特例措置を定める法律についても同様に妥当すると考えられるのであり、このような特例措置を適用するために実体的要件のほかに手続的要件を充足すべきものと定められている(略)と言うためには、法律によりその旨が明らかにされている必要がある」「本件政令委任部分のほかには、手続的要件の充足を必要としているかどうかを判断するための手掛かりはない。」「本件軽減規定が手続的要件を置くことを定めていると解するとすれば、その場合には、本件軽減規定は、この点について「政令で定めるところにより」とだけ定めているのに過ぎないから、手続的要件の内容及び効果の定めをいわば白紙的に政令に委任するものと言わざるを得ない。そして、このような態様による政令への委任は、・・・租税法律主義の原則上、有効なものとは認め難い」と判示した。 したがって、この裁判の結論を左右する真の論点は、登録免許税法施行規則第29条第1項の「法第78条の3第1項の規定の適用を受けようとする者は、その登記の申請書に・・・都道府県知事の証明書を添付しなければならない。」との規定が、租税法律主義の点から有効か否か、すなわち法律の委任がなく課税要件を省令で付加したものとして無効か否かである。 なお、最近の判決は金額や年月日、条文番号等の記載において、ほとんどが横書きに合わせて算用数字を使用しているが、古い判決は下記のように横書きでも漢数字を使用している。本連載の趣旨(税務判例が読めるようになる)ことを勘案し、ここではあえて、漢数字による表記のまま示すこととする(ただしTAINSでは算用数字で公開されている)。 この判決の中では、争点は「1 不当利得の成否、2 本件通知の性格及び適法性」が挙げられていた(なおこの判決では、争点が「二 争点に関する双方の主張」の中に、当事者の主張と共に記されていて分かりにくいが、争点が最初に別に掲げられているものも多い)。 争点では、「本件通知の性格及び適法性」とされているが、真の論点は、「本件通知」を根拠づける登録免許税法施行規則第29条第1項が、法律の委任がなく課税要件を省令で付加したものとして無効となるか否かである。 このように、真の論点が何かを読み解かなければならない。 (続く)

#No. 133(掲載号)
#長島 弘
2015/08/27

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例29(所得税)】 「配当控除を加味して総合課税で申告したところ、配当控除の適用が受けられないものであったため、申告不要制度を選択した方が有利であったとして賠償請求を受けた事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例29(所得税)】   税理士 齋藤 和助   《基礎知識》 ◆上場株式等の配当等を受けた場合の課税関係 平成26年以後に支払を受けるべき上場株式等の配当等(大口株主等を除く。以下同じ。)については、その支払の際に20%(所得税15%、住民税5%)の税率により源泉徴収がされるため、原則として申告不要である。しかし、総合課税又は申告分離課税により申告することを選択できる。 なお、この場合は、申告する上場株式等の配当等の全てについて総合課税又は申告分離課税のいずれかを選択する必要があり、総合課税を選択した場合には配当控除の適用があり、申告分離課税を選択した場合には上場株式等の譲渡損失との損益通算ができる。 ◆配当控除 配当所得につき、その全てを総合課税で申告した場合には、配当控除を受けることができる。配当控除を受けた場合には、配当について源泉徴収された所得税と配当控除額が納付すべき税額の計算上控除される。 ◆配当控除を受けることができる配当所得 日本国内に本店のある法人から受ける剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配、証券投資信託の収益の分配などで、確定申告において総合課税の適用を選択した配当所得に限られる。配当控除は、二重課税されているかどうかが問題であるため、法人税が課されない「外国法人から受ける配当等」や「特定外貨建等証券投資信託の収益の分配に係る配当等」は配当控除の対象にはならない。 《配当控除率》 ◆特定外貨建等証券投資信託 外貨建資産割合及び非株式割合が75%超の株式投資信託で、配当控除の適用はない。 《外貨建資産・非株式割合による配当控除の可否》       (了)

#No. 133(掲載号)
#齋藤 和助
2015/08/27

こんなときどうする?復興特別所得税の実務Q&A 【第33回】「外貨預金の利子に課された所得税、復興特別所得税、住民税の処理」

こんなときどうする? 復興特別所得税の実務Q&A 【第33回】 「外貨預金の利子に課された所得税、復興特別所得税、住民税の処理」   税理士・社会保険労務士 上前 剛   当社は、4月1日にA銀行新宿支店にアメリカドルの外貨普通預金口座を開設しました。8月20日に利子3ドルの入金がありました。外貨預金の利子は、日本円の預金の利子と同様に所得税、復興特別所得税、住民税が源泉徴収されるのでしょうか?また、8月20日の換算レートは次の通りですが、どの換算レートにて換算するのでしょうか? 外貨預金の利子に課された所得税、復興特別所得税、住民税の処理についてご教示ください。   国内の金融機関に預け入れた外貨預金の利子は、日本円の預金の利子と同様に20.315%の税率で所得税、復興特別所得税、住民税が源泉徴収される。また、換算レートは、取引日のTTM(電信仲値相場)による。 ただし、継続適用を条件として売上、その他の収益、資産は取引日のTTB(電信買相場)、仕入その他の費用、負債は取引日のTTS(電信売相場)によることができる(法基通13の2-1-2)。 今回のケースにおいては、継続適用を条件にTTBによる換算もできるが、TTMにより換算する。会計処理は、次の通りである。 【8月20日】 (※1) 3ドル×TTM123円/ドル=369円 (※2) 所得税・・・462円×15%=69円(円未満切捨) (※3) 復興特別所得税・・・462円×0.315%=1円(円未満切捨) (※4) 住民税・・・462円×5%=23円(円未満切捨) (了)

#No. 133(掲載号)
#上前 剛
2015/08/27

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第20回】「無対価での100%子会社同士の合併~個別財務諸表のみ作成会社の場合~」

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第20回】 「無対価での100%子会社同士の合併 ~個別財務諸表のみ作成会社の場合~」   仰星監査法人 公認会計士 西田 友洋   【はじめに】 今回は、無対価での100%子会社同士の合併(個別財務諸表のみ作成会社の場合)について解説する。 無対価での100%子会社同士の合併とは、例えば、100%子会社A社が100%子会社B社を株主に対して何の対価も交付せずに吸収合併する場合をいう。   また、子会社同士の合併は、「共通支配下の取引(【第18回】参照)」に該当する。 なお、孫会社がある場合については、解説していない。 ※各ステップをクリックすると、それぞれのページに移動します。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 (次ページ【STEP1】へ進む) (前ページ【はじめに】へ戻る) 子会社同士の合併は、共通支配下の取引のため、吸収合併存続子会社は、吸収合併消滅子会社の適正な帳簿価額を引き継ぐ(企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準(以下「基準」という)」41)。そのため、吸収合併消滅会社は合併期日の前日に決算を行い、個別財務諸表上の適正な帳簿価額を算定する。 また、個別財務諸表上の適正な帳簿価額とは、吸収合併消滅子会社が継続すると仮定した場合の適正な帳簿価額である(適用指針83、391)。したがって、適正な帳簿価額の算定において、固定資産の減損や繰延税金資産の回収可能性などの会計処理を行う際は、吸収合併が行われないと仮定して会計処理を行う。 なお、【第18回】及び【第19回】と異なり、連結財務諸表上の適正な帳簿価額を算定する必要はない。これは、親会社と子会社の合併のように「垂直的な合併」の場合は、合併前と合併後でグループとして実態は何ら変わらないため、合併前の連結財務諸表(親会社と吸収合併消滅子会社のみで作成した連結財務諸表)と合併後の親会社の個別財務諸表は実態的には同一になるようにするために、連結財務諸表上の適正な帳簿価額を用いる。 一方、子会社同士の合併のように「水平的な合併」の場合は、子会社同士だけで、連結財務諸表を作成するわけではないので、合併前の連結財務諸表(親会社と吸収合併消滅子会社のみで作成した連結財務諸表)と合併後の親会社の個別財務諸表を実態的には同一になるように会計処理する必要はない。そのため、個別財務諸表上の適正な帳簿価額を用いればよい。 (次ページ【STEP2】へ進む) (前ページ【STEP1】へ戻る) 吸収合併存続子会社は、【STEP1】で算定した吸収合併消滅子会社の資産及び負債を引き継ぐ。 また、吸収合併消滅子会社の払込資本(資本金及び資本準備金)はその他資本剰余金として引き継ぐ。利益剰余金は、そのまま引き継ぐ(適用指針203-2、185(1)②、会社計算規則36②)。 (次ページ【STEP3】へ進む) (前ページ【STEP2】へ戻る) 親会社においては、吸収合併消滅子会社株式の帳簿価額を吸収合併存続子会社株式の帳簿価額に加算する(適用指針203-2(1)なお書)。 《設例》 【前提条件】 【会計処理】 1 A社の会計処理 (※1) 子会社B社の帳簿価額 (※2) 子会社B社の資本金 2 P社の会計処理 (※1) B社株式の帳簿価額をA社株式の帳簿価額に加算する。 結果、合併後のA社株式の帳簿価額は8,000である。 (次ページ【STEP4】へ進む) (前ページ【STEP3】へ戻る) 企業結合年度において、共通支配下の取引等に係る重要な取引がある場合には、以下の(1)及び(2)を注記する。なお、個々の共通支配下の取引等については重要性が乏しいが、企業結合年度における複数の共通支配下の取引等全体では重要性がある場合には、当該企業結合全体で注記する(基準52)。 なお、計算書類では、上記のような注記は必ずしも求められていない。 *   *   * 以上、4つのステップをまとめたフロー・チャートを再掲する。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 (了)

#No. 133(掲載号)
#西田 友洋
2015/08/27

〔会計不正調査報告書を読む〕【第35回】北越紀州製紙株式会社「調査委員会調査報告書(平成27年5月28日付)」

  〔会計不正調査報告書を読む〕 【第35回】 北越紀州製紙株式会社 「調査委員会調査報告書(平成27年5月28日付)」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   【調査委員会の概要】   【北越紀州製紙株式会社の概要】 北越紀州製紙株式会社(以下「北越紀州製紙」と略称する)は、1907(明治40)年4月設立。製紙業界5位の売上高を有する。連結売上高228,400百万円、連結経常利益11,462百万円(数字はいずれも平成27年3月期)。従業員数4,394名。本店所在地、新潟県長岡市。東京証券取引所1部上場。 今回不正が発覚した北越トレイディング株式会社(北越トレイディング株式会社「会社概要」)(以下「HTC」と略称する)は昭和37年10月設立。旧社名は北越不動産株式会社。資本金100百万円で、本店所在地は新潟県長岡市。北越紀州製紙の100%子会社で、不動産売買・仲介、長岡文化自動車学校の運営、自動車の販売・整備、石油燃料の販売などを行っている。   【調査報告書のポイント】 1  調査に至った経緯――不正行為者休暇中の電話 平成27年5月1日、総務部長X(以下「X」という)の休暇中、A銀行からHTCに対し、当座貸越契約の更新依頼の電話があり、電話を受けた課長はこれを不審に思い、HTC社長に報告した。また、当該課長は、郵便物の中にHTCとは取引のないB銀行発信のものを見つけ、開封したところ、HTCの返済予定表が入っていた。 5月6日、出社したXに直接確認したところ、XはHTCの資金を着服したことを告白した。内部調査の結果、過年度決算に訂正事項を生じる可能性が高いことが判明し、平成27年3月期決算短信(連結)の公表を延期するとともに、社内調査委員会(以下「当委員会」という)を設置して詳細な調査を行うことを決定したものである。   2 調査報告書により判明した事実 (1) 本件不正行為の概要 本件不正行為は、平成11年3月に北越紀州製紙からHTCに出向していたXが、競馬、パチンコなどのギャンブル、飲食、あるいは複数の愛人との遊興費の資金を得るため、平成12年4月以降、平成27年5月初めに資金の着服が発覚するまでの間、自らに経理および財務業務の実質的な権限が集中していることを奇貨として、HTC名義で締結されていた銀行との当座貸越契約を利用して、15年間にわたり不正に小切手を振り出し、自ら現金に換金して着服していたものであり、不正借入の合計は、2,750百万円であった。 Xが東京勤務であった当初9年間は、着服金の穴を埋めるため、架空の商品在庫や前払費用を計上して、その事実を隠蔽した。また、一部借入金を簿外とする(オフバランス)ことで着服金の隠蔽を行っていた。 平成21年6月にHTCが本社を東京から新潟県長岡市に移転したことに伴い、Xも長岡に転勤となるが、その後も東京への出張のたびに同様の不正を行い、平成22年3月期には、不正によって生じた借入金は完全にオフバランス(すべて返済されたという会計上の不正な操作)となり、架空の資産を計上するなどの不正な経理処理を行う必要がなくなった。 (2) 本件不正行為が長く発覚しなかった理由 長期にわたり不正が発覚しなかったのは、その間、HTCの財務および経理業務が一貫してXに集中していたため、内部牽制が有効に機能しなかったこと、および銀行残高証明書の偽造、商品受払表等の補助簿の改竄、不正な仕訳伝票の入力、偽造決算書の 銀行提出などにより税務調査や親会社の内部監査および会計監査人の往査、さらには銀行の審査を巧みにくぐり抜けてきたことによる。 例えば、取引銀行に対して、Xは、平成17年3月期から自ら作成した虚偽の決算書を提出し、運転資金が必要であること、業績が拡大していること等の虚偽の報告をすることで、取引銀行からの信用を維持し、また、取引銀行がX以外の社員や取締役に接触を試みなかったことから、不正な借入を継続することに成功していた。 また、着服金を隠蔽するための帳簿操作としては、当初、架空の前払費用、商品の計上に依っていたが、平成21年頃から北越紀州製紙の商流変更に伴い、HTCにおける商品取扱量が減少することとなり、借入金を簿外とする方法により、隠蔽を図り、最終的には当座預金勘定そのものを簿外(オフバランス)として、会計帳簿残高との調整が不要であるように画策していた。 (3) 内部統制上の問題点 調査委員会は、HTCの内部統制上の問題として、「統制環境」「統制活動」および「情報と伝達」について言及している。 まず、統制環境について、以下のように問題点を分析した。 次いで、統制活動の問題点は、子会社ならではのものであった。 最後に、情報と伝達における問題点としては、次のような指摘がなされている。 (4) 過年度決算への影響 北越紀州製紙は、連結財務諸表への影響額として、純資産が268百万円の減額となるとし、会計処理の訂正については、次のように説明している(5月28日付リリース)。   3 調査報告書の特徴 (1) 非常に短い調査期間 不正行為の実行者である総務部長Xの全面的な自供、不正行為が銀行取引によって行われたため証拠の入手が容易であったことなどが推測できるが、2週間あまりの調査期間というのは、他の事例と比較して非常に短く、後述する「類似取引調査」については、十分な調査が行われたかどうか、懸念が残るところではある。 (2) 着服金の使途が十分に判明していないこと 調査結果から「不正のトライアングル(「不正のトライアングル」については、拙稿「企業不正と税務調査」【第2回】を参照されたい)」を考えてみたい。 「機会」については、上記2(3)の「内部統制上の問題点」でも明らかなように、Xは自己の裁量で小切手を振り出し、換金することが可能であっただけでなく、それを隠蔽すること、隠蔽工作を気づかせないようにすることも可能であったことがうかがえる。 「正当化」としては、親会社から出向を命じられ、しかも出向先が本業である「紙」とは全くかけ離れた傍流であったこと(北越紀州製紙のセグメントでいえば、「その他」の中の「その他」に区分される)などから、待遇面でも不満を持っていたことが推測され、これが「正当化」理由となっていたと考えられる。 ところが、肝心の「動機」がよくわからないのである。 動機=着服金の使途、という観点で報告書を読んでみると、「着服金は、主にギャンブル、株取引、遊興費等に費消(5月28日付リリース)」、「競馬、パチンコなどのギャンブル、飲食、あるいは複数の愛人との遊興費の資金を得るため(報告書5ページ)」、「大半を競馬等のギャンブルに費消し、その他株取引、飲食や複数の愛人との遊興費のほか、自己の業務上のミスの隠蔽のため費消した(報告書23ページ)」など、着服金使途を特定することはできなかったようであり、Xが個人用PCの提出には応じながら、スマートフォンの提出を拒んだことなどを考慮に入れると、すべて費消したかどうか――不正蓄財の有無については疑問が残るところである。 (3) 類似取引調査 調査委員会が北越紀州製紙および連結子会社54事業所に対して行った調査内容は次のとおりである。 調査票により行われた①の結果を分析し、リスク有りと判断した事業所について、⑤および⑥の調査を行い、その結果、「類似する不正取引は確認されなかった」としている。 しかし、調査対象の範囲(54事業所)が適切なものであったかどうか、たとえば、抜き打ち監査のような手法をとる必要はなかったのかなど、類似不正調査における「網羅性」については、やや疑問が残る結果となっている。   4 再発防止策 調査委員会は、再発防止策の提言に先立って、本件不正が長く発覚しなかった理由を以下のように総括している。 こうした認識のもと、再発防止策の柱としたのが、内部統制監査室を拡充した「グループ統制管理室」の設置である。グループ統制管理室について、調査委員会はその目的を以下のように説明している。 調査報告書公表時に、北越紀州製紙がリリースした「再発防止に向けた取り組み」は、調査委員会の提言に沿ったものであり、「内部統制のフレームワークにおける脆弱性」をいかに低減するかに的を絞ったものとなっている。 グループ統制管理室の設置をはじめとする再発防止策に目新しさはないが、これは、「グループとしての内部統制システムに問題はないが、一部子会社に脆弱性が発見されたのでこれを是正する仕組みを作ること」が再発防止策であるという認識を、調査委員会が有していることの表れであろう。 (了)

#No. 133(掲載号)
#米澤 勝
2015/08/27

金融商品会計を学ぶ 【第9回】「有価証券の評価基準及び時価(総論)」

金融商品会計を学ぶ 【第9回】 「有価証券の評価基準及び時価(総論)」   公認会計士 阿部 光成   今回は、「金融商品に関する会計基準」(企業会計基準第10号。以下「金融商品会計基準」という)及び「金融商品会計に関する実務指針」(会計制度委員会報告第14号。以下「金融商品実務指針」という)に規定する有価証券の評価基準及び時価についての総論を解説する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅰ 有価証券の評価基準 金融商品会計基準は、有価証券の範囲を規定し、保有目的別の評価基準を規定している。 有価証券の範囲は次のとおりである(金融商品会計基準注1-2、金融商品実務指針8項、58項、「金融商品会計に関するQ&A」Q1)。 【有価証券の範囲】 金融商品会計基準における有価証券の評価基準は次のとおりである(金融商品会計基準15項~18項、金融商品実務指針65項~76項)。 【有価証券の評価基準】 時価を把握することが極めて困難と認められる有価証券の貸借対照表価額は、それぞれ次の方法による(金融商品会計基準19項)。   Ⅱ 時価 金融商品会計基準では、有価証券は原則として期末日の時価により評価される(金融商品会計基準15項、18項。ただし、金融商品会計基準注1-2に注意。金融商品実務指針60項~63項)。 【有価証券の時価】 (了)

#No. 133(掲載号)
#阿部 光成
2015/08/27

中小企業事業主のための年金構築のポイント 【第11回】「標準報酬と老齢厚生年金の額」

中小企業事業主のための 年金構築のポイント 【第11回】 「標準報酬と老齢厚生年金の額」   特定社会保険労務士 古川 裕子   1 標準報酬月額と標準賞与額 【第7回】・【第8回】・【第9回】で示したとおり、老齢厚生年金の額(報酬比例部分)の額は平均標準報酬額(平成15年3月までの期間は平均標準報酬月額)と厚生年金保険の加入期間によって決まる。 なお、「平均標準報酬額」とは、平成15年4月以後の被保険者期間の各月の標準報酬月額と標準賞与額の総額を被保険者期間の月数で除した額である(平成15年3月までの期間は、標準賞与額は含まない)。 【第9回】の《おさらいQ&A》で示した事例のように、過去の報酬が友人よりかなり高額であったにもかかわらず、友人と自分の年金額が変わらないことに疑問を持たれることがあるが、それは平均標準報酬額の基となる標準報酬月額と標準賞与額の限度額が一因となっている。 (1) 標準報酬月額の上限と下限 「標準報酬月額」とは、保険料や保険給付(現金給付)の算定基礎になるものであり、実際の報酬とは異なり、便宜的に決定されたものである。 本稿公開日現在、下限の第1級98,000円から上限の30級620,000円まで定められている。 (2) 標準賞与額 「標準賞与額」とは、その月に支払った賞与額から1,000円未満の端数を切り捨てたものであり、150万円が上限となっている。 〈事例1〉 AさんよりBさんのほうが総報酬額は多いが、標準報酬月額は上限の62万円で、賞与も上限額が150万円のため、2人の将来の年金額の基礎になる標準報酬月額等は同額となる。 したがって、上限額を超える場合には、報酬及び賞与を多く支給したとしても年金額は変わらない。   2 標準報酬月額と在職老齢年金 在職中に支給される年金(在職老齢年金)は、その人の年金額と総報酬月額相当額(その月の標準報酬月額+標準賞与額の12分の1)によって決まる。 総報酬月額相当額が高いと、在職老齢年金は、全額または一部が停止される。 (1) 標準報酬月額の決定及び改定 標準報酬月額は、資格を取得したときに決定(資格取得時決定)されるが、その後1年に1回見直しをする。これを「定時決定」という。定時決定は、4月、5月、6月の3ヶ月の報酬の平均額で決定され、原則としてその年の9月から翌年の8月までの1年間使用する。 その間に大幅に報酬が変動したときは改定を行う。これを「随時改定」という。随時改定は、報酬が変動した月から3ヶ月間の報酬の平均をとり、現在の標準報酬月額と2等級以上変動があった場合に改定される。改定月は報酬が変動した月から4ヶ月後である。 報酬が減額したことにより随時改定となる場合、実際の報酬が減額しているにもかかわらず、3ヶ月間は従前の高い標準報酬月額のままとなる。したがって、在職老齢年金については、3ヶ月間は従前の在職老齢年金で、4ヶ月目から本来の報酬に見合った標準報酬月額により年金が調整される。 〈事例2〉 報酬が4月から20万円になったとしても、標準報酬月額の改定は、4ヶ月後の7月から行われる。したがって、7月から在職老齢年金の額が増加する。 在職老齢年金の額は、下記早見表を参照。 [60歳台前半の在職老齢年金早見表(一部)] (2) 再雇用などにおける改定 退職後継続して再雇用された場合は、給料が下がることが多々見受けられる。給料が変動した場合は、随時改定により標準報酬月額が改定されるが、改定後の標準報酬月額は、前述のように給料が下がった月の4ヶ月目から適用される。 退職後の再雇用は、原則として社会保険の被保険者資格は継続するので、特に手続は生じないが、60歳以後の再雇用の場合は、一旦退職したとみなして、資格喪失届と資格取得届を同時に提出することもできる(同日得喪という)。この場合、標準報酬月額は資格取得時決定になり、給料が下がった月から標準報酬月額が変わることになる。 その効果としては、再雇用された月から再雇用後の給与に応じた標準報酬月額に改定されるので、4ヶ月を待たずに標準報酬月額が改定され、それに基づき社会保険料も計算されることになる。また、在職老齢年金の受給者は、標準報酬月額に応じて年金の受給額が変わるため、再雇用された月から標準報酬月額が改定されることは大きなメリットになる。ただし、再雇用された月の翌月から在職老齢年金の額は改定される。 〈事例3〉 報酬が20万円になった4月から標準報酬月額も20万円になる。したがって、5月から在職老齢年金の額が増加する。   《おさらいQ&A》 (了)

#No. 133(掲載号)
#古川 裕子
2015/08/27
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