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《速報解説》 会計士協会より公表の「平成26年度品質管理委員会年次報告書」、4つの重点的実施項目のレビュー結果を公表

《速報解説》 会計士協会より公表の「平成26年度品質管理委員会年次報告書」、 4つの重点的実施項目のレビュー結果を公表   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成27年6月24日(ホームページ掲載日)、日本公認会計士協会は、「平成26年度 品質管理委員会年次報告書」を公表した。 報告書は、監査法人又は公認会計士が行う監査の品質管理の状況をレビューする制度(品質管理レビュー制度)に基づくものであり、基本的な対象は、監査法人又は公認会計士である。 しかしながら、報告書に記載されている内容については、一般の事業会社における会計処理等にも関連するものがあるので、実務において参考になるものを紹介する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 会計上の見積りに関する事項 会計上の見積りの監査に関して、次のような事項が述べられている(報告書1(4)④)。   Ⅲ IFIAR の調査結果 監査監督機関国際フォーラム(以下「IFIAR」という)は、世界各国・地域の監査監督機関から構成された組織である。 IFIARは、加盟している監督機関が監査業務及び監査事務所の品質管理のシステムの検査で指摘した事項を、2012年以降、毎年調査しており、2014年の調査結果を2015年3月3日付けで公表している。 IFIARによる「上場企業の監査業務における品質管理の項目別の指摘数」では、次のものがあげられている(報告書2(3))。 公正価値測定は、指摘数が最も多かった項目であり、公正価値を測定するに当たり経営者が使用した情報の正確性や経営者の仮定の合理性を監査人が十分に検討していないと述べられている。 (了)

#No. 129(掲載号)
#阿部 光成
2015/07/24

《速報解説》 「『日本再興戦略』改訂2015」ではIFRS任意適用企業の更なる拡大促進、会社法の解釈指針の公表を明記

《速報解説》 「『日本再興戦略』改訂2015」では IFRS任意適用企業の更なる拡大促進、 会社法の解釈指針の公表を明記   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成27年6月30日、「『日本再興戦略』改訂2015-未来への投資・生産性革命-」(以下「改訂2015」という)が閣議決定された。 改訂2015では、設備や技術、人材等に対する「未来投資による生産性革命の実現」と、活力ある日本経済を取り戻す「ローカル・アベノミクスの推進」の2つを車の両輪として推し進めることが述べられている。 本稿は、改訂2015で示された会計及び開示に関連する事項について紹介するものである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ IFRS任意適用企業の更なる拡大促進 IFRSの任意適用については、すでに始まっているところであるが、改訂2015では、IFRS任意適用企業の更なる拡大促進として、次のことが述べられている(第二、一、5-2(3)ⅰ)④)。   Ⅲ コーポレートガバナンスの強化 企業収益力・稼ぐ力の確立・向上のために、次のような具体的施策が述べられている(第二、一、1(3)i)①)。 1 コーポレートガバナンス・コードとスチュワードシップ・コード 2 会社法の解釈指針 コーポレートガバナンスの実践を後押しする環境整備を行うことが重要であるとして、以下の点に関する会社法の解釈指針(具体的な事例集を含む)を作成し、公表する。 3 経営者の報酬 経営陣に中長期の企業価値創造を引き出すためのインセンティブを付与することができるよう金銭でなく株式による報酬、業績に連動した報酬等の柔軟な活用を可能とするための仕組みの整備等を図る。   Ⅳ 持続的成長に向けた企業と投資家の対話促進 資本市場の機能の十全な発揮や投資家・株主の保護など幅広い観点から、企業の情報開示、株主総会プロセス等を取り巻く諸制度や実務を横断的に見直し、全体として実効的で効率的な仕組みを構築する(第二、一、1(3)i)③)。 (了)

#No. 129(掲載号)
#阿部 光成
2015/07/24

プロフェッションジャーナル No.129が公開されました!~今週のお薦め記事~

2015年7月23日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.129が 公開されました。 プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布中!   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2015/07/23

山本守之の法人税“一刀両断” 【第13回】「美術品等の新しい判定基準」

山本守之の 法人税 “一刀両断” 【第13回】 「美術品等の新しい判定基準」   税理士 山本 守之   1 旧通達の改正の理由 美術品等(絵画、彫刻等、工芸品等をいいます)が減価償却資産になるか否かの判定基準について、平成26年12月19日通達で考え方が変わりました。また、平成27年5月11日に公表されたFAQによって国税庁が質問に答えているので、今回はこれを解説することにします。 旧法人税基本通達7-1-1では、「美術品等」については次のように定義していました。 ただし、この通達は昭和55年に定められたもので、内容がかなり古くなっているだけではなく、旧通達の考え方が実態とかなり乖離しているため改正することにしたものです。   2 美術年鑑基準の廃止 美術年鑑は美術書の出版社が編集するもので、日本の美術年鑑は、油絵、日本画、水彩画、墨絵、彫刻等の制作者のうち、二科展等の美術展覧会に所属する芸術家、東京芸術学校出身者、過去の有名芸術家等の作品を紹介するとともに、それらの制作物の相場価格を掲載しているものです。 旧通達では、美術関係の年鑑等の登載者はプロとして適用するものと判断できるので、これらの作者による作品は、美術品と考えられるという外形基準を示したのです。 ただ、プロというのは美術品の制作だけで生活の糧を得ているというものではありません。かつて国税庁の勤務している人でも美術年鑑に登載されている人がいました。 その人は「君の職業は」と聞かれると「画家です」と答えていました。筆者が「国家公務員じゃないのか」と聞くと、「作品が売れるようにと考えると作品がいやしくなるので、生活の糧は公務員の月給だが、職業はあくまで画家だ」と胸を張っていました。 国税庁の職員は「本人が『プロだ』と言うのだから、プロと認めることにした」と解説してくれました。 旧通達の次の取扱いは、このような笑い話を伴うものでした。 実は、年鑑記載の価額は、作者の生涯における最高傑作の価額ですから、美術年鑑の価額で相続税の申告をしてしまうとかなり損失を蒙ってしまいます。 最近では日本の若手芸術家の中には、日本の芸術界での評価を確立することを目指すのではなく、世界の美術商が買い付けにくる世界の主要都市の美術展に出品して、世界で高い評価を得ることを目指す者が増えています。 そこで、日本美術界では評価されず、美術年鑑にも記載されていない若手が、世界の美術商が買い付けにくるオランダ、ニューヨーク、香港の美術展に出店して、世界で高い評価を得ることを目指す者が増えています。そして、日本美術界では評価されず美術年鑑にも記載されていないこのような若手が、海外で高い評価を受けて、その作品も相当の価額で取引されることが生じており、美術年鑑に記載されることのみが必ずしもプロの芸術家であることを意味しなくなっています。 また、美術年鑑は、日本の美術展の会員作家を記載の対象としていますが、その中にはアマチュアの作家も数多く混じっています。 このようなことから、美術年鑑に記載されている者のみをプロの芸術家とする税務外形判断基準は必ずしも現実に合うものではなくなってきています。 そこで、美術年鑑に記載されている者のみをプロの芸術家とする通達は必ずしも現実に合うものではなくなってきていました。 今次の改正では、美術年鑑に登載されているものを美術品とする基準が廃止されました。   3 20万円基準から100万円基準へ 旧通達では、「時の経過によりその価値の減少しないもの」に該当するかどうか判断することが困難な場合には、取得価額が1点20万円(絵画にあっては、号2万円)未満であるものについては、減価償却資産として取り扱うことができるものとするとされていました。 この20万円基準は法人税法上の少額減価償却資産制度(法人税法施行令133条改正前の通達発遣時の昭和55年当時は20万円基準だったのです)に準拠して定められたもので、実際には、新鋭作家のデビュー作品が60万円~80万円で取引されているといった実態を考えると、プロの芸術家作品として認定する際の基準として20万円は低いものとなっていました。 そこで、今回の改正で取得価額基準は100万円以上に、号基準は廃止することにしたのです。   4 時の経過により価値が増加するものを除く 新通達で取得価額基準が20万円以上から100万円以上に変えられましたが、そこで、取得価額が1点100万円以上である美術品は原則として非減価償却資産ですが、「時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの」は、その取得価額が100万円以上であっても減価償却資産と取り扱うこととされています。 ここでは、「時の経過によりその価値が減少することが明らかな」美術品等とは、具体的にはどのようなものが該当するかが問題になります。 この点について国税庁では平成27年5月11日に「美術品等についての減価償却資産の判定に関するFAQ」を発表し、次のようなものとしています。   5 国税庁のパブリック・コメント 国税庁はパブリック・コメントで、取得価額が100万円以上の美術品等で不特定多数の者の利用する場所に展示等をしているものであっても、例えば、ガラスケースに収納されている等、退色や傷が付かないように展示されているものについては、他の用途に転用すると仮定した場合にその設置状況や使用価値から見て美術品等としての市場価値が見込まれないとは言えないことから、「時の経過によりその価値の減少することが明らかなもの」には該当しないものである、という見解を示しています。 ただ、土産物である博多人形等ではその人形を保護するためにガラスケースに収納されているものがあり、これを判断基準とすることが適正か否かには疑問を持っています(私見)。 【図表】 美術品等についての減価償却資産の判定 (注) 「時の経過により価値が減少することが明らか」の例示 ① 会館のロビーや葬祭場のホールのように不特定多数の者が利用する場所の装飾用や展示用(有料で公開するものを除く)として事業者が取得するもののうち、移設することが困難で当該用途にのみ使用することが明らかなものであり、かつ、他の用途に転用すると仮定した場合にその設置状況や使用状況から見て美術品等としての市場価値が見込まれないもの。 ② ただし、上記①であっても、例えば、ガラスケースに収納されている等、退色や傷がつかないように展示されているものについては、他の用途に転用すると仮定した場合に、その設置状況や使用状況から見て美術品等としての市場価値が見込まれないものとはいえないことから、「時の経過により価値が減少することが明らかなもの」に該当しない。 美術品等の耐用年数(「器具及び備品」の「室内装飾品」)は次のようになります。 〈参考〉・・・金額基準 〔新通達〕 (了)

#No. 129(掲載号)
#山本 守之
2015/07/23

消費税の軽減税率を検証する 【第4回】「逆進性対策と低所得者対策」

消費税の軽減税率を検証する 【第4回】 「逆進性対策と低所得者対策」   税理士 金井 恵美子   Ⅰ 消費税の逆進性緩和 これまで、多くの研究者が、様々なデータを用いて、消費税の逆進性を緩和する方法を検討してきたが、筆者は、軽減税率が消費税の逆進性緩和に最も効果的であるとする結論を導く論考を、寡聞にして知らない。 逆進性については、所得税の累進性を踏まえた税制全体、社会保障制度が機能する財政全体の中で議論されるべきであり(第1回参照)、消費税という1つの税目の中で解決しなければならない必然性はない。   Ⅱ 低所得者対策としての効果 ただし、消費税は、低所得者から最低限の生活水準を維持するために必要な所得を奪う。軽減税率の導入は、累進性の確保という税体系構築の観点ではなく、消費税の負担増により最低生活の維持を脅かされる所得層に対する手当てという点から、その効果を問うべきである。 (1) 適時の救済 低所得者の負担の緩和を直接給付の措置によって行うとすれば、正確な所得を把握して事後的に手当てすることになるが、軽減税率による場合は、支出の時点で財布から出ていく金額が少なくて済み、低所得者の家計に最もタイムリーな救済措置となる。「適時の救済」という観点から、軽減税率に勝るものを見つけるのは困難であろう。 (2) 高所得者に手厚い補助金 家計支出全体に占める食料品費支出の割合は低所得者ほど高くなり、食料品への軽減税率の適用は、低所得者対策として有効であるように考えられる。 しかし、消費の量は、低所得者よりも高所得者の方が多く、負担軽減の絶対額は高所得者の方が大きくなる。 「年間収入五分位・十分位階級別家計収支(総世帯)-2014年-」によれば、第1・五分位階級の家計(年間収入244万円以下)において、食料に支出される額は、年間で423,120円であり、食料品全体について標準税率に対し5%の軽減税率を設定した場合に軽減される税負担は、21,156円となる。他方、第5・五分位階級の家計(年間収入737万円超)における税負担軽減額は、51,373円である。 2%軽減した場合の負担軽減額は、第1・五分位階級において8,462円、第5・五分位階級において20,549円となる(図表1)。 【図表1 食料品に軽減税率を適用した場合の負担軽減額(総世帯)】 (「総務省家計調査報告(家計収支編)総務省統計局」を基に作成。) 上記のように、食料品に対する軽減税率の導入は、低所得者世帯に比べて倍額を超える恩恵を高所得者に与える。軽減税率によって負担額が減るということは、その金額の補助金を受け取ることに等しいのであり、低所得者よりも高所得者の方が多くの補助金を受け取る事実は見逃せるものではない。 消費税率8%への引上げに伴って実施された簡素な給付措置のための予算は、3,300億円であった。これに代えて飲食料品全般に5%の軽減税率を適用した場合に減少する税収はおよそ2兆円である(※1)。この差額が「救済されるべき人以外への補助金」ということになる。 (※1) 「検討資料」は、食料品に軽減税率を適用した場合の減収額を1%当たり6,600億円としている。その3%相当額は、およそ2兆円になる。 このように、軽減税率は低所得者対策として効果が低く効率が悪い。この「効率の悪さ」は、軽減税率導入の推進力を加速させる。税制抜本改革法7条1号ハに従って実施された簡素な給付措置は、住民税の非課税世帯を対象としているが、この所得層は全世帯の10%程度であるから、それ以外の90%の世帯はなんらの恩恵にあずかることがない。 世論に問えば、低所得者対策としての効率が悪くすべての世帯の負担が軽減される軽減税率が、10対1の大差で支持されることになる。 (3) 痛税感の緩和 軽減税率の大きなメリットは、「消費者が税負担を軽減されていることを実感しやすい」ことである。 軽減税率は、消費課税の枠内で、消費税の逆進性を考慮し、低所得者に配慮した施策が講じられていることを目に見える形で示すものである。軽減税率が存在することで、消費税に対する抵抗感がやわらげられ、標準税率の引上げが政策しやすくなる。軽減税率がもたらす明確な長所といえるだろう。 現に、軽減税率に対する消費者の支持は高い。2012年4月30日に報道された産経新聞社とFNNの合同世論調査では、税率の引上げについて、「反対」が48.6%と「賛成」の44.7%を上回り、82.0%が食料品や生活必需品についての軽減税率の創設を求めた。 また、日本新聞協会が2013年1月に公表した調査では、生活必需品を対象とする軽減税率について、62.3%が「導入すべきだ」、21.7%が「どちらかというと導入した方がいい」と回答している。 2014年8月に時事通信が行った世論調査でも、消費税率10%への引上げに「反対」が52.6%、「どちらかというと反対」が22.2%、「賛成」は7.5%、「どちらかというと賛成」は15.1%で、軽減税率については、80.9%が10%への引上げ時に導入すべきだと答えた。 これらの結果がもつ政治的なインパクトは大きい。消費税率の引上げは軽減税率の導入とセットでなければなし得ないとの政策的判断を迫るものであろう。増税の決断という政治的ダメージは相当に大きいが、軽減税率は消費者の不満を吸収する緩衝材となる。 ただし、現在検討されているのは、軽減税率8%である。 これでは痛税感の緩和という効果は小さく、かえって、名ばかりの手当てという不信感が醸成される恐れがある。 (4) 価格との関係 上述の検討は、軽減税率の適用が商品の販売価額に確実に反映され、消費者の支出額が減少することを前提としている。しかし、そもそも、その前提には疑問がある。 消費税は、適正な転嫁(価格への上乗せ)を行うことによって消費者が税額を負担することを予定している(税制改革法11)が、税負担の転嫁は、市場における価格決定の仕組みに左右される。したがって、軽減税率の適用が商品価額に連動するとは限らない。 たとえば、ドイツではテイクアウトとイートインでは税率が異なるが、マクドナルドは、両者を同じ価格に設定している(※2)。客が、標準税率の商品、軽減税率の商品の、どちらを選択しようとも、支払う金額は変わらない。また、ノルウェーでは、原則として「すべての食料品」に標準税率よりも10%軽減する税率が適用されるが、軽減税率を導入した2001年の食料品価格は8%程度しか低下していない(※3)。 (※2) 森信茂樹「軽減税率、給付付き税額控除とインボイス」租税研究767号20頁(2014年)。 (※3) 税制調査会海外調査報告(平成16年9月)。 イギリスの大手小売業者や会計事務所によれば、標準税率の引上げに際して0%の税率が適用されている商品が全くその影響を受けなかったかというと、価格戦略上、価格を引き上げたものもあるという(※4)。 (※4) 五十嵐文彦「イギリス税制視察の報告~付加価値税制の現状と改革への挑戦〜」ファイナンス19頁(2012年)。 我々日本人の経験でいえば、平成26年4月の価格改定である。税率は5%から8%に引き上げられたが、すべての商品の販売価額が3%相当額改定されたわけではない。 企業は、コストや商品の成長時期、市場の動向、競合状況などを要素に、利幅と販売数量による企業全体としての利益を確保することができる価格設定を行う。売れ筋商品の価格は高く、育成期の商品の価格は低く設定するなどの工夫も行われる。 たとえば、軽減税率の適用によって需要が増加した商品の本体価格を100円から105円に改定し、標準税率が適用される商品の本体価格を100円から95円に改定するといったことも行われよう。食料品の税率を低く設定しても、その分だけ食料品が安くなるかどうかはわからない。企業が取り扱う他の品目の値下げにつながる可能性もあるのである。 世論調査において8割を超える人が軽減税率の導入に賛成するのは、軽減税率が適用される品目を購入することで、消費増税による「損害」をある程度回避することができると考えているからであろう。 しかし、たとえ消費者が、できる限り軽減税率が適用される品目を選択して購入するといった行動をとったとしても、それで軽減税率の恩恵に与ることができるわけではない。 軽減税率の対象品目に選ばれた商品は、その表示によって安く提供されているように見えているだけかもしれないからである。 (了)

#No. 129(掲載号)
#金井 恵美子
2015/07/23

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例28(相続税)】 「経済産業大臣の認定手続を失念したため、「非上場株式等についての相続税の納税猶予の特例」の適用を受けることができなくなってしまった事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例28(相続税)】   税理士 齋藤 和助   《基礎知識》 ◆非上場株式等についての相続税の納税猶予の特例(措法70の7の2) 経営承継相続人等(後継者)が、相続等により、経済産業大臣の認定を受ける非上場会社の株式等を被相続人(先代経営者)から取得し、その会社を経営していく場合には、その後継者が納付すべき相続税のうち、その株式等(一定の部分に限る)に係る課税価格の80%に対応する相続税の納税が猶予され、後継者の死亡等により、納税が猶予されている相続税の納付が免除される。 〈相続税の納税猶予制度の流れ〉 ◆納税猶予期限の確定と猶予税額の納付 猶予期間内に以下の事由に該当した場合には、納税猶予は打ち切られ、猶予税額の全額と利子税を納付しなければならない。       (了)

#No. 129(掲載号)
#齋藤 和助
2015/07/23

組織再編・資本等取引に関する最近の裁判例・裁決例について 【第31回】「非公開裁決事例②」

組織再編・資本等取引に関する最近の裁判例・裁決例について 【第31回】 「非公開裁決事例②」   公認会計士 佐藤 信祐   今回、紹介する事件は、株主間契約により、請求人以外の株主については、譲渡価額を取得価額と同一の価額とすることが定められているいわゆる社債型の種類株式に類似した普通株式が存在する場合において、支配株主のみを引受人とする有利発行を行った事件である。 非公開裁決事例であることから、やや事実関係が黒塗りされているものがあるが、この点についてはご容赦されたい。   16 平成25年7月22日裁決(TAINSコード:F0-2-542) (1) 事件の概要 本件は、審査請求人(以下「請求人」という)が、関連会社の発行した新株を額面価額で引き受け、払込金額を当該新株の取得価額として計上していたところ、請求人以外の株主が新株の引受けをしなかったことを理由として、当該新株の取得価額は、その取得のために通常要する価額であり、当該取得価額と請求人の払込金額との差額は受贈益として益金の額に算入すべきであるとして法人税の更正処分等がなされたことに対し、請求人が、当該新株は、法人税法施行令119条1項4号括弧書に規定する「他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合における当該株式」に該当し、同号の適用を受けないとして、原処分の一部の取消しを求めた事件である。 なお、本事件は、請求人と他の株主との間で株主間契約が定められているという点が特徴であり、請求人が買戻しを申し出た場合や他の株主が売却を申し出た場合には、売却価額を額面金額とする旨が定められている。その他の詳細な事実関係は黒塗りにされているため、本稿ではすべてを明らかにすることはできないものの、単なる外資企業に対する規制を逃れるために株主になったことなどが明記されているだけでなく、いわゆる名義株に該当しないようにしながらも、株主総会における白紙委任状の存在や、配当金相当額の業務委託料名目での払い戻しにより、名義株と変わらないような実態を作り出そうとした経緯が窺える。 (2) 原処分庁の主張 会社組織法が定める種類株式の発行手続を経ずに発行された株式は、会社及び株主に対し種類株式としての効力を認め難く、株主は、請求人のいう株主間における個別の契約(以下、個別の契約をまとめて「株主間契約等」という)の存在にかかわらず、有効に会社に対し株主権を行使し得るものであることなどから、本件増資は、基本通達2-3-8で定める「株主等である法人が有する株式の内容及び数に応じて株式が平等に与えられる」場合には該当しない。 株主間契約等により契約当事者たる株主の権利行使を制限することは、契約当事者間での相対的な効力を有するものにとどまり、契約の当事者が株主でなくなった場合には、当該契約の効力も失われると解されるから、株主に対する拘束力は限定的である。 請求人以外の株主が、株式取得時にあらかじめ株式の持分割合の希釈化につき同意していたならばともかく、本件では新株の発行に際して引受権が放棄されたのであるから、希釈化による経済的利益の移転が認められる。 (3) 請求人の主張 有利発行に係る税法上の判断は、私法上の法形式に拠って行うものではなく、「税制上の株主平等」となっているかという税法独自の判断として行うものであるところ、法人税法においては、「種類株式」の種類や、これを設ける手段、手続を限定していない。 株主間契約等の内容に照らすと、請求人ら以外の株主の有していた株式は、株主間契約等により、譲渡価額を取得価額と同額とすると取り決められており、株主がキャピタルゲインを得ないことが制度上確保されたのと同様の状態になるなど、実質的な「債権」又は「債券」の性質を有するものであることから、請求人以外の株主は、請求人に対する増資による「普通株式」の割当てによって損害を受けることはない。 請求人ら以外の株主の保有株式の権利内容の変更を株主間契約等で行ったのは、■■■では、種類株式に関する法制が十分に整備されておらず、株式の権利内容等を変更した株式は、■■■■■■■■に抵触する可能性があることから、「普通株式」を発行した上で、株主間契約によって権利内容等を変更せざるを得なかったことなどによる。 (4) 国税不服審判所の判断 本件新株は、請求人が有する株式の内容及び数に応じて平等に与えられたものであるとはいえず、請求人以外の株主は、これにより■■■における自己の株式の持分割合が希釈化されるものといえるから、「他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合」における株式には該当しない。請求人以外の株主が、自ら新株を引き受けない選択をし、本件増資に同意していたとしても、かかる結論を左右しない。 上記(2)のロのとおり、■■■の設立準拠法である■■■■■■においては、普通株式と優先株式といった異なる株式が法定され、さらに、これら異なる株式を発行するには一定の手続を採ることが必要であるところ、■■■株式は、全てが普通株式であるものと認められる。 関係者の間の法律関係が、同契約に拘束されてきたとしても、かかる契約の拘束力は飽くまでも事実上のものにすぎず、そのことをもってして、請求人のいう「種類株式」が、本件新株を含む請求人が保有する普通株式と異なるものであるとはいえないし、本件の他の証拠によっても、当該普通株式と異なる内容の株式とみることはできない。 (5) 評釈 法人税基本通達2-3-8では、「株主等である法人が有する株式の内容及び数に応じて株式又は新株予約権が平等に与えられ、かつ、その株主等とその内容の異なる株式を有する株主等との間においても経済的な衡平が維持される場合」については、前述の「他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合における当該株式」に該当するものとしているが、「他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合に該当するか否かについては、例えば、新株予約権無償割当てにつき会社法第322条《ある種類の種類株主に損害を及ぼすおそれがある場合の種類株主総会》の種類株主総会の決議があったか否かのみをもって判定するのではなく、その発行法人の各種類の株式の内容、当該新株予約権無償割当ての状況などを総合的に勘案して判定する必要がある。」としている。 すなわち、定額の配当請求権及び残余財産分配請求権しか存在しておらず、買取価格が固定されている取得条項や取得請求が付されているような社債類似の種類株式については、どのような価格で有利発行が行われたとしても、損害が生じるはずがなく、引受人以外の株主がそのような種類株式しか保有していなかった場合には、どのような価格で第三者割当増資を行ったとしても有利発行には該当しないことになる。 また、実務上は、株主間契約によって「種類株式」に類似した権利内容にすることは可能であるが、平成18年度の会社法施行後は、株式間契約を定めたとしても、同様の内容を種類株式制度として定めることが一般的であるように思われる。 このように、株主間契約によって「種類株式」に類似した権利内容にすることは可能であるものの、国税不服審判所は、そのような理由だけでは、法人税法施行令119条1項4号括弧書に規定する「他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合における当該株式」に該当するとは認められないと判断した。 これに対し、原処分庁の主張を見てみると、額面金額の約2倍の買取りがなされた事実があったことや、残余財産分配請求権に対しては制限がなされていなかったことなどが指摘されており、種類株式に類似するものであったとする請求人の主張そのものに無理があったと言わざるを得ない。その意味では、本事件の射程を狭く捉えるべきであり、今後、異なる判断がなされる裁決例、判例が出てくる可能性は否めない。しかしながら、実務上は、株主間契約による拘束を「飽くまでも事実上のもの」とした国税不服審判所の判断を尊重したうえで、慎重な対応を行う必要があると考えられる。 また、本事件において特徴的なものとして、外国の子会社が有利発行を行ったという事実が認められる。どの国であるかは不明であるものの、実務においては、当該子会社の所在地国の税法や租税条約等を検討しながら、有利発行における取扱いを検討していく必要がある。 クロスボーダーの実務において悩ましいものは、我が国における会社法と全く異なる会社法の制度を導入していることがほとんどであり、形式的に当てはめることが困難であるという実態である。とりわけ、英米法の法体系を採用する国々では、基本的な考え方が大きく異なり、日本の常識で事実関係を理解しようとしたとしても、実際は全く異なるものであるということが少なくない。 実務上、クロスボーダーの実務においては、フィーリングで行ってしまいがちではあるが、本来であれば、純粋な国内取引よりも慎重な対応が必要になると考えられる。  (了)

#No. 129(掲載号)
#佐藤 信祐
2015/07/23

連結納税適用法人のための平成27年度税制改正 【第6回】「研究開発税制の見直し」

連結納税適用法人のための 平成27年度税制改正 【第6回】 「研究開発税制の見直し」   公認会計士・税理士 税理士法人トラスト パートナー 足立 好幸   [7] 連結納税適用法人に係る研究開発税制の見直し 1 改正の内容 (1) 改正の概要 連結納税では、試験研究費の税額控除について、グループ各社ごとに限度額、控除額、繰越額を計算する単体納税と異なり、連結グループ全体で限度額、控除額、繰越額を計算し、連結法人における発生額に基づいて、連結法人各社に配分することとなる(措法68の9、措令39の39)。 連結納税制度についても、試験研究費に係る税額控除制度(研究開発税制)について、平成27年4月1日以後に開始する連結事業年度から次の①~⑤の見直しが行われた(措法68の9、措令39の39)。 ① 控除限度となる法人税額基準額を、当期の連結法人税額の30%(原則20%)に引き上げる措置を適用期限の到来をもって廃止するとともに、新たに以下の措置により控除限度となる法人税額基準額の上限の総枠を当期の連結法人税額の30%とする(措法68の9①②③、旧措法68の9の2)。 ② 試験研究費の総額に係る税額控除制度及び中小企業者の試験研究費に係る税額控除制度の控除限度となる法人税額基準額を当期の連結法人税額の25%とする(措法68の9①②)。 (注) これらの制度の対象となる試験研究費の額には、特別試験研究費に係る税額控除制度の対象とした特別試験研究費の額を含まない。逆に言うと、特別試験研究費の額は、これらの制度の対象となる試験研究費(一般試験研究費)の額に含めるか、特別試験研究費に係る税額控除制度の対象となる特別試験研究費の額に含めるか、控除限度となる法人税額基準額の余裕額を考慮しながら選択することが可能となる。 ③ 特別試験研究費に係る税額控除制度について、次の見直しを行う。 ⅰ 連結税額控除割合(改正前12%)を次のとおり引き上げる。 ・特別試験研究機関等(国の試験研究機関、大学等)との共同研究及びこれらに対する委託研究:30% ・上記以外のもの:20% ⅱ 控除限度となる法人税額基準額を試験研究費の総額に係る税額控除制度及び中小企業者の試験研究費の税額控除制度とは別枠で当期の連結法人税額の5%とする。 ⅲ 特別試験研究費の範囲について、次の見直しを行う。 ・特別試験研究機関等のうち試験研究独立行政法人の範囲から国立研究開発法人以外の法人を除外する。 ・特定中小企業者に対する委託研究の対象となる委託先の範囲に公益法人等、地方公共団体の機関、地方独立行政法人等を加える。 ・特定中小企業者に対して支払う知的財産権の使用料を加える。 ⅳ 試験研究費の総額に係る税額控除制度に代わって、中小企業者の試験研究費に係る税額控除制度を選択した場合であっても、それに加えて、この特別試験研究費に係る税額控除制度を適用することが可能となった。 ④ 連結繰越税額控除限度超過額及び繰越中小連結法人税額控除限度超過額に係る税額控除制度を廃止する。 (注) 平成27年3月31日以前に開始した事業年度又は連結事業年度において生じた繰越税額控除限度超過額及び繰越中小企業者等税額控除限度超過額、連結繰越税額控除限度超過額及び繰越中小連結法人税額控除限度超過額は切り捨てられることとなる。 ⑤ 上記の改正に伴い、試験研究費に係る税額控除額の個別帰属額の計算方法が変更されている。特に、特別試験研究費の額について、一般試験研究費に含めて税額控除を適用する額と特別試験研究費として税額控除を適用する額を考慮して計算されることとなった。 これらをまとめると下図のようになる。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 〔出典〕「資料(法人税改革)」(財務省資料)を一部加工   (2) 改正後の試験研究費の税額控除制度の取扱い 連結納税においても単体納税と同様に、下記4つの試験研究費の税額控除制度がある。 平成27年度税制改正後のそれぞれの取扱いの概要は、次のとおりとなる。 なお、②は、連結親法人が中小企業者に該当する場合に、①の税額控除を適用する代わりに適用することが可能となる。なお、中小企業者とは、資本金1億円以下で、大規模法人(資本金1億円超の法人)の子会社又は複数の大規模法人に2/3以上の株式を所有されている会社でない法人をいう。 したがって、連結親法人が中小企業者に該当しない場合は、①③④の試験研究費の税額控除制度が併用して適用されることとなる。連結親法人が中小企業者に該当する場合は②③④の試験研究費の税額控除制度が併用して適用されることとなる。 ① 試験研究費の総額に係る税額控除制度 試験研究費の総額に係る税額控除の取扱いは次のとおりとなる(措法68の9①)。 【1】 対象法人 連結法人のすべて 【2】 税額控除限度額 連結税額控除割合は10%となる。ただし、連結試験研究費割合<10%の場合、連結試験研究費割合×0.2+8%とする。なお、連結試験研究費割合とは、連結グループの試験研究費の額の合計額/連結グループの平均売上金額の合計額となる(措法68の9⑥三)。 連結グループの平均売上金額の合計額とは、各連結法人の当連結事業年度及び過去3連結事業年度の平均売上金額の合計額をいう(措法68の9⑥九、措令39の39⑮⑯)。 なお、試験研究費とは、製品の製造又は技術の改良、考案若しくは発明に係る試験研究のために要する費用をいうが(措法68の9⑥一。以下、[7]に同じ)、ここでいう試験研究費の額とは、当連結事業年度の連結所得の金額の計算上損金の額に算入される試験研究費の額(その試験研究費に充てるため他の者(他の連結法人を含む)から支払を受ける金額がある場合には、当該金額を控除した金額)をいう(以下、[7]に同じ)。 【3】 控除限度となる法人税額基準額 連結法人税額は留保金課税、所得税額控除、外国税額控除、租税特別措置法上の税額控除を適用する前の連結法人税額をいう(措法68の9①・⑥二。以下、[7]に同じ)。 特別試験研究費の税額控除制度、増加型又は高水準型の試験研究費に係る税額控除制度と合わせると連結法人税額の40%が限度となる。 【4】 繰越控除制度 【2】税額控除限度額が【3】控除限度となる法人税額基準額を超える場合であっても、その超過額は翌連結事業年度に繰り越されない。 【5】 試験研究費に係る税額控除の個別帰属額の計算方法 上記で計算された連結税額控除額は、次のように各連結法人に配分計算される(措法68の9⑩、措令39の39[23項]一)。 [試験研究費の総額に係る税額控除額の個別帰属額の計算方法] [ⅰの額の計算方法] なお、特別試験研究費の範囲は、下記③を参照すること。 また、(※)の特別試験研究費の額は、分子と異なり、①試験研究費の総額に係る税額控除制度又は②中小企業者の試験研究費に係る税額控除制度の適用対象としたものを含む。 ② 中小企業者の試験研究費に係る税額控除制度 中小企業者の試験研究費に係る税額控除は、中小企業者について、①試験研究費の総額に係る税額控除制度を適用する代わりに適用することが可能となる。中小企業者の試験研究費の総額に係る税額控除の取扱いは次のとおりである(措法68の9②)。 【1】 適用可能法人 連結親法人が中小連結親法人に該当する場合の連結法人のすべて。つまり、連結親法人が中小企業者に該当するか否かにより判定する。 中小連結親法人とは、次に掲げる連結親法人をいう(措法68の9⑥四、措令39の39④。以下、[7]で同じ)。 【2】 税額控除限度額 【3】 控除限度となる法人税額基準額 【4】 繰越控除制度 【2】税額控除限度額が【3】控除限度となる法人税額基準額を超える場合であっても、その超過額は翌連結事業年度に繰り越されない。 【5】 試験研究費に係る税額控除の個別帰属額の計算方法 上記で計算された連結税額控除額は次のように各連結法人に配分計算される(措法68の9⑩、措令39の39[23項]二)。 [中小企業者の試験研究費に係る税額控除額の個別帰属額の計算方法] [ⅰの額の計算方法] なお、特別試験研究費の範囲は、下記③を参照すること。 また、(※)の特別試験研究費の額は、分子と異なり、①試験研究費の総額に係る税額控除制度又は②中小企業者の試験研究費に係る税額控除制度の適用対象としたものを含む。 ③ 特別試験研究費に係る税額控除制度 特別試験研究費とは、試験研究費のうち、次に掲げる試験研究に係るものをいう(措法68の9⑥六、措令39の39⑤)。 特別試験研究費に係る税額控除制度の取扱いは、次のとおりとなる(措法68の9③)。 【1】 対象法人 連結法人のすべて 【2】 税額控除限度額 連結税額控除割合は次のとおりである(措法68の9③、措令39の39①)。 なお、ここでいう特別試験研究費の額とは、連結法人に当連結事業年度の連結所得の金額の計算上損金の額に算入される特別試験研究費の額のうち、当連結事業年度において①試験研究費の総額に係る税額控除制度又は②中小企業者の試験研究費に係る税額控除制度の適用を受けた特別試験研究費の額を除いたものをいう(措法68の9③)。 つまり、特別試験研究費の額は、それぞれについて、①試験研究費の総額に係る税額控除制度又は②中小企業者の試験研究費に係る税額控除制度の対象とするか、③特別試験研究費に係る税額控除制度の対象とするか、控除限度となる法人税額基準額の余裕額を考慮しながら選択することが可能となる。 【3】 控除限度となる法人税額基準額 【4】 繰越控除制度 【2】税額控除限度額が【3】控除限度となる法人税額基準額を超える場合であっても、その超過額は翌連結事業年度に繰り越されない。 【5】 試験研究費に係る税額控除の個別帰属額の計算方法 上記で計算された連結税額控除額は、【2】の一号又は二号のそれぞれの連結税額控除額について次のように各連結法人に配分計算される(措法68の9⑩、措令39の39[23項]三)。 (一) 特別試験研究費に係る税額控除額(一号)の個別帰属額の計算方法 [特別試験研究費に係る税額控除額(一号)の個別帰属額の計算方法] なお、(※)の特別試験研究費の額は、①試験研究費の総額に係る税額控除制度又は②中小企業者の試験研究費に係る税額控除制度の適用対象としたものを含む。 (二) 特別試験研究費に係る税額控除額(二号)の個別帰属額の計算方法 [特別試験研究費に係る税額控除額(二号)の個別帰属額の計算方法] なお、(※)の特別試験研究費の額は、①試験研究費の総額に係る税額控除制度又は②中小企業者の試験研究費に係る税額控除制度の適用対象としたものを含む。 ④ 増加型又は高水準型の試験研究費に係る税額控除制度 増加型又は高水準型の試験研究費に係る税額控除制度の取扱いは改正されておらず、従来どおり次の取扱いとなる(措法68の9④)。 【1】 対象法人 連結法人のすべて 【2】 適用期間 連結親法人事業年度が平成20年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始する連結事業年度 【3】 控除限度となる法人税額基準額 【4】 税額控除限度額 次の(ⅰ)又は(ⅱ)いずれかの金額について、連結法人税額×10%を限度として、連結法人税から控除することが可能となる。 (ⅰ) 「増加試験研究費の額>比較試験研究費の合計額×5%」、かつ、「各連結法人の試験研究費の額の合計額>基準試験研究費の額」の場合 [計算式] 連結税額控除割合は30%となる。ただし、増加試験研究費割合<30%の場合、連結税額控除割合はその増加試験研究費割合とする。なお、増加試験研究費割合とは、増加試験研究費の額の比較試験研究費の合計額に対する割合をいう(措法68の9④)。 [定義] ① 増加試験研究費の額 各連結法人の当連結事業年度の試験研究費の額の合計額から各連結法人の比較試験研究費の合計額を控除した残額をいう(措法68の9④)。 ② 比較試験研究費の額 各連結法人の過去3連結事業年度の試験研究費の平均額をいう(措法68の9⑥七、措令39の39⑦)。 ③ 比較試験研究費の合計額 各連結法人の比較試験研究費の額を合計した金額をいう(措法68の9④)。 ④ 基準試験研究費の額 過去2連結事業年度のうち、各連結法人の試験研究費の額の合計額が多い方の金額をいう(措法68の9⑥八、措令39の39⑧)。 (ⅱ) 「各連結法人の試験研究費の額の合計額>各連結法人の平均売上金額の合計額×10%」の場合 [計算式] 連結試験研究費割合とは、各連結法人の試験研究費の額の合計額/各連結法人の平均売上金額の合計額となる(措法68の9④・⑥三)。 また、平均売上金額は当連結事業年度及び過去3連結事業年度の平均額をいう(措法68の9⑤九、措令39の39⑮⑯)。 【5】 試験研究費に係る税額控除の個別帰属額の計算方法 上記で計算された連結税額控除額は次のように各連結法人に配分計算される(措法68の9⑩、措令39の39[23項]四・五) [ⅰ 増加型を適用した場合] [ⅱ 高水準型を適用した場合] (3) 地方法人税における試験研究費の税額控除額の取扱い 法人税における試験研究費の税額控除額は、地方法人税の課税標準となる基準法人税額の計算において連結法人税額から控除される(地方法6三)。 また、各連結法人の試験研究費の税額控除額の個別帰属額に4.4%を乗じた金額が地方法人税個別帰属額の計算において減算される(措法68の9⑩、地方法15①)。 (4) 住民税における試験研究費の税額控除額の取扱い 中小連結親法人又はその各連結子法人の各連結事業年度の個別帰属法人税額(道府県民税及び市町村民税の課税標準)の計算において、法人税における次の制度に係る税額控除額の個別帰属額がある場合は、試験研究費に係る税額控除額の個別帰属額は個別帰属法人税額から控除される(連結法人税個別帰属額に加算しない。地法附則8③(改正地域再生法の施行日(平成27年8月10日:追記)以後は8②)、地法23①四の三、292①四の三)。 したがって、連結親法人が中小企業者に該当する場合は、連結子法人は単独で中小企業者に該当するかどうかに関係なく住民税の課税標準から控除される。 一方、中小連結親法人に該当しない連結親法人又はその各連結子法人については個別帰属法人税額から控除されない(連結法人税個別帰属額に加算する)。 なお、この場合、連結親法人が中小連結親法人に該当するかどうかについては、当連結事業年度終了時の現況によって判定するものとする(「地方税法の施行に関する取扱いについて(道府県税関係)の一部改正について」総税都第22号50の6(1)、「地方税法の施行に関する取扱いについて(市町村税関係)の一部改正について」総税市第22号45の6(1))。   2 適用時期 連結親法人事業年度が平成27年4月1日以後に開始する連結事業年度について適用される(平成27年所法等改正法附則84①②③⑥)。 (了)

#No. 129(掲載号)
#足立 好幸
2015/07/23

こんなときどうする?復興特別所得税の実務Q&A 【第31回】「非居住者へ支払うデザイン料から源泉徴収する所得税及び復興特別所得税の処理」

こんなときどうする? 復興特別所得税の実務Q&A 【第31回】 「非居住者へ支払うデザイン料から源泉徴収する 所得税及び復興特別所得税の処理」   税理士・社会保険労務士 上前 剛   当社は、東京に建設予定の建物のデザインをイギリス人の建築家A氏に依頼しました。A氏は日本に在住したことは無く、ロンドンに在住しており、所得税法上の非居住者です。また、日本に事務所などの恒久的施設を有していません。 先日デザイン案が完成したので、A氏に対し、平成27年7月31日にデザイン料3,000万円を支払う予定です。 非居住者へ支払うデザイン料から源泉徴収する所得税及び復興特別所得税の処理についてご教示ください。   デザイン料は、工業所有権その他の技術に関する権利、特別の技術による生産方式若しくはこれらに準ずるものの使用料に含まれる(所法161⑦、所基通161-22)。したがって、デザイン料から20.42%の税率で所得税及び復興特別所得税を源泉徴収しなければならない。 ただし、日英租税条約において使用料は免税とされているので、「租税条約に関する届出書」を税務署へ提出した場合には、デザイン料からの源泉徴収は不要である。 以下、「租税条約に関する届出書」を提出しない場合と提出した場合に分けて解説する。   1 「租税条約に関する届出書」を提出しない場合 当社は、源泉徴収した所得税及び復興特別所得税6,126,000円を8月10日までに納付しなければならない。   2 「租税条約に関する届出書」を提出した場合 A氏は、デザイン料の支払日の前日(平成27年7月30日)までに「租税条約に関する届出書」を当社経由で当社の所轄税務署長へ提出しなければならない。 「租税条約に関する届出書」は、納税管理人及び当社がA氏の代理人となることにより作成し、提出することもできる。当社がA氏の代理人となる場合、一定の委任状を添付しなければならない。 (了)

#No. 129(掲載号)
#上前 剛
2015/07/23

税務判例を読むための税法の学び方【65】 〔第8章〕判決を読む(その1)

税務判例を読むための税法の学び方【65】 〔第8章〕判決を読む (その1)   立正大学法学部准教授 税理士 長島 弘   1 判決の構成 この章より、実際の判決について解説していく。 ただし判決を見る前に、まずは判決の構成について記しておく。 ここで、刑事裁判と民事裁判(行政訴訟を含む)は形式が異なるが、本連載の主題である税務訴訟が行政訴訟として民事に含まれることから、まずは民事裁判における判決の基本的形式について述べていく。 なお、刑事裁判も本年3月10日にあった競馬の払戻金における脱税事件(最高裁判決)のように、税法と密接なものも多いため取り上げる必要があるが、異なる点が多いため、回を改めて紹介する。 まず判決の冒頭に、「事件番号」や「被告」「原告」といった当事者等が記され、その後に判決の結論である「主文」が記載される。 その主文の後に「事実及び理由」が記載される。そしてこの「事実及び理由」の中に、当事者の主張や判決の内容が記される。 なお、民事訴訟法第253条第1項には、判決書に①主文、②事実、③理由、④口頭弁論の終結の日、当事者及び法定代理人、⑥裁判所を記載すべき旨定められている。ただし記載の形式については特に法定されていない。 これらをまとめて示せば、以下の通りとなる(ただし以下の構成になっていない場合もある)。 (※1) 記載がない場合や別紙として示される場合もある。 (※2) 当事者の主張は、別紙として示される場合がある。また当事者の主張が「当事者の求めた裁判」として記される場合もある。 なお、上記の記載方法は、司法研修所の編集による『民事判決起案の手引き』(法曹会発行)に示されているが、この手引きも直近のもので10訂版(平成18年9月刊行)まで出されているため、この内容の相違により、判決も時代により多少異なる場合がある。 判決は通常の文章と異なり、段落ごとに「番号(段落番号)」が付けられているが、その番号等の記載方法(段階が異なる場合、どの種類のものをどういう順番で使っていくか)については、内閣官房長官より発遣された「公用文作成の要領(昭和27年4月4日発遣)」に定められている。 なおこれは、下記文化庁のサイトから入手が可能である。 判決は現在横書きで記されるが、参考までに縦書きの段落番号のルールを上記に示した。というのも、法令作成や改廃において示される文書は縦書きが基本であるため、このような縦書きの基本ルールについても知っておく必要があるためである。 もっとも、かつては縦書きが公用文の基本であったが、上記「公用文作成の要領」においても「一定の猶予期間を定めて、なるべく広い範囲にわたって左横書きとする」とされており、いずれ横書きになるものと思われる。 なお「公用文作成の要領」においては、横書きと縦書きの場合の文中における仮名の振り方や数字の記載方法について異なる点があるため、その点の注意事項も記されている。 すなわち、横書きの場合は縦書きの場合と異なり、仮名は、カタカナによることができ、数字は漢数字ではなく(特別の場合を除き)アラビア数字を使用することとされている(ただし「一般に」、「一部分」、「一間(ひとま)」「三月(みつき)」)のような場合には漢字を用いることとされている)。 また、「100億、30万円」のような場合には、「億・万」を漢字で書くが、「千・百」は、例えば「5千」「3百」としないで、「5,000」「300」と書くことや、大きな数は「5,000」「62,250円」のように三桁ごとにカンマ(,)で区切ることとされている。 (続く)

#No. 129(掲載号)
#長島 弘
2015/07/23
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