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《速報解説》 固定資産税は遊休農地への課税強化、農地中間管理事業のための賃借権等設定に係る2分の1軽減措置~平成28年度税制改正大綱~

 《速報解説》 固定資産税は遊休農地への課税強化、 農地中間管理事業のための賃借権等設定に係る2分の1軽減措置 ~平成28年度税制改正大綱~   税理士 島田 晃一   以下では平成28年度税制改正大綱(与党大綱)で示された農地に係る固定資産税の課税強化及び軽減措置について解説する。 1 農地の固定資産税評価額の計算 農地の固定資産税評価額は「農地評価」と「宅地並み評価」に区分される。 このうち農地評価となる農地は、都市計画区域外にある農地、都市計画区域内にある農地で市街化調整区域・非線引区域にある農地、及び、三大都市圏の特定市の市街化区域農地で生産緑地指定がされたものである。 農地評価は将来にわたる農地利用が前提になるため、その農地の収益力を考慮して算定される。結果として、全国平均の評価額が1㎡あたり70円ほどで宅地の約500分の1と非常に低い金額になっている。 具体的には、各市町村内において田又は畑の別に状況類似地区を区分し、その地区内の農地から標準田又は畑が選定される。状況類似地区内の農地の価額は当該地区の標準田又は畑の価額に比準して計算される。 標準田又は畑の価額は、正常売買価格といい当該地区内の農地の売買実例を参考に定められた金額に0.55の割合を乗じて評定される。これは農地ごとの収益力の差を考慮し、評価に安全性を持たせるためである。   2 平成28年度における改正事項 (1) 遊休農地に対する課税の強化 平成28年度における改正では、耕作がされていない遊休農地のうち農業委員会による農地中間管理機構の農地中間管理権(農地を担い手に貸し付けることを目的とする賃借権又は使用貸借による権利をいう)の取得に関する協議の勧告を受けたものについて、正常売買価格に乗じていた0.55の割合を乗じないこととすることとされた。 これにより、対象遊休農地の固定資産税評価額及び税額は改正前の約1.8倍になる。 この改正は平成29年度から実施される。 各市町村に設置されている農業委員会は、毎年1回農地の現況を調査し、その農地が1年以上耕作が放棄されており今後再び耕作される見込みがないと認められるような場合は、農地所有者に対し自ら再び耕作をするか、農地中間管理機構に貸し付けるか、又は、農地中間管理機構以外の者に貸し付けるかといった意思を確認する利用意向調査を行う。 仮に意向調査から6ヶ月以内に回答がなかった場合、意向調査では自ら耕作すると回答しても実際には6ヶ月を経ても耕作を開始する様子がないような場合には、農業委員会から農地所有者に農地中間管理機構が農地中間管理権を取得するよう同機構との協議を行うことが勧告される。 平成29年度以降は、この勧告の段階で固定資産税評価額引上げの対象にされることになる。最終的に勧告に従わないときは、都道府県知事の裁定により、同機構が農地中間管理権を取得できるよう措置される。 なお、農地中間管理機構とは各都道府県に設置されている組織で、農業の継続が困難であるなどの理由等で農地を貸したい者から農地を借り受け農地としての管理を行い、一方で、農地を借りたい新たな担い手に対して農地を貸し付けることを主な業務としている(必要であれば基盤整備等の条件整備も行う)。 (2) 農地中間管理事業のための賃借権等の設定 10a(1,000㎡)以上の農地を所有する者が、所有するすべて農地に農地中間管理事業のための賃借等を設定し、かつ、賃借権等の設定期間が10年以上である農地の固定資産税・都市計画税については、次表のように評価額が軽減される。 この軽減措置は大綱では「2年間に限り講ずる」とされているが、平成28年度から2年間の間に賃借権等の設定を行った場合なのか、遊休農地に対する課税強化と同様に平成29年度からなのかは現段階では明らかにされていない。今後の情報を待ちたいところである。 (了)

#No. 149(掲載号)
#島田 晃一
2015/12/18

《速報解説》 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入特例、対象法人を縮小し適用期限2年延長~平成28年度税制改正大綱~

 《速報解説》 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入特例、 対象法人を縮小し適用期限2年延長 ~平成28年度税制改正大綱~   税理士 伊村 政代   12月16日に公表された平成28年度税制改正大綱(与党大綱)において、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入特例について適用期限の2年延長が決まった。ただし、次の通り対象法人の見直しが行われているため留意されたい。 Ⅰ 概要 この制度は、青色申告法人である中小企業者等が30万円未満である減価償却資産を取得した場合に、その取得価額相当額をその事業年度の損金の額に算入することができる制度である。 通常の減価償却であれば、取得価額相当額を耐用年数に応じた率で按分した金額を当期の減価償却費として損金算入するが、この制度では、取得事業年度での即時償却が認められる。 この制度の適用を受けるためには、事業供用日の属する事業年度において取得価額相当額を全額損金経理し、明細書を確定申告書に添付することが必要である。   Ⅱ 改正の沿革 平成15年の税制改正において創設された制度であり、創設以来、適用期限が延長されてきたものである。現在、平成15年4月1日から平成28年3月31日までの間に対象資産を取得等し、事業の用に供した場合に適用することができることとなっている。 12月16日に公表された「平成28年度税制改正大網」(与党大綱)によれば、対象法人から従業員数1,000人超の法人を除外した上、この適用期限が平成30年3月31日まで2年延長される。 つまり、改正前においては法人税の規定により定義される中小企業者のうち、青色申告法人であるすべての中小企業者及び農業協同組合等について適用があったが、改正後はそのうち資本等を有する中小企業者であっても、常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人は適用ができなくなる。   Ⅲ 適用にあたっての留意点 1 適用対象となる法人 (※1) 「中小企業者」とは、次の法人をいう。 ・資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人のうち大規模法人との間に一定の支配関係のないもの。 ・資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人 ・なお、増資や減資により資本金の額が事業年度中に増減した場合には、事業供用日の現況により判定する。 〈適用対象法人のポイント〉 2 適用対象となる資産(今回改正による変更なし) (※2) 取得価額は税務上の金額であるので、購入対価に引取運賃や取付け費用などの付随費用を加算した金額である。 (※3) 30万円未満であるかどうかの判定は通常取引される単位とする。したがって、1台、1組、1そろい等で判定することとなる。ただし、適用を受けようとする資産が複数であり、これらの取得価額の合計額が年300万円を超えるときは、その合計額のうち年300万円に達するまでの取得価額の合計額とする。なお、事業年度が1年未満であるときは、300万円をその月数で按分した金額を限度とする。 (※4) 有形、無形減価償却資産のほか、所有権移転外リース取引により取得をした資産、中古の資産も適用資産に該当する。 【参考図】 (中小企業庁ホームページより) 3 適用除外となる資産(今回改正による変更なし) 取得価額が10万円未満であるものは、法人税法上の少額の減価償却資産に該当し、その規定が優先的に適用される。また、一括償却の適用を受けるものについても、この制度の適用はない。 なお、租税特別措置法上の特別償却、税額控除、圧縮記帳との重複適用はできない。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#No. 149(掲載号)
#伊村 政代
2015/12/18

《速報解説》 中小企業者等以外の欠損金の繰戻し還付不適用措置、適用期限を2年延長~平成28年度税制改正大綱~

 《速報解説》 中小企業者等以外の欠損金の繰戻し還付不適用措置、 適用期限を2年延長 ~平成28年度税制改正大綱~   税理士 伊村 政代   12月16日に公表された平成28年度税制改正大綱(与党大綱)において、中小企業者等のみ認められている現行の「欠損金の繰戻し還付制度」が2年延長されることとなった。 Ⅰ 制度の確認 この制度は、青色申告書である確定申告書を提出する事業年度に欠損金額が生じた場合(欠損事業年度)において、その欠損金額をその事業年度開始の日前1年以内に開始した事業年度(還付所得事業年度)に繰り戻して法人税額の還付を請求することができる制度である。 ただし、次の欠損金額については、その適用が停止されている。   Ⅱ 平成28年度改正事項 上記Ⅰにおける②の不適用措置の適用期限は、平成28年3月31日までの間に終了する各事業年度において生じた欠損金額となっているが、「平成28年度税制改正大綱」(与党大綱)により、その期限が平成30年3月31日まで2年間延長されることとなった。 つまり、今回の改正によって、中小企業者等以外の法人にあっては、欠損金の繰戻しによる還付制度が適用できる事業年度が2年間先送りとなったのである。   Ⅲ 適用にあたっての留意点 1 適用対象となる法人 欠損金の繰戻しによる還付制度が適用できる法人は、次の各期間に終了する各事業年度によって異なる。 2 還付金額の計算 3 適用の要件 この制度の適用を受けるには、次の要件をすべて満たさなければならない。 (了)

#No. 149(掲載号)
#伊村 政代
2015/12/18

《速報解説》 地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)が創設、法人が支出した寄附金額の6割軽減~平成28年度税制改正大綱~

 《速報解説》 地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)が創設、 法人が支出した寄附金額の6割軽減 ~平成28年度税制改正大綱~     辻・本郷税理士法人 税理士 安積 健   本稿では、平成28年度税制改正で創設予定の地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の制度概要について、12月16日に公表された平成28年度税制改正大綱(与党大綱)の内容を元にまとめることとする。 (1) 創設の目的 地方公共団体が行う、地方創生のための効果的な事業を進めていく際に、事業の趣旨に賛同する企業が寄附を行うことにより、官民挙げて事業を推進することができるよう「地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)」が創設される。 対象事業を国が認定する枠組みの整備を前提として、事業に対する企業の寄附について、現行の損金算入措置に加えて、法人事業税・法人住民税及び法人税の税額控除が導入され、寄附金額の約6割の負担が軽減される。   (2) 適用要件 青色申告法人が、改正地域再生法の施行日から平成32年3月31日までの間に、地域再生法の認定地域再生計画に記載された地方創生推進寄附活用事業に関連する寄附金を支出した場合に、下記(3)に掲げる税額控除が適用できる。   (3) 税額控除の内容 ① 「法人事業税額」からの税額控除 〇平成29年3月31日までに開始する事業年度 控除税額=支出した寄附金の額の合計額×10% (当期の法人事業税額の20%が限度) 〇平成29年4月1日以後に開始する事業年度 控除税額=支出した寄附金の額の合計額×10% (当期の法人事業税額の15%が限度) ② 「法人住民税額」からの税額控除 〇平成29年3月31日までに開始する事業年度 (ア) 道府県民税 控除税額=支出した寄附金の額の合計額×5% (当期の法人道府県民税法人税割額の20%が限度) (イ) 市町村民税 控除税額=支出した寄附金の額の合計額×15% (当期の法人市町村民税法人税割額の20%が限度) 〇平成29年4月1日以後に開始する事業年度 (ア) 道府県民税 控除税額=支出した寄附金の額の合計額×2.9% (当期の法人道府県民税法人税割額の20%が限度) (イ) 市町村民税 控除税額=支出した寄附金の額の合計額×17.1% (当期の法人市町村民税法人税割額の20%が限度) ③ 「法人税額」からの税額控除 次の(ア)(イ)のうち、いずれか少ない金額(当期の法人税額の5%が限度)。 (※3) 2以上の都道府県又は2以上の市町村において事務所等を有する法人については、法人事業税からの控除税額は課税標準額を基準として按分し、法人住民税からの控除税額は従業者数を基準として按分する。   (4) 適用効果 【参考図】 地方創生応援税制(「企業版ふるさと納税」)の創設(案) (※) 財務省ホームページより (了)

#No. 149(掲載号)
#安積 健
2015/12/18

《速報解説》 法人税率、平成28年4月1日以後開始事業年度から23.4%へ引下げ~平成28年度税制改正大綱~

 《速報解説》 法人税率、平成28年4月1日以後開始事業年度から23.4%へ引下げ ~平成28年度税制改正大綱~     税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   1 はじめに 当初は12月10日にも公表される予定と報じられていた、与党による平成28年度税制改正大綱(以下「大綱」と略称する)であったが、消費税の軽減税率の適用範囲と財源をめぐる与党間の調整が遅れたことから、12月16日になってその内容が公表されるに至った。 本稿では、平成28年度税制改正における2つの焦点である消費税の軽減税率の適用範囲と法人税減税のうち、法人税の税率引下げについて、概要をまとめておきたい。 なお、新聞報道等によれば、大綱は、12月24日に政府が閣議決定したうえで、年明けに招集される通常国会に改正法案を提出することが予定されている。   2 法人税改革の必要性について 大綱冒頭の「第一 平成28年度税制改正の基本的な考え方(以下「基本的な考え方」と略称する。)」では、法人税改革の必要性について、次のように説明されている。 法人実効税率については、従前34.62%であった法人実効税率は、平成27年度税制改正において、平成27年度に32.11%(▲2.51%)に引き下げられ、平成28年度には31.33%(▲3.29%)としたうえで、平成28年度以降の税制改正において、「20%台まで引き下げることを目指して、改革を継続」することが明記されていた。 平成28年度税制改正ではこれを前倒しして、平成28年4月から29.97%まで引き下げることとなった。これは現行税率から▲2.14%の引下げ、平成27年度税制改正と比しても▲1.36%さらに引き下げられる結果となった。   3 法人税率について 法人税においては、現行23.9%の基本税率を、平成28年4月1日以後に開始する法人の事業年度については23.4%、平成30年4月1日以後に開始する事業年度については23.2%まで引き下げることとした。   4 法人税率引下げに伴う財源の確保 平成27年度税制改正における法人実効税率の引下げは減税が先行する形となり、「財源なき減税」と批判されたことから、大綱では財源確保について、「基本的考え方」の中で以下のように説明している。 財源確保のための施策として、前年度同様、「課税ベースの拡大」が挙げられ、具体策としては、以下の3項目が挙げられている。 なお、租税特別措置については、別に記載があり、拡充等されるものが3項目、延長されるものが2項目、廃止・縮減等の対象となったものが19項目、それぞれ挙げられている。 【参考図①】 法人実効税率引下げのイメージ ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (※) 財務省ホームページより   5 地方法人課税の偏在是正 大綱では、経済の好循環に向けた動きが地域間でばらつきがみられる状況を是正するため、地方法人課税の偏在是正措置が講じられている。 その狙いについて「基本的な考え方」では、次のように説明している。 このための措置として、次の4項目を挙げている。 【参考図②】 28改正における地法法人課税の偏在是正(案)のイメージ ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (※) 財務省ホームページより 【参考図③】 これまでの法人税率の推移  ※筆者作成 (了)

#No. 149(掲載号)
#米澤 勝
2015/12/17

《速報解説》消費税軽減税率の導入に伴う対象品目・経理処理方法のポイント解説~平成28年度税制改正大綱~

 《速報解説》 消費税軽減税率の導入に伴う 対象品目・経理処理方法のポイント解説 ~平成28年度税制改正大綱~   税理士 金井 恵美子   Ⅰ はじめに 平成27年12月16日、自民党、公明党は、平成28年度税制改正大綱を決定し、平成29年4月1日に消費税の軽減税率を導入することとした。その対象品目は、(1)酒類及び外食を除く飲食料品、及び(2)定期購読契約による新聞である。 ただし、1兆円にまで膨らんだ財源の検討は先送りされ、めどが付いていない。「平成28年度末までに歳入及び歳出における取組みにより、与党の責任において、確実に安定的な恒久財源を確保することとする。」とされている。   Ⅱ 軽減税率 軽減税率は、標準税率10%に対し、8%(国税6.24%、地方税1.76%)とされた。   Ⅲ 軽減税率の対象品目 軽減税率の対象は、(1)酒類及び外食を除く飲食料品の譲渡、(2)定期購読契約による新聞の譲渡の2つである。 1 酒類及び外食を除く飲食料品 対象となる飲食料品の範囲は、食品表示法に規定する食品であり、酒税法に規定する酒類は除かれ、外食サービスも対象とならない。 (1) 外食サービス 「外食サービス」は、「食品衛生法上の飲食店営業、喫茶店営業その他の食事の提供を行う事業を営む事業者が、一定の飲食設備のある場所等において行う食事の提供」とされている。 具体的には、「店内飲食」や「フードコートでの飲食」、「ケータリング」、「出張料理」が外食となる。 牛丼屋・ハンバーガー店のテイクアウト、そば屋の出前、ピザの宅配、テーブルや椅子等の飲食設備がない屋台の軽食、寿司屋のお土産など、「テイクアウト」、「持ち帰り」、「宅配」は外食にあたらない。 また、コンビニの弁当や惣菜は、そのコンビニにイートイン・コーナーがあっても、持帰りが可能な状態で販売される場合は、軽減税率の適用対象となる。つまり、皿に載せるか、返却不要の容器に入れるかによって税率が変わることになる。パン屋やケーキ屋などの食品小売店においても同様である。 (2) 一体商品 飲食料品と飲食料品以外の資産が組み合わされた一体商品は、原則として飲食料品に該当しない。ただし、少額であって、主たる部分が飲食料品から構成されているものについては、その全体を飲食料品として軽減税率の対象とする。 2 定期購読契約による新聞 「新聞」「書籍」「雑誌」は、一般的な呼称であって、これらを区分する客観的な規程は存在しない。また、出版物については、有害図書を排除しなければならないという課題がある。 そこで、軽減税率の対象は、「定期購読契約が締結された新聞(一定の題号を用い、政治、経済、社会、文化等に関する一般社会的事実を掲載する週2回以上発行される新聞に限る。)の譲渡」とされた。   Ⅳ 軽減税率の適用時期 軽減税率は、平成29年4月1日以後に国内において行われる課税資産の譲渡等及び課税仕入れ、保税地域から引き取られる課税貨物について適用される。   Ⅴ インボイス方式の導入 1 適格請求書等保存方式 適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス方式)は、平成33年4月1日に導入されることとなった。 「適格請求書等保存方式」とは、適格請求書発行事業者(国税庁の登録を受けた課税事業者)が交付する適格請求書及び帳簿の保存を仕入税額控除の要件とするものである。したがって、免税事業者や消費者からの課税仕入れは、仕入税額控除の対象とならない。 2 経過措置~軽減税率導入から4年間は区分記載請求書等保存方式~ 現行の請求書等保存方式から適格請求書等保存方式への移行については、平成29年4月(軽減税率導入時)から平成33年3月までの4年間は、区分記載請求書等保存方式によることとする経過措置が設けられる。 区分記載請求書等保存方式とは、現行の請求書等保存方式を維持した上で、請求書等の記載事項に、①軽減税率の対処品目である旨、②税率ごとに合計した対価の額を加えるものである。 ただし、これら①②は、請求書の交付を受けた事業者が事実に基づき追記することが認められる。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。   Ⅵ 税額計算の特例 1 売上税額の計算の特例 売上げを税率ごとに区分することが困難な事業者のために、売上税額の計算の特例が設けられる。 ただし、売上げ及び仕入れを税率ごとに管理ができるかどうかは事業者自身でなければ判断ができないことから、課税売上高の上限以外に適用要件を設けることは困難であると考えられ、納税額の多寡を睨んだ選択適用が可能になると考えられる。 (1) 適用対象者 ▷課税売上高が5,000万円以下の中小事業者 ⇒平成29年4月1日(軽減税率導入時)から4年間 ▷上記以外の事業者 ⇒平成29年4月1日(軽減税率導入時)から1年間 (2) 計算の特例 次の割合により、軽減税率による売上高と標準税率による売上高とを区分することができる。 ① 卸売業・小売業(簡易課税制度の適用がない場合) ② 卸売業・小売業以外、簡易課税制度を適用する場合 ③ 主として軽減対象課税資産の譲渡等を行う事業者で①②の計算が困難である場合 2 仕入税額の計算の特例 仕入れを税率ごとに区分することが困難な事業者のために、仕入税額の計算の特例が設けられる。 売上税額の計算の特例と同様に、納税額の有利不利による選択が可能となるものと考えられる。 (1) 適用対象者 ▷課税売上高が5,000万円以下の中小事業者 ⇒平成29年4月1日(軽減税率の導入時)から1年間 ▷上記以外の事業者 ⇒平成29年4月1日(軽減税率の導入時)から1年間 (2) 計算の特例 ① 卸売業・小売業(簡易課税制度の適用がなく、上記①の売上税額の計算の特例の適用がない場合)は、次の割合により、軽減税率による仕入高と標準税率による仕入高とを区分することができる。 ② 簡易課税制度の事後選択 基準期間における課税売上高が5,000万円以下である課税事業者が、課税仕入れ等を税率ごとに区分することにつき困難な事情がある場合であって、平成29年4月1日から平成30年3月31日までの日の属する課税期間の末日までに簡易課税制度選択届出書を提出したときは、その提出した日の属する課税期間から簡易課税制度を適用することができる。 また、基準期間における課税売上高が5,000万円超である事業者が、平成29年4月1日から平成30年3月31日の属する課税期間の末日までの間に、課税仕入れ等を税率ごとに区分することにつき困難な事情がある場合であって、その課税期間の末日までに簡易課税に準じた計算を行う旨の届出書を提出したときは、簡易課税に準じた方法により控除対象仕入税額を計算することができる。 3 適格請求書等保存方式の導入後6年間の経過措置 適格請求書等保存方式の導入後6年間は、免税事業者からの課税仕入れについて、次の割合で仕入税額控除が認められる。 免税事業者は、この間に、適格請求書の発行を行わないことが事業にどれほどの影響があるかを勘案して、適格請求書発行事業者となるために課税事業者を選択するかどうかを検討することとなろう。   Ⅶ おわりに 軽減税率導入のための財源は、1兆円を超える。総合合算制度を見送って捻出した4,000億円を充てても、現時点で6,000億円程度足りていない。 しかし、自民党、公明党両幹事長と国会対策委員長は、大綱決定の朝に会談し、両党で合意した軽減税率の関連法案について、1月下旬の提出を目指し、今年度中に成立させる方針を確認している。来年夏の参議院選挙は軽減税率のアメで戦い、ムチとなる増税は選挙後に提示するということだ。 民主党の岡田代表は、3,000億円余の低年金受給者等への給付金とあわせ、「節度なきバラマキ政治」と批判している。国会審議が激しく混乱することが予想されよう。 (了)

#No. 149(掲載号)
#金井 恵美子
2015/12/17

プロフェッションジャーナル No.149が公開されました!~今週のお薦め記事~

2015年12月17日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.149を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2015/12/17

日本の企業税制 【第26回】「平成28年度税制改正大綱を概観する」

日本の企業税制 【第26回】 「平成28年度税制改正大綱を概観する」   一般社団法人日本経済団体連合会 常務理事 阿部 泰久     1 はじめに 12月16日、消費税の軽減税率をめぐる混乱から、当初予定から大幅に遅れて与党「平成28年度税制改正大綱(以下、大綱)」が取りまとめられた。 平成28年度税制改正の目玉は、いうまでもなく消費税の軽減税率導入と法人実効税率引下げである。 そこで、本稿では、この2点を中心に、改正案の概要と大綱に示されたその考え方を整理しておきたい。   2 法人実効税率の引下げ 「成長志向の法人税改革」として、「法人課税をより広く負担を分かち合う構造へと改革し『稼ぐ力』のある企業等の税負担を軽減することにより、企業に対して、収益力拡大に向けた前向きな投資や、継続的・積極的な賃上げが可能な体質への転換を促す。(大綱)」ために、当初の想定を超えた大幅な改正となった。 もともと、平成27年度改正において、法人実効税率を平成28年度では31.33%まで引き下げることを決めた上で、「28年度改正においても、課税ベースの拡大等により財源を確保して、28 年度における税率引下げ幅のさらなる上乗せを図る。さらに、その後の年度の税制改正においても、法人実効税率を20%台まで引き下げることを目指して、改革を継続する。」とされていた。 これを受けて、当初、平成28年度改正では、減価償却制度の見直し(建物附属設備、構築物の定額法化、等)、生産性向上設備投資促進税制の縮減を主な財源として国税の法人税率を23.5%まで引き下げ、法人実効税率30.88%とすることで調整が進められていた。 しかし、11月26日に官邸で開催された「未来投資に向けた官民対話」において、経済界から民間設備投資拡大(2018年度にリーマン・ショック前を上回る80 兆円程度)及び今年を上回る賃金引上げへ向けた環境整備として法人実効税率を来年度に20%台とすることを求めたことに対して、安倍総理から「28 年度の引下げ幅を確実に上乗せし、税率を早期に20%台に引き下げる道筋をつける」との答えがなされたことから、一気に弾みがつき、28年度での20%台を目指すこととなった。 ただし、課税ベース拡大の範囲で税率を引き下げる税収中立で行われることとされたため、財源策として、まず、法人事業税において所得割:外形標準課税の比率を27年度5:3から28年度に3:5とすることで、法人事業税率を4.8%から3.6%まで引き下げることとなった。 しかし、実効税率ではなお30%台にとどまるため、国税において繰越欠損金の段階的制限を強化することで、法人税率を23.4%として、平成28年度の実効税率を29.97%、さらに平成30年度には法人税率を23.2%として実効税率を29.74%まで引き下げることとなった。 なお、今回の改正は全体としては税収中立であっても、外形標準課税の拡大により赤字企業は当然のこと、収益の低い企業でも負担増になる場合が多い。そこで、中堅企業(付加価値額40億円未満)に対しては、3年間にわたる激変緩和措置が講じられることとなった。 図1 法人実効税率の引下げ ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 図2 外形標準課税の拡大 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 図3 欠損金繰越控除上限の段階的縮減の組み換え ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。   3 消費税の軽減税率導入 「日々の生活において幅広い消費者が消費・利活用しているものに係る消費税負担を軽減するとともに、買い物の都度、痛税感の緩和を実感できるとの利点があることから(大綱)」、消費税率10%引上げ時に軽減税率が導入されることとなったが、ここに至るまでの間の迷走は、税制改正の決定方法を大きく覆すものであった。 軽減税率に関する与党協議は2年以上にわたり続けられていたが、自民党・公明党間の溝はまったく埋まっていなかった。今年9月には、財務省がマイナンバーを利用した還付制度を対案したが、公明党に一蹴され、さらに10月の自民党税調会長の交代を経て、10月13日には、総理から宮沢新会長に対して軽減税率導入を前提に公明党と協議するよう指示が下された。 しかし、対象品目について、生鮮食品に限るべきとする自民党と、加工食品を含めた外食・酒類を除いたすべての食品を求める公明党との隔たりが大きく、与党税制協議会では決着が着かず、両党幹事長での交渉となり、12月12日に至り、「軽減税率制度についての大枠(以下、大枠」」が谷垣自民党幹事長と井上公明党幹事長との間で合意された。 軽減税率の対象品目は、両党幹事長合意では「食品表示基準に規定する生鮮食品及び加工食品(酒類及び外食を除く)」とされていたが、さらに新聞(定期購読契約が締結された週2回以上発行するもの)が追加され、適用税率は8%とされた。 区分経理の方法は、11月末にはまとめられていたが、平成33年4月からのインボイス制度(適格請求書等保存方式)の導入を前提とし、それまでの間は簡素な方法として「区分記載請求書等保存方式」とされた上で、簡易課税制度を1年間に限り大企業にも適用するなどの措置が講じられた。 最大の問題である財源策は、「財政健全化目標を堅持し、安定的な恒久財源を確保することについて、自民党・公明党両党で責任を持って対応する。(大枠)」とされ、平成29年度税制改正の課題とされた。   4 その他の主要事項 (1) 設備投資促進策 経団連が強く求めていた償却資産に係る固定資産税の減免措置は、中小法人等に対象を限定し、中小企業者等の生産性向上に関する法律(仮称)の制定を前提とする3年間の時限措置として、新規取得する機械・装置について1/2とする措置が講じられる。 (2) 地方法人課税の偏在是正 平成29年度以降、法人住民税法人税割を現行12.9%から7.0%(標準税率)へ縮小する一方、地方法人税(国税)を現行4.4%から10.3%へ拡充し、地方交付税の原資とする。また平成29年度以降、地方法人特別税・地方法人特別譲与税は廃止され、法人事業税に復元される。 (3) 役員報酬 利益連動給与に関する算定指標にROEその他の利益に関する一定の指標が含まれることを明確にする、一定の株式報酬につき損金算入を認める。 (4) 地方創生応援税制(企業版ふるさと納税制度)の創設 三大都市圏外の自治体が国から一定の事業について認定を受けた場合に、その事業に対し企業が行った寄附について、損金算入措置に加えて、法人税、法人事業税・法人住民税の税額控除を導入し、寄付金額の約6割の負担を軽減する。 (5) 国際課税 BEPSを踏まえた移転価格税制の文書化に係る国内税制の整備を行う。 (6) 森林吸収源対策 新税の創設は見送り、今後の検討とする。地球温暖化対策税の使途拡大は行わない。 (7) 車体課税 平成29年4月に自動車取得税を廃止する一方、取得に係る課税として自動車税環境性能割を創設。自動車税グリーン化特例の燃費基準の見直しを行う。 (了)  

#No. 149(掲載号)
#阿部 泰久
2015/12/17

平成28年施行の金融所得一体課税と3月決算法人の実務上の留意点 【第3回】「住民税利子割の廃止及び少人数私募債の利子の課税方式の見直し」

平成28年施行の金融所得一体課税と 3月決算法人の実務上の留意点 【第3回】 (最終回) 「住民税利子割の廃止及び 少人数私募債の利子の課税方式の見直し」   税理士 芦川 洋祐   I 住民税利子割の廃止 1 改正の内容 (1) 法人に対する住民税利子割の廃止 金融所得一体課税の施行に併せて、平成28年1月1日以後に支払いを受けるべき利子等に係る住民税利子割の納税義務者が、「利子等の支払いを受ける者」から「利子等の支払いを受ける個人」に改正され、法人が納税義務者から除外された。 また、上記改正によって法人が住民税利子割の納税義務者から除外されたことに伴い、法人が支払いを受ける利子等に係る以下の非課税措置が廃止された。 (2) 利子割の控除・充当・還付規定の廃止 上記(1)の改正に伴い、利子割額の法人税割額からの控除(旧地法53条26項、旧地令9の8)、利子割額の控除不足額の道府県民税均等割額への充当(旧地法53条39項)、利子割額の控除不足額の還付(旧地法53条40項、旧地令9の9の2~5)その他利子割に関連する規定が削除された。 2 事業年度の中途に改正時期を迎える場合 上記1の改正は、平成28年1月1日以後に支払いを受けるべき利子等から適用することとされている。そのため、事業年度の中途において改正時期(平成28年1月1日)を迎える場合には、改正時期前に支払いを受けるべき利子等については改正前の規定が適用されることとなり、利子割の控除・充当・還付が可能である。   Ⅱ 少人数私募債の利子の課税方式の見直し 1 少人数私募債と改正前の節税対策 少人数私募債とは、次の要件を満たす社債をいう。 少人数私募債には 等のメリットがある。 また、上記のほか、同族会社の経営者の場合には、役員報酬に係る税率(累進課税)と私募債の利子所得に係る税率(源泉分離課税:20.315%)の税率差を利用した節税対策が可能であった。 2 改正の内容 金融所得課税の一体化の改正に伴い、平成28年1月1日以後に支払いを受ける利子等のうち下表の利子所得に対する課税方式が分離課税から総合課税に変更された。 3 改正の影響 平成25年度税制改正の段階では、平成27年12月31日までに発行すれば平成28年1月1日以後に支払いを受ける利子等についても分離課税が適用できることとされていた。しかし、平成26年度税制改正において平成27年12月31日までに発行されたものであっても、同族会社が発行する公社債の利子等については総合課税の対象とされた。 これにより、同族会社が発行する少人数私募債の利子等のうち、平成28年1月1日以後に支払いを受けるものはすべて総合課税の対象とされ、少人数私募債の発行による総合課税と分離課税の税率差を利用した節税対策は封じられた。 (連載了)

#No. 149(掲載号)
#芦川 洋祐
2015/12/17

理由付記の不備をめぐる事例研究 【第2回】「最近の注目裁判例・裁決例①(国税不服審判所平成26年11月18日裁決)」~相続財産の価額からの債務控除が認められないと判断した理由は?~

理由付記の不備をめぐる事例研究 【第2回】 「最近の注目裁判例・裁決例① (国税不服審判所平成26年11月18日裁決)」 ~相続財産の価額からの債務控除が認められないと判断した理由は?~   中央大学大学院商学研究科 博士後期課程 (酒井克彦研究室所属) 泉 絢也   今回は、理由付記をめぐる最近注目の裁決例を取り上げてみたい。 1 事案の概要 本件は、相続人である審査請求人Xらが、被相続人には合資会社A商会(以下「A商会」という)の無限責任社員として負っている会社法580条1項に規定する「債務を弁済する責任」があるとして、相続税の課税価格の計算上、この「債務を弁済する責任」を債務として控除して相続税の申告をしたところ、課税庁(原処分庁)が、被相続人は「債務を弁済する責任」を負っていたとは認められないから、債務として控除することはできないなどとして、相続税の更正処分等をしたのに対し、Xらが、原処分の全部の取消しを求めた事案である。 国税不服審判所平成26年11月18日裁決(TAINS F0-3-398。以下「本裁決」という)は、更正等通知書に記載された無限責任社員としての債務弁済責任に係る債務控除(相続税法13条及び14条)に関する処分の理由は、行政手続法14条1項の規定の趣旨を満たす程度に提示されたものとはいえないとして、課税処分のすべてを取り消した。   2 更正等通知書に記載された更正の理由(本件理由付記)   3 関係法令 本件理由付記を一読してみると、課税処分の内容及び理由は、相続人であるXらは相続税の申告に当たり、A商会の本件相続開始日における債務超過額1,401,816,220円を、A商会の無限責任社員である本件被相続人の債務弁済責任に基づく債務であるとして相続税の相続財産の価額から控除しているが、この債務控除が認められないというものであることがわかる。 そこで、債務控除に関する相続税法の規定を見てみると、相続により財産を取得した個人で、当該財産を取得した時において日本国内に住所を有するなどの一定の者については、相続税の課税価格は当該財産の価額の合計額となるが、その課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額から次に掲げるものの金額のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額によるものとされている(相続税法11の2第1項、13条1項など)。 また、この場合の控除すべき債務は、確実と認められるものに限るものとされている(相続税法14条1項)。 これらの規定から読み取ることができる債務控除の要件は次の3つである(ただし、上記②に関する記述は省略する)。   4 本裁決の判断 本裁決は、次のとおり、本件理由付記に不備があると判断した。 (1) 求められる理由付記の程度 求められる理由付記の程度について、本裁決は、「行政手続法第14条第1項が、不利益処分をする場合に同時にその理由を名宛人に示さなければならないとしているのは、名宛人に直接に義務を課し又はその権利を制限するという不利益処分の性質に鑑み、行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の埋由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解されている(最高裁平成23年6月7日第三小法廷・民集65巻4号2081頁参照)。」と述べている。 要するに、(青色申告書に係る更正ではない)相続税の更正に係る理由付記においても、行政庁の恣意の抑制と不服申立ての便宜という理由付記制度の趣旨に照らして、理由付記の十分性を検討するという理解である。 (2) 理由付記の十分性 本裁決は、本件理由付記からは、本件相続開始日における本件債務弁済責任に基づく債務が現に存しないと課税庁が判断した理由として、例えば次の①~⑤など、様々な可能性が考えられるところ、実際の処分理由がこれらのどれに当たるのか、あるいはこれ以外の理由なのか、不明であるといわざるを得ないから、本件理由付記は、上記(1)の行政手続法14条1項の規定の趣旨(①原処分庁の判断の恣意の抑制及び②名宛人に対する不服申立ての便宜)を満たす程度に提示されたものとはいえないとして、更正処分のうち債務控除に係る部分は、同項の要件を満たさない違法な処分であるとして、取り消すべきであると判断した。   5 考察 本裁決は、平成23年12月の税制改正において義務化された青色申告書以外の更正に係る理由付記の処分取消事例という点で注目すべきではあるが、青色申告書に係る更正の理由付記を中心に検討する本連載との関係では、本裁決から得られる次の2つの有益な視点に注目しておきたい。いずれも、本事案にかかわらず、他の事案における理由付記の十分性を検討する際にも役立つ視点である。 (1) 本裁決の注目点① 本裁決は、本件理由付記が不備であると判断するに当たり、本件理由付記からは、本件相続開始日における本件債務弁済責任に基づく債務が現に存しないと課税庁が判断した理由として、例えば上記4(2)の【想定される課税処分の理由】①~⑤など、様々な可能性が考えられるところ、実際の処分理由がこれらのどれに当たるのか、あるいはこれ以外の理由なのか、不明であるといわざるを得ないことを指摘している。 更正処分の理由として、複数考えられるにもかかわらず、理由付記からは、実際の処分理由を特定することができない場合には、行政処分庁の恣意抑制と不服申立ての便宜という行政手続法14条1項の趣旨に照らして、理由付記に不備があるという評価につながり得るという視点は注目に値する。 このような視点は、法令の解釈・適用及び事実認定の双方の場面において応用することが可能であり、理由付記の不備を訴える際に重要なものであると考える。 (2) 本裁決の注目点② (1)でも述べたとおり、本裁決は、本件相続開始日における本件債務弁済責任に基づく債務が現に存しないと課税庁が判断した理由として、例えば上記4(2)の【想定される課税処分の理由】①~⑤など、様々な可能性が考えられることを指摘している。なるほど、本裁決に係る審査請求における課税庁の主張を見ると少なくとも【想定される課税処分の理由】の①及び⑤に係る主張を行っており(以下の下線部分参照)、まさに、これらの点が理由付記に付記されていなかったことを指摘できる(本裁決も⑤の指摘部分では、課税庁の主張を参照している)。 すなわち、本件理由付記からは、本件相続開始日における本件債務弁済責任に基づく債務が現に存しないと課税庁が判断した理由は明らかではないし、上記3の債務控除の要件【1】~【3】の法律要件を具体的にどのように満たさないと判断したのかという点も明らかではないと考えるが、この点について、課税庁は、審査請求の段階で次のとおり主張している。 上記主張においては、本件相続開始日における本件債務弁済責任に基づく債務が相続税法13条1項1号に規定する「被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの」には該当しない、あるいは相続税法14条1項に規定する「確実と認められるもの」に該当しないと課税庁が判断した具体的な理由が述べられているし、上記3の債務控除の要件【1】~【3】の法律要件を具体的にどのように満たさないと判断したのかについても述べられている。 もちろん、上記主張と同程度か、それ以上の理由が付記されていないからといって、直ちに理由付記に不備があるとされるものではないが、理由付記の程度と争訟段階における課税庁の主張・立証の程度との間に著しい差があると、なぜ課税庁は、争訟段階で課税庁が主張しているような内容や提出している証拠を理由付記において記載しなかったのかという疑念が生まれるし、理由付記に記載された理由との関係で理由の追加的主張や理由の変更が認められるのかという議論にも発展するであろう(実際、本件理由付記には相続税法14条1項の記載がないことを指摘し得る)。 以上からすれば、争訟段階における課税庁の主張・立証の内容から、更正処分の具体的な理由、判断過程又は根拠資料を推測し、その推測される処分理由等と、理由付記の記載内容とを比較することで、理由付記の不十分さが浮かび上がる場合があるという視点を学び取ることが可能であると考える。 *  *  * 次回は、収益事業に該当すると判断して行った課税処分を、理由付記に不備があるとして取り消した判決を取り上げる。 (了)

#No. 149(掲載号)
#泉 絢也
2015/12/17
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