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海外先進事例で学ぶ「統合報告」~「情報の結合性」と「簡潔性」を達成するために~ 【紹介事例②】「Vodacom社」(Vodacom「Integrated Report 2013」)

海外先進事例で学ぶ「統合報告」 ~「情報の結合性」と「簡潔性」を達成するために~ 【紹介事例②】 「Vodacom社」 (Vodacom「Integrated Report 2013」)    公認会計士 若松 弘之   IIRCの統合報告データベースは、同報告書の1ページから25ページを、内容要素【組織概要と外部環境】について、【戦略的焦点と将来志向】、【情報の結合性】、【簡潔性】のみならず、【ステークホルダーとの関係性】、【重要性】及び【信頼性と完全性】も含め、実に6つの指導原則に沿った最新事例として掲載している。 本稿では、【第1回】と同様、特に【戦略的焦点と将来志向】、【情報の結合性】及び【簡潔性】の3つの指導原則に焦点を絞って当事例を取り上げることとする。   (1) 際立った簡潔性と親しみやすさ 同社の報告書を特徴づけているのは、何といっても際立った簡潔性と紙面の親しみやすさにあるのではないだろうか。報告書をめくり前半の概要ページをみると、まず目に飛び込んでくるのは、大きな文字の語り掛けるような見出しである。たとえば「私たちにとって最も大切なこと(What’s most material for us)」や、「今当社の業界に何がおきているか(What’s happening in our industry)」などと書かれており、報告書の利用者の関心や興味を惹きつけるように工夫されている。また、その見出しに続く説明的な記載部分も、長文の記載を極力控え、要点を大文字や色付けで強調したり、写真やイラストを多用したりして簡潔にまとめられている。 そして、このような大きな文字、写真、イラストなどを多用する記載スタイルとするために、報告書の1ページに記載する内容はほぼ1テーマに絞られている。報告書前半の概要ページを、このように親しみやすく簡潔で視覚的にも分かりやすい記載スタイルとすることで、日常的に企業の報告書を読み慣れていない利用者にとっても、容易に会社の概況を把握できる工夫が施されている。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 (出典:Vodacom「Integrated Report 2013」P16-17)   (2) 簡潔性のさらなる追求 同社の報告書は、2012年度においてもその簡潔な記載が高く評価されているが、2013年度報告書においては、さらにその簡潔性を高めるため、ステークホルダーが最も知りたいと思う重要な事項を5つに絞り、これらを軸として以降の記載を組み立てる方針を打ち出している。それでは、実際の報告書を例に具体的に参照してみよう。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 (出典:Vodacom「Integrated Report 2013」P4-5) 報告書の導入部分で「私たちにとって最も大切なものは何か」という見出しのもとに、 の5つを挙げ、これらについて、現在同社がどのような課題をかかえているのか、それに対して会社がどのような取組みをおこなっているかなどが記載されている。すなわち、これら5項目が、同社の中長期的な価値創造能力に対するステークホルダーの評価に重要な影響を及ぼすと考えられるため、同社は報告書全般(特に戦略的優先施策の記載)を通して軸とすべき主要テーマとしている。 さらに続くページでは、統合報告のメインテーマである企業の持続的な価値創造に関して、当年度の実績を中心に簡潔に表現している。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 (出典:Vodacom「Integrated Report 2013」P6) このページでは、冒頭に「当社が創造した価値」と題し、同社が創造した価値金額や全体における比率を過年度比較も交えて記載している。同社では、価値創造を の4項目に区分している。これは、統合報告フレームワークの基礎概念である「6つの資本」と「価値の蓄積」の関係を強く意識させる記載であり、これを象徴するように、見出しの下には「顧客の幸せを維持することにより、全てのステークホルダーに対して価値を創造している」というメッセージが添えられている。 ページ左側では、2013年度における4つの価値創造の内容や金額について、見出しと同じくらいの大きな文字で分かりやすいイラストも添えて記載されている。 また、ページ右側には、2011年度から2013年度までの3年間における同社の価値創造額の合計と各要素の割合が円グラフとともに記載されている。 このページを少し眺めてみて、皆さんはどのようなことを読み取ることができるだろうか。 「当社が創造した価値」という大きな見出しと各ステークホルダーに対する価値創造額、そして笑顔を浮かべて携帯電話で会話する男性の写真によって、同社が顧客の幸せを通じて様々なステークホルダーに価値をもたらしているというメッセージを、視覚的に強く印象付けられるのではないだろうか。   (3) 情報の結合性 このように簡潔で視覚的な記載を多用することで、報告書を誰にでも読みやすいものにすることができる一方で、より詳細な説明を求める利用者に十分な情報提供をするためにはどうすればよいだろうか。 同社は、イラスト化されたアイコンを報告書の随所に用いることで、より詳細な情報の提供にも努め、さらに情報の関連づけも可能にしている。 具体的には、報告書内の参照ページを示すアイコンに加え、同社のホームページまたは親会社であるボーダフォン・グループのホームページへのアクセスを推奨するアイコン、ポジティブな情報である笑顔のアイコン、ネガティブな情報である困った顔のアイコンなどが使われ、より視覚的に情報の選別ができるよう工夫されている。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 (出典:Vodacom「Integrated Report 2013」P1) 具体的なつながりについては、次の「(4) 戦略的焦点と将来志向」における事例参照と合わせて確認していきたい。   (4) 戦略的焦点と将来志向 このような「簡潔性」かつ「情報の結合性」を兼ね備えた報告スタイルのもとで、同社はどのような戦略を掲げ、利用者に説明しているのであろうか。実際に同社が戦略的優先施策について記載したページをみてみよう。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 (出典:Vodacom「Integrated Report 2013」P7) 同社は「当社の価値創造能力は戦略的優先施策の実践により支えられている」と述べたうえで、①顧客、②成長、③事業活動、④人材、⑤レピュテーション(評価)、の5つに焦点をあて、その内容を簡潔に述べている。 さらに読み進めてゆくと、「②成長」については、データ通信、新しいサービス、新しい事業機会を追求することを戦略的な施策として掲げ、当期の戦略的施策の実績としてタンザニアにおいてM-Pesaという資金決済サービスが急成長しているとしている。これらの詳細について右端のアイコンで参照ページを示している。 参照先の29ページ以降には、「成長」に関する戦略的優先施策の具体的説明として、当社や業界の現状、各事業分野の将来的な成長の見込み、そして当社が今後実践すべき方策などが3ページにわたり詳細に記載されている。   (5) まとめ 今回紹介したVodacom社の先進事例を、本稿が着目する3つの指導原則に照らしてもう一度整理してみよう。 ① 簡潔性 すでに「簡潔性」については2012年度の報告書でも高い評価を得ていた同社だか、2013年度の報告書において、冒頭の概要記載ページを1ページ1テーマに絞り、親しみやすい見出しと簡潔な記載に、イラスト、グラフ、イメージ画像などを添えることにより、誰にでも読みやすく視覚的にも理解しやすい報告スタイルをとることで、さらにその「簡潔性」を高めたといえる。 また、記載事項をステークホルダーが最も知りたいと思う重要な事項5つに厳選したうえで、これに関する現状の課題と施策を(4)にて紹介した概要ページでメリハリをつけて明らかにしている。さらに、報告書全体をこの5つのテーマを軸として記載していくことにより、報告書が不要な情報の洪水となることを防いでいる。 ② 情報の結合性 簡潔にまとめた前段の概要ページに、後半部分の詳細な記載箇所や当報告書外の情報への参照を示すアイコンを付し、利用者に提供する「情報の結合性」を高めている。また、今回は具体的な事例検証を割愛したが、報告書冒頭(P2「About this report」)の説明によれば、戦略的優先施策の記述ページにおいて、同社の中長期的な価値創造能力に関連する情報との結び付けを行うことで、戦略の実践が価値創造にどのようにつながっていくかを示し、「情報の結合性」を強化したとしている。 ③ 戦略的焦点と将来志向 戦略的焦点については、概要ページで5項目に対する戦略的優先施策が明らかにされ、そのそれぞれについて後半の詳細記載ページの中で、現状分析、今後のマーケットの見通しと施策の詳細が丁寧に記載されている。このような記載から「戦略的焦点と将来志向」の指導原則の観点からも高く評価できる報告書といえる。 (了)

#No. 129(掲載号)
#若松 弘之
2015/07/23

『繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(案)』への対応ポイント 【第4回】「企業の分類ごとの繰延税金資産の回収可能性(その1)」

『繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(案)』への 対応ポイント 【第4回】 「企業の分類ごとの繰延税金資産の回収可能性(その1)」   公認会計士 阿部 光成   今回は、「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(案)」(企業会計基準適用指針公開草案第54号。以下「公開草案」という)における企業の分類ごとの繰延税金資産の回収可能性について解説する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅰ 企業の分類と繰延税金資産の回収可能性(分類1と分類2) 公開草案は、要件に基づき企業を分類し、当該分類に応じて、回収が見込まれる繰延税金資産の計上額を決定すると規定している(公開草案15項)。 企業の分類の要件と繰延税金資産の回収可能性をまとめると次のようになる(アンダーラインは、筆者が記載。公開草案17項から21項)。   Ⅱ (分類2)に関する留意点 前述のように、(分類2)に該当する企業においては、スケジューリング不能な将来減算一時差異であり、税務上の損金算入時期を個別に特定できないものでも、「将来のいずれかの時点で回収できることを合理的に説明できる」という一定の場合には、当該スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産は回収可能性があるものとされている(公開草案21項ただし書き)。 企業は、この合理的な説明を行うであろうし、監査人においては、その説明の適切性を判断することになるので、次のことが公開草案を実務に適用した際のポイントになると考えられる。 公開草案は、上記事項に関する例として次のものをあげているので、今後の実務への適用に際して、参考になるものと考えられる(74項、100項)。 (了)

#No. 129(掲載号)
#阿部 光成
2015/07/23

経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第89回】金融商品会計⑪「破産更生債権等における貸倒引当金」

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第89回】 金融商品会計⑪ 「破産更生債権等における貸倒引当金」   仰星監査法人 公認会計士 上村 治 日本公認会計士協会準会員 永井 智恵     〈事例による解説〉   〈会計処理〉(単位:千円) 【破産更生債権等に係る貸倒引当金の計上】 B社に対する売掛金1,000千円-B社の親会社による債務保証額300千円=700千円   〈会計処理の解説〉 金融商品会計基準では、破産更生債権等については、財務内容評価法により貸倒見積高を算定することとしており、具体的には、債権額から担保の処分見込額及び保証による回収見込額を減額し、その残額を貸倒見積高とすることとされています(金融商品会計基準 第28項(3))。 本事例において、当社はB社と営業取引を行うにあたり、B社の親会社と300千円を上限とする債務保証の契約を締結しています。 そのため、B社に対する売掛金のうち、契約によりB社の親会社から支払が保証される部分を控除した残額の700千円を貸倒見積高とします。 なお、B社は手形交換所において取引停止処分を受けており、経営破綻に陥っていると考えられます。これにより、B社の親会社による保証部分を除き、回収可能性がほとんどないと判断された場合には、貸倒見積高700千円を債権から直接減額することになります(会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務時指針」(以下、「金融商品実務指針」)第123項)。 B社に対する売掛金1,000千円-B社の親会社による債務保証額300千円=700千円 また、貸倒見積高を債権から直接減額した後に、B社から500千円の入金があった場合、B社に対する売掛金の帳簿価額300千円を上回る200千円については、原則として営業外収益として入金のあった期に認識します(金融商品実務指針 第124項)。 ※8月は連結会計を取り上げます。 (了)

#No. 129(掲載号)
#上村 治、永井 智恵
2015/07/23

中小企業事業主のための年金構築のポイント 【第9回】「65歳から支給される老齢厚生年金」

中小企業事業主のための 年金構築のポイント 【第9回】 「65歳から支給される老齢厚生年金」   特定社会保険労務士 佐竹 康男   1 老齢厚生年金 65歳になると、老齢基礎年金に上乗せされる形で「老齢厚生年金」が支給される(下図参照)。ただし、在職中は、特別支給の老齢厚生年金と同様に在職老齢年金により、年金額の全部又は一部が停止される場合がある(前回参照)。  (1) 受給するための要件 特別支給の老齢厚生年金のように1年以上厚生年金保険に加入している必要はなく、1ヶ月でも加入していれば、老齢基礎年金を受けることができるようになったときに支給される。受給するためには次の3つの要件が必要である。 〈事例1〉 公的年金の加入期間は30年6ヶ月あり、厚生年金保険の加入期間が6ヶ月あるため、上記要件②③は満たしている。平成27年8月7日に65歳になれば要件①も満たすことができるため、老齢厚生年金が受給できる。 (2) 老齢厚生年金の額 老齢厚生年金の額は、報酬比例部分と経過的加算額を合算した額となる。 ① 報酬比例部分 報酬の高低によって支給される部分で、過去の標準報酬月額等を平均した額(平均標準報酬額)に一定の率及び被保険者期間を乗じて計算する。 特別支給の老齢厚生年金の報酬比例部分と同じ計算式になる(【第7回】「4 特別支給の老齢厚生年金の受給額」②参照)。 ② 経過的加算額 特別支給の老齢厚生年金を受けていた人が65歳から受ける老齢基礎年金は、特別支給の老齢厚生年金の定額部分に代えて受けることになるが、老齢基礎年金は、20歳未満や60歳以上の厚生年金保険の被保険者期間については年金額の計算に反映しない。そうすると、定額部分の額のほうが、老齢基礎年金の額より高くなることがある。 そこで、その差額分の額を補てんするものとして経過的加算が支給される。したがって、20歳未満や60歳以上で厚生年金保険に加入した期間があれば、老齢厚生年金に経過的加算額がプラスされる場合がある。   2 在職老齢厚生年金 老齢厚生年金も60歳台前半に支給される特別支給の老齢厚生年金と同様、在職中はその年金が全部又は支給停止になる。「在職中」とは、厚生年金保険に加入していることをいう。 その者の報酬(総報酬月額相当額(※1))と年金額(基本月額(※2))が47万円を超えた場合がその対象になる。老齢基礎年金はこの調整の対象にならないので、減額されることなく支給される。 (※1) 総報酬月額相当額=標準報酬月額+(その月以前に受けた標準賞与額の12分の1) (※2) 基本月額=年金額の12分の1 総報酬月額相当額と基本月額を合計した額が47万円を超えた場合に、その超えた額の2分の1に相当する額が停止される。 [計算式] A=総報酬月額相当額+基本月額 〈事例2〉 基本月額=144万円÷12=12万円・・・① 総報酬月額相当額=36万円+60万円÷12=41万円・・・② ①+②=53万円となり、支給額は 12万円-{(53万円-47万円)÷2}=9万円になる。           ↓      停止される額は3万円   3 老齢厚生年金の繰下げ受給 老齢厚生年金は、老齢基礎年金と同様に、65歳で請求せずに66歳以降の任意の時点で請求をして、一定額を加算することができる繰下げ制度もある(【第6回】参照)。   4 老齢厚生年金の請求 特別支給の老齢厚生年金を受給している人には、65歳前にハガキ形式の年金請求書が、年金機構から送られてくる。それに必要事項を記入して投函する。 特別支給の老齢厚生年金を受給していない人(厚生年金の加入期間が1年に満たない人)は、65歳前に通常の年金請求書の用紙が年金機構から送られてくる。戸籍謄本等を添付して、年金事務所に提出する。いずれも、老齢基礎年金の請求も同時に行うことになる。   《おさらいQ&A》 (了)

#No. 129(掲載号)
#佐竹 康男
2015/07/23

養子縁組を使った相続対策と法規制・手続のポイント 【第4回】「特別養子縁組の手続」

養子縁組を使った相続対策と 法規制・手続のポイント 【第4回】 「特別養子縁組の手続」   弁護士・税理士 米倉 裕樹   [1] はじめに 前回は普通養子縁組の手続を取り上げたが、今回は特別養子縁組の手続について解説を行う。なお、「普通養子」と「特別養子」の相違点については本連載【第1回】を参照されたい。 特別養子縁組は、家庭裁判所の審判によって成立する。審判対象は、養子となる者の要保護性、養親となる者の適格性、養子となる者と養親となる者との適合性である。 申立人は、申立に際し、申立の趣旨及び実情、養子となる者の父母(実父母)の同意の有無、同意がないときはその具体的事情、養親となる者が監護を開始した日時等を明確にしなければならない(家則93①)。 また、児童相談所または養子縁組を斡旋する事業を行う者の斡旋の有無、斡旋ある場合には当該児童相談所等の名称、住所も申立書に記載しなければならない(家則93①)。 調査は原則として家庭裁判所の調査官が行うが、判断が適確になされるよう、児童相談所等との連携([4]参照)を図りながら、6ヶ月以上の期間を要する試験養育([3]参照)と実父母の事情聴取([2]参照)が行われる。 申立は、養親となるべき者の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行う(家法164①)。   [2] 養親及び実父母の意見聴取 家庭裁判所は、養親となる者、養子となる者の父母(実父母)らの意見を必ず聞かなければならない(家法164③)。特に実父母の同意がないのに縁組を成立させる場合には、実父母の陳述を審問期日に必ず聞かなければならない(家法164③第2文)。 もっとも、実父母が行方不明などその意思を表示することができない場合、または実父母による虐待、悪意の遺棄、その他養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合には、実父母の同意を必要としない(民817の6但書)。 なお、平成24年3月2日神戸家庭裁判所審判では、性別の取扱いを女から男に変更する旨の審判を受けた夫、及びその妻と、第三者から精子の提供を受けて妻が出産した子との間に、特別養子縁組が申し立てられた事案において、精子提供者の同意はないが、精子提供者は、子本人を認知しておらず、法律上、子の父とはいえないから、その同意は不要であるとして、申立を認容している。   [3] 試験養育 家庭裁判所は、養親となる者が養子となる者を6ヶ月以上の期間監護した状況を考慮して、縁組の相当性を判断しなければならない(民817の8①)。 相当性の判断は、養親となる者の養子となる者に対する現実の監護状況を客観的に観察した結果を資料とし、主として についてなされる。 具体的には、 を中心に検討がなされる。 審理には、家庭裁判所が適確な判断資料を得るために6ヶ月以上の期間を必要とする。その期間は、審判の申立時、または申立後に監護が開始された場合はその時から起算して6ヶ月以上とされる。 家庭裁判所は、個々の申立内容に応じ、どの程度の期間が必要かを具体的に決定する。ただし、養親となる者が申立以前から里親として監護しており、児童相談所等によって客観的な観察資料が作成され申立前の監護の状況が家庭裁判所に明らかであれば、その期間を試験養育期間に算入することができる(民817の8②)。   [4] 児童相談所(社会福祉機関)との連携 特別養子は、原則として、保護を要する6歳未満の児童を対象とすることから、社会福祉的観点に従い、司法機関である家庭裁判所と行政機関である児童相談所(社会福祉機関)とは密接に情報交換を行うこととなる。養子縁組の斡旋を寄付行為または定款に定める目的または事業に含む社会福祉法人、財団法人、または社団法人の場合も同様である。 特別養子は、児童の福祉について専門的能力を有する児童相談所等の斡旋を経て申し立てられるのが望ましいとされている。そこで家庭裁判所は、児童相談所等と連携を図りながら審理を進める。家庭裁判所は、縁組に対する養子の処遇に一貫性を持たせるために、児童相談所等を経由した申立については、観察の資料を取り寄せ意見を求める。 児童相談所等の斡旋を経ずに特別養子縁組の申立が行われた場合についても、家庭裁判所は、調査の結果、養子となる者が児童福祉法上の保護を要すべき児童であると判断されるときには、養親となる者に対して児童相談所に相談を行うよう指導するとともに、引き続き調査を行い、必要に応じて児童相談所に対しても調査結果を添付して調査嘱託を行うことがある。   [5] 審判・戸籍記載 家庭裁判所は、特別養子縁組の申立が不適法または理由がないときは却下する。申立に理由があるときは、特別養子縁組を成立させる審判を行う。 申立却下に対しては、申立人のみが即時抗告を行うことができる(家法164⑧二)。他方で、縁組を成立させる審判に対しては、養子となる者の父母、後見人らが即時抗告を行うことができる(家法164⑧一)。 申立人は、審判が確定した日から10日以内に、審判の謄本を添付して戸籍の届出をしなければならない(戸法68の2・63①)。 なお、養親の戸籍には、できるだけ実子と同様の記載をするとの配慮から、「特別養子縁組」、「養父母」、「養子」等の字句は戸籍に使用されないが、「 年 月 日民法817条の2による裁判確定」との記載がなされることから、間接的に特別養子縁組がなされたことは判明する。 (了)

#No. 129(掲載号)
#米倉 裕樹
2015/07/23

現代金融用語の基礎知識 【第20回】「ラップ口座」

現代金融用語の基礎知識 【第20回】 「ラップ口座」   事業創造大学院大学 准教授 鈴木 広樹   1 ラップ口座とは ラップ口座とは、金融機関が個人に対して提供するサービスの一つであり、個人が金融機関に資産運用を包括的に委ねるというものである。乱暴な言い方をすれば、個人が金融機関にお金を渡して、「後は任せるから、これを運用して増やしてくれ」と頼むのが、ラップ口座である。ちなみに、ラップとは、英語のwrapで、「包む」という意味である。 このラップ口座の残高がこのところ急速に増えており、今年の3月末時点では前年同期の約3倍になっている。その中心は、投資先を投資信託に絞るファンドラップというものであり、最低投資額が300万円から500万円程度で、金融機関が個人から運用方法について相談を受けて、それをもとに適当な投資信託を選んで投資するというものである。   2 なぜ拡大? ラップ口座の残高がこのところ急速に増えているのは、特に証券会社がその販売に力を入れるようになったからである。野村ホールディングスは、今年中にラップ口座の運用新会社を設立する予定である。 証券会社がラップ口座に力を入れるようになったのは、それが経営の安定化に資するという判断による。これまで証券会社は、投資信託については、それを販売して販売手数料を得ることに力を入れてきた。しかし、そうした手数料収入の額は、株式相場の変動の影響を受けるため、安定しない。 それに対して、ラップ口座の場合、残高に応じた維持・管理手数料が得られるため、収入の額が安定するのである。株式相場の変動の影響を受けることなく、安定した手数料収入を得られるようにしたい。そうした証券会社の思いが、ラップ口座の急拡大につながっているのである。   3 おすすめの金融商品か? ラップ口座は、「投資先選びを証券会社に任せられるので、楽だ」といった理由から、投資初心者にウケているようである。証券会社のラップ口座の売り文句も、「投資初心者が多くの投資信託から適当なものを見つけるのは困難」、「投資のプロである我々が投資をサポート」といったものである。しかし、ラップ口座は本当に、投資初心者におすすめの金融商品なのだろうか? 必ず儲かるという話はなく、ラップ口座の場合も、その残高が必ず増え続けるとは限らない。ラップ口座にかかる費用は、口座の維持・管理手数料と投資信託の信託報酬で、通常、合計で残高に対して年2%程度かかる。したがって、年2%以上の運用益を得られなければ、残高が増えるどころか、減ってしまうのである。年2%以上の運用益を出し続けられる証券会社の担当者など、ほとんどいないのではないだろうか。 投資をしようと思ったら、先ず行うべきことは、投資についての知識を身に付けることだろう。ラップ口座などに頼らず、自分の知識で適当な投資信託を選べるようにするのである。くれぐれも証券会社に利用されることなく、あくまで証券会社は利用するようにしてほしい。   (了)

#No. 129(掲載号)
#鈴木 広樹
2015/07/23

《速報解説》 非居住者を扶養控除等の対象とするときに必要な「親族関係書類」「送金関係書類」の取扱い詳細が明らかに~平成27年度税制改正に係る所得税基本通達の一部改正が公表~

 《速報解説》 非居住者を扶養控除等の対象とするときに必要な 「親族関係書類」「送金関係書類」の取扱い詳細が明らかに ~平成27年度税制改正に係る所得税基本通達の一部改正が公表~   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   平成28年分以後の所得税及び平成29年度分以後の個人住民税について、国外に居住する親族を扶養控除等の対象とするときには、「親族関係書類」「送金関係書類」を扶養控除等申告書や確定申告書に添付等することが義務付けられる。 所得税法等の一部を改正する法律(平成27年法律第9号)等の施行に伴い、このほど所得税法基本通達の一部が改正され、「親族関係書類」「送金関係書類」の範囲や取扱いが明らかにされた。 なお、「親族関係書類」「送金関係書類」の添付義務化に関する改正概要については、下記の拙稿をご参照いただきたい。 (1) 親族関係書類について 「親族関係書類」とは、次のいずれかの書類で、国外居住親族(※)が納税者の親族であることを証明するものをいう(所令262②一、所規47の2④)。 (※) 「国外居住親族」とは、国外に居住する親族のうち、控除対象配偶者及び配偶者特別控除に係る配偶者、控除対象扶養親族、障害者控除に係る障害者に該当する人をいう。 ①又は②いずれかの書類ではなく、①又は②に該当する2以上の書類によって納税者の親族に該当することが証明される場合には、当該2以上の書類も親族関係書類に該当することが明らかにされた(※)(改正所基通(新設)120-7)。 (※) ②に該当する書類2以上で証明できる場合にも、当該2以上の書類は親族関係書類に該当する。   (2) 送金関係書類について ① 送金関係書類の範囲 「送金関係書類」は、国外居住親族の生活費又は教育費(以下、生活費等という)に充てるための支払いを、必要の都度、各人に行ったことを明らかにするものでなくてはならない(所規47の2⑤)。 したがって、ある1人の国外居住親族に対して、他の国外居住親族分の生活費等も含めて支払いが行われている場合には、当該支払いに係る送金関係書類は、他の国外居住親族に係る送金関係書類には該当しないものとして取り扱うこととなる(改正所基通(新設)120-8)。 〈例〉 ② 生活費等を1年に3回以上送金している場合 同一の国外居住親族に対し、生活費等の支払いを年に3回以上行っている場合には、すべての送金関係書類を提出又は提示することに代えて、一定の事項を記載した明細書(※)を提出し、その年の最初と最後の支払いに係る送金関係書類を提出又は提示すればよいこととされた(改正所基通(新設)120-9)。 (※) 明細書には、次の事項を記載する。 ① 納税者の氏名及び住所 ② 支払いを受けた国外居住親族の氏名 ③ 支払日(送金日、クレジットカード利用日) ④ 支払方法(例:国外送金、クレジットカード利用) ⑤ 支払額   (3) 扶養控除等申告書が遅れて提出された場合 給与所得者の扶養控除等申告書が所定の期日後に提出された場合には、その提出後最初に支払う給与から、国外居住親族を反映したところにより徴収税額を計算する(改正所基通194・195-1)。   (4) 年末調整後に送金関係書類の提出があった場合 年末調整後、その年分の源泉徴収票が作成されるときまでに送金関係書類が提出された場合には、所得税基本通達190-5に示されている「年末調整後に所得控除に異動があった場合の再調整」に準じた再計算を行うことができる(改正所基通(新設)190-7)。 (了)

#No. 128(掲載号)
#篠藤 敦子
2015/07/22

プロフェッションジャーナル No.128が公開されました!~今週のお薦め記事~

2015年7月16日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.128が 公開されました。 プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布中!   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2015/07/16

日本の企業税制 【第21回】「BEPS行動12:義務的情報開示ルール」

日本の企業税制 【第21回】 「BEPS行動12:義務的情報開示ルール」   一般社団法人日本経済団体連合会 常務理事 阿部 泰久     1 はじめに 行動12は、アグレッシブなタックス・プランニングを立案した段階で、納税者あるいは立案者(プロモーター=会計事務所、法律事務所、コンサルタント等)から税務当局に報告する義務を課すことにより、法令・執行上の早期対応、ひいてはスキームの販売・利用を抑止することを意図するものである。 報告されたスキームが必ずしも租税回避となるわけではなく、また個別案件に係る事前確認制度とは異なり、報告されたスキームに対して当局からの対応がないことをもって、取引の有効性・容認を意味するものでもない。このような義務的情報開示は、既にアメリカ、イギリス、カナダ、ポルトガル、アイルランド、南アフリカ等で導入されている。 OECD租税委員会は、本年3月31日に「公開討議草案 BEPS行動12:義務的情報開示ルール」を公表しており、これに対し経団連では4月28日付けでコメントを提出している。そこで本稿では、公開討議草案の主要点と経団連コメントの概要を紹介することとしたい。   2 公開討議草案の概要 行動12全体では、以下の3点が検討課題とされている。 今回の公開討議草案は、このうち①②について具体的な提案を行うものであり、以下、その概要を紹介する。 (1) 報告義務者 現在の各国のレジームでは、プロモーターと納税者の両方に義務を課しているか、プロモーターまたは納税者のどちらかに第一義務を課しているか、のどちらかである。 公開討議草案では、各国は自由選択が可能だが、プロモーターに第一開示義務を課す場合は、プロモーターが①オフショアの場合、②プロモーターが存在しない(自己開発のケース等)、③プロモーターが開示できない場合、はその義務を納税者に転嫁すべきとする。 (2) 報告すべき取引の範囲 報告すべき取引の範囲を定義するためのアプローチとして、2つのアプローチが提示されている。どちらが良いか特にリコメンドされていないが、メインベネフィットテストとデミニマステストを結び付けるべきではないと結論付けている。 (3) 報告基準 ① 一般報告基準(プロモートされたスキームに共通する特徴) 2つのアプローチが提示されており、どちらが良いかは特にリコメンドされていない。 ほとんどの国は客観的報告基準のほうが良いと表明したが、開示義務の迂回を防ぐために主観的テストの役割があると考える国もある。 ② 特定報告基準 特定の取引や取引の特定要素をターゲットに設計されたものであり、現行の義務的情報開示レジームに見られるものには、損失取引、リースアレンジ、雇用スキーム、所得分類転換スキーム、低税率国の事業体を含むレジーム、ハイブリッド手法を含んだアレンジ、等がある。 義務的情報開示には、一般報告基準と特定報告基準を組み合わせることが必要である。 特定報告基準はその国の特定リスクや問題を反映すべきで、その設計や選択はその国の租税政策や優先順位を考慮して各国に委ねられるべきである。各国は開示量を制限するために特定報告基準にデミニマスの金額をリンクさせるかどうか自由に選択できる。 開示を要求するに十分な一つの報告基準を、スキームや取引を捕捉するトリガーにすることが必要である。 (4) 報告時期 プロモーターに開示義務がある場合には、開示のタイミングはスキームの利用可能性にリンクさせるべき。報告期限は税務当局の能力を最大化することを目的とすべき(スキームが利用可能となってから報告期限までを短く設定することで達成される)。 納税者が開示をしなければならない場合には、開示はスキームの利用可能性よりも実行をトリガーとすべき。納税者のみが開示する場合(プロモーターがいない又はオフショアの場合)は、報告期限は税務当局の能力を最大化することを目的とすべき。 (5) プロモーターまたはユーザーに課される他の義務 スキームのユーザーを特定することは義務的情報開示レジームの不可欠な部分であり、現行レジームでは2つの方法で特定している。 第一報告義務をプロモーターに課す場合には、スキームリファレンスナンバーと顧客リストの導入が必要(国内法が認めれば、顧客リストは自動的に税務当局へ提供されることとすべき)。 プロモーターと納税者の両方に報告義務を課す場合には、スキームリファレンスナンバーと顧客リストは不可欠なものではないが、クロスチェックの一助となる。 (6) 遵守と不遵守の結果 各国は、開示レジームのもとスキーム又は取引を報告することの結果について「スキームの開示はスキーム又はそこから得られると予想される便益の承認を暗示するものではない」ことを国内法において明確にすべき。 義務的情報開示ルールのコンプライアンスを強化するために、各国は導入された義務を遵守しなかった場合に適用される財務的な罰則を導入すべき。各国は国内法制と首尾一貫した罰則条項(非金銭的罰則を含む)を自由に導入すべき。 (7) 国際的スキーム 行動12の作業の1つの焦点は、国際的観点において義務的情報開示をより効果的にするにはどうしたら良いかということにある。 クロスボーダースキームは異なる国の異なる当事者から複合的な税の便益を創出するが、スキームから生じる国内の税の便益は全体アレンジから隔離すれば注目に値しないものに見えてしまう。開示レジームが国内納税者の国内税効果にフォーカスしただけでは、多種類のクロスボーダータックスプランニングを捕捉できない。 公開討議草案では、以下の点を考慮した国際税務スキームに対する情報開示レジームの設計についての多くのリコメンデーションを提示している。 (8) 向上された情報共有モデルの設計・実行 税務当局はこの証明(内国法人が報告対象となる国際税務スキームに関し当局が必要とする情報を有しない状況において、その内国法人がその情報を有していると思われる者に対し情報請求を行った場合のその請求の事実を示す証明)を既存の他の租税法域との情報交換合意(租税条約、徴収共助条約、情報交換協定)のもとで情報要求の基礎として用いることができるであろう。 その得られた情報は、これら情報交換規定のもとでの他の租税法域との自発的情報交換のトリガーとして使用されるかもしれない。 税務当局間の効率的な情報交換を促進するための向上された情報交換モデルの設計・実行に係る作業は、行動12のもとでさらに行われることになるであろう。   3 経団連のコメント 公開討議草案に対し、経団連では4月28日付けでコメントを提出している。 以下、その基本的な考え方ならびに具体的なコメントの概要を紹介する。 (1) 基本的考え方 (2) 具体的コメント   4 おわりに―包括的租税回避否認規定の必要性 わが国には、国際租税に限らずそもそもこのような仕組みはなく、現時点でその導入の是非を判断することは難しい。しかし、行動12の提案するような義務的情報開示ルールを導入するのであれば、まず何が租税回避行為に当たるのかを明確に示す包括的租税回避行為否認規定を整備することが前提となるはずである。 現行税法では、法人税法132条のような個別的租税回避行為否認規定はあるが、要件が不明確であり、事実上、税務当局の恣意的な判断に委ねられているに等しい状況である。また、近年の訴訟事例を見ても、たとえば、IBM事件とヤフー事件の結論の違いなど、納税者から見て予見可能性があるとは言い難い状況にある。 包括的租税回避行為否認規定は、義務的情報開示ルールを持つアメリカ、イギリス、カナダをはじめ、ドイツ、イタリア、オーストラリアなどで導入されている。その内容は様々であるが、いくつかの要件のもとに、どのようなものが租税回避行為に該当するのかを明らかにしている。 わが国でも、義務的情報開示ルールの導入の前に包括的租税回避行為否認規定の必要性を真剣に議論すべき時期にあると考える。 (了)  

#No. 128(掲載号)
#阿部 泰久
2015/07/16

《平成27年度改正対応》住宅取得等資金の贈与税非課税特例 【第1回】「改正前後の特例内容の確認」

《平成27年度改正対応》 住宅取得等資金の贈与税非課税特例 【第1回】 「改正前後の特例内容の確認」   税理士 齋藤 和助   1 はじめに 平成27年度税制改正において、住宅取得等資金に係る贈与税の非課税特例が、適用期限を延長した上で拡充された。改正の必要性に関しては税制改正大綱の前段で次のように記載されている。 本稿は、特例改正後の取扱いについて、改正前の制度や平成28年10月前後の適用関係を含めて全5回にわたって詳解していく。 第1回目の今回は特例の内容を概観し、改正点を整理しておく。   2 改正前の内容 (1) 特例の概要 平成24年1月1日から平成26年12月31日までの間にその直系尊属からの贈与により住宅用家屋の新築、取得又は増改築等に充てるための金銭(以下「住宅取得等資金」という)の取得をした一定の受贈者(以下「特定受贈者」という)が、住宅用家屋の新築、取得又は増改築等について、原則として贈与の翌年3月15日までに住宅用家屋を取得等して、居住するなど一定の要件を満たすときは、その贈与により取得した住宅取得等資金のうち以下の金額(既にこの特例の適用を受けた金額を除く)までは、贈与税の課税価格に算入しない。 なお、この贈与税の非課税特例(以下「非課税制度」という)は、暦年課税の基礎控除(110万円)、相続時精算課税の特別控除又は住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例(2,500万円)と併せて適用が可能である。 (注) 上記の「省エネ等住宅」とは、省エネルギー対策等級4又は耐震等級2以上若しくは免震建築物に該当する住宅用家屋をいう。 (2) 特定受贈者 非課税制度の適用を受けることができる特定受贈者は、以下の要件を全て満たす者をいう。 (3) 住宅用家屋 非課税制度の対象となる住宅用家屋とは、特定受贈者の居住の用に供する家屋でその床面積が50㎡以上240㎡以下(2分の1以上が居住用)のものをいう。なお、その家屋が新築でない場合にはその取得の日以前20年以内(耐火建築物である場合25年以内)に建築されたもの又は新耐震基準を満たすものに限られる。 (4) 増改築等 非課税制度の対象となる増改築とは、特定受贈者が所有する居住用家屋について行う以下の工事で、工事用費用が100万円以上であるものに限られる。 (5) 申告要件 非課税制度は、その適用を受けようとする者の期限内申告書に、その適用を受けようとする旨を記載し、計算の明細書等の書類を添付した場合に限り適用される。   3 平成27年度税制改正の内容 (1) 適用期限の延長 非課税特例について、その適用期限を平成31年6月30日まで延長する。 (2) 非課税限度額 非課税限度額を次のとおりとする(カッコ内は東日本大震災の被災者に係る特例措置)。 ① 特別住宅資金非課税限度額(住宅用家屋の取得等に係る対価の額又は費用の額に含まれる消費税等の税率が10%である場合) ② 住宅資金非課税限度額(上記①以外の場合) (3) 再適用 平成27年1月1日から平成28年9月30日までに住宅を取得等して上記②により特例の適用を受けた者が、平成28年10月以降にも消費税率10%が適用される者として新たに住宅を取得等した場合には、上記①により再び特例の適用を受けることができる。しかし、平成26年以前に改正前の旧法で特例の適用を受けている者は、平成28年10月以降に新しく住宅を取得等しても、消費税率10%が適用される者として特例の適用を受けることはできない。 (4) 省エネ等住宅の範囲の拡充 上記(2)の「省エネ等住宅」に以下の住宅用家屋が加えられた。 (5) 増改築等の範囲の拡充 適用対象となる増改築等の範囲に以下の工事が加えられた。 (6) 適用時期 上記の改正は、平成27年1月1日以後に贈与により取得する住宅取得等資金に係る贈与税について適用する。 *   *   * 次回以降は上記非課税特例の内容のうち、ポイントとなる事項や注意すべき事項を詳解していく。 (了)

#No. 128(掲載号)
#齋藤 和助
2015/07/16
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