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税務判例を読むための税法の学び方【57】 〔第7章〕判例の探し方(その4)

税務判例を読むための税法の学び方【57】 〔第7章〕判例の探し方 (その4)   立正大学法学部准教授 税理士 長島 弘   (11) 『第一審刑事裁判例集』 最高裁判所事務総局が、第一審裁判所における刑事裁判(判決・決定)の中から参考となるものを選択して掲載したもので、巻ごとに法条別索引、裁判所別索引が付いている。昭和34年以降は、前回に紹介した『高等裁判所刑事裁判特報』と併合して『下級裁判所刑事裁判例集』となっている。 なお、この『第一審刑事裁判例集』は、最高裁判所図書館で閲覧可能である。 最高裁判所図書館蔵書検索頁の「フリーワード検索」欄に「第一審刑事裁判例集」と入力して検索。 CiNiiによれば、現在81大学の図書館に所蔵されている(下記リンク参照)。 第一審刑事裁判例集   (12) 『下級裁判所刑事裁判例集』 上記したように、昭和34年分から、上記『第一審刑事裁判例集』と前回紹介の『高等裁判所刑事裁判特報』が併合してその役割を引き継いだものである(『東京高等裁判所判決時報』のように巻号数は引き継がず、昭和34年分が第1巻である)。 下級裁判所の刑事裁判(判決・決定)の中から、最高裁判所事務総局が選択して掲載している。高等裁判所の裁判とそれ以外の裁判所の裁判とに区分し、さらに判決と決定に区別し、裁判年月日順に収録している。また上記『第一審刑事裁判例集』と同様に、巻ごとに法条別索引、裁判所別索引が付いている。 裁判所図書館蔵書検索頁の「フリーワード検索」欄に「下級裁判所刑事裁判例集」と入力して検索。 CiNiiによれば、現在111大学の図書館に所蔵されている(下記リンク参照)。 下級裁判所刑事裁判例集 なお、CiNiiによれば、大学には法曹会による発行のものが大半のようであるが、裁判所図書館の蔵書状況に示されるように、編集元である最高裁判所事務総局による発行のものもある。   (13) 『刑事裁判月報』 これは、昭和44年に『下級裁判所刑事裁判例集』を改題したものである。ただし、巻号数は引き継がれず、昭和44年が第1巻となっている。また昭和61年の18巻6号を最後として、この役割を担う他の公的な裁判例集は、その後発行されていない。現在、裁判例は裁判所ホームページ等において公開されており、判例集を発行する意義が薄れているためであると思われる。 裁判所図書館蔵書検索頁の「フリーワード検索」欄に「刑事裁判月報」と入力して検索。 CiNiiによれば、現在142大学の図書館に所蔵されている(下記リンク参照)。 刑事裁判月報(最高裁判所事務総局編) なお、CiNiiによれば、大学には最高裁判所事務総局による発行のものが大半のようであるが、法曹会による発行のものもある。 刑事裁判月報(法曹会)   (14) 『下級裁判所民事裁判例集』 毎月各地方裁判所から送られてくる民事事件(ただし、行政・労働・無体財産権・家事事件を除く)の中から、最高裁判所事務総局が参考になると思われるものを選択して掲載したものである。 1巻から10巻までは、判示事項を法令別に分類し、裁判の言渡し年月日、掲載号数、頁番号が記載されており、また同一法令は関連する条文ごとにまとめて表示された索引が付されている。11巻からは、巻末に裁判所別・裁判年月日順の索引が付されている。発行は昭和25年の1巻1号から59年の35巻8号までとなっている。これも上記『刑事裁判月報』と同様、この35巻8号を最後として、この役割を担う他の公的な裁判例集は、その後発行されていない。 裁判所図書館蔵書検索頁の「フリーワード検索」欄に「下級裁判所民事裁判例集」と入力して検索。 CiNiiによれば、現在201大学の図書館に所蔵されている(下記リンク参照)。 下級裁判所民事裁判例集 なお、CiNiiによれば、これも大学には法曹会による発行のものが大半のようであるが、裁判所図書館の蔵書状況に示されるように、編集元である最高裁判所事務総局による発行のものもある。   (15) 『高等裁判所地方裁判所簡易裁判所民事裁判例特報』(『高等裁判所、地方裁判所、簡易裁判所民事裁判例特報』または『高等裁判所・地方裁判所・簡易裁判所民事裁判例特報』) 昭和24年分の下級審の裁判例を収録したものとして、『高等裁判所地方裁判所簡易裁判所民事裁判例特報』がある。これは最高裁判所事務総局民事局により編纂されたものである。 裁判所図書館蔵書検索頁の「フリーワード検索」欄に「、」や「・」の有無によるエラーを避けるため、「簡易裁判所民事裁判例特報」と入力して検索。 裁判所図書館では検索上、『高等裁判所、地方裁判所、簡易裁判所民事裁判例特報』または『高等裁判所・地方裁判所・簡易裁判所民事裁判例特報』が併存している。 CiNiiによれば、現在16大学の図書館に所蔵されている(下記リンク参照)。 なおCiNiiでは『高等裁判所地方裁判所簡易裁判所民事裁判例特報』となっている。 高等裁判所地方裁判所簡易裁判所民事裁判例特報(図書扱い) 高等裁判所地方裁判所簡易裁判所民亊裁判例特報(雑誌扱い) 国立国会図書館では、デジタル資料化されている。 高等裁判所、地方裁判所、簡易裁判所民事裁判例特報(国立国会図書館) *  *  * 次回は、ある特定の分野(事件)の裁判例だけをまとめた裁判集について紹介する。  (続く)

#No. 113(掲載号)
#長島 弘
2015/04/02

経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第76回】純資産会計④「剰余金の配当」

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第76回】 純資産会計④ 「剰余金の配当」   仰星監査法人 公認会計士 竹本 泰明     〈全体像〉 剰余金の配当には、①その他利益剰余金からの配当、②その他資本剰余金からの配当の2通りあり、どちらの原資から配当するかは任意で選択することができます。 以下は、配当に関する仕訳の一覧です。 今回は、その他資本剰余金からの配当のうち、受取側の会計処理について解説します。   〈事例による解説〉 【剰余金処分に関する株主総会決議の効力発生日の仕訳】   〈会計処理の解説〉 「その他資本剰余金の処分による配当を受けた株主の会計処理」(以下「適用指針」)3項から5項において、次のようにその他資本剰余金の処分による配当を受けた場合の会計処理が規定されています。 取引関係等の強化の目的で保有しているA社株式は、売買目的有価証券以外の有価証券に区分されると考えられるため(「金融商品に関する会計基準」70項)、原則として、配当受領額を配当の対象である有価証券の帳簿価額から減額します(適用指針3項)。 これは、その他資本剰余金の内容が原則として株主からの払込資本であるため、その他資本剰余金の処分による配当は、基本的には投資の払戻しの性格を持つという考え方に基づくものです(適用指針11項)。 なお、配当の対象となる有価証券が売買目的有価証券以外であっても、配当の対象となる有価証券を時価まで減損処理した期における配当等のように、配当受領額を収益として計上することが明らかに合理的である場合は、受取配当金に計上できるものとされています(適用指針5項)。 *   *   * 次回は、剰余金の配当に伴う準備金の計上について解説します。 (了)

#No. 113(掲載号)
#竹本 泰明
2015/04/02

中小企業事業主のための年金構築のポイント 【第1回】「公的年金制度の概要と加入資格」

中小企業事業主のための 年金構築のポイント 【第1回】 「公的年金制度の概要と加入資格」   特定社会保険労務士 佐竹 康男     1 公的年金制度 日本国内に住所を有する人は、一定の年齢に達すれば公的年金に加入しなければならない。企業経営者の方も例外ではなく、法人・個人を問わず、加入が義務付けられる。 現在、公的年金には、下記のとおり、国民年金、厚生年金、共済年金の3種類あるが、平成27年10月から被用者年金の一元化により、共済年金の加入者もすべて厚生年金保険制度に加入することになる。   2 国民年金の加入者 国民年金には、保険料の負担の仕方により、「第1号被保険者」「第2号被保険者」「第3号被保険者」と3種類の種別がある。 厚生年金保険に加入している人は、国民年金の第2号被保険者になるため、厚生年金保険と国民年金に二重に加入していることになる。ただし、国民年金の保険料は個々に納付することを要しない。 (※) 厚生年金保険等の保険料の一部が国民年金にまわっている(基礎年金拠出金という)。   3 厚生年金保険の加入者 適用事業所(下記参照)に使用される70歳未満の人が、加入者(被保険者という)となる。 従業員のみならず、法人の代表者、取締役であっても、その法人から報酬を得ているのであれば被保険者になる。 個人の事業所でも一定の要件を満たすことができれば適用事業所になるが、従業員は被保険者になっても、個人事業主は被保険者になることができない。 (※) 国又は地方公共団体を含む。   4 事業主が加入する年金制度 上記をまとめると、法人・個人の経営者が加入する年金制度は以下のようになる。   《おさらいQ&A》   (了)

#No. 113(掲載号)
#佐竹 康男
2015/04/02

最新!《助成金》情報 【第13回】「雇用以外のその他の助成金情報」

最新!《助成金》情報 【第13回】 (最終回) 「雇用以外のその他の助成金情報」   特定社会保険労務士 五十嵐 芳樹   [1] 業務改善助成金 1 目的 この助成金は、東京、神奈川、大阪を除く44道府県の中小事業主に対して、賃金額の引上げや就業規則の作成、賃金制度の整備などを助成することで、中小企業の賃金と業務の改善を支援することを目的とする。 なお、この情報は平成26年度の制度に関するものであり、平成27年度の制度では継続廃止又は変更などもあり得るため、活用を検討する場合は必ず新年度の情報確認が必要であることをご理解されたい。   2 支給対象措置 この助成金の支給対象となる措置は次のいずれもの措置を実施した場合となる。   3 助成額 この助成金の助成額は、[表A]の助成対象経費に補助率を乗じた額と[表B]の上限額とのいずれか低い額となる。 [表A] (※1) 次のような社会通念上当然に必要な経費は除く=就業規則作成、一般自動車・パソコン購入費、飲食店の冷蔵庫・倉庫業のフォークリフト・美容業の美容機器等 (※2) 助成率3/4は企業全体の労働者数が30人以下の事業場 [表B]   4 対象外事業主 交付申請日の3ヶ月前から交付申請日が属する年度の末日までに次の行為等を行った事業主は支給対象外となる。   5 手続の流れ   6 活用のポイント ここ数年、最低賃金額の上昇幅が大きくなり全国的に最低賃金額が高くなっているが、地域によっては業種や企業規模により最低賃金額上昇の対応に苦慮している事業所も多々見受けられる。賃金額を引き上げるには労働能率を高め生産性を向上させることが重要だが、労働能率を増進させる設備機器導入やその研修、又は雇用管理制度を整え働く意欲を向上させる賃金制度や就業規則を整備するには、この助成金の活用は特に有効である。   [2] 職場意識改善助成金(職場環境改善・改善基盤整備コース) 1 目的 この助成金は、労働時間の削減適正化や有給休暇の取得促進、労働能率向上のための設備機器の導入等に取り組む中小事業主を助成することで、職場の士気を高めたり仕事と生活の調和の実現を目指す事業主を支援し、雇用を安定させることを目的とする。 なお、この情報は平成26年度の制度に関するものであり、平成27年度の制度では継続廃止又は変更などもあり得るため、活用を検討する場合は必ず新年度の情報の確認が必要であることをご理解されたい。   2 対象となる取組み この助成金の対象となる取組みは次のいずれか1つ以上を実施することである。   3 成果目標の設定と評価 実施する取組みを選択後に、達成を目指す次のいずれか2つ以上の具体的な数値目標を設定し、評価期間中に成果目標の実績を評価する。   4 支給額 支給対象経費に、設定した成果目標の達成状況に応じた補助率を乗じた額が支給される。ただし、次の通り上限額が定められている。 (1) 設備導入以外の支給額 (2) 設備機器等の導入の目標 次の2つの目標を達成できなければ助成対象とならない。   5 手続の流れ   6 活用のポイント 有給休暇取得日数の増加は、若い人や女性には歓迎されて定着率の向上に影響する。 また、時間外労働時間数の削減は従業員の意識改善だけでなく、作業環境や業務方法を見直すことで効率化につながるため、時間外労働の削減とともに企業の効率化を図り競争力を引き上げるには、この助成金は有効である。また、設備機器導入の成果目標は高いが目標を達成できれば企業の体質と効率化を大きく改善できる可能性があるため、是非活用し目標を達成したい。   [3] 職場意識改善助成金(テレワークコース) 1 目的 この助成金は、仕事と生活の調和推進のため終日在宅で就業するテレワークに取り組む中小企業事業主を助成することで、多様な働き方を実現させ仕事と育児介護の両立を実現したい優秀な人材を確保してもらうことで雇用を安定させることを目的とする。 なお、この情報は平成26年度の制度に関するものであり、平成27年度の制度では継続廃止や変更などもあり得るため、活用を検討する場合は必ず新年度の情報の確認が必要であることをご理解されたい。   2 対象となる取組み 次のいずれかひとつ以上を選択し実施しテレワークを実現する   3 成果目標の設定 1~6ヶ月間の間で設定した評価期間中に、次の両方の成果目標を達成できるように取組みを実施する。   4 支給額 支給対象経費に2つの成果目標の達成状況に応じた補助率を乗じた額が支給される。ただし、上限額が定められている。 ※従業員100人の企業で総務や経理部門で5人に1人当たり10万円の機器を導入する場合の経費は5人×10万円=50万円。 この場合の支給額は4万円×5人=20万円、又は6万円×5人=30万円となる。   5 手続の流れ   6 活用のポイント テレワークに興味を示す中小企業にとってこの助成金を考慮する価値はとても大きい。また、育児や介護と仕事との両立などで課題を抱える優秀な社員の雇用継続や新規採用を実現させるには、この助成金は特に有効である。   [4] 受動喫煙防止助成金 1 目的 この助成金は、労働安全衛生法により職場の受動喫煙防止対策が努力義務化課されたことに伴い、受動喫煙防止対策を実施する中小企業事業主を助成することで、職場の受動喫煙防止対策を促進し、職場の環境を整え労働者の健康を維持しかつ雇用を安定させることを目的とする。 なお、この情報は平成26年度の制度に関するものであり、平成27年度の制度では継続又は変更などもあり得るため、活用を検討する場合は必ず新年度の情報の確認が必要であることをご理解いただきたい。   2 対象措置 次のいずれかの対象措置を実施し、措置を講じた区域以外を禁煙とすること。   3 支給額 支給額は、「対象経費×助成率1/2」の額となる。ただし、次の上限額がある。また、リース契約や実績報告までに交付決定された経費を完済できない分割払いは認められない。   4 手続の流れ   5 活用のポイント 受動喫煙防止対策は、非喫煙者や妊娠中及び子の養育期間中の人にとって高い関心事であるため、受動喫煙防止対策は職場の環境を整え健康管理に資するだけでなく、人材の採用定着にも効果があり、さらに宿泊業や飲食店など顧客が来所する事業場では経営上も大きな効果が期待できる。そのため受動喫煙防止対策を実施したい中小企業事業主がこの助成金の活用することは大きなメリットがある。  (連載了)

#No. 113(掲載号)
#五十嵐 芳樹
2015/04/02

〈公取委勧告事例にみる〉消費税転嫁で『買いたたき』と指摘されないための実務教訓

〈公取委勧告事例にみる〉 消費税転嫁で『買いたたき』と指摘されないための実務教訓   のぞみ総合法律事務所 弁護士 大東 泰雄 弁護士 山田 瞳   1 はじめに 平成25年10月1日に消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法(以下「消費税転嫁対策特措法」という)が施行されて、1年6ヶ月が経過しようとしている。 この間、平成27年2月末日までの公正取引委員会(以下「公取委」という)及び中小企業庁による転嫁拒否等の行為に対する調査着手件数は4,072件、立入検査件数は2,183件、指導は1,615件に及び(公取委平成27年3月16日公表「平成27年2月までの消費税転嫁対策の取組について」別紙表1)、また、平成27年3月27日までの公取委による勧告・公表も19件に及んでおり、同法違反とされた事例が集積してきた。 消費税転嫁対策特措法違反とされた事例のうち、勧告事案の全てと、指導事案1,615件中1,305件が「買いたたき」の事例であり、同法が禁止する転嫁拒否等の行為(①減額、②買いたたき、③商品購入、役務利用又は利益提供の要請、④本体価格での交渉拒否、⑤報復行為)の中でも、買いたたきが圧倒的に重要視されていることが分かる。 そのため、企業においては、いずれ行われると予想される消費税率の10%への引上げを前に、特に買いたたきと指摘されるようなことのないよう、万全の注意を払う必要がある。 そこで、本稿では、集積された勧告・公表事例を題材として、「買いたたき」に当たるとされたポイント等を検討し、今後企業において留意すべき事項を読み解きたい。   2 勧告・公表事例の概観と検討 (1) 買いたたきの禁止 消費税転嫁対策特措法が禁止する「買いたたき」とは、商品もしくは役務の対価の額を当該商品もしくは役務と同種もしくは類似の商品もしくは役務に対し通常支払われる対価に比し低く定めることにより、特定供給事業者による消費税の転嫁を拒むことをいう(同法3条1号後段)。 「通常支払われる対価」とは、通常は、特定事業者と特定供給事業者との間で取引している商品又は役務の消費税率引上げ前の対価に消費税率引上げ分を上乗せした額をいうとされ、「合理的な理由」がない限り、これより低い額での取引は「買いたたき」に当たるとされる(公取委「消費税の転嫁を阻害する行為等に関する消費税転嫁対策特別措置法、独占禁止法及び下請法上の考え方」(以下「公取委ガイドライン」という))。 「買いたたき」に当たらない「合理的な理由」とは、単に特定供給事業者との合意があるというだけでは足りないとされ、その有無は、コスト削減等の客観的な事情の有無、価格交渉の具体的な経緯・状況、競合する他社の提示価格等の様々な事情を総合的に勘案して判断される。なお、買いたたきと合理的な理由の詳細については、本誌No.68掲載の拙稿「事例でわかる消費税転嫁対策特別措置法のポイントQ&A」第6回をご参照いただきたい。 (2) 勧告・公表事例の概観と検討 前述のとおり、公取委は、これまで19件の買いたたき事案(ただし、うち3件は減額を含む)に対して勧告・公表を行った(平成27年2月までの勧告事例一覧表として、「平成27年2月までの消費税転嫁対策の取組について」別添1) そこで、以下、これらの事例のうち、典型的・特徴的なものをピックアップし、買いたたきに当たるとされたポイント等を検討する。 【事例①】 (株)JR東日本ステーションリテイリング ▷事案の概要 商業施設を運営する同社が、納入業者(161社)に対し、既存の商品について、内容を変更することなく税込価格を据え置くなど、仕入価格を通常支払われる仕入価格に比べ3%程度低く設定することになる販売促進企画への参加を要請したとして、初の勧告が行われた事案である。 ▷「買いたたき」とされたポイント 同社の納入業者からの仕入価格は、「商品の店頭販売価格×仕入率」として決められていたところ、同社は、納入業者に対し、消費税率引上げ後、既存の商品について、内容を変更することなく引上げ前の税込価格を据え置くなどとする販売促進企画への協力を要請していた。 当該販売促進企画によれば、例えば、平成26年3月31日以前に税込店頭販売価格が1,050円(税抜1,000円)、税込仕入価格が840円(税抜800円)であった商品は、税込仕入価格が840円に据え置かれることにより、税抜仕入価格が自動的に778円に圧縮され、差額24円分が上乗せされないこととなる。これが、「買いたたき」に当たると判断されたのである。 本件において、「合理的な理由」がないと判断されたのは、客観的にみて納入業者の側にはコスト削減効果が生じているとはいえないにもかかわらず利幅が圧縮されていることや、本件の販売促進企画の導入経緯からして当事者間の実質的な意思の合致があったとはいえず、対象者たる特定事業者が特定供給事業者たる納入業者に対して一方的に導入したと評価されてもやむを得ない事情があることによると考えられる(詳細は、本誌No.67掲載の拙稿「事例でわかる消費税転嫁対策特別措置法のポイントQ&A」第5回を参照)。 ▷今後の実務への教訓 本件においては、商業施設を運営する事業者が、消費税率引上げを受けた買い控えなどを警戒し、販売促進策を企画したものと思われる。消費税率の引上げが消費者の財布の紐を固くする方向に働くことは明らかであり、小売業者にとって、消費税率引上げは死活問題ともいえる。しかし、小売業者が消費税率引上げに際して行うセール等の原資を納入業者に負担させようとすると、本件のように買いたたきと判断され、勧告を受けるリスクがある。 今後予測される消費税率10%への引上げ時にも、本件のような販売促進企画が催される可能性が高いが、その際にも、納入業者に対し、一方的に価格を据え置くようなことのないよう、十分留意する必要がある。 【事例②】 (株)三城 ▷事案の概要 メガネ等の小売業を行う同社が、店舗の賃貸人のうち、内税契約になっている賃貸借契約(例えば「賃料月額50万円(消費税を含む)」というような記載のあるもの)の賃貸人(127名)に対し、税込賃料を据え置いた事案である。 ▷「買いたたき」とされたポイント 契約書に「賃料月額50万円(消費税を含む)」と記載されている場合、「あくまでも税込月額50万円と契約したのであるから、消費税率引上げ後も税込月額50万円から変更する必要はない。」と考える読者もいるかもしれない。しかし、消費税率が8%に引き上げられた以上、税込価格を据え置けば、自動的に税抜価格がその分だけ圧縮されることとなり、これが買いたたきに当たるのである。 賃料は、建物の使用収益に対して支払われるものであり、消費税率引上げの前後で、税抜価格が圧縮されることを正当化するような事情が生じることは通常考えにくい。また、本件では、特定事業者が一方的に賃料の据え置きを決定して賃貸人に文書で送付して通知したとされており、両者の間で実質的な交渉に基づく意思の合致があったといえるだけの事情はうかがえない。そのため、合理的理由がないと判断されたものと考えられる。 ▷今後の実務への教訓 賃貸借契約における賃料は内税での契約とされていることも多いと思われ、「買いたたき」と判断される典型例として注意が必要である。 賃貸借契約以外の契約においても、消費税率5%当時の対価が内税表記されている場合は、「税込いくらと書いてあるから消費税率引上げ後もそのままでよい」と考えることは許されず、「契約書記載の税込価格÷1.05×1.08」という計算式に基づいて算出される金額を支払わなければならない。そして、今後、消費税率が10%に引き上げられた場合にも、同様の再計算が必要となる。 このように、内税契約の場合は、合理的理由がない限り、契約書に直接記載されていない上乗せ額を払うこととなるため、これが煩雑であると考える場合には、契約書上の対価の記載を外税表記に修正しておくことも一案である。 【事例③】 (株)ルネサンス ▷事案の概要 スポーツ施設の運営等を行う同社が、スポーツ指導を行うインストラクター(個人事業者約2,000名)に支払う委託報酬について、これらの事業者が免税事業者であるという理由から、消費税率引上げ相当分を上乗せせず税込価格を据え置くことを決定・通知した事案である。 ▷「買いたたき」とされたポイント 消費税率引上げ分を上乗せせず、税込価格を据え置いたという事案であり、典型的な「買いたたき」のパターンに該当する。 もっとも、同社が税込委託報酬を据え置いたインストラクターは消費税免税事業者であるため、そのような事業者に消費税相当額を支払う必要はないのではないか、あるいは、そのような事業者にまで消費税相当額を支払わなければならないのは納得がいかないと考える向きもあるかもしれない。しかし、免税事業者も仕入においては消費税相当額を支払っていることに照らし、そのような考え方は通用するものではない。 この点、公取委ガイドラインにおいても、取引先が免税事業者であるという点は、合理的理由にならないと明記されている。 ▷今後の実務への教訓 取引先が免税事業者であるということは、「買いたたき」に当たらない合理的理由とはいえない。仮に、法務担当者はこの点を理解しているとしても、取引の現場担当者等が理解しているかは微妙であり、今後も、法務部門等による注意喚起が必要であろう。 【事例④】 吉野家グループ((株)吉野家資産管理サービス、(株)北日本吉野家、(株)中日本吉野家) ▷事案の概要 店舗等の賃貸借等の事業又は外食業を行う同社らが、店舗の賃貸人のうち、内税契約になっている賃貸借契約の賃貸人の一部に対し、賃料の消費税引上げ分を減額し、又は賃料の消費税率引上げ分を上乗せせず据え置いた事案である。 ▷「買いたたき」とされたポイント 本件は、内税契約とされている店舗の賃貸借契約において税込賃料を据え置いたという点では、【事例②】(株)三城の事案と類似しているが、本件においては、税込賃料の据置き等が行われたのは(吉野家グループの)「要請に応じた賃貸人に対して」のみであったと認定されている。つまり、賃貸人と賃借人という契約当事者間において、税込価格を据え置くことを合意したとしても、それだけでは「合理的な理由」があるとは認められないということである。 前述のとおり、店舗の賃貸借契約においては、例えば原材料費の変動のように、消費税率引上げ前後で対価の額に影響する特段の事情の変化が生じるとは考えにくい。そのため、契約当事者間の合意があるとしても、税込価格の据置きを正当化することができないのである。 ▷今後の実務への教訓 企業の素朴な実務感覚からすれば、契約当事者間で合意したことが法律違反とされることは理解しづらい面があるかもしれない。素朴な実務感覚に頼ることなく、消費税転嫁対策特措法を正確に理解して対処することが重要である。 【事例⑤】 山佐産業(株) ▷事案の概要 スロットの販売等を行う同社が、販売代理店(約170事業者)に支払う委託報酬について、消費税率引上げ分相当額を上乗せせず税込価格を据え置いて支払った事案である。 ▷「買いたたき」とされたポイント 公取委が公表した違反事実の概要によると、本件においては、平成26年4月1日以後の業務委託手数料について、消費税率引上げ分を上乗せせず、同年3月31日までの業務委託手数料と同額を支払い続けたことが認定されているにすぎず、同社が税込価格を据え置く方針を決定したとか、税込価格を据え置く旨を取引先に通知したなどとの事実は認定されていない。 つまり、単に、同社が平成26年4月以降も消費税率引上げ前と同じ税込価格を支払い続けているという事実をもって、買いたたきの要件である「低く定めた」に当たると解釈された可能性がある。 ▷今後の実務への教訓 本件に照らすと、税込価格を据え置く旨を取引先に通知したり、消費税率引上げ分の上乗せに係る取引先の要請を拒絶したりするような場合に限らず、単に、合理的な理由なく消費税率引上げ前の税込価格と同額の支払いを続けているだけで、買いたたきに該当すると判断される可能性があることになる。 したがって、売り手ないし業務委託先から、消費税率引上げ分の上乗せについて特段の要請を受けていない場合でも、買い手ないし発注者の側で、積極的に消費税率引上げ分の上乗せを行っていくという対応が必要になるということができる。   3 勧告事案の共通点からみた『買いたたき』判定を分けるポイント 買いたたきに当たるとされた事例のうち、勧告・公表まで至った事案の割合は高くないが、指導に止まるか、勧告・公表まで至るかを分けるポイントはどこにあるのだろうか。 これまでの勧告事例を横断的に検討すると、勧告を受けた事業者の業種は多岐にわたるが、問題とされた対価の性質は、業務委託料、納入価格、賃料が中心となっている。 「合理的な理由」のうち、コスト削減等の客観的な事情の有無という要素についてみると、例えば、工業製品の製造委託や生鮮食料品の仕入においては、コストの変動が生じやすく、消費税率引上げの前後でコストをめぐる事情に変化が生ずる場合も多いと思われるのに対し、サービスや賃料の場合、消費税率引上げの前後で特段の事情の変化がなく、消費税率引上げ分を上乗せしない理由が見当たらないことが一般的であると思われる。 工業製品の製造委託など、コストの変動が生じやすい取引においても、原材料価格の下落分と販売価格の関係次第では、買いたたきに問われることがあり得るが、そのような微妙な判断を要する事例は、少なくともこれまでの勧告事例には現れていない。 勧告・公表に至るリスクが高いのは、①コストの下落等の客観的な状況の変化がみられないのに、②多数の取引先に対し、一律・一定に税込価格を据え置くような場合であるといえる。 消費税率の引上げから約1年が経過し、買いたたきに係る摘発は落ち着く傾向にあるかといえば、そうではない。公取委は、平成27年3月に4件の勧告・公表を行っており、活発な摘発は今後も続くと思われる。 消費税率の10%への引上げ直前はもちろんのこと、それ以前においても油断は禁物というべきである。 (了) ↓お薦め連載記事↓

#No. 113(掲載号)
#大東 泰雄、山田 瞳
2015/04/02

〔小説〕『東上野税務署の多楠と新田』~税務調査官の思考法~ 【第7話】「無予告調査」

〔小説〕 『東上野税務署の多楠と新田』 ~税務調査官の思考法~ 【第7話】 「無予告調査」 税理士 堀内 章典     多楠の休日 休みの日、多楠は両親が可愛がっているミニチュアダックスフンドの“キチ”と“ララ”を連れて、近所の行田公園へ散歩に来ている。10月下旬とはいえ、この日は小春日和の暖かさ。 多楠は公園のベンチに腰を下ろすと、大いに盛り上がった昨日の飲み会を思い出していた。 ▼   ▲   ▼ 単発とはいえ、多楠調査官が100万円の売上除外を自ら考え、提示を求めた領収証控から発見したことについて、すでにほろ酔い気味の淡路調査官はいつものように顎の尖った小顔に眉をひそめながら言った。 「よく領収証控を見る気になったわよね。売上と合っていて当然だと思うから、私はまず見ないと思うわ。」 多楠に不正発見で先を越されたせいか、少し悔しそうな様子の淡路。 多楠は少々優越感に浸りながら 「たまたまですよ。何か予感めいたものがあって、領収証控を確認したんですが、結局1回こっきりの不正で、広がらなかったのが残念でした。」 2人の話を聞いていた田村統括官が満面の笑みを浮かべながら 「いやいや、“合っていて当たり前”と先入観を持たずに調べたところが素晴らしい!」 さらに安倍副署長が田村統括官の言葉に相槌を打ちながら 「多楠調査官、結果はまた別、そうやって常に問題意識を持って調査に臨むことが大事さ。その心構えがあれば、おのずと成果は上がって来るもんだよ。」 安倍副署長は、東京国税局資料調査課(リョウチョウ)の課長補佐から昨年7月の異動で東上野署に配属になった、資料調査課のエースである。 調査のプロ中のプロである安倍副署長の一言に、その場にいた全員が納得の表情を浮かべた。 ▼   ▲   ▼ 公園の大きな広場では、小学校の低学年と思われる男の子たちが歓声を上げながらサッカーに興じている。公園のベンチに腰かけている多楠はそんな子供たちを笑顔で眺めながら、“なんとか幸先の良いスタートが切れてよかった。”と、しみじみと安堵した。 実は昨日から、多楠の中に、大きな気持ちの変化が起きていた。 部門飲み会の後はいつものように『かわばた』へ向かった新田と多楠であったが、終電となったその帰り、京成線の列車内でのことである。 酔いと、いろいろなことが起こりすぎてボーっとした頭の中、多楠は新田のことを考えていた。 しかし、関東貿易商会の1日目の調査を終え、新田に報告をしたときの “多楠、取れるぞ。” の一言は、強い印象として多楠の中に残っていた。 いずれにしても、新田という男、一流の調査官であることは間違いない。 多楠はスマホを手に取り、思いつくまま、メモをしてみた。 メモを眺めながら、多楠は思った。 “まだまだ学ぶべきものがあるはず。新田さんは・・・僕が大いに盗むべきすべを持っている調査官だ。” そしてひと言、つぶやいた。 「・・・仕事以外は別として、だけど。」 (次ページへ) (前ページへ) 澤村トッカンとの出会い、そして次の試練 暖かい日差しの中、足元でじゃれ合う2匹のミニチュアダックスフンドをあやしながら、昨日までの中身の濃い出来事を整理する多楠から、ふと大きなあくびが出た。 「しかし、なんて眠いんだ・・・。」 昨年法人課税第1部門に配属になったばかりのときも仕事に慣れるまでは毎日眠くて仕方がなかった多楠であったが、調査部門に配属になって・・・いや、新田さんと組んでいるからか、そのときの3倍くらい眠い日々が続いていた。 いつしか多楠は、公園で読もうと思って自宅から持ってきた法人税法のコンメンタールを枕に、ベンチで横になり居眠りをし始めた。コンメンタールの厚さが枕の替わりに、適度な硬さが快感へ。いくら休日とはいえ、現職の税務職員が公園のベンチで横になる様は何とも行儀の良いものではないが・・・・襲い来る・・・睡魔には・・・勝て・・・なかった・・・。 ▼   ▲   ▼ 夢の中、多楠の脳裏に現れたシーンは、昨日の夜、スナック『かわばた』であった。 京子ママ 「澤さん、本当に久しぶりね。今も竹橋税務署なの?」 “澤さん”と呼ばれている澤村トッカンは爽やかに笑って言った。 「そう3年目、もう完璧な窓際族だよ! はいこれ、ママにお土産!」 「あら“魚八の京粕漬け”、わたし大好物なの、うれしい!」 澤村は京子ママと少し話をした後、スタスタと奥のテーブルに向かった。 そこで待っていたのはもちろん新田である。 多楠からは暗くて新田たちの顔が見えないが、ときどき2人の笑い声が聞こえる。奥には2人しかいない。 多楠は驚いた。 “新田さんの笑い声、初めて聞いたな・・・” 入り口近くのカウンターに1人座り、奥の方を盛んに気にしている多楠を見て、京子ママが笑いながら言った。 「あの2人、仲がいいのよね。」 「2人は昔、三田税務署の特調のときの統括官と部下の調査官で、新田チャンを最初にこの店へ連れてきたのが澤さんなの。当時は毎日のようにこのお店に来ていたわ。今座っている席でいつもおしゃべりして、カラオケを歌っていたの。もう何年前になるかしら。」 京子ママから、特別調査部門の略称で税務職員しか知らないはずの“特調”という言葉があまりにも自然に飛び出したのにはびっくりした。 しかし、何よりも驚いたのは “新田さんが笑うなんて・・・そんなこともあるんだ。” ▼   ▲   ▼ それから1時間もたたないうちに、奥から澤村が出てきて多楠の元へやってきた。 多楠は硬直した。 「やぁ、初めまして! 僕は竹橋署のトッカンで澤村と言います。君が多楠君だね。新田君とペアなんだって? 勉強になるだろう。諦めないで新田君について行けば、きっといいことがあるはずだよ。」 「は、はぁ・・・ありがとうございます。」 とうなずくしかない多楠であった。 澤村は人懐っこい笑顔を浮かべると 「じゃあママ、悪いけど、俺帰るね。」 京子ママ 「あらいやだ、せっかく来たのにもうお帰り?」 照れた様子の澤村。 「カナダに留学している娘にこれから電話しなきゃならないんだよ。あんまり酔っぱらってから電話すると叱られるからね。」 京子ママ 「あら、本当に娘さんなの?これからどこかの美女とデートじゃないの?」 澤村は照れくさそうに笑って言った。 「いやだな。本当だよ。また今度ゆっくり来るね。多楠君、ガンバって!じゃあ!」 多楠は、澤村が出て行く様子を呆然と見ていた。 “何ともせわしい人だ・・・” 残された新田がまた一人、カラオケを歌いはじめる声が聞こえた。 ▼   ▲   ▼ 多楠がまどろみから戻ると、公園の林を抜けて少し風が吹いてきた。頬を舐める2枚の生温かい舌にビックリして目を開ける多楠。魚眼レンズで見たように、2匹のダックスフンドの顔が目の前に大きく現れた。 多楠はあまりの可愛さに2匹の犬を一度に抱きしめると、むくっとベンチから起き上がり、公園内のジョギングコースへと向かって歩きはじめた。 県立公園である行田公園の隣には、広大な敷地に税務大学校東京研修所が建っている。 公園を抜け、研修所前の一方通行の小路を歩いて、里山の雰囲気がそこかしこに残っている船橋市近郊の畑の中の道を、多楠と短い脚の2匹のミニチュアダックスフンドがちょこちょこと歩いて行った。 ▼   ▲   ▼ 翌週の月曜日、淡路と昼食を終え席に戻った多楠は、田村統括官に呼ばれた。 田村の側には、すでに新田と小泉調査官が立っていた。 多楠はニヤけた表情を浮かべている田村を見て、少しの緊張を覚えた。最近わかってきたことだが、こんなときの田村は、たいてい何やら企てをしている。 田村は多楠が席までやって来るとおもむろに言った。 「多楠君、御徒町駅の近くにあるすし屋を調査してほしいんだ。小泉調査官の事案なんだけど、1人で無予告調査は難しいから、新田・多楠ペアに手伝ってほしいんだよ。」 「ハイ?・・・・・」 急な話で戸惑う多楠、 「多楠君、無予告調査は初めてかな。無予告調査も経験しておかないとネ。2人の先輩からよく教わるといいよ。じゃぁ新田君、小泉君の支援を頼むね。」 普段から物静かな小泉調査官が、2人に深々と頭を下げた。 「新田さん、多楠君、よろしくお願いします。」 3人はさっそく調査の打ち合わせに入った。 急に舞い込んできた事案、着手は明日の10時、なにやら気忙しく、緊迫した感じがしてきた。 多楠にとって初めてとなる無予告調査。 実は大きな試練が、多楠を待ち構えていた。 (続く)

#No. 113(掲載号)
#堀内 章典
2015/04/02

《速報解説》 金融庁より「有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項について(平成27年3月期版)」及び「有価証券報告書レビューの実施について(平成27年3月期以降)」が公表~退職給付に関する注記等で『適切でない事例』を紹介~

《速報解説》 金融庁より「有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項について(平成27年3月期版)」及び「有価証券報告書レビューの実施について(平成27年3月期以降)」が公表 ~退職給付に関する注記等で『適切でない事例』を紹介~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成27年3月31日付で、金融庁は次のものを公表した。 平成27年3月期以降の有価証券報告書の作成に当たっては、これらに記載されている事項に特に注意し、適切に作成する必要があると考えられる。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 有価証券報告書の作成・提出に際しての留意事項 「有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項について(平成27年3月期版)」では以下の事項が述べられており、有価証券報告書の作成に際しては注意が必要である。 1 新たに適用となる開示制度・会計基準に係る留意すべき事項 2 平成26年度有価証券報告書レビュー(重点テーマ審査)を踏まえた留意事項 現在、実施中である平成26年度有価証券報告書レビュー(重点テーマ審査)に関して、現在までに把握された事象を踏まえた留意すべき点として、次の事項を述べている。   Ⅲ 有価証券報告書レビューの実施について(平成27年3月期以降) 今回は、重点テーマ審査として「退職給付」にかかる審査を実施するため、法令改正関係審査は実施しないとのことである。 1 重点テーマ審査 重点テーマ審査は、特定の重点テーマに着目して審査対象となる企業を抽出し、当該企業に対して所管の財務局等が個別の質問事項を送付し、回答を受けることで(ヒアリングを行うこともある)、より深度ある審査を実施するものである。 平成27年3月期以降の重点テーマは、以下のとおりである。 2 情報等活用審査 上記の重点テーマに該当しない場合であっても、適時開示や報道、一般投資家等から提供された情報等を勘案して、所管の財務局等から、個別の質問事項が送付されることがある。 「平成25年度有価証券報告書レビューの重点テーマ審査及び情報等活用審査の実施結果について」の別紙では、財務局等からの質問状には、次の観点も反映していると述べられており、本3月期の有価証券報告書の作成に際しても、下記の観点を十分に考慮し、開示の要否を判断すべきものと解される。 (了)

#No. 112(掲載号)
#阿部 光成
2015/04/01

《速報解説》 平成27年度税制改正に係る「所得税法等の一部を改正する法律」等が公布(3月31日付 官報:特別号外第11号)~参議院で可決・成立し同日公布、施行日は4月1日~

《速報解説》 平成27年度税制改正に係る 「所得税法等の一部を改正する法律」等が公布 (3月31日付 官報:特別号外第11号) ~参議院で可決・成立し同日公布、施行日は4月1日~   Profession Journal編集部   国会での審議が遅れていた平成27年度税制改正関連法である「所得税法等の一部を改正する法律」が、平成27年3月31日の参議院本会議で可決・成立し、同日夜に、3月31日付の官報特別号外第11号にて公布された(法律第9号)。施行日は平成27年4月1日(法附則第1条)。また地方税関係の改正法「地方税法等の一部を改正する法律」も官報同号にて公布された(法律第2号)。なお上記に関連する法令として、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則の一部を改正する省令」についても官報同号にて公布されている。 官報:平成27年3月31日付(特別号外第11号)で公布された主な税制関連法令 ※告示は割愛しています。 ◆所得税法等の一部を改正する法律 所得税法の一部改正(第1条関係) 所得税法施行令等の一部を改正する政令 所得税法施行規則等の一部を改正する省令 法人税法の一部改正(第2条関係) 法人税法施行令の一部を改正する政令 法人税法施行規則の一部を改正する省令 地方法人税法施行令の一部を改正する政令 相続税法の一部改正(第3条関係) 相続税法施行令の一部を改正する政令 相続税法施行規則の一部を改正する省令 登録免許税法施行規則の一部を改正する省令 消費税法の一部改正(第4条関係) 消費税法施行令の一部を改正する政令 消費税法施行規則の一部を改正する省令 たばこ税法の一部改正(第5条関係) 国税通則法の一部改正(第6条関係) 国税通則法施行令の一部を改正する政令 国税通則法施行規則の一部を改正する省令 租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律の一部改正(第7条関係) 租税特別措置法の一部改正(第8条関係) ・所得税関係 ・法人税関係 ・相続税関係 ・登録免許税関係 租税特別措置法施行令等の一部を改正する政令 ・所得税関係 ・法人税関係 ・相続税関係 租税特別措置法施行規則等の一部を改正する省令 ・所得税関係 ・法人税関係 ・相続税関係 税理士法の一部改正(第9条関係) 税理士法施行規則の一部を改正する省令 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う所得税法等の臨時特例に関する法律の一部改正(第10条関係) 内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律の一部改正(第11条関係) ※財産債務調書規定 内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律施行令の一部を改正する政令 内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律施行規則の一部を改正する省令 東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律の一部改正(第 13 条関係) 東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律施行令の一部を改正する政令 東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律施行規則の一部を改正する省令 東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関 する特別措置法の一部改正(第14条関係) 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の一部改正(第 15 条関係) 附則:施行期日・経過措置など ◆地方税法等の一部を改正する法律  ( 附 則 ) 地方税法施行令の一部を改正する政令 地方税法施行規則の一部を改正する省令 ※その他関係法令 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則の一部を改正する省令 減価償却資産の耐用年数等に関する省令等の一部を改正する省令 国税質問検査章規則等の一部を改正する省令 中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則の一部を改正する省令 (了)

#No. 112(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2015/03/31

《速報解説》 「監査及び四半期レビュー契約書の作成例」等が改正~改正会社法へ対応したひな型に~

《速報解説》 「監査及び四半期レビュー契約書の作成例」等が改正 ~改正会社法へ対応したひな型に~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成27年3月27日(ホームページ掲載日)、日本公認会計士協会は、次のものを公表した(改正の日付は、平成27年3月18日)。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 「監査及び四半期レビュー契約書の作成例」の主な改正内容 基本的に、「会社法の一部を改正する法律」に対応した改正であり、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社など、改正会社法においても利用できる表現が用いられている。 1 特定取締役及び特定監査役の範囲 特定取締役は、指名委員会等設置会社の執行役を含み(会社計算規則130条4項2号)、また、特定監査役は、監査等委員会設置会社については監査等委員、指名委員会等設置会社については監査委員が該当する(会社計算規則130条5項3号、4号)。 2 守秘義務に関する文例 守秘義務が解除される正当な理由(法規委員会研究報告第14号の契約書作成例様式1から11では監査約款(又は四半期レビュー約款)9条、様式12から14では監査約款10条)として、例えば以下のような文例で合意しておくことも考えられるとして、文例が紹介されている。   Ⅲ 「財務情報の保証業務等の契約書の作成について」の主な改正内容 「財務情報の保証業務等の契約書の作成について」(法規委員会研究報告第10号)は、公認会計士等が実施する業務のうち、任意の財務諸表等のレビュー業務及び合意された手続業務を中心に、業務の違いによる契約書作成ガイドラインを示すとともに、契約書作成に関する概括的内容を付け加えている。ただし、調製については、対象外としている。 今回の改正では、「Ⅵ 作成例」において、裁判の管轄に関する規定などの改正が行われている。 (了)

#No. 112(掲載号)
#阿部 光成
2015/03/31

《速報解説》 企業結合会計基準等の改正を踏まえた「有価証券上場規程施行規則」等の改正、「決算短信・四半期決算短信の作成要領」の改訂について~施行・適用は4月1日から~

《速報解説》 企業結合会計基準等の改正を踏まえた 「有価証券上場規程施行規則」等の改正、 「決算短信・四半期決算短信の作成要領」の改訂について ~施行・適用は4月1日から~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成27年3月26日、東京証券取引所は、「『企業結合に関する会計基準』等の改正に伴う有価証券上場規程施行規則等の一部改正について」を公表している。 また、「決算短信・四半期決算短信作成要領等」の一部改訂が行われており、「2015年3月版」として公表されている。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 有価証券上場規程施行規則等の一部改正 次のものが改正されており、2015年4月1日から施行される(改正規定施行の日前に開始した連結会計年度に係るものについての付則に注意)。 今回の改正は、「企業結合に関する会計基準」等の改正を踏まえた「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」の改正に伴うものであり、次のように用語の変更などが行われている。 「少数株主持分」 ⇒ 「非支配株主持分」 「連結当期純利益」 ⇒ 「親会社株主に帰属する当期純利益」   Ⅲ 決算短信・四半期決算短信作成要領等の一部改訂 「決算短信・四半期決算短信作成要領等(2015年3月版)」では、主な変更箇所を青字・下線で表示している。 主な改訂内容は次のとおりである。 四半期決算短信(サマリー情報)及び四半期決算短信(サマリー情報)の記載上の注意事項も同様に変更されている。 「決算短信・四半期決算短信作成要領等(2015年3月版)」は、2015年4月1日以後開始する連結会計年度の通期決算及び各四半期決算に係る決算短信及び四半期決算短信から適用し、早期適用はできないこととされている。 (了)

#No. 109(掲載号)
#阿部 光成
2015/03/31
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