検索結果

詳細検索絞り込み

ジャンル

公開日

  • #
  • #

筆者

並び順

検索範囲

検索結果の表示

検索結果 10270 件 / 9851 ~ 9860 件目を表示

〔知っておきたいプロの視点〕病院・医院の経営改善─ポイントはここだ!─ 【第8回】「DPC/PDPSにおける機能評価係数Ⅱ」

〔知っておきたいプロの視点〕 病院・医院の経営改善 ─ポイントはここだ!─ 【第8回】 「DPC/PDPSにおける機能評価係数Ⅱ」   東京医科歯科大学医学部附属病院 特任講師 井上 貴裕   DPC/PDPSにおける機能評価係数Ⅱは、第5回で掲載した図表5に示すように、6項目から構成されている。 (【第5回】より再掲) 図表5 機能評価係数Ⅱの見直し 2012年度診療報酬改定において、地域医療係数、救急医療係数、データ提出係数については多少の変更が加えられたが、基本的な仕組みは変更されず、今後も大きな方向性は変わらないものと予想される。 2012年度診療報酬改定では、医療機関群(Ⅰ群・Ⅱ群・Ⅲ群)の設定が行われ、DPC対象病院全体で評価された項目(データ提出係数、効率性係数、救急医療係数)と医療機関群ごとに評価された項目(複雑性係数、カバー率係数、地域医療係数)に分かれた。これらは医療機関の質的側面を評価したものであり、DPCに参加するか否かにかかわらず、今、急性期病院に求められていることが凝縮されている。 A) データ提出係数 DPC/PDPSでは、適切なデータを提出することが極めて重要であり、院内で一生懸命行っているベンチマーク分析は、データが正確でなければその意義が薄れてしまう。このデータ提出係数は、DPC/PDPSの中で今後さらに重要性が増すことが予想される。 2012年度改定では、データ提出については、新たに精査した「部位不明・詳細不明のコード」の使用割合が20%以上の場合に減算が行われ、従来の40%よりも厳しくなった。また、今後は、郵便番号やがんのステージなどの必須項目への入力が適切に行われない場合には減算が行われる予定になっている。 B) 効率性係数 効率性係数は、包括評価の対象となっている診断群分類において、在院日数を短縮する努力が評価されたものである。 在院日数の短縮は、患者1人1日当たりの入院診療単価を高めるだけでなく、効率性係数においても評価されていることから、DPC/PDPSの環境下では、在院日数の短縮が成長のための重要な鍵を握っている。つまり、ベッドコントロールが病院経営にとって重要であることを意味している。 ただし、この効率性係数は、平均在院日数を単純に短くすることとは異なる側面を有している。DPC/PDPSでは診断群分類ごとに入院期間Ⅱ(全国の平均日数)が決まっており、その日数と比較して長いか短いかを検討することが、この係数の向上につながる。 ただでさえ短い日数の患者を無理やり短縮するよりも、全国平均と比べて長い疾患の患者を短縮する方が合理的である。 C) 複雑性係数 複雑性係数は、各医療機関の患者構成の差を1入院当たり点数に補正して評価したものであり、重症な患者割合を表している。 ここでいう重症とは、全国平均でみたときに在院日数が長く、1入院当たりの包括点数が高い疾患がどのくらいの割合を占めているかが評価されている(自院で在院日数が長いか短いかが評価されたのではなく、全国平均の在院日数であることには注意が必要である)。 つまり、白内障などの短期入院が多い病院では、複雑性係数は低くなるし、がんや脳卒中などの患者が多い病院は複雑性係数が高くなる。複雑性係数は、どのような疾患の患者を診ているかが評価されたものであり、在院日数が短い疾患は手がかからないのであろうという前提が置かれている。 なお、患者構成については、中長期的には変更することができるかもしれないが、短期では医師の大量退職や入職がない限り、ほとんど変わらない。その際にできることは、副傷病名を実態に合わせて入力することである。 副傷病名とは、疾患コード・疾患名を決定するに至った主傷病名以外の傷病名であり、入院時併存症と入院後発症疾患の両方が含まれている。漏れがちな病名記載を患者の病態に合わせて適切に行うことが必要となる。 DPC/PDPSは包括払いだから主病名以外の病名を記載しなくていいということは、全くの誤りである。入院中に行った診療行為すべてをきちんと記録するように心掛けることが求められている。 D) カバー率係数 カバー率係数は、多様な疾患への対応力を持つ総合的な医療機関が評価されたものである。つまり、医療機関の総合性を表している。 診断群分類のカバー率が高いということは、いつ来るか分からない患者へも対応するだけのマンパワーと設備を有しているので、そのことを評価しようという意味である。 図表1に示すように、カバー率はDPC算定病床数と有意な相関がみられ、規模が大きい病院ほど高くなる傾向がある。ただし、同規模病院でも専門病院などは不利な扱いを受ける傾向がある。 診断群分類を決定する際にあまりにもパターン化しすぎるとカバー率は低下する恐れがある。実態に合わせたコーディングを行うことにより、適切な評価を受けることができることできる。 図表1 カバー率と病床数の分布   E) 救急医療係数 救急医療係数は、救急医療入院患者について、入院後2日目までの包括範囲出来高点数と診断群分類点数表の設定点数の差額の総和を症例当たりに補正したものである。救急医療入院における入院初期の医療資源の投入量が多い場合の損失分が評価されている DPC/PDPSは包括払いであるから、検査や投薬を行い過ぎると赤字になると捉えられることが多い。しかし、救急医療入院の場合には、入院から2日目まではこの係数で補填されているので、予定入院とは性格が異なることには留意すべきである。 F) 地域医療係数 地域医療係数は、地域医療への貢献が評価されたものである。災害拠点病院やがん診療拠点病院の承認などの体制評価指数が半分のウェイトを占めている。 さらに、2012年度診療報酬改定から、医療機関が所属する地域の患者シェアが用いられており、小児(15歳未満)とそれ以外(15歳以上)について定量評価が行われている。体制評価については、4疾病5事業に係る関連事業のうち、特に入院医療において評価すべき項目であって、客観的に評価できる項目が採用された。 地域医療係数は、都市部に位置する病院には不利な傾向があり、中山間部やへき地で地域医療を支える病院に有利な傾向がある。 (了)

#No. 19(掲載号)
#井上 貴裕
2013/05/16

《速報解説》 産活法に関連する会計監査に係る監査上の取扱い(公開草案)の解説

《速報解説》 産活法に関連する会計監査に係る 監査上の取扱い(公開草案)の解説   公認会計士 阿部 光成   平成25 年4月24 日、日本公認会計士協会(監査・保証実務委員会)は、次の公開草案を公表した。 意見募集期間は平成25年5月15日(水)までである。 公開草案の本文は、日本公認会計士協会のホームページから入手できる。 今般、これらの公開草案が公表されたのは、①「産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法」(以下「産活法」という)の改正への対応と②新たな会計基準の公表や監査基準の改訂等に対応するためである。 本稿では、これら公開草案について解説を行う。 公開草案は、経済産業省から平成25年4月24日付けで公表された「債権放棄を含む計画Q&A(改訂版)」の内容と密接に関連しているので、同Q&Aもお読みいただきたい。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅰ 監査上の取扱い(案)について 1 対象 産活法の適用に当たり、従来から会社法監査又は金融商品取引法監査を受けている会社は、当該法定監査を受けた貸借対照表及び損益計算書を添付することとなる。このため、監査上の取扱い(案)は、産活法の適用により初めて監査を受ける会社を対象としたものである(監査上の取扱い(案)4項)。 また、会社法監査のみを受けている会社においては、産活法の適用により半期報告に添付される貸借対照表及び損益計算書の監査に当たり、監査上の取扱い(案)を適用することとなる(監査上の取扱い(案)5項)。 2 監査対象となる貸借対照表及び損益計算書 主務大臣から債権放棄を含む計画の認定を受けた会社は、認定を受けた債権放棄を含む計画(以下「認定計画」という)の実施期間の各事業年度における実施状況、及び事業年度開始以後6ヶ月間の実施状況について主務大臣に報告するに当たり、公認会計士等の監査を受けた貸借対照表及び損益計算書を添付する(産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法施行規則48 条7項)。 「債権放棄を含む計画Q&A(改訂版)」Q4では次のことが述べられているので、注意が必要である(監査上の取扱い(案)6項)。 3 監査の実施時期等 産活法に基づく監査は、産活法適用の申請及び認定という手続を受けて行われるため、その監査委嘱の時期及び監査の実施時期は通常の監査とは異なる場合が想定される(監査上の取扱い(案)7項)。 産活法に基づく監査は、その認定時期により次の計算書類の監査が必要となる。 4 監査契約に係る予備的な活動 監査契約に係る予備的な活動として、監査契約の十分な理解に関して、監査基準委員会報告書210「監査業務の契約条件の合意」において要求される事項など、監査基準委員会報告書300「監査計画」5項及び12 項の規定に基づき実施する必要がある。 監査契約の締結に伴うリスクを評価については、慎重に判断することが必要と考えられる(監査上の取扱い(案)8項~13項)。 5 資産の評価その他の会計処理 認定計画においては、企業再生のための抜本的な事業の見直しや今後事業に供さない資産の処分等の計画が織り込まれる。このため、会計監査上のポイントとしては、資産評価に重点が置かれることが多いと考えられる。 監査上の取扱い(案)で述べられている次の事項については、認定事業者の会計処理上、特に留意が必要と思われるものを例示列挙したものであり、従来の会計基準と異なる新たな処理方法等を示したものではないとしているので、実務への適用に際しては注意が必要と考えられる(監査上の取扱い(案)15項~23項)。 6 監査手続に関する留意事項 法定監査を受けていない会社は、産活法の適用により初めて監査を受けることとなる。この際、次の事項と共に、監査基準委員会報告書510「初年度監査の期首残高」にも注意する(監査上の取扱い(案)25項~34項)。 7 監査範囲の制約 監査範囲の制約が存在する場合には、監査基準委員会報告書705「独立監査人の監査報告書における除外事項付意見」に基づき対応することとなる(監査上の取扱い(案)35項)。 8 監査人の責任 監査人の責任は、計算書類又は臨時計算書類について、独立の立場から、我が国において一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して監査を行い、監査意見を表明することにある(監査上の取扱い(案)36項)。 監査報告書は、認定事業者の認定計画における将来予測の正確性や適正性を保証するものではないことに留意する。 監査報告書の文例としては、文例1から文例4が掲載されている(監査上の取扱い(案)37項)。 そのほかの除外事項付意見の監査報告書の記載方法については、監査・保証実務委員会実務指針第85号「監査報告書の文例」に基づくこととなる。 9 継続企業の前提との関連 監査基準委員会報告書570「継続企業」に基づき慎重な対応をすること、監査基準委員会報告書560「後発事象」及び監査・保証実務委員会報告第76 号「後発事象に関する監査上の取扱い」に基づいて後発事象に関する検討を行うことが述べられている(監査上の取扱い(案)38項、39項)。 10 初めて監査を受けることとなった決算期(臨時会計年度)の取扱い 監査契約の締結時期により監査範囲の制約を受けた場合は、その重要性を勘案し、監査範囲の制約の影響につき除外事項を付した限定付適正意見を表明するか、又は意見を表明しないこととなる(監査上の取扱い(案)40項)。   Ⅱ 研究報告(案)について 公認会計士又は監査法人は、事業再構築計画又は経営資源再活用計画(以下「事業再構築計画等」という)の認定の申請のために、申請事業者が申請書に添付する「資金計画に係る公認会計士又は監査法人の報告書」を作成するための業務を申請事業者から依頼されることがある。 当該業務は、公認会計士等が申請事業者との間で合意の上で手続を実施し、その実施結果の事実を申請事業者に報告する、「合意された手続業務」として実施される。 研究報告(案)は、会員の実務の参考に資するように、このような合意された手続業務を実施する上での留意事項を提供するものである。 実際の業務の実施に当たっては、監査・保証実務委員会研究報告第20号「公認会計士等が行う保証業務等に関する研究報告」が参考となる。 1 公認会計士等による報告書の目的並びに利用及び配布の制限 「資金計画に係る公認会計士又は監査法人の報告書」は、申請事業者の事業再構築計画等の認定申請に関連して、産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法施行規則4条3項又は9条3項において定める「資金計画」に記載された計算式及び計算結果が、「我が国の産業活力の再生及び産業活動の革新に関する基本的な指針」二 イ 「2 事業再構築による財務内容の健全性の向上に関する目標」の①及び②に定められた計算式、及びこれに関連する「貸借対照表等の予想推移」に基づくものであるか否かに関して、報告書の利用者による評価に資することを目的として作成されるものである。 「貸借対照表等の予想推移」とは、債権放棄を前提に申請事業者により策定される事業再構築計画等の申請において申請事業者によって作成された対象期間中における貸借対照表及び損益計算書等の予想推移をいい、「資金計画」とは「貸借対照表等の予想推移」並びに「貸借対照表等の予想推移」に基づく上記の計算式及び計算結果を示す書類をいう。 「資金計画に係る公認会計士又は監査法人の報告書」は、合意された手続業務の性質や実施された手続の内容、報告書の目的を十分に理解した者のみが利用すべきものであり、認定申請以外の目的による配布又は利用を制限する旨を記載することが必要となる。 このため、上記報告書の想定利用者は、認定申請の関連者である申請事業者及び申請先である主務官庁に限られる。 主務官庁は報告書の利用者であるが、公認会計士等と個別の業務ごとに実施する手続について合意することなく業務を実施することとなる。 監査・保証実務委員会研究報告第20号においては、業務実施者が報告書の利用者との間で実施する手続について合意ができない場合があるとされており、「資金計画に係る公認会計士又は監査法人の報告書」の作成業務はそのような例外的な場合に該当する。 2 実施手続 報告書作成業務のために公認会計士等が実施する手続は、通常、以下のとおりである。 (1)の手続において、計算式の中に、「資金計画」から直接的に確かめることができない項目や金額があった場合には、当該部分について「資金計画」の修正又は明細書の添付を申請事業者に要請した後、修正後の「資金計画」等の項目及び金額が、前述の計算式の項目及び金額と一致していることを確かめる。 計算式に含まれる項目の定義等については、「我が国の産業活力の再生及び産業活動の革新に関する基本的な指針」の備考として記載されているが、その解釈に関しては、主務官庁の解釈に従うこととし、必要に応じて、その都度主務官庁に確かめる。 なお、研究報告(案)では、「公認会計士等の報告書の文例」が掲載されている。 3 公認会計士等の責任 報告書作成業務は、一般に公正妥当と認められる監査、レビューの基準、又はその他の保証業務の基準に基づく保証業務ではないため、「資金計画」に記載されている計算式に含まれる貸借対照表等の予想推移について監査意見又はレビューの結論を表明するものではない。 報告書作成業務は、その実施する手続の実施結果の事実のみを報告するものであり、「資金計画」の適正な表示やその将来予測の正確性を保証するものではない。 (了)

#No. 18(掲載号)
#阿部 光成
2013/05/10

中小企業のM&Aでも使える税務デューデリジェンス 【第1回】「買収の形態により異なる税務の取扱い」

中小企業のM&Aでも使える 税務デューデリジェンス 【第1回】 「買収の形態により異なる税務の取扱い」   公認会計士・税理士 並木 安生   1 はじめに 昨今、オーナー株主が保有する中小企業に対して、M&A(合併と買収)の話が持ち上がるケースが非常に多い。 その際、買収の手法・形態ごとの税務上の取扱いを予め理解しておくことで、不測の納税が生じてしまう等のリスクを回避・軽減することができる。 また、その買収形態並びに買収価額については、いわゆる「税務デューデリジェンス」の結果に基づき決定されることが多いため、その手続や考え方を理解しておくことも非常に有用である。 税務デューデリジェンスとは、資料の閲覧・計算チェックや税務責任者やマネジメントへの質問を通じて、買収対象会社の過年度における税務の状況を把握・検討・分析し、税務リスク(将来の税務調査で追徴課税を受けるリスク)を洗い出す手続である。 そこで本連載では、現在の中小企業が遭遇する様々なM&Aのケースにおいて、この税務デューデリジェンスの手法を有効に活用する方法と考え方について解説することとする。 まず第1回では、税務デューデリジェンスの具体的な内容を解説する前に、買収の各形態の内容及びその税務上の取扱いやポイントについて、事例を交えて解説する。   2 買収の形態 A社のオーナー株主(個人)が、競合他社(B社)から買収の申し出を受けたとする。この際、その買収の手法・形態によって税務上の取扱いが相違することになる。 以下、数値例を用いて解説する。 《A社に係る前提》 ●X事業とY事業を運営しており、税務上の各数値は下表のとおりである。 ●青色繰越欠損金100を有している。 ●負債は存在しない。 ●オーナー株主におけるA社株式の簿価は400である。   ① 株式譲渡(現金で株式を購入するケース) オーナー株主が、競合他社(B社)から自社(A社)株式を譲ってもらえないかとの申し出を受け、A社株式売却の代金として現金を受け取るものとする(図①)。 これは、「株式譲渡」という最も一般的な買収形態である。 図① 株式譲渡 [ステップ1] [ステップ2] 株式譲渡取引は原則として組織再編税制の対象ではないため、いわゆる「適格要件」を判定する必要はない。 そのため、本事例の下では、買収対象会社A社が保有する資産の含み益100等が、A社において課税対象となることはない。 また、売り手となるオーナー株主側では、譲渡価額(事業価値880)とA社株式簿価400の差額480が課税対象の譲渡益として認識されることになる(所得税における申告分離課税の対象)。 ただし、本事例のように買収時点において買収対象会社A社に含み損のある資産や青色繰越欠損金がある場合、欠損等法人(法法57の2)に該当することで、含み損のある資産の売却による損失や青色繰越欠損金に対して、A社において損金算入制限が将来課される可能性がある点に注意されたい。 ② 株式交換(株式で株式を購入するケース) オーナー株主が、競合他社(B社)から自社(A社)株式を譲ってもらえないかとの申し出を受け、B社(買い手)株式をA社株式売却の代金として受け取るものとする(図②)。 これは「株式交換」という買収形態であり、買い手にとっては手許に資金(現金)がなくとも買収が実行できる点にメリットがあり、広く利用されている手法である。 図② 株式交換 [ステップ1] [ステップ2]   株式交換は組織再編税制の対象となる取引であり、適格要件の判定が必須となる。適格要件を満たさない場合は非適格株式交換となり、買収対象会社A社の一定の資産に係る評価損益を税務上認識しなければならない。 本事例の下で、A社の有するすべての資産及び正ののれんが評価損益の対象となる場合、A社では評価益280が課税対象として認識される(ただし、青色繰越欠損金100との相殺が可能である)。なおA社で認識された正ののれん200はその償却費が将来損金算入できるため、租税の削減効果が享受できることになる。 また、売り手となるオーナー株主側では、譲渡価額(事業価値の880)とA社株式簿価400の差額480が譲渡益として原則認識されるが(所得税における申告分離課税の対象)、この株式交換が金銭等交付を伴わない場合(本事例のようにB社株式のみオーナー株主へ交付される場合)、適格要件を満たすかどうかにかかわらず、例外的に譲渡益は繰延対象となる。 ③ 事業譲渡(現金で事業を購入するケース) 自社(A社)が、競合他社(B社)から事業(X事業)を譲ってもらえないかとの申し出を受け、譲渡代金としてA社が現金を受け取るものとする(図③)。 これは「事業譲渡」という買収形態であり、売り手が複数の事業を運営している下で特定の事業のみを譲り受けたい場合に、従来から広く利用されている手法である。 図③ 事業譲渡 [ステップ1] [ステップ2] 事業譲渡は、組織再編税制の対象ではなく単なる資産の譲渡取引であるため、税務上時価で譲渡されたものとして取り扱う必要がある。 本事例では、税務上の簿価500である資産を有する事業を譲渡価額800(事業価値)で売却するため、A社で譲渡益300が生じることになる。また、B社側では正ののれん(資産調整勘定)200が認識され、その償却費が将来損金算入できるため、租税の削減効果が享受できることになる。 ④ 分社型分割後の株式譲渡(事業の分社化後に現金で株式を購入するケース) 自社(A社)が、競合他社(B社)から事業(X事業)を譲ってもらえないかとの申し出を受けた際、まず譲渡対象のX事業をA社から分社化した後にその子会社(C社)株式を売却し、代金として現金をA社が受け取るケースがある(図④)。 これは分社型分割と事業譲渡をセットにした買収形態であり、売り手が複数の事業を運営している下で特定の事業のみを株式の形態で買収したい場合に有効な手段である。 図④ 分社型分割+株式譲渡 [ステップ1] [ステップ2] この分社型分割は、組織再編税制の対象となる取引である。 本事例ではC社株式のすべてを買い手に譲渡することから、適格要件の判定結果は非適格分割となるため、税務上の簿価500である資産を有する事業を譲渡価額800(事業価値)で分社化した場合、分割時点でA社において譲渡益300が生じることになる。 買収対象会社C社では、正ののれん(資産調整勘定)200が税務上認識されることになり、償却費の損金算入により将来に租税削減効果が享受できることになる。なお、上記②の株式交換と比べて、この買収形態の下ではC社で正ののれん額に対応する評価益が認識されず、代わりに資本金等の額が認識されることになる。   3 まとめ 以上のように、いずれの買収形態を選択するかで、オーナー株主、買収対象会社並びに買い手の課税関係が異なることになる。 また、選択した(選択する予定の)買収形態に従い、税務デューデリジェンスを実施する必要性も異なることになるが、詳細については次回解説する。 (了)

#No. 18(掲載号)
#並木 安生
2013/05/09

雇用促進税制・所得拡大促進税制の実務 ~要件・手続の確認から両制度の適用比較まで~ 【第3回】「所得拡大促進税制の要件確認及び適用上の留意点」

雇用促進税制・ 所得拡大促進税制の実務 ~要件・手続の確認から両制度の適用比較まで~ 【第3回】 「所得拡大促進税制の要件確認 及び適用上の留意点」   公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎   1 はじめに 平成25年度税制改正大綱において創設されることが明らかとなった「所得拡大促進税制」(雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除)に関し、関連する法律、政令並びに省令が平成25年3月30日付で公布されたことにより、その詳細が明らかとなった。 そこで今回は、所得拡大促進税制を適用する際の要件を確認し、留意すべき点について解説を行う。 なお、内国法人以外の法人及び連結納税に係る部分は対象外とし、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることを予め申し添える。   2 所得拡大促進税制の概要 青色申告法人が平成25年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始する各事業年度(以下「適用年度」という)において国内雇用者に対して給与等を支給する場合において、以下の①~③の要件を満たすときには、その雇用者給与等支給増加額の10%の税額控除ができる。ただし、法人税額の10%(中小企業者については20%)を限度とする(改正措法42の12の4①)。 さらに中小企業者については、適用年度における道府県民税及び市町村民税(法人税割)の額も、税額控除後の法人税額を基礎として計算される(地方税法附則8⑨)。 これを図示すると、以下のようになる。 (経済産業省ホームページ「平成25年度税制改正について」より) ※PDFファイル   3 用語の意義 (1) 国内雇用者 法人の使用人(法人の役員、その役員の特殊関係者及び使用人兼務役員を除く)のうち、その法人の有する国内の事業所に勤務する一定の雇用者をいう(措法42の12の4②一)。 そして、税制改正大綱及び税制改正法案段階では明らかではなかった「雇用者」が満たすべき要件が政令により明らかとされた。 すなわち、所得拡大促進税制の対象となる「雇用者」とは、その法人の国内に所在する事業所につき作成された労働基準法108条に規定する賃金台帳に記載された者をいう(措令27の12の4②)。 賃金台帳は、労働基準法により作成が義務付けられているものであるから、すべての労働者について作成されることとなる。つまり、正社員のみならず、嘱託社員、派遣社員(*追記参照)、パートタイマー、アルバイト、日雇労働者も対象となる。この点、雇用促進税制における「雇用者」※よりも範囲が広い点に留意する必要がある。 ※雇用促進税制における「雇用者」とは、法人の使用人(法人の役員及びその役員の特殊関係者並びに使用人兼務役員を除く)のうち、雇用保険の一般被保険者に該当するものをいい、高年齢雇用者(高年齢継続被保険者)は含まれない(措法42の12②二、三)。   (2) 雇用者給与等支給額 適用年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額をいう(措法42の12の4②三)。 ここでいう「給与等」とは、所得税法28条1項に規定する給与等をいう(措法42の12の4②二)。具体的には、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与をいう(所法28①)。 雇用者給与等支給額については、その給与等に充てるため他の者から支払いを受ける金額がある場合には、その金額を控除した金額とする※点に留意が必要である。 ※「他の者から支払いを受ける金額」を控除することについては、雇用促進税制における「給与等支給額」と同じような規定ぶりとなっているため、その具体的な内容は雇用促進税制における通達(措通42の12-2)が参考になると思われる(第1回を参照)。ただし直接的には、その取扱いが明らかとされていないため、今後通達が整備される可能性があると考える。   (3) 基準雇用者給与等支給額 基準事業年度(平成25年4月1日以後に開始する各事業年度のうち最も古い事業年度(以下単に「最も古い事業年度」という)開始の日の前日を含む事業年度)の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額をいう(措法42の12の4②四)。 基準事業年度の月数と適用年度の月数が異なる場合には、基準雇用者給与等支給額について以下の調整を行う(措法42の12の4②四ロ) その法人が平成25年4月1日以後設立されたものである場合(合併、分割又は現物出資により設立されたものである場合を除く)、基準事業年度がないこととなる。 このときの基準雇用者給与等支給額は、最も古い事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者等に対する給与等の支給額の70%相当額とする(措法42の12の4②四ハ)。 (4) 比較雇用者給与等支給額 適用年度の前事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額をいう(措法42の12の4②五)。 前事業年度の月数と適用年度の月数とが異なる場合には、比較雇用者給与等支給額について以下の調整を行う(措法42の12の4②五ロ)。   (5) 平均給与等支給額 適用年度における一定の給与等支給額を、一定の給与等支給者数で除して計算した金額をいう(措法42の12の4②六)。 平均給与等支給額の計算に用いられる「給与等支給額」は、雇用者給与等支給額から日雇労働者に係る金額を控除した金額であり(措令27の12の4⑪)、「給与等支給者数」は、適用年度に含まれる各月ごとの給与等の支給の対象となる国内雇用者(日雇労働者を除く)の数を合計した数である(措令27の12の4⑫)。 具体的な計算イメージは、下表を参照されたい。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 このように、平均給与等支給額の算定上、分母及び分子から日雇労働者に係る部分を控除することとされているが、これはあくまでも平均給与等支給額の算定局面のみの取扱いであり、控除税額の計算における国内雇用者給与等支給増加額の計算には影響しない(日雇労働者も国内雇用者に含めて計算する)点に留意が必要である。 (6) 比較平均給与等支給額 適用年度の前事業年度における平均給与等支給額((5)により算定)をいう(措法42の12の4②七)。   4 適用要件 本税制の適用を受けるためには、確定申告書等、修正申告書又は更正請求書に所定の計算明細書※を添付する必要がある。この場合における控除税額は、その確定申告書等の添付書類に記載された雇用者給与等支給増加額を基礎として計算した金額が限度となる(措令27の12の4④)。 ※なお、平成25年4月12日に交付された「法人税法施行規則の一部を改正する省令」(官報号外第80号)により、下記の申告書別表の様式が公表されている。 〈別表6(20) 雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除に関する明細書〉 このように本税制には、いわゆる「当初申告要件」が付されている。したがって、確定申告書等において本税制の適用を受けていない場合には、修正申告や更正の請求によって追加的に本税制の適用を受けることができないので留意が必要である。 また、雇用促進税制を適用する事業年度については、所得拡大促進税制の適用を受けることができない(措法42の12の4①)。すなわち、雇用促進税制※と所得拡大促進税制は、いずれかを選択適用するという関係にあるので、あわせて留意したい。 次回は、雇用促進税制と所得拡大促進税制との比較を通じ、選択適用上の留意点について考察していきたい。 (了)

#No. 18(掲載号)
#鯨岡 健太郎
2013/05/09

入院による臨時改定と日割計算の役員給与

入院による臨時改定と 日割計算の役員給与   税理士 妹尾 明宏   Question 年1回3月決算法人である当社は、毎月末に役員給与を支給しています。 X年9月15日から役員の1人が病気のため3ヶ月程度入院することになりました。そこで、毎月80万円の役員給与をX年9月は日割計算して40万円、X年10月からは支給なしとしました。 退院・療養後は、体調が万全でないながらもX+1年1月から週2回のみ出社できることとなったため、職務執行の程度を勘案して30万円の役員給与を支給することとしました。各減額・増額改定は、それぞれ取締役会を開催して決議しています。 この役員へ支給した役員給与は損金算入できるでしょうか。 Answer X年4月から8月まで、及びX+1年1月から3月までに支給された役員給与については損金算入される。 X年9月支給分については、検討を要するが損金算入されると考えられる。 ◆ 解 説 ◆ 1 定期同額給与の臨時改定事由   -病気のため職務の執行ができなくなった場合 役員給与のうち、定期同額給与、事前確定届出給与、利益連動給与に該当しないものは損金の額に算入されない(法法34)。 このうち定期同額給与について、会計期間開始日から3月経過日までにされる改定以外の改定があった場合に定期同額給与として認められるのは、その改定が臨時改定事由又は業績悪化改定事由に該当する場合に限られ、臨時改定事由は「職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情」とされる。 ご質問の「病気のため職務の執行ができなくなった場合」については、「役員給与に関するQ&A(国税庁)」P17の[Q5 臨時改定事由の範囲-病気のため職務が執行できない場合]において、役員の職務の内容の重大な変更その他これに類するやむを得ない事情があると認められることから、臨時改定事由に該当することが明示されている。   2 退院後に職務に復帰した場合の増額改定(X+1年1月から3月) 1で引用したQ&Aの[Q5]では、退院後に従前と同様の職務の執行が可能となったことにより、取締役会の決議を経て入院前の給与と同額の給与を支給することとする改定についても、「役員の職務の内容の重大な変更その他これに類するやむを得ない事情」に該当するとしている。 ご質問のように、リハビリや通院のため、復帰後に従前と同様の職務執行まではできないケースも当然に考えられる。 この場合、入院前の給与と同額でない支給額としても、臨時改定事由による改定であり、その前後の支給額が同額であれば定期同額給与に該当することになる。これは、何らかの事情により入院前よりもその役員の職務が増加し、入院前より支給額を増額した場合においても同様と考えられる。ただし、増額した場合は過大役員給与について検討が必要である。   3 日割計算で支給した役員給与(X年9月) 会社法上、役員報酬は会社との委任契約による包括的な委任の対価であり、役員ではない従業員給与のように締日の概念はなく、日割計算はなじまない。 ご質問のように月の途中で入院し、入院後は職務執行ができない場合においても、日割計算による一部の金額を支給するのではなく、前月までの支給額と同額を支給する、又は次月同様に支給をなしとすべきである。職務執行が停止する日を含む月の支給の有無は、会社の方針等にもよるため、どちらが適切か一概にはいえない。 しかし、職務執行の内容等が大幅に変更されたときに役員給与を改定することは法人税法上も予定されていることであり、予期しない偶発的な事由によって職務の期間が減少したことによる職務執行の量的な変更に合わせた役員給与を支給するという考え方も間違いではないと考えられる。 ご質問の場合は、X年9月は職務執行が通常月の1/2程度しかできないため支給も半額とし、X年10月から12月は職務執行がまったくできないため支給なしとする、いわば「入院」という一つの事象により臨時改定事由が2回発生したともいえるのではないか。そして一事業年度内に臨時改定事由が複数回発生したことにより複数回給与改定しても問題はない。 この2段階の減額改定が、その役員の職務執行の変化に適正に対応した改定であるならば、その前後の役員給与は定期同額給与に該当すると考えられる。   4 自主的返還の場合 ご質問と同様の効果を得る方法として、X年9月は前月と同額の80万円を支給し、その役員に自主的に40万円を会社へ返還(贈与)してもらって雑収入として計上することが考えられる(X年9月分を40万円とする取締役会決議は行わない)。 この処理の場合は、臨時改定事由による改定前後であるX年4月から9月及び10月から12月の支給額が同額であるため定期同額給与に該当する。この場合、返還した40万円はあくまで会社へ贈与したものであって、給与自体が40万円減額されることにはならないため、源泉所得税は80万円の給与支払いとして計算することになる。   5 過大役員給与の検討 ご質問の場合は、入院により職務執行ができないことから給与を減額しているが、減額せずに同額を支給し続けたときはどうなるであろうか。 この場合、定期同額給与には当然に該当するが、一方で長期にわたり職務執行ができないとすれば、その支給額が不相当に高額な部分の金額として損金不算入となり得ることも考慮しなければならない(法法34②)。 (了)

#No. 18(掲載号)
#妹尾 明宏
2013/05/09

小説 『法人課税第三部門にて。』 【第7話】「優良法人の税務調査(その1)」

小説 『法人課税第三部門にて。』 【第7話】  「優良法人の税務調査(その1)」  公認会計士・税理士 八ッ尾 順一   「田村上席、ちょっと・・・」 渕崎統括官が田村上席を呼ぶ。 田村上席は、自分の机で、納税者から預かった請求書をチェックしている。 「はい、すぐに行きます」 田村上席は、途中まで見ていた請求書の束を机に置いて、渕崎統括官の席に向かった。 「今度、優良法人の調査に行くから、君も同伴してくれないか?」 渕崎統括官は少し申し訳なさそうに言う。 「統括官が調査に行くのですか?」 田村上席は大きな声で確認する。 「そうだ・・・優良法人で、規模が少し大きいから、君にも手伝ってほしいんだ。まあ、3日ぐらい一緒に会社に行ってもらいたい・・・」 「ええ、それは構いませんが・・・来月の中旬にしていただけると、調査日程が比較的空いていて助かります」 田村上席は、自分の調査スケジュールを思い出しながら伝える。 「そうか・・・それじゃあ会社には、そのように連絡しよう」 渕崎統括官は、大きく頷く。 「・・・しかし、統括官も大変ですね。部下の調査の指示もしなければならないし・・・統括官自身も直接、調査をしなければならないし・・・」 田村上席は、渕崎統括官に同情する。 「まあ、中間管理職は仕方がない。年間2~3件の調査は、統括官もすることになっているからね。今回は優良法人だから、少し気が楽だよ・・・」 渕崎統括官は、少し笑みを浮かべた。 「この会社の調査履歴を読んでも、経理状況は良好で特に大きな問題は過去になかったから、そんなに手間はかからないと思う・・・」 田村上席は、渕崎統括官の机の上に置かれている申告書のファィルを見つめている。 そして、少し不満そうに、渕崎統括官に言った。 「しかし、優良法人に、そんなに調査時間を取らなくても・・・もっと悪質な納税者のところへ調査の時間を割いた方が良いと思うのですが・・・」 「・・・確かに、君の言うとおりかもしれない」 渕崎統括官は軽く頷いた後、自分を納得させるように言った。 「まあ、これも組織の規定だからな・・・」 渕崎統括官と田村上席は、会議室で、会長、その息子である社長、経理担当者の齋藤課長、そして吉田税理士の4人とテーブルを挟んで、会社の概要を聞いている。 「今の社長で、三代目ですよ」 会長は、簡単に会社の設立からの経緯を説明した。 その後、社長は、会社の現況を10分ぐらい説明すると、用事のため退席した。 しばらくして、渕崎統括官が話を切り出した。 「・・・すみませんが、御社の確定申告書を3期分見せてもらえませんか?」 税務署では、納税者から提出された確定申告書は、紛失の恐れがあるということで、署内から持ち出し禁止となっている。したがって、税務調査では、必要の都度、納税者の保管している確定申告書を見せてもらうことになっている。 会議室の隅には、段ボール箱がうずたかく積まれている。 田村上席は、経理担当者の齋藤課長に、直近の総勘定元帳の提出を求めた。 齋藤課長は、片隅に置かれてある一つの段ボール箱を開けて、一冊の分厚い総勘定元帳を取り出した。 田村上席は、段ボール箱の置かれている所まで行って、総勘定元帳を受け取る。 経費項目と給与等の源泉徴収関係は田村上席が調べることに、あらかじめ2人の間で決められていた。 「・・・ところで、会社更生手続で、このL社の債権(社債)を損失に処理していますが、これに関する書類を見せてもらえませんか?」 渕崎統括官は、申告書の内訳書に計上されている雑損失6,000万円の金額について確認をしている。 齋藤課長が、L社の更生計画案のファイル2冊を3階の事務室から持ってきた。 渕崎統括官は、その2冊のファィルを受け取ると、その中味を確認し始めた。そのファイルを何度もめくりながら、その日付を罫紙に記録している。 「・・・11月20日に、裁判所から免除額の通知があったのですよね」 齋藤課長に確認する。 「はい、そこには6,000万円が「免除される金額」として示されています」 「しかし、その後、債権者の合意書を求める書類が、ここにファイルされていますね・・・そして、この債権者の合意書の結果通知がここにありますけど・・・これって、翌年の2月27日となっていますが、これが最終的に、確定の日になるのでは・・・?」 渕崎統括官が尋ねる。なお、会社の決算日は、12月31日である。 「・・・えっ、裁判所からの免除額の通知日が・・・確定日でしょ・・・」 吉田税理士が立ち上がって、渕崎統括官に確認する。 渕崎統括官は黙ったまま、ファィルを見詰めている。 吉田税理士は、渕崎統括官の傍らまで行って、ファィルを覗く。 渕崎統括官は、黄色い附箋を更生計画案に何枚か付け、齋藤課長に、それらのコピーを依頼する。 「・・・・・・」 吉田税理士は、少し青ざめた顔で、渕崎統括官を見詰めた。 (つづく)

#No. 18(掲載号)
#八ッ尾 順一
2013/05/09

〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載18〕 海外子会社から受け取る役員退職金の取扱い

〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載18〕 海外子会社から受け取る 役員退職金の取扱い   税理士 郭 曙光     1 居住形態と課税範囲 A国に常駐することがなく、月に1週間程度のA国への出張で仕事を行っていたという事実から、甲は、日本の居住者に該当すると推定される。 非居住者であれば、国内源泉所得に対してのみ課税されるが、居住者の場合は、その国内及び国外で生じたすべての所得に対して日本の所得税が課税される。 このため、日本の居住者甲が海外子会社から受け取る500万円の役員退職金については、国内源泉所得に該当するか国外源泉所得に該当するかを問わず、その全額に対して日本の所得税が課税されることとなる。   2 退職所得に該当するのか否か 長年の勤労に対する報償を一時に支払う特性に配慮し、退職金については、総合課税ではなく、「退職所得」として他の所得と区分して分離課税の方法により課税される。 しかし、ご質問のような海外法人から支払われる退職金は、日本の所得税法における「退職所得」に該当するか否かという疑問が生ずる。 この点について、所得税法30条1項(退職所得)では、次のように規定している。 退職したことに基因して一時に支払われる給与は、退職所得に該当するとされてはいるが、日本法人から支払われるものなのか海外法人から支払われるものなのかについては問われていない。このため、ご質問の海外法人から支払われる退職金も日本の所得税における「退職所得」に該当し、課税されることとなる。   3 退職所得の金額と特定役員退職手当等 退職所得については、他の所得と分離して、「退職所得の金額」に所得税の税率を乗じて税額を求めることとされている。 「退職所得の金額」は、その年中の退職手当等の収入金額から、勤務年数に応じて計算された退職所得控除額を控除した残額の2分の1に相当する金額とされている(所法30②)。 ただし、平成24年度税制改正により、退職手当等のうち、特定役員退職手当等(注)に該当するものついては、上記の残額の2分の1とする措置が廃止された。平成25年分以後は、特定役員退職手当等に該当する「退職所得の金額」は、特定役員退職手当等の収入金額から退職所得控除額を控除した残額に相当する金額とされた(所法30②括弧書)。 (注) 特定役員退職手当等(所法30④) 特定役員退職手当等とは、退職手当等のうち、役員等としての勤続年数(以下、「役員等勤続年数」という)が5年以下である者が、退職手当等の支払いをする者からこの役員等勤続年数に対応する退職手当等として支払いを受けるものをいう。 なお、役員等とは、公務員や議員のほか、法人の取締役、執行役、監査役、理事等、法人税法2条15号(定義)に規定する役員を指す。 海外の法人における役職が、必ずしも内国法人における役職と一致するとは限らないが、ご質問の海外子会社A社の社長である甲が、日本の所得税法に規定する役員等に該当することには疑義がないと思われる。 なお、甲がA社社長として勤務した期間は3年5ヶ月間であるため、甲の役員等勤続年数は4年(1年未満の端数は1年に切り上げる)となり、ご質問の役員退職金は「特定役員退職手当等」に該当することとなる。 甲がA社から受け取った500万円の役員退職金に係る所得税額の計算は、以下の通りである。   4 確定申告等 退職手当等を日本国内の勤務先から受け取る場合は、その勤務先により源泉徴収される。退職手当等に係る納税額がそのまま源泉徴収されるのが一般的であるため、通常、課税関係は源泉徴収により終了する(注)。 しかし、日本の所得税の源泉徴収義務のない海外法人A社から支給されるご質問の退職金については、退職金の受給者本人が確定申告をして税額を清算する必要がある。 このため、甲は、翌年(平成26年)の2月16日から3月15日までの間に、「確定申告書B」及び「分離課税用申告書(第三表)」等を提出して確定申告を行う必要がある。 確定申告に当たっては、ご質問の退職金500万円に対して課税されたA国の所得税(外国所得税)がある場合は、一定の控除限度額を限度として、甲の所得税額から控除することができる。このため、外国所得税が課税されたことを証する書類を入手しておく必要がある。 なお、翌年以後4年以内に甲が貴社から退職手当等を受け取る場合の退職所得控除額は、海外子会社A社の勤続期間と貴社の勤続期間が重複している期間(3年。1年未満の端数は切り捨てる)を勤続年数とみなして計算した退職所得控除額を控除した後の金額となる点に留意する必要がある。 (了)

#No. 18(掲載号)
#郭 曙光
2013/05/09

会計リレーエッセイ 【第5回】「IFRS財務諸表は投資家にとって有用か?」

会計リレーエッセイ 【第5回】 「IFRS財務諸表は投資家にとって有用か?」   前IASB理事 Warren McGregor   はじめに 本稿は、企業経営者及びそのアドバイザーによって指摘されているIFRS財務諸表に対する批判を評価するものである。   投資家はIFRS財務諸表を読むことはない 企業経営者が、投資家やアナリストがIFRS財務諸表を読んでいないと主張するのを聞くことは、まれなことではない。 その証拠として、彼らは、財務諸表に関する投資家やアナリストからの質問をほとんど受けたことがないという事実を指摘している。 真剣な投資家やアナリストがIFRS財務諸表に興味を示さないということはほとんどあり得ないことを考えると、この主張は、IFRS財務諸表それ自体の主要な欠陥というよりも、おそらく、通常は年次報告期間末から数ヶ月後である財務報告の公表のタイミングによって、より影響を受けたものであろう。 投資家やアナリストが、利益情報リリースや投資家説明会など、よりタイムリーに提供される情報に焦点を当てていることは事実であるが、このようなコミュニケーションには、年次IFRS財務諸表と整合的な財務情報が含まれている。 逸話的な証拠によると、投資家やアナリストは、年次財務諸表を、利益情報リリースの内容を確認し、興味のある特定事項に関する詳細を入手し、そして、財務諸表の数字が監査されているという安心を得るために利用している。 しかし、投資家がIFRS財務諸表に興味がないという主張に抗弁することが難しい、より根本的な理由がある。 投資家は、投資意思決定を行う際に、規制されている財務報告をより重視する。このことは、「強くかつ効率的な資本市場を維持するために、企業報告が重要であることが確認された。3大陸の6ヶ国の投資専門家とのインタビューでは、財務諸表は財務分析の根幹であるという事実が強調された。財務諸表は、ある企業に投資するかどうかに関する重要な意思決定を支えている。」ということを明らかにしたプライスウォーターハウスクーパースが行った投資専門家の国際的調査によって確認された*1。 *1 PricewaterhouseCoopers, 2007. Corporate reporting. Is it what investment professionals want? International survey of investors’ and analysts’ views on the information that companies provide, p 8. The countries surveyed were the UK, USA, Canada, Germany, Australia and France.   投資家は「基礎利益」指標に焦点を当てている IFRS財務諸表の批判者は、投資家やアナリストの需要に対応して、企業によって非会計基準利益指標やその他の財務測定基準が開発されたことを、IFRS財務諸表が投資家やアナリストにとってそれほど有益でない証拠だと指摘している。 非会計基準指標は、投資家やアナリストの評価モデルへの適切なインプットとして彼らの需要を満たすためのものである。投資家やアナリストは、将来の利益を予想する際に、反復しない又は「1回限り」とみなされる収益及び費用項目に比べて、継続するとみなされる収益及び費用項目に異なる重き(又は乗数)を置いている。 しかし、投資家やアナリストが用いるこれらの測定基準は、IFRS財務諸表によって提供される情報に対して補完的なものである。多くの場合、非会計基準利益指標のスタートとなるのはIFRSによる金額であり、これに「反復しない」項目が加算又は減算されている。 上述したように、投資家やアナリストは、IFRS財務諸表によって提供される客観的な枠組みを高く評価している。 企業を分析する投資家やアナリストにとって特に重要なのは、ある企業の業績を他の企業の業績と比較するために、規制されている財務諸表を用いることができることである。IFRSは、比較のための基盤を提供している。投資家やアナリストは、IFRSに準拠した財務諸表を作成している国内及び海外の企業の業績及び財政状態を比較することができる。 これに代わる方法は、世界中がIFRSを採用する以前のように、企業が、異なる各国の基準に準拠して財務諸表を作成することである。比較することは不可能ではないが、相当な努力を行わない限り困難である。 投資家は、企業が用いている報告フレームワークに習熟していない場合には、次の2つのうちの1つを行うであろう。 彼らは、その報告フレームワークを理解する努力をする準備ができていないので当該企業に投資をしないか、又は、当該企業への投資のコストを値付けする際にプレミアムを課すか、どちらかをするであろう。 そのプレミアムは、時として(財務報告の)不確実性に対するプレミアムと表現されるが、資金調達のコストを増加させる。ある人々は、投資家やアナリストは、IFRS財務諸表に明確に支持を示しておらず、IFRS財務諸表について企業経営者に問い正すことに積極的ではないと主張しているが、これ代わる方法は、好ましいものではなく、究極的には、投資家及び企業にとって便益の少ないものであろう。 財務諸表の利用者のニーズを満たす目的をもって、独立した国際的な会計基準設定主体によって開発された基準に準拠して作成された財務諸表は、投資家やアナリストに対して、企業の業績及び財政状態を評価し、そして、世界中の他の企業と比較するための客観的な枠組みを提供する。 このような枠組みを持つか、持っていないかという選択肢に直面する合理的な投資家は、明らかに前者を好むであろう。   IFRS財務諸表は複雑すぎる 投資家やアナリストにとってのIFRS財務諸表の有用性に対して疑問を呈する人々による共通した批判は、財務諸表が複雑になりすぎてしまったというものである。 彼らは、投資家やアナリストにとっては、財務諸表によって提供される情報のいくつかを理解し、そして、それらの情報の総体的重要性を評価するのが困難であると主張している。ある人々は、後者の懸念を「情報過多」と呼んでいる。 投資家やアナリストが直面しているIFRS財務諸表を理解することの困難性に関する懸念は、部分的には、IFRSに準拠して作成された財務諸表が対象としている読者についての理解の不足に起因している。 ある批判者は、財務諸表は、「お母さんお父さん投資家」といわれる投資家を含むすべての投資家が理解できるものでなければならないと信じている。しかし、IASBは、IFRS財務諸表は、合理的に財務的に教養のある投資家を志向していることを明確にしている。 IASBは、その財務報告のための概念フレームワークにおいて、「財務報告は、ビジネス及び経済活動についての合理的な知識を有し、情報を入念に精査し分析する利用者のために作成される。」とし、「時として、十分な情報を持ち勤勉な利用者であっても、複雑な経済事象に関する情報を理解するためにはアドバイザーの助けを求めることがある。*2」と付け加えている。 *2 International Accounting Standards Board, 2010. The Conceptual Framework for Financial Reporting, paragraph QC32.   IFRS財務諸表がターゲットとする読者は、ある批判者が期待し、又は、要求しているものより狭いにもかかわらず、投資家やアナリストに対するこれら財務諸表の有用性は、企業の財務報告の中に、より絞られた焦点を彼らに提供することによって補強される。 全体としての企業の財務報告に対する有用性及び財務報告及びその財務諸表の構成要素の実用性に関する正統な懸念は、2つの主要な理由によって確かに存在する。 すなわち、重要でない財務情報の増加傾向及びいわゆる「紋切り型情報」が財務諸表に含まれていること、及び、財務報告及びアニュアル・レポートのその他の部分にIFRSによって要求されていない追加財務情報が含まれていることである。 企業が、重要でない開示を財務諸表に含める傾向が増加している。IFRSは、この点に関して明快である。 もし、IFRSの認識、測定及び開示に関する要求に従わないことが、利用者が財務諸表に基づいて行う経済的意思決定に影響を与えることになるような除外又は虚偽表示となってしまう場合に、企業には、認識、測定及び開示に関する要求に準拠することが求められているのみである。 残念ながら、この重要性テストを適用することなくIFRSに含まれているすべての開示を含めることを選択する企業数が増えている。 これには多くの理由があると思われるが、最もあり得るのは、後になって間違いであったと判明するかもしれず、取締役会が訴訟となる可能性のある重要性の判断を行うことを恐れているため、及び(又は)、企業の監査人と長期化する議論を避けるためである。 同様に、財務諸表に紋切り型の開示を含める企業が増える傾向がある。 これらは、判断の行使を求める開示であり、例えば、不確実性の予測の源泉に関する情報であるが、監査人の反対がなければ、企業は訴訟のリスクを低減するために紋切り型の開示を行っている。不適切な部分を削除することで、企業は財務諸表を投資家にとって有用性の少ないものにしている。 アニュアル・レポート及び財務報告における情報過多に関する懸念は、多くの原因から生じている。財務諸表に重要でない開示が含まれているという上述の問題が、その1つである。 もう1つは、IFRSによって要求されていない情報がアニュアル・レポートの異なる部分に含まれているというものである。これらの開示は、健全性又はその他の規制当局が求めているものであり、報酬及びリスク報告といったものが含まれる。   結論 世界中の企業がますますIFRSを使うようになるにつれ、財務諸表の有用性に関する疑問が提起されている。 これらの批判のうちのいくつかは、明らかに理にかなったものであり、IASBに、例えば、財務諸表、特に損益計算書における情報の表示に関する懸念といったことに対応するように、との挑戦を突きつけている。 本稿では、より一般的な批判のうちの3つを評価し、それらは、根拠がないか、又は、IASBがコントロールできない要因に依っていることを明らかにした。 本稿が、読者に、ここで取り上げた問題に関して情報を提供でき、IFRS財務諸表が投資家にとって有用かどうかに関する自分自身の判断を行うのに役立つことを願っている。 (原文) Are IFRS financial statements useful to investors? 1   Introduction This article evaluates some of the criticisms that have been directed at IFRS financial statements by company executives and their advisors.   Investors never read IFRS financial statements It is not uncommon to hear company executives claim that investors and analysts never read IFRS financial statements. As evidence they point to the fact that they rarely if ever receive questions from investors and analysts about the financial statements. This claim is probably driven more by the timing of publication of the financial report, normally some months after the end of the annual reporting period, than any major deficiencies in the IFRS financial statements themselves, since it seems highly unlikely that serious investors and analysts would take no interest in the IFRS financial statements. It is true that investors and analysts focus on information that is provided on a timelier basis, such as earnings releases and investor presentations, but these communications contain financial information that is consistent with the annual IFRS financial statements. Anecdotal evidence suggests that investors and analysts use the annual financial statements to confirm the earnings releases, obtain more details about particular items of interest and obtain comfort that the numbers have been audited. There is, however, a more fundamental reason why a claim that investors are not interested in IFRS financial statements is difficult to defend. Investors place great importance on regulated financial reporting when making investment decisions. This was confirmed in an international survey of investment professionals conducted by PricewaterhouseCoopers who found that “The importance of corporate reporting in sustaining strong and effective capital markets is confirmed. Interviews with investment professionals in six countries, from three continents, emphasise the fact that financial statements are the bedrock of financial analysis. They underpin critical decisions on whether to invest in a company or not.”2   Investors focus on “underlying profit” measures Critics of IFRS financial statements sometimes point to the development of non-GAAP profit measures and other financial metrics by companies in response to demands by investors and analysts, as evidence that IFRS financial statements are of little use to investors and analysts. Non-GAAP profit measures meet a demand by investors and analysts for relevant inputs to their valuation models. Investors and analysts place different weights (or multipliers) on income and expense items that are deemed to be continuing compared with those that are deemed to be non-recurring or “one off”, when estimating future earnings. However, investors’ and analysts’ use of these metrics is complementary to the information provided by IFRS financial statements. In many cases the starting point for non-GAAP profit measures is the IFRS amounts, with “non-recurring” items being added or subtracted. As noted above, investors and analysts value highly the objective frame of reference provided by IFRS financial statements. Of particular importance to investors and analysts in analysing a company is being able to use regulated financial statements to compare one company’s performance with another. IFRSs provide the basis for that comparison. Investors and analysts can compare the results and financial position of domestic and foreign companies who prepare their financial statements in accordance with IFRSs. The alternative is for companies to prepare their financial statements in accordance with idiosyncratic national standards, as was the case before the adoption of IFRS around the world, or each company’s own rules. Comparisons would be difficult if not impossible without a great deal of effort. Investors will do one of two things if they are not familiar with the reporting framework used by a company. They will either not invest in the company because they will not be prepared to make the effort to understand the framework, or they will charge a premium when pricing the cost of an investment in the company. That premium, which is sometimes described as a premium for (financial reporting) uncertainty, increases the cost of funding. While some may claim that investors and analysts are not openly supportive of IFRS financial statements, and appear reluctant to probe company executives about them, the alternatives would seem to be far less palatable and, ultimately, far less beneficial to investors and companies. Financial statements prepared in accordance with standards developed by an independent international standard setting body with the objective of meeting the needs of users of financial statements provide investors and analysts with an objective frame of reference for assessing the performance and financial position of companies and for comparing them with other companies around the world. A rational investor faced with the choice of having this frame of reference or not having it, would surely opt for the former.   IFRS financial statements are too complex A common criticism by those who question the usefulness of IFRS financial statements for investors and analysts is that the financial statements have become too complex. They assert that it is difficult for investors and analysts to understand some of the information provided in the financial statements and for them to assess the relative importance of the information. Some refer to the latter concern as “information overload”. Concerns about the difficulty investors and analysts face in understanding IFRS financial statements stem in part from a failure to understand the audience to whom financial statements prepared in accordance with IFRSs are directed. Some critics believe the financial statements should be comprehensible to all investors, including so-called “mum and dad investors”. However, the IASB has made it clear that IFRS financial statements are directed to investors who are reasonably financially sophisticated. In its Conceptual Framework for Financial Reporting the IASB states that “Financial reports are prepared for users who have a reasonable knowledge of business and economic activities and who review and analyse the information diligently...” and they add “...At times, even well-informed and diligent users may need to seek the aid of an adviser to understand information about complex economic phenomena.”3. Notwithstanding that the target audience for IFRS financial statements is narrower than some critics would expect or demand, the utility of those financial statements to investors and analysts could be enhanced by giving them a sharper focus in a company’s financial report. Legitimate concerns about the usefulness of a company’s annual report as a whole and the utility of the financial report and statements components thereof do exist for two main reasons: the growing tendency for immaterial financial information and so-called “boiler plate information” to be included in the financial statements, and the inclusion in the financial report and other parts of the annual report of additional financial information not required by IFRSs. There has been a growing tendency for companies to include immaterial disclosures in the financial statements. IFRSs are clear on this point; companies are only required to comply with the recognition, measurement and disclosure requirements of IFRSs if failure to do so would result in omissions or misstatements that could influence the economic decisions that users make on the basis of the financial statements. Unfortunately a growing number of companies are choosing to include all of the disclosures included in IFRSs without applying this materiality test. This could be due to a number of reasons, but most likely it is for fear of making a materiality judgement which later proves to be erroneous and potentially subjects the board of directors to litigation and/or to avoid protracted discussions with the company’s auditors. Similarly, there has been a growing tendency for companies to include boiler plate disclosures in their financial statements. These are disclosures that require the exercise of judgement, for example information about sources of estimation uncertainty, that companies, without objection from their auditors, "boiler plate" in order to reduce the risk of litigation. By sanitising these disclosures, companies are making the financial statements less useful to investors. Concerns about information overload in the annual and financial reports stem from a number of sources. The inclusion of immaterial disclosures in the financial statements mentioned above is one. Another is the inclusion in a different part of the annual report of information not required by IFRSs. These disclosures may be driven by prudential or other regulators and could include things like remuneration and risk reports.   Conclusion As more and more companies around the world use IFRSs, questions are being raised about the usefulness of the resulting financial statements. Some of these criticisms are undoubtedly justified and pose a challenge for the IASB to address, for example concerns about the presentation of information in the financial statements, particularly the income statement. However some of the criticisms would appear to be unjustified. This article has evaluated three of the more common criticisms and has found them to be either without foundation or caused by factors beyond the control of the IASB. It is hoped that this article will make readers better informed about these issues and better placed to make their own judgement about whether IFRS financial statements are useful to investors. 1 This article is based on a paper, published in February 2013, by the same author, titled “In defence of IFRS financial statements”. See CPA Australia website: http://www.cpaaustralia.com.au/cps/rde/xbcr/cpa-site/defence-of-ifrs-financial-statements.pdf 2 PricewaterhouseCoopers, 2007. Corporate reporting. Is it what investment professionals want? International survey of investors’ and analysts’ views on the information that companies provide, p 8. The countries surveyed were the UK, USA, Canada, Germany, Australia and France. 3 International Accounting Standards Board, 2010. The Conceptual Framework for Financial Reporting, paragraph QC32.   (了)

#No. 18(掲載号)
#Warren McGregor
2013/05/09

林總の管理会計[超]入門講座 【第2回】「なぜ原価計算をするんですか?」

林總の 管理会計[超]入門講座 【第2回】 「なぜ原価計算をするんですか?」   公認会計士 林 總   (了)

#No. 18(掲載号)
#林 總
2013/05/09

経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第5回】退職給付会計②「退職一時金制度」─数理計算上の差異

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第5回】 退職給付会計② 「退職一時金制度」 ─数理計算上の差異   仰星監査法人 公認会計士 西田 友洋   〈事例による解説〉 期中の会計処理(退職給付費用の計上及び退職金の支払)後の退職給付債務は5,400です。また、退職給付債務の計算を依頼している受託機関からの報告によると、期末の退職給付債務の実際額は6,000です。 さらに、未認識数理計算上の差異は翌期以降、従業員の平均残存勤務期間である15年、定額法で費用処理を行います。 当社の退職金制度は、非積立型の退職一時金制度であるため、年金資産はありません。 なお、税効果会計は適用していません。 〈会計処理〉   (仕訳なし) 〈会計処理の解説〉 退職給付債務の算定の際には、見積数値が用いられます。そして、見積数値と実際数値には、差異が生じます。この差異が、「数理計算上の差異」です。 具体的には、数理計算上の差異は、退職給付債務の数理計算に用いた見積数値と実績との差異及び見積数値の変更等により生じます。 また、本事例では、年金資産はありませんが、年金資産の期待運用収益と実際の運用成果の差異によっても、数理計算上の差異が生じます(退職給付会計に関する実務指針(中間報告)第23項)。 さらに、数理計算上の差異のうち、費用処理及び負債計上していないものを「未認識数理計算上の差異」といいます。 本事例では、期中に、「勤務費用+利息費用-期待運用収益」の合計額である退職給付費用の計上及び退職金の支払いの結果、期末の退職給付債務は5,400となっています。これが、期末時点の「予測」の退職給付債務となります。また、「実際」の退職給付債務は6,000となっています。 したがって、数理計算上の差異は600となります。 そして、数理計算上の差異は、発生しただけでは退職給付引当金を構成せず、費用処理をして初めて、退職給付引当金を構成します。費用処理は、数理計算上の差異が発生した期の翌期(又は発生した期)から定額法(又は定率法)により、従業員の平均残存勤務期間以内で行います(退職給付に係る会計基準三2(4)、退職給付会計に関する実務指針(中間報告)第27項)。 本事例では当期に費用処理しないため、当期末の未認識数理計算上の差異は600となり、当期に発生した数理計算上の差異は、当期末の貸借対照表には計上されません。 なお、本事例において、平均残存勤務期間の15年、定額法で費用処理するため、翌期の会計処理は以下のようになります。 (会計処理) (了)  

#No. 18(掲載号)
#西田 友洋
2013/05/09
#