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〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載17〕 会社分割によりデリバティブ契約を移転する場合の税務処理

〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載17〕 会社分割により デリバティブ契約を移転する場合の 税務処理   公認会計士・税理士 有田 賢臣     1 一般的なデリバティブ契約の税務処理 平成12年度税制改正前の制度においては、デリバティブ契約は、その決済が行われるまで損益を認識しないものとされていたが、これを利用した租税回避が問題とされていた。 そこで、平成12年度税制改正により、企業会計にてデリバティブ契約が時価評価されることになったことに併せて、法人税においても、デリバティブ契約を時価評価して、その評価損益を毎期の所得に反映させることとなった。 具体的には、内国法人が締結したデリバティブ契約のうち、事業年度終了の時に未決済のものについては、決済したものとみなし、それによって算出される利益の額又は損失の額(=みなし決済損益額)を益金の額又は損金の額に算入する(法法61の5①)。 当期の益金の額又は損金の額に算入したみなし決済損益額は、翌期において損金の額又は益金の額に算入することにより戻入処理が行われる(法令120①)。 戻入処理の時期について、条文上は明記されていないが、以下で説明するように適格組織再編時(期中)にもみなし決済損益の計上が行われることから、みなし決済損益が計上された直後に戻入処理が行われると考えざるを得ない。つまり、事業年度末でみなし決済損益を計上する通常の場合においては、戻入処理は期首に行われる。 なお、繰延ヘッジ処理を適用している場合には、そのヘッジが有効である限り、デリバティブ契約のみなし決済損益額は、各期の益金の額又は損金の額に算入しないこととなる。   2 適格分割でデリバティブ契約を移転する場合の税務上の取扱い (1) 分割法人 移転するデリバティブ契約に係る適格分割の日の前日におけるみなし決済損益の額は、分割法人の分割事業年度において益金の額又は損金の額に算入される(法法61の5②)。 適格組織再編では、組織再編時に損益は計上されないものと認識されているが、デリバティブ契約を移転する場合には損益が計上されるので注意が必要である。 また、当該みなし決済損益の額は、分割承継法人の分割事業年度において戻入処理が行われるため、分割法人の分割事業年度の翌事業年度では戻入処理が行われない。 (2) 分割承継法人 分割法人の分割事業年度に計上されたみなし決済損益の額について、分割承継法人の分割事業年度において戻入処理が行われる(法令120②)。 以下の設例を用いて、会社分割時の税務上の仕訳を説明する。 〈税務上の仕訳〉 ① 分割法人(P社) まず、移転するデリバティブ契約について、みなし決済損益額を認識する。 次に、みなし決済損益額の認識によって計上されたデリバティブ資産についても、他の移転資産・負債と同様に移転の処理を行う(法法62の3①)。 適格分社型分割により交付を受けた分割承継法人(S社)の株式の取得価額は、当該適格分社型分割の直前の移転資産の帳簿価額から移転負債の帳簿価額を減算した金額となる(法令119①七)。この「移転資産の帳簿価額」には、移転するデリバティブ契約の価値も含まれる。 ② 分割承継法人(S社) 適格分社型分割により移転を受けた資産・負債の取得価額は、当該適格分社型分割の直前の分割法人における帳簿価額となる(法令123の4)。 資本金等の額については、分割法人の当該適格分社型分割の直前の移転資産の帳簿価額から移転負債の帳簿価額を減算した金額だけ増加する(法令8①七)。この「移転資産の帳簿価額」には、移転を受けたデリバティブ契約の価値も含まれる。 分割法人にて益金の額に算入したみなし決済損益額は、分割承継法人にて損金の額に算入することにより戻入処理が行われる。この戻入処理は、移転資産・負債の受入仕訳を計上するのと同時に行われる。 なお、上記の仕訳では、移転するデリバティブの価値を便宜的に「デリバティブ資産」と表現しているが、法人税法上、デリバティブ契約について個別の資産・負債を認識する規定はない点に注意が必要である。   3 非適格分割でデリバティブ契約を移転する場合の税務上の取扱い 分社型分割により完全子会社を新設する場合には、適格要件を満たすことが多いと思われるが、会社分割後に分割承継法人の株式を譲渡することが予定されているような場合には、非適格分割となる。 (1) 分割法人 移転するデリバティブ契約についても他の移転資産・負債と同様に、時価で譲渡したものとして、移転する事業の譲渡損益を分割法人の分割事業年度に計上する(法法62①)。 (2) 分割承継法人 時価でデリバティブ契約の移転を受けるが(法法62①)、デリバティブ契約は資産・負債としては計上されない。期末の時価評価と戻入処理の「手法」としてデリバティブ資産・負債を認識することはあっても、期中の取引によりデリバティブ契約の移転を受けた場合にまでデリバティブ資産・負債を計上することは想定されていない。 この点は、デリバティブ資産・負債が税務上の引当金に類似していると整理すれば理解できる。例えば、貸倒引当金は適格組織再編では引き継がれるが、非適格組織再編では引き継がれない。デリバティブ資産・負債も貸倒引当金と同様に、非適格組織再編では引き継がれないのである。 仮に、デリバティブ契約を個々の資産・負債として計上した場合、非適格組織再編に伴うデリバティブ資産・負債の計上に対応した戻入処理規定が用意されていないことから、デリバティブ契約の評価損益が通期で通算してもゼロにならなくなってしまう。 このことからも、デリバティブ税制は、非適格組織再編に伴うデリバティブ資産・負債の計上を想定して作られたものではないといえる。 先ほどの設例を用いて、税務上の仕訳を説明する。 〈税務上の仕訳〉 ① 分割法人(P社) 適格分割と異なり、みなし決済損益額の認識は行わない。時価評価が適正に行われるとすれば、交付される分割承継法人株式の時価には、移転するデリバティブ契約の時価が反映されているため、デリバティブ契約の評価損益は譲渡損益として認識される。 ② 分割承継法人(S社) 非適格分社型分割により移転を受けた資産・負債の取得価額は、当該非適格分社型分割時の時価となる。一方、移転を受けるデリバティブ契約については資産・負債として計上されることはなく、分割時においてはオフバランスとなる。 資本金等の額については、分割法人に交付した分割承継法人株式の当該非適格分社型分割時の時価だけ増加する(法令8①七)。時価評価が適正に行われるとすれば、分割法人に交付した分割承継法人の株価には、移転を受けるデリバティブ契約の分割時の時価が反映されている。 結果として、移転を受けるデリバティブ契約の含み損益相当額について借方差額又は貸方差額が生じる。借方差額となる場合は資産調整勘定で処理され、貸方差額となる場合は差額負債調整勘定で処理される(法法62の8)。 以上の処理により、移転を受けるデリバティブ契約の評価損益は、適格分割であれば、戻入処理により即時に益金の額又は損金の額となるが、非適格分割であれば、資産調整勘定又は差額負債調整勘定を通して60ヶ月で益金の額又は損金の額となる。 なお、分割事業年度期末におけるみなし決済損益の計上額及び翌事業年度の戻入処理額は、適格・非適格にかかわらず同額となる。 (了)

#No. 17(掲載号)
#有田 賢臣
2013/05/02

経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第4回】退職給付会計①「退職一時金制度」─退職給付費用の計上及び退職金の支払い

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第4回】 退職給付会計① 「退職一時金制度」 ─退職給付費用の計上及び退職金の支払い   仰星監査法人 公認会計士 西田 友洋   〈事例による解説〉 退職給付債務の計算を依頼している受託機関からの報告によると、期首の退職給付債務は5,000で、当期に発生する勤務費用は500です。 当社で計算した利息費用は100で、利息費用の計算に用いた割引率は2%です。また、従業員に退職金を200支払っています。 当社の退職金制度は、非積立型の退職一時金制度であるため、年金資産はありません。 なお、税効果会計は適用していません。 〈会計処理〉 1 退職給付費用の計上 2 退職金の支払い 〈会計処理の解説〉 1 退職給付費用の計上 退職給付費用は、会社が従業員へ支払うべき退職金等のうち、当期に発生した金額を計上することになります。したがって、退職金等を支払ったとき(現金主義)ではなく、発生主義に基づいて費用計上を行います。 基本的には、退職給付費用は、以下の「①+②-③」の合計により計算されます(退職給付に係る会計基準三)。 本事例では、勤務費用は500です。また、利息費用は期首の退職給付債務5,000×割引率2%=100です。さらに、非積立型の退職一時金制度のため、年金資産はないことから、期待運用収益はゼロです。そのため、退職給付費用は600となります。 なお、年金資産がある場合、期待運用収益相当額は「期首の年金資産×期待運用収益率」により計算されます。 また、退職給付費用の相手の勘定科目は、「退職給付引当金」となります(退職給付に係る会計基準四)。 2 退職金の支払い 退職金を従業員に支払った場合、退職給付債務が減少します。そのため、「退職給付引当金」を取り崩します。 (了)  

#No. 17(掲載号)
#西田 友洋
2013/05/02

〔会計不正調査報告書を読む〕【第7回】株式会社マツヤ・不適切な会計処理に係る「第三者委員会調査報告書」

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第7回】 株式会社マツヤ・ 不適切な会計処理に係る 「第三者委員会調査報告書」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 【概要】   【株式会社マツヤの概要】 株式会社マツヤ(以下「マツヤ」という)は昭和43年創業。長野市に本店を置いてスーパーマーケット事業を営んでおり、店舗数は30。連結売上高39,304百万円、連結経常利益214百万円。従業員441名(数字はいずれも2012年2月期)。JASDAQ上場。   【報告書のポイント】 1 監査法人に対する告発文書 12月25日、マツヤの会計監査人に対し、告発文書が送付された。 その告発文書では、以下の不適切な会計処理が指摘されていた。 告発文書を受け取った監査法人は、28日にまでに告発の事実をマツヤに伝えた。これを受けて、マツヤは、12月28日、取締役会を開催して、調査委員会の設置を決めた。 告発者については、調査報告書は何のコメントもしていないが、外部に対する告発という手段が取られなければ、組織的な隠蔽があったことは明るみに出なかった。   2 調査委員会の構成の変更(第三者委員会ガイドラインに準拠) 当初の調査委員会のメンバーは、社外監査役、顧問弁護士が含まれていたが、これは、「年末年始という時期もあり、一刻も早く事実関係を確認するため」の措置であり、必要があれば、調査委員会の構成を変更することがあると明記されていた。 そして、1月4日に、日本弁護士連合会による「企業不祥事における第三者委員会ガイドライン」に沿う形で、利害関係のない委員に変更された。   3 調査結果により判明した事実 (1) 結論 告発された不適切な会計処理のうち、仕入割戻等の架空計上による利益過大計上額は180百万円であり、不正な商品在庫の操作事実はなかった。 ただし、会社損益に及ぼす影響については、架空の仕入割戻等の未収入金が入金されたように装うため、計上すべき仕入割戻等を計上しなかったことから、69百万円にとどまる。同時に、不正とはいえないが、棚卸資産の過大計上224百万円の存在が明らかになり、これを同時に修正することとした会社の方針を妥当であると結論付けた。 (2) 仕入割戻の不適切な計上 営業本部長兼商品部長であった取締役Dから、目標達成の指示を受けていた粗利率、粗利額を達成できない状況にあった商品副部長らは、各部門にバイヤーに命じて、仕入先の合意を得ていない仕入割戻等の金額を記載したリベート明細書を作成し、事務管理グループに提出した。 事務管理グループの担当者は、明細書に証憑が添付されていない場合でもこれを仕入割戻等として計上していた。また、仕入割戻等の入金確認は、仕入先に対して行わずに、各部門にバイヤーに確認の上、照合を行っていたため、発覚しなかった。 (3) 取締役による隠蔽工作 事務管理グループの担当者は、平成24年8月上旬、上司である取締役財務部長Eに、仕入割戻等の未収入金残高が例年より多いことを報告、Eはこれを副社長Bに報告したため、副社長Bは、仕入割戻等の担当者である商品部リーダーらに問いただした。 8月下旬、商品部リーダーは、副社長Bに対し、架空で仕入割戻等を計上したこと、現時点で回収見込みがない金額が60百万円に上がることを報告した。 Bは、Eから「四半期レビューで監査法人の指摘を受け、過去について訂正報告書を出す可能性が高い」と説明を受け、社長A、常務Cに状況を報告、A、B、CにEを加えた4名の間で、A、B、Cが私財を入金して、帳簿上の未収仕入割戻等の金額を例年どおりとする外形を作出することを決め、8月30、31日にこれを実行した。   4 原因分析と責任の所在 (1) 取締役 報告書が指摘した取締役個々人の責任は以下のとおり。 (2) 機能しなかった内部通報制度 マツヤには、コンプライアンス担当部署を社内ホットライン窓口とする内部通報制度があったが、会社には現場の意見を採り入れない上意下達の風潮があり、役員自身が60百万円を補填したように、コンプライアンス意識も低かったため、従業員の側に、内部通報をすれば会社が真摯に取り上げてくれるという信頼がなかった。 このことが、自浄作用が働かず、監査法人に告発文書が送付される事態につながった。   5 調査報告書の特徴 架空の仕入割戻等の存在を知った社長、副社長、常務の3人が私財60百万円を投じて穴埋めすることを決め、取締役財務部長は未回収の仕入割戻等が回収されたかのように仮装して、不正を隠蔽した。 「不適切な会計処理を認識した場合には、会計監査人と協議して、決算訂正や適時開示を検討すべき義務がある」とした大阪証券取引所の規則に違反する行為の背景には、長引く不況と大手スーパーマーケットとの競合により、利益が上がらない中、不祥事の発覚を食い止めたいという意向で、経営陣が一致したものであろう。 しかし、監査法人への告発で、すべては明らかにされる。 架空の仕入割戻等を計上する原因を作出した取締役は、調査報告書を待たずに1月31日付で辞任、残る4名の取締役のうち、副社長は2月8日付で辞任、他の3名は次回の株主総会をもって任期満了による退任と決まった(4月10日付リリース)。 マツヤが架空の仕入割戻等計上により修正すべき金額は69百万円であったため、私財投入を収入として計算すれば、会社の実損はほとんどなかったにもかかわらず、取締役5名のうち1名を残して全員が退任又は辞任となったことは、不正により発生した損失の大小よりも、それを隠蔽しようとした行為に対する責任が追及された結果であったのではないかと思料する。 (了)

#No. 17(掲載号)
#米澤 勝
2013/05/02

残業代の適正な計算方法 【第1回】 「労働時間の基本をおさえる」

残業代の適正な計算方法 【第1回】 「労働時間の基本をおさえる」   社会保険労務士 井下 英誉   1 はじめに 本連載では、「残業時間の適正な計算方法」について、5回にわたって解説する。 まず、残業代を適正に計算するうえで大切なことは何であろうか。 それは、次の式の内容を正しく理解することである。 残業代が残業単価に残業時間を乗じて計算される以上、そのどちらかの数字が間違っていれば、当然「適正」な計算結果は得られない。 労使問題として頻繁に発生する未払賃金(未払残業)トラブルは、会社が残業代を全く支払わないという理由で生じることもあるが、多くの場合は、使用者が残業単価や残業時間を正しく理解しておらず、適正な計算が行われないために起こるのである。 一方で、残業時間は労働時間の一部であるから、労働時間を正しく理解していなければ、残業時間を正しく理解することはできないともいえる。 したがって、本連載では、第1回で「労働時間」を取り上げ、第2回以降で残業時間や残業単価等について解説を行うこととする。   2 労働時間の原則と例外 労働基準法では32条から32条の4において、労働時間の原則的取扱いと例外的取扱いを定めている。   3 時間外労働の考え方 労働基準法では、32条(32条の2から32条の4を含む)の規定に定める時間を超えて労働させることは原則禁止されている。 しかしながら、下記の36条の要件を満たし、就業規則等で「労働者に時間外労働を行わせる」旨の定めがある場合は、32条(32条の2から32条の4を含む)に定める時間を超えて労働させることができる。   4 労働時間の適正な把握 労働基準法では、前述のように労働時間について規定を設けているため、使用者は、労働時間を適正に把握し、適切に管理する責任を負っていることは明らかである。 使用者が講ずべき労働時間の適正な把握のための措置としては、次のものがある。 ① 始業・終業時刻の確認及び記録 使用者は、労働時間を適正に管理するため、労働者の日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録すること。 ② 始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法 使用者が始業・終業時刻を確認し、記録する方法としては、原則として次のいずれかの方法によること。 ③ 自己申告制により始業・終業時刻を確認及び記録を行う場合の措置 上記②の方法によることなく、自己申告制によりこれを行わざるを得ない場合、使用者は次の措置を講じること。 ④ 労働時間の記録に関する書類の保存 労働時間の記録に関する書類について、労働基準法109条に基づき、3年間保存すること。 ⑤ 労働時間を管理する者の職務 事業場において労務管理を行う部署の責任者は、当該事業場内における労働時間の適正な把握等、労働時間管理の適正化に関する事項を管理し、労働時間管理上の問題点の把握及びその解消を図ること。 次回からは、残業時間の考え方、集計方法等について解説する。 (了)

#No. 17(掲載号)
#井下 英誉
2013/05/02

〔時系列でみる〕出産・子を養育する社員への対応と運営のヒント 【第1回】「出産・育児に関する制度の全体像」

〔時系列でみる〕 出産・子を養育する社員への 対応と運営のヒント 【第1回】 「出産・育児に関する制度の全体像」   社会保険労務士 佐藤 信   1 はじめに 少子高齢化の進行に伴い、労働力人口は今後減少していくことが見込まれている。 企業による有能な人材の獲得競争は、ますます激しくなっていくであろう。 こうした状況の変化のなかで企業が人材を確保し、活用・定着を図っていくためには、従来の働き方や職場環境を見直し、従業員の仕事と家庭の両立を支援(以下、当連載では「両立支援」とする)するための取組みが不可欠といえる。 つまり、企業による両立支援の取組みは、一部の従業員を優遇するための福利厚生としてではなく、「重要な人的資源の活用のための経営戦略の一環」として実施する必要がある。 働く意欲のある女性が増えているなかで、出産を機に会社を辞めざるを得ないというのは、社員にとってだけではなく、会社にとっても大きな損失である。 当連載では、妊娠・出産・育児をする従業員に対し企業がすべきこと(又はしてはいけないこと)、仕事と家庭との両立を実現しやすくする支援策、企業が有能な人材を確保・活用していく際のヒントを、「妊娠」→「出産」→「育児」→「職場復帰」といった時系列で触れていくこととする。   2 各時期に応じ企業がすべきこと 従業員による妊娠・出産・育児のそれぞれの時期に応じて、企業がすべきこととされるものを掲げると、以下のようになる(一部は努力規定とされ、義務化されていないものもある)。 まずは全体像を把握していただき、詳細は次回以降に触れていくこととしたい。 (1) 妊娠中の労働者に対する企業の対応 女性労働者が妊娠中に実施すべき主なものとしては、次の事項がある。 なお、下記「妊産婦の」とあるものは、産後にも継続して適用される。 (2) 出産後の労働者に対する企業の対応 出産後にすべき主なものとしては、次の事項がある。 子を養育する期間の施策については、男性労働者についても適用があることに注意を要する。 男性の育児休業取得率は依然として低い(育児休業の動向は第4回にて採り上げる)が、企業は男女を問わず育児休業申込みがあったときの対応(例:代替要員の確保や職場復帰プログラム等)を検討していかなければならない。 (3) 働き方の見直しによる対応 両立支援制度を運用する上で制度が利用しにくい部門がある場合、働き方の見直しを行うことで解決できる問題もある。 当連載では「制度の整備」にとどまらず、働き方の見直しによる運用面の対応についても触れていくこととする。   3 おわりに 今回は各種制度の全体像について触れたが、上記を見て分かるとおり、妊娠・出産・育児の期間を通じで企業が実施することは多岐にわたる。 人事担当者は、優秀な人材確保や活用及び定着を図っていくためにも、これらの制度を理解した上で、各企業の規模・業態に応じた対応を進めていきたい。 次回は、産前産後期間の就業制限及び保険料の負担を重点的に触れていく。 (了)

#No. 17(掲載号)
#佐藤 信
2013/05/02

親族図で学ぶ相続講義 【第5回】「相続欠格」

親族図で学ぶ相続講義 【第5回】 「相続欠格」   司法書士 Wセミナー専任講師 山本 浩司   相続欠格というのは、「相続をする資格を欠く」という意味です。 ですから、相続欠格に当たる人は相続人となることができません。 民法には、次のように書いてあります。 上記は、5つある欠格事由のうちの1つです。 まず、条文の意味を明確化しますと、冒頭に「故意に」とあります。 これは、殺意があることを意味します。ですから、被相続人に暴行・傷害を加え結果としてその者が死亡した場合(傷害致死)でも、犯人は相続欠格には当たりません。 次に、「死亡するに至らせようとした」場合が含まれますから、被相続人に対しての殺人未遂又は殺人予備の犯人は相続欠格に当たります。 最後に、これらの罪のために「刑に処せられた」場合に欠格事由に当たります。 例えば、被相続人を殺害したが、犯人に責任能力がなかったり、正当防衛に当たるなどして無罪となったときは、その者は欠格事由には該当しません。 では、以上のことを前提として、次の順で関係者が死亡したときの相続関係を考えてみましょう。 甲野太郎が大資産家であったとして、その遺産は、最後に誰のところに行くでしょうか。アタマの体操になります。 では、順を追って考えていきましょう。この場合も「相続は一件ずつ」が考え方の基本です。   1 甲野太郎の死亡による相続について まず、甲野一男は、「故意に被相続人を死亡するに至らせ、刑に処せられた」ので相続欠格です。 したがって、甲野一男は相続人ではありません。 甲野桜子は被相続人甲野太郎の血族ではない(姻族一親等)ので、もちろん、相続人ではありません。 そこで、相続人の候補は、被相続人の妻の甲野花子と孫の甲野一郎です。 配偶者である甲野花子が相続人となることは当たり前の話ですが(民法890条前段)、さて、ここで、相続欠格者(甲野一男)の子である甲野一郎が、甲野一男を代襲して相続するかどうかが問題になります。 では、条文を見てみましょう。 この規定のうち、「第891条の規定に該当」とは、欠格事由への該当を意味します。 したがって、甲野一郎は甲野太郎の相続人です。 以上から、甲野太郎の死亡による相続によりその莫大な資産は、甲野花子と甲野一郎がそれぞれ2分の1の割合で相続します。   2 甲野花子の死亡による相続について 甲野太郎の資産の2分の1を承継した甲野花子が死亡しました。 では、この場合の相続関係はどうなるでしょうか。 まず、甲野桜子は、被相続人甲野花子の血族ではない(姻族一親等)ので、相続人ではありません。 次に問題となるのは、甲野一男が相続人となるかどうかです。 「相続は一件ずつ」ですから、甲野花子の相続について分析しましょう。 まず、甲野太郎が生存していたとすれば、甲野花子の相続人は夫の甲野太郎と子の甲野一男であったはずです。 この両者は、同順位の相続人です(民法890条後段)。 その状況で、子の甲野一男が、夫の甲野太郎を殺害しました。 これは、「故意に相続について同順位にある者を死亡するに至らせ、刑に処せられた」ことになります。 つまり、甲野一男は、甲野花子の相続事件においても相続欠格に当たります。 民法891条1号は「故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者」は相続人となることができないと規定しています。 これは、被相続人を殺害しようとした者だけでなく、相続についての「先順位者を殺害して自分が相続人となる」という試みや「同順位者を殺害して自らの相続分を増やそう」という試みをした者も相続欠格に当たるのだという意味です。 さて、以上の考察から、甲野花子の相続人は、相続欠格者の甲野一男を代襲して相続する甲野一郎であることが分かりました。 この時点で、甲野太郎の莫大な資産は、甲野一郎1人が承継したことになります。   3 甲野一郎の死亡による相続について 次に、その甲野一郎が死亡します。 未成年の甲野一郎には子も配偶者もいないので、相続人は直系尊属(親や祖父母など)です。 民法によれば、直系尊属が相続するときは親等の近い者が先順位です(民法889条1項1号ただし書)。 甲野一郎から見ると、親は祖父母より「親等が近い」ことになります。 ですから、相続人候補は、親の甲野一男と甲野桜子です。 では、甲野一男は甲野一郎の死亡による相続について相続欠格に当たるでしょうか。 結論を言えば、当たりません。 なぜなら、甲野一男は、甲野一郎の死亡による相続について「相続について後順位に当たる者(甲野太郎)」を死亡するに至らせたのであり、「先順位若しくは同順位にある者」を死亡するに至らせたわけではないからです。 以上の考察から結論が出ました。 今回の事案では、甲野太郎の遺産は最終的に、甲野一男と甲野桜子がそれぞれ2分の1の割合で承継します。 (了)

#No. 17(掲載号)
#山本 浩司
2013/05/02

NPO法人 “AtoZ” 【第5回】「NPO法人会計基準」

NPO法人 “AtoZ” 【第5回】 「NPO法人会計基準」   税理士 岩田 聡子   1 NPO法人会計基準とは? NPO法人は、情報公開を行い、それを市民が監視するという趣旨のもと、会計報告を作成しなければならない。 その会計報告を作成するための統一基準が、NPO法人会計基準(以下「会計基準」)である。 会計基準ができるまでは、「特定非営利活動法人の会計の手引き」(平成11年6月旧経済企画庁公表)に基づき、NPO法人が各自工夫して会計報告を作成していたが、提出された会計報告が多様で数字の整合性・比較可能性が取れないものもあり、信頼性に欠けるものが多く見られた。 このため、平成22年7月20日、NPO法人が一般に公開する会計報告書の作成指針であり、NPO法人の活動を市民がチェックしやすいように正確で比較可能な会計報告書を作成するためのルールとして、NPO法人会計基準が公表された。   2 会計の目的(会計基準1) この基準で定められた目的は以下のとおりであり、社会の信頼に耐えうる会計帳簿を作成するためのものである。   3 一般原則(会計基準3、4、5、6、7) この基準ではNPO法人の会計原則として、①真実性・明瞭性、②適時性・正確性、③継続性、④単一性、⑤重要性が定められている。 「継続性」は、1つの取引について複数の会計処理の方法がある場合等、毎期異なる方法を選択した場合、前期との比較ができなくなるため、いったん採用した会計処理の方法等はみだりに変更してはならないという原則である。 「単一性」は、所轄庁への提出や助成金申請のための提出、税務署への提出等、様式が異なる形式の財務諸表等を作成する場合にも、その元となる帳簿は同じものであること、帳簿と様式が異なる財務諸表等との数字までの関係を合理的に説明できる元となるものであることが求められる。 「重要性」は、一般的に重要性の乏しいものは簡便な方法を用いることができる、という意味だと思っている方も多いのだが、本来は、重要性の高いものはより厳密な会計報告をしなければならない、という原則で、NPO法人自らすすんで厳密な会計報告をすることが、大いに望まれている。   4 財務諸表等の体系 (1) 複式簿記・発生主義 今までは、NPO法人の財務諸表というと収支計算書が採用されていたが、この会計基準では、複式簿記・発生主義に基づいた活動計算書を採用している。 (2) 財務諸表等 NPO法人会計基準では、財務諸表とは活動計算書・貸借対照表をいい、これに財産目録を加えて財務諸表等という(NPO法では、活動計算書・貸借対照表を計算書類という)。 ① 活動計算書 活動計算書は、「当該事業年度に発生した収益、費用及び損失を計上することにより、NPO法人のすべての正味財産の増減の状況を明瞭に表示し、NPO法人の活動の状況を表すものでなければならない。」とされている(会計基準9)。 NPO法人特有の取扱いの1つとして、経常費用については、NPO法人が目的とする事業を行うための事業費と、NPO法人の管理・運営に係る管理費とに区分しなければならない。 ② 貸借対照表 貸借対照表は、「当該事業年度末現在におけるすべての資産、負債及び正味財産の状態を明瞭に表示するものでなければならない。」とされている(会計基準10)。 ③ 財務諸表の注記等 財務諸表には、以下の事項を注記しなければならない(会計基準31)。 NPO法人の会計として、特徴的なのが上記(4)、(5)であり、無償又は著しく低い価格での施設の提供、ボランティア等については、今まで、数字としては財務諸表に表れてこなかったものを、一定の場合には金銭換算による注記又は活動計算書への計上が認められた。 また、使途等が制約された寄附金についても、注記又は財務諸表への計上が必要とされた。 この他、助成金、補助金についても、対象事業の実施状況に伴い、前受助成金・補助金、未収助成金・補助金として計上することが求められている。 ④ 財産目録 「財産目録は、当該事業年度末現在におけるすべての資産及び負債につき、その名称、数量、価額等を詳細に表示するものでなければならない。」とされ、記載価額は、貸借対照表における計上金額と同一とされている(会計基準11)。 ただし、貸借対照表に記載のない資産で金銭評価ができないものについては、その物量をもって計上することができる(会計基準注3)。 NPO会計基準の公表で、NPO法人の会計報告がより信頼性のおけるものになることが期待されている。 市民の自由な社会貢献活動を健全に発展させることを目的としたNPO法の趣旨により、法律で規定するのではなく、自発的にNPO法人自らがこの会計基準に基づいて、財務諸表等を作成することが求められている。 (了)

#No. 17(掲載号)
#岩田 聡子
2013/05/02

〔知っておきたいプロの視点〕病院・医院の経営改善─ポイントはここだ!─ 【第7回】「診療密度の意味するところ」

〔知っておきたいプロの視点〕 病院・医院の経営改善 ─ポイントはここだ!─ 【第7回】 「診療密度の意味するところ」   東京医科歯科大学医学部附属病院 特任講師 井上 貴裕   1 診療密度とは 2012年度診療報酬改定においてDPC/PDPSにおいて基礎係数が導入され、医療機関群の設定が行われた。このことは、一見するとDPC対象病院だけが影響を受けるものと捉えがちであるが、医療政策のメッセージが散りばめられており、あらゆる病院にとって注目すべき事項が含まれている。 本稿では、Ⅱ群に入るための実績要件の1つである診療密度について取り上げ、これからの病院経営を考えていく。 診療密度は、1日当たり包括範囲出来高換算点数によって評価されている。 これは、DPC/PDPSにおける包括評価の範囲内でどのくらいの医療資源を投入したかが反映されたものであり、入院中に検査や投薬などを実施した場合に密度が濃いという判定がなされる。 この考え方について、DPC/PDPSの効率化を促すという趣旨に反するものであり、適切な評価ではないという批判もある。ただし、粗診粗療を防ぐことも包括払いにとっては重要な課題であり、急性期病院らしく重症患者を受け入れていれば、密度は濃くならざるを得ないと捉えることもできる。 つまり、中小規模の地域一般的な病院や大規模であっても地域全体から患者を受け入れる地域独占型の病院では、軽症者も多く診ることであろうから、全体としての診療密度は低下することが予想される。   2 診療密度に影響を及ぼす要因 ① 在院日数の短縮 診療密度に影響を及ぼす要因として、まず在院日数を挙げることができる。 診療密度の評価が“1日当たり”で行われるため、治療終了後であっても入院を長引かせる病院は密度が低くなる。実際にⅡ群病院とⅢ群病院の効率性指数を比較すると、それぞれ1.12と1.02でありⅡ群病院が有意に短い傾向にある(p<0.0001、図表1)。 図表1 効率性 図表2に示すように、仮に5日間で退院したケースを想定してみよう。 図表2 入院初日が月曜日であり、5日間の入院だと金曜日が退院日になる。これが通常の診療プロセスであると仮定する。ただし、病院では週末の病床利用率が低下する。 この週末の病床利用率を少しでも改善しようとした結果、日曜日退院で入院日数が7日になったとする。入院期間が延びたからといって治療は終了しているわけだから、医療資源の投入はほとんど行われない。そうなると、1日当たりの包括範囲出来高換算点数は一気に下がってしまう。 つまり、急性期病院らしく集中治療を行い、在院日数を短くすることが求められていると捉えるべきであろう。この点は、重症度・看護必要度でも同じ仕掛けになっている。 ② 救急医療への注力 Ⅱ群病院の中にはがんセンターのように予定入院が中心の手術重視型病院も存在することから、Ⅱ群病院の評価から救急医療は除外されているように解釈している方も散見される。しかし、救急医療に取り組むことは診療密度の向上に寄与するものであり、地域の実情と自院の状況を見据えて可能な範囲の救急は受けることが望ましい。 図表3に示すのが、診療科別の診療密度である。 図表3 1日当たり包括範囲出来高換算点数 この事例では、急性心筋梗塞を中心とする循環器内科の救急車搬送入院が最も診療密度が高く、一部の診療科を除いて救急車搬送入院が予定入院よりも1日当たり包括範囲出来高換算点数が高くなっている。特に救急医療入院の入院初期については、救急医療係数でも評価の対象となることを忘れてはならない。 診療密度は救急医療だけを評価したものではないが、一般的に予定入院患者は検査などの外来化をある程度行うであろうから、救急の方が、相対的に密度が濃くなる傾向にある。 ③ 入院中の化学療法 Ⅱ群病院は、100床当たりの入院時化学療法件数がⅢ群病院よりも有意に多い傾向がある。 これはⅡ群病院が多くのがん患者を引き受けていることの証であり、重症患者ほど診療密度が高いという原則と整合するともいえる。 しかし、化学療法は外来化を進め、病床を効率的に利用するという視点も欠かすことができない。診療密度を高めるために化学療法を入院に戻すという選択肢は、現実的にはありえないであろう。 化学療法に関しては、高額な抗がん剤を投与するわけであるから、1日当たりで評価される診療密度が押し上げられることはいうまでもない。ただし、この点についても、適切な在院日数を心掛けなければ、診療密度の向上にはつながらない。 そうはいっても短ければ最適ともいえず、場合によっては一定期間の入院が必要であるというケースも存在すると予想されるため、自院にとって“適切な在院日数”の設定を行うことが期待される。   3 適切なデータの作成を DPC/PDPSでは、過剰な医療資源の投入を避け無駄を省くことが期待されている。 これは医療費高騰という環境下においては避けることができないであろうし、組織として当然の取組みであるともいえる。 ただし、本来必要な画像診断を無理やり減らしたり、行き過ぎた持参薬を強制したりといった、過剰なダイエットをすることはお勧めできない。ダイエットをしてたとえスリムになっても、輝くことはない。魅力的であるためには、自分らしく活き活きと歩み続けることだ。 つまり、地域の中で自院が果たすべき役割を適切に遂行し、地域で不可欠な存在になることが求められている。 最後に、診療密度において適切な評価を受けるために留意すべき事項について言及する。 診療密度はDPC提出データのE・Fファイル(医事会計のデータ)をもとに評価されるため、適切なデータが作成されていることが前提になる。DPCデータは入院中に行われた診療行為のすべてが網羅されているべきなのだが、現実はそうではないケースも少なくない。包括評価であり、出来高で算定できないからといって適切な記録を怠ってしまうようだと、評価が下落する。 診療密度を高めるために、無駄に医療資源の投入をすることはありえないし、するべきではない。実態を反映した適切なデータを作成することが期待される。 (了)

#No. 17(掲載号)
#井上 貴裕
2013/05/02

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例1(贈与税)】 「相続時精算課税を選択していれば贈与税がかからなかったところ、暦年課税を選択したため、贈与税の支払いが発生し、支払った贈与税について損害賠償請求を受けた事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例1(贈与税)】   税理士 齋藤 和助   〈連載に当たって〉 本連載は、長年、税理士職業賠償責任保険の調査に携わってきた筆者が、実際の事故事例を参考にして、実務において頻出しているミスや、起こりうる事故を事例として紹介し、どのようにして事故が起きたのか、事故のポイントはどこか、税理士の責任はどこにあるのか、そしてどのようにすれば事故が防げたのかを考え、その予防策を探っていこうというものである。 日常の実務において、また同じ業務を受任した際に気を付けるべき点として参考にしていただければ幸いである。 《事例の概要》 平成21年分の贈与税につき、相続時精算課税の適用を受けることができる祖母からの土地の贈与につき、暦年課税により贈与税の申告を行った。ところが贈与から3年以内の平成23年に祖母が死亡したため、贈与を受けた土地を持ち戻して相続税の申告を行おうとしたが、相続人の見積りによれば、相続財産の合計額が基礎控除以下となったため、相続税は発生しなかった。 このため、依頼者より、平成21年分の土地の贈与に相続時精算課税を適用していれば、贈与税は支払わずに済んだとして、支払った暦年贈与税額につき賠償請求を受けたものである。   《賠償請求の経緯》 相続時精算課税とは、生前の贈与について、納税者の選択により、贈与時に贈与財産に対して一定の贈与税を支払い、相続開始時にその贈与財産を相続財産にプラスして相続税を計算し、支払った贈与税を精算する制度である。ただし、特別控除額の2,500万円までは贈与税はかからず、さらに相続開始時にこれらの生前贈与財産をプラスしても相続税がかからない場合には、贈与税の負担なしで生前贈与が可能となる。 一方、暦年課税は、年間110万円を超える部分に関しては贈与税がかかるが、相続開始前3年を超える贈与に関しては、相続財産から切り離して相続税の計算をすることができる。 依頼者は、相続時精算課税の適用のある祖母から特別控除額以下の土地の贈与を受け、贈与税の申告について税理士に相談した。 税理士は、依頼者が当時両親の相続につき相続人ともめていたことから、相続時精算課税を選択すると本件土地の贈与が必ず他の相続人に知れてしまうこと、及び遺留分減殺請求されやすい事等を説明して暦年課税を薦め、暦年課税での申告を行った。 ところが、贈与から3年以内に贈与者である祖母が死亡し、相続人が贈与を受けた土地を持ち戻して相続財産を集計したところ、基礎控除以下となったため、相続税の申告は行わなかった。 このため、相続時精算課税で申告をしていれば、贈与税は支払わずに済んだとして、依頼者より暦年課税による贈与税額について損害賠償請求を受けたものである。   《税理士の落とし穴》   《税理士の責任》 贈与が税理士主導で行われた場合で、依頼者(本件事故の場合には受贈者)が贈与者の財産をもれなく把握していて、税理士にこれを提示し、税理士が贈与者の相続開始時に相続税がかからないことを十分把握できる状況であったにもかかわらず、暦年贈与を選択して贈与税を支払っている場合には、税理士の責任が問われることになると思われる。   《予防策》 [ポイント①] 暦年課税と相続時精算課税のメリット、デメリットを正しく説明する。 本件事故の場合には、少なくとも以下の説明が必要であった。 他に説明すべき主なメリット、デメリットには次のようなものがある。   [ポイント②] 意思決定の証拠を書面で残す。 上記ポイント①を履行したうえで、例えば、次のような書面で依頼者の意思決定を証拠としで残しておく必要がある。 (了)

#No. 16(掲載号)
#齋藤 和助
2013/04/25

会社以外の法人の使用人兼務役員の可否

会社以外の法人の 使用人兼務役員の可否   税理士 飯田 聡一郎   国税庁の質疑応答事例では、税理士法人の社員税理士に、内部規程で業務執行権限を持たせないこととしている場合でも、税理士法上は業務執行権限を有することを理由に、すべての社員税理士は使用人兼務役員に該当しないという内容のものがある。 最近は、税理士法人に限らず様々な士業法人の設立が相次ぐようになった。本稿では、会社以外の法人の役員が、使用人兼務役員に該当するか否かについて検討を加えていくこととする。   1) 使用人兼務役員の概要 使用人兼務役員とは、役員のうち部長、課長、その他法人の使用人としての職制上の地位を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事する者である(法法34⑤)が、一定の役員は使用人兼務役員に該当しないこととされている。 使用人兼務役員から除外される者は、①代表取締役、代表執行役、代表理事及び清算人、②副社長、専務、常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員、③合名会社、合資会社及び合同会社の業務を執行する社員、④取締役(委員会設置会社の取締役に限る) 、会計参与及び監査役並びに監事である。また、同族関係者のうち一定の要件を満たす者についても使用人兼務役員に該当しないとされている(法令71)。 会社については、直接的な規定を置いているが、士業法人などについての直接的な規定は存在しない。代表権がある場合や、役付き役員の場合は当然に使用人兼務役員に該当しないことになる。質疑応答事例では、平役員でも、業務執行役員であることを判断基準として、使用人兼務役員になれないことを示唆した。   2) 社員の業務執行権について制限を加えることができない場合 質疑応答事例で、税理士法人の社員が使用人兼務役員に該当することがないとしたのは、 を理由としている。そして、この根拠は、税理士法48条の11の「税理士法人の社員は、すべて業務を執行する権利を有し、義務を負う。」という規定からの解釈である。 また、同様の規定は、司法書士法36条にもあり「司法書士法人の社員は、すべて業務を執行する権利を有し、義務を負う。」としている。つまり、司法書士法人の社員は、税理士法人と同様、使用人兼務役員には該当しないと考えられる。 税理士法や司法書士法の規定のように、社員はすべて業務を執行する権利を有し義務を負うと規定している場合は、仮に定款で制限を加えたとしても、法律上は業務執行権を有することになり、使用人兼務役員の要件を満たさないことになる。   3) 社員の業務執行権限を定款によって制限できる場合 税理士法人や司法書士法人は、業法により社員の業務執行権について制限を加えることができる旨の規定がない。一方で、他の士業法人の規定を確認していくと、業務執行権について定款により制限を加えることを認めているものもある。 実務で直面しそうな士業法人の例を挙げると、社会保険労務士法25条の15では、「社会保険労務士法人の社員は、定款で別段の定めがある場合を除き、すべて業務を執行する権利を有し、義務を負う。」とし、弁護士法30条の12では、「弁護士法人の社員は、定款で別段の定めがある場合を除き、すべて業務を執行する権利を有し、義務を負う。」と定めている。つまり、定款の規定により業務執行について制限を加えることで、社員でも使用人兼務役員に該当するケースがあると考えられる。 いずれにしても、業法で業務執行権について制限を加えることができるか否か、そして制限を加えることができる場合に、定款にそのような規定を置いているか否かを確認する必要がある。 定款で、業務執行に制限を加えることができるか否かについては、下記の通りとなる。 なお、士業法人の場合は、同族会社に該当することはないので、同族経営でも、出資割合を原因として使用人兼務役員から外れることはない。   4) 医療法人・一般法人などの場合 医療法人の場合、その法人形態が社団なのか財団なのかによって、法人の機関設計が異なるが、社団医療法人の社員や、財団医療法人の評議員は役員に含まれない(医療法46の2)。 医療法人の法人税法上の役員は、医療法で役員と定めている理事、監事が該当する。また、法人税法2条15号及び施行令7条1号により、使用人(職制上使用人としての地位のみを有するものに限る)以外の者でその法人の経営に従事している者が含まれることになる。 医療法人の使用人兼務役員は、理事長、常務理事など、役職が付く理事及び監事以外の役員で、使用人としての職制上の地位を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事する者である。例えば、理事を兼務している院長でも、専ら使用人としての業務に従事しているような場合は、使用人兼務役員に該当することになる。具体的には、下記の表の通りとなる。   ※表の出典:朝長英樹監修『医療法人の法務と税務』(法令出版)364ページ 一般法人は、その法人形態が一般社団法人と一般財団法人に分類される。そして、一般法人における役員は理事と監事である(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律63)。医療法人の場合と同様に、一般社団法人の社員や、一般財団法人の評議員は、法人の役員には含まれない。そして、役職が付く理事及び監事以外であれば、使用人兼務役員に該当する可能性がある。 なお、医療法人や一般法人の場合も、同族会社に分類されることはないため、大口の出資をしている場合でも、経営に従事しているという実態がない限り、使用人兼務役員として取り扱われることになる。この点については士業法人と同様である。 (了)

#No. 16(掲載号)
#飯田 聡一郎
2013/04/25
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