※この記事は会員以外の方もご覧いただけます。
◆◇◆ はじめに ◆◇◆
資格の学校TACと出版社の清文社が合弁会社として立ち上げた株式会社プロフェッションネットワークは、2012年5月に創業を開始しました。同社が運営する税務・会計Web情報誌プロフェッションジャーナルは同年10月から12月における5回の準備号を経て2013年1月10日に創刊、毎週木曜日の公開を継続し、2024年12月26日をもって第600号を公開させていただく運びとなりました。
本誌が10年以上にわたり運営を継続できましたのは、ひとえに会員読者の皆様及び本誌へご寄稿いただいた多くの先生方のご支援によるものであり、あらためまして深く感謝申し上げます。
創刊当時はまだWeb情報誌という存在が数えるほどしかなく、スマートフォンの普及率も低いなか、本誌はTACによるシステム・サービス開発力、清文社による編集技術をそれぞれ活かし、当初よりWebのみの公開、かつ、スマホ閲覧最適化のシステムを織り込んでまいりました。ここまで公開・蓄積された解説記事は約9,500、実務家にとっての情報データベースとしての有効性を日々更新しております。
そしてこのたび、平時より本誌へご寄稿いただいている筆者の先生方より、ご多用の中、第600号公開を記念し温かいお言葉を頂戴しましたので、下記の通り公開させていただきます。
今後もより良い媒体を目指し尽力いたしますので、本誌を引き続きご愛読、ご支援くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。
プロフェッションジャーナル編集部一同
※掲載順は順不同です。
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「プロフェッションジャーナルへの期待-貴重なアーカイブ」
東京財団政策研究所研究主幹
森信 茂樹
プロフェッションジャーナル600号の公開、おめでとうございます。
私は、プロフェッションジャーナル創刊の2013年1月以来、毎月一度「monthly Tax views」という連載を続けており、すでに10年以上が経過しました。私にとって生活の一部となっている寄稿を通して感じたことを記して、プロフェッションジャーナルへの期待の言葉に代えたいと思います。
執筆の際、私が最も苦労するのはテーマの選定です。読者は、ほとんどが税務や会計のプロの方であり、税制の個別テーマについては、私より詳しい方々が大勢いらっしゃるため、私としては、専門分野である租税政策や財政の話題を取り上げ、差別化を図ることにしています。
その際に気を付けることとして、プロフェッションジャーナルがWebメディアだという点です。ほぼリアルタイム、同時進行なので、即時性の高い「旬の課題」を取り上げることとしています。最近は政治情勢が変わり、税制の議論も利害が複雑化してきました。またSNSでは、注目を集めようと不確かな事実関係をもとにした極端な意見が幅を利かせています。そのような状況の中、自分なりに少し世の中の議論の先を見ながらテーマを選んでいます。
また、毎年暮れには編集部の方々と、私が取り上げたテーマの記事のアクセス状況などを参考にしながら、どのテーマが読まれたのかなどについて検討会を行っています。税制は最も政治性の高い話題なので、なるべく中立的な立場で、そうはいっても自らの考え方をわかりやすく発信していきたいと考えています。
最後に、Webメディアのメリットの1つは、検索の容易性にあると思っています。プロフェッションジャーナルは、税務・会計の諸問題についての情報提供や各部門の専門家による程度の高い解説や意見がアーカイブとして蓄積されており、貴重な財産となっています。折に触れその中から興味のある記事を検索して学び直すことは、大きな楽しみの1つです。
プロフェッションジャーナルの益々の発展をお祈りします。
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「プロが読むべき情報誌」
中央大学法科大学院教授・法学博士
酒井 克彦
プロフェッションジャーナル600号公開とのこと誠におめでとうございます。
ご縁をいただき、2013年創刊の本誌に同年から連載を始めたことが、つい最近のことのようです。思うに小職の連載スタートの第1回は、馬券訴訟をテーマにしたものでした。当時、同訴訟には刑事事件のものと民事事件のものがありましたが、いずれの納税者も外れ馬券の購入費用を必要経費として雑所得の金額の計算上控除されるべきだと主張していました。しかしながら、国税庁は所得税基本通達34-1において、競馬の馬券の払戻金に係る所得区分を一時所得と通達していたため、いわば通達に反する処理を求めた訴訟だったわけです。小職は、このうちの民事事件において雑所得該当性を主張する鑑定意見書を提出したところ、最高裁で納税者勝訴となった小職にとってとても思い出深い事件が、本誌の連載の出発点であったのです。その後も、事件に直接携わった長崎年金二重課税訴訟、LLP事件、LPS事件など、多くの事例を本誌において紹介させていただきました。
もっとも、小職の関心事項は、これまで携わってきた多数の租税訴訟の紹介そのものよりも解釈論の方にシフトしてきており、連載のコンテンツは変容してまいりました。
さて、プロフェッションジャーナルはその名のとおり、プロフェッション向けの情報誌ですが、プロフェッションの仕事には何が求められているのでしょうか。
小職のまったくの私見として常に思っていることなのですが、プロフェッションにとって、十分な情報収集なくして盤石な仕事はできないと思っております。やや強調する別言を許してもらえるとすれば、正確なエビデンスなくしてプロフェッションは生き残れないということを意味しています。この文脈で小職が強調したいことは、プロフェッションに求められているのは、情報のリサーチ力と読書量だということです。
プロフェッションジャーナルがそのプロフェッションのための重要な情報獲得ツールであることは言を俟たないと思います。今後も、これまで同様、このようなWEB情報誌が情報収集の中心になることは間違いないでしょう。
プロフェッションのための情報誌として、今後も大いに期待するとともに、小職も、出し惜しみをせず、これまで関わってきた「超」がつくほど重要な租税事件について、いわば当事者的目線で紹介していこうと思います。プロフェッションの仕事に役立つ情報を提供することで、少しでも読者の皆さんの盤石な仕事のお役に立てれば幸甚の極みです。
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「プロフェッションジャーナル600号公開に寄せて」
大阪学院大学法学部教授
谷口 勢津夫
プロフェッションジャーナル600号公開、誠におめでとうございます。2013年1月10日の創刊号から12年間の長きにわたり「税務・会計Web情報誌」としての評価を高め社会におけるその地位を確立してこられたことに、心よりお慶びを申し上げます。
さて、私がプロフェッションジャーナルに初めて寄稿させていただいたのは2018年8月16日の281号であり、その後2020年12月24日の400号まで50回にわたって「谷口教授と学ぶ『税法の基礎理論』」を連載させていただきました。この連載に先立ち、清文社の小泉定裕社長とプロフェッションジャーナルの坂田啓編集長からご依頼の趣旨等の説明を受けテーマ等を検討した結果、私が税法の研究において常に念頭に置いてきた「税法の基礎理論」とりわけ租税法律主義論を中心に原則1回読み切りの「読み物」を執筆させていただくことにしました。
その旨を坂田編集長にお伝えしたところ、「谷口教授と学ぶ」をいわば枕詞として付けることを提案していただき、「谷口教授と学ぶ『税法の基礎理論』」として連載を始めました。その際、「谷口教授と学ぶ」に相応しい内容にするにはどのような「読み物」にすればよいか思案した結果、学説や判例を引用・参照するに当たりその要点・要旨を述べるだけでなく、できるだけ原典をそのまま引用することによって、学説・判例について私が理解したところを、読者には原典に当たって検討しながら読んでもらうことができるようにすることを、執筆の基本方針とすることにしました。
連載を始めその基本方針に徐々に慣れてきたことから、当初は月1回であった公開を月2回の公開とする連載に切り替え、「谷口教授と学ぶ『税法の基礎理論』」の連載終了後は「谷口教授と学ぶ」をシリーズ化し、2021年4月22日の416号から「谷口教授と学ぶ『税法基本判例』」を、2022年4月14日の465号からは「谷口教授と学ぶ『国税通則法の構造と手続』」をそれぞれ月1回ずつ公開させていただいております(2024年11月末時点で前者は第44回、後者は第32回)。
このように私のこれまで40数年に及ぶ研究生活の中で経験したことのない長期間にわたる連載を続けてこられたのは、「谷口教授と学ぶ」という坂田編集長から提案していただいた枕詞のお陰であると心より感謝しております。その枕詞の趣旨を私なりに理解して立てた基本方針に従い「谷口教授と学ぶ」というスタイルで原稿の執筆を続けることを通じて、個人的な思いとしては研究の「新境地」を開くことができたと考えております。
このようなスタイルでの原稿執筆を可能にしてくれたのは、紙ベースの伝統的な雑誌とは異なり字数制限がさほど厳格でないWeb雑誌の特性・優位性であると考えるところであり、その意味でも、プロフェッションジャーナルには今後更なる飛躍・発展の可能性が大いにあると確信しております。
プロフェッションジャーナルの今後更なるご継続とご発展を祈念申し上げます。
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「〈小説〉『所得課税第三部門にて。』」
大阪学院大学法学部教授
公認会計士・税理士
八ッ尾 順一
現在、第87話まで「〈小説〉『所得課税第三部門にて。』」の連載を行っている。このシリーズは、2013年1月10日に「〈小説〉『法人課税第三部門にて。』」を第1話として掲載したのがスタートである。この『法人課税第三部門にて。』は、第23話まで執筆し、次回作として、「〈小説〉『資産課税第三部門にて。』」を第24話まで執筆したうえで、新シリーズとして、現在の「小説『所得課税第三部門』にて。」へと続いている。
これらを通算すると、早いもので執筆期間は、10年を優に過ぎていることになる。当初の「〈小説〉『法人課税第三部門にて。』」は、『入門税務調査~小説でつかむ改正国税通則法の要点と検証』(2014)として、法律文化社から書籍として出版され、さらに、清文社からも『マンガでわかる税務調査』(2016)としてマンガ本になっている。これまで、マンガ本は、2冊(『入門税務訴訟』(2003)『マンガでわかる遺産相続』(2011))清文社から出版しているので、『マンガでわかる税務調査』は、3冊目となっている。
プロフェッションジャーナルでの税務署(法人課税部門、資産課税部門、所得課税部門)シリーズは、税務署内で、主として統括官と調査官の2人が、日常の税務の問題について議論するというスタイルを採っている。もちろん、多くは筆者の想像の下で、書いているが、一部、知人の元税務職員らに確認をしていることもある。ちなみに、筆者は、国税(大阪国税不服審判所も含めて)に10年間勤務した経験を有しているので、ある程度、昔の税務署内部の状況は理解している。
税法は、その条文を読んでもその理解の内容が異なることがよくある。特に、納税者と課税庁では、条文の解釈が異なることが多々ある。租税法律主義を強調する納税者と租税公平主義を維持しようとする課税庁では、本質的に、条文の読み方が異なるのかもしれない。ともあれ、このシリーズでは、統括官と調査官の会話を通じて、それぞれの考え方を分かりやすく理解できるように執筆することを心がけている。
ところで、このような会話における議論は、その会話の展開によって、当初考えていた結論と異なることが起こる。一人の人間が二役を演じるのであるから、このような執筆形式では当然のことで、筆者としては面白い体験になっている。
また、税務署内部の取扱いについても、いろいろな人に取材し、情報を収集し、できるだけ興味深いテーマを議論できるようにしている。
税金は、難解なものでないということを読者に伝えることを、筆者はモットーとしている。その意味で、600号公開を迎えるプロフェッションジャーナルにおいて、このようなシリーズを続けさせてもらえることに、感謝したい。