監査基準の改訂・
不正リスク対応基準の設定について
~平成25年3月26日付 “意見書”のポイント~
公認会計士 阿部 光成
平成25年3月26日、企業会計審議会は「監査基準の改訂及び監査における不正リスク対応基準の設定に関する意見書」(以下「意見書」という)を公表した。これにより、平成24年12月21日に、公開草案を公表し、意見募集を行っていたものが確定したことになる。
公開草案では、「監査における不正リスク対応基準(仮称)の設定及び監査基準の改訂について(公開草案)」の表題であったが、意見書では「監査基準の改訂及び監査における不正リスク対応基準の設定に関する意見書」の表題となり、「監査基準の改訂に関する意見書」と「監査における不正リスク対応基準の設定に関する意見書」(以下、「監査における不正リスク対応基準」を含め、「不正リスク対応基準」という)から構成されている。
本稿では、意見書の主なポイントについて解説を行う。
なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。
「「監査基準の改訂及び監査における不正リスク対応基準の設定に関する意見書」の公表について」(企業会計審議会(平成25年3月26日))
Ⅰ 不正リスク対応基準の考え方
不正リスク対応基準は、次の基本的な考え方に基づいている。
① 財務諸表監査において対象とする重要な虚偽の表示の原因となる不正を対象としており、重要な虚偽の表示とは関係のない不正は対象としていない。
② 不正リスク対応基準は、財務諸表監査の目的を変えるものではなく、不正摘発自体を意図するものでもない。財務諸表監査における不正による重要な虚偽表示のリスク(以下「不正リスク」という)に対応する監査手続等を規定している(公開草案から記載の順序を入れ変えている)。
③ すべての財務諸表監査において画一的に不正リスクに対応するための追加的な監査手続の実施を求めることを意図しているものではない。
被監査企業に不正による財務諸表に重要な虚偽の表示を示唆するような状況がないような場合や監査人において既に不正リスク対応基準に規定されているような監査手続等を実施している場合には、現行の監査基準に基づく監査の実務と基本的には変わらない(過重な監査手続を求めるものではない)。
④ 財務諸表の作成に対する経営者の責任と、当該財務諸表の意見表明に対する監査人の責任とは区別されている(二重責任の原則)。
経営者の作成した財務諸表に重要な虚偽の表示がないことについて、正当な注意を払って監査を行った場合には、監査人としてはその責任を果たしたことになる。
④に関して、公開草案では「正当な注意を払って監査を行った場合には、基本的には、監査人は責任を問われることはない」とされていた。
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