公開日: 2013/05/16 (掲載号:No.19)
文字サイズ

会計事務所の事業承継~事務所を売るという選択肢~ 【第5回】「会計事務所の価値評価」

筆者: 岸田 康雄

会計事務所の事業承継

~事務所を売るという選択肢~

【第5回】

会計事務所の価値評価

 

公認会計士・税理士 岸田 康雄 

 

1 会計事務所の価値とは何か

今回は個人事務所を営む税理士を売り手、税理士法人を買い手とするM&Aを前提として、会計事務所の価値評価について説明する。

会計事務所のM&Aでは、その譲渡対象のほとんどは、顧客との顧問契約や職員の雇用契約といった無形資産である。無形資産を譲渡するといっても、そもそも営業権がないと法的に定められている税理士業務の価値評価に際して、相続税法上の財産評価基本通達を使う必要はないため、当事者間の交渉を通じて、公正価値すなわち時価による価値評価を行うことになる。

現在、会計事務所のM&A実務において、経常売上高マルチプル(倍率)1倍という評価で取引される事例が多いといわれている。

「基本的には顧問先を全部承継するという条件で、決算を除く臨時手数料(相続関連など)以外の手数料、毎月の顧問料および決算手数料の合計、すなわち、経常売上高の100%から80%ほどになるのではないだろうか。」(増山雅久『会計事務所のM&A成功術』幻冬舎メディアコンサルティング、2010年)とされるケースである。

しかし、前回の記事において述べたように、会計事務所のM&Aにおける買い手の取引は「投資」である。これは事業会社のビジネスの基本原理と同じである。

投資をした者は、それを回収して利益を得なければならない。したがって、買い手は回収可能性を予測したうえで、投資額を見積もる。これが価値評価のプロセスである。

理論的な公正価値(時価)は、一般的なファイナンス理論においては、将来キャッシュ・フローの割引現在価値であるといわれる。すなわち、DCF法によって評価した価値のことである。

DCF法の価値評価は、決算書の数値に基づく純資産法などと異なり、不確実な将来予測に基づいて行う。それゆえ、将来キャッシュ・フローをどれくらい確実に予測できるかが、その評価の信頼性のポイントとなる。

この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員(プレミアム
会員又は一般会員)としてのログインが必要です。
通常、Profession Journalはプレミアム会員専用の閲覧サービスですので、プレミアム
会員のご登録をおすすめします。
プレミアム会員の方は下記ボタンからログインしてください。

プレミアム会員のご登録がお済みでない方は、下記ボタンから「プレミアム会員」を選択の上、お手続きください。

会計事務所の事業承継

~事務所を売るという選択肢~

【第5回】

会計事務所の価値評価

 

公認会計士・税理士 岸田 康雄 

 

1 会計事務所の価値とは何か

今回は個人事務所を営む税理士を売り手、税理士法人を買い手とするM&Aを前提として、会計事務所の価値評価について説明する。

会計事務所のM&Aでは、その譲渡対象のほとんどは、顧客との顧問契約や職員の雇用契約といった無形資産である。無形資産を譲渡するといっても、そもそも営業権がないと法的に定められている税理士業務の価値評価に際して、相続税法上の財産評価基本通達を使う必要はないため、当事者間の交渉を通じて、公正価値すなわち時価による価値評価を行うことになる。

現在、会計事務所のM&A実務において、経常売上高マルチプル(倍率)1倍という評価で取引される事例が多いといわれている。

「基本的には顧問先を全部承継するという条件で、決算を除く臨時手数料(相続関連など)以外の手数料、毎月の顧問料および決算手数料の合計、すなわち、経常売上高の100%から80%ほどになるのではないだろうか。」(増山雅久『会計事務所のM&A成功術』幻冬舎メディアコンサルティング、2010年)とされるケースである。

しかし、前回の記事において述べたように、会計事務所のM&Aにおける買い手の取引は「投資」である。これは事業会社のビジネスの基本原理と同じである。

投資をした者は、それを回収して利益を得なければならない。したがって、買い手は回収可能性を予測したうえで、投資額を見積もる。これが価値評価のプロセスである。

理論的な公正価値(時価)は、一般的なファイナンス理論においては、将来キャッシュ・フローの割引現在価値であるといわれる。すなわち、DCF法によって評価した価値のことである。

DCF法の価値評価は、決算書の数値に基づく純資産法などと異なり、不確実な将来予測に基づいて行う。それゆえ、将来キャッシュ・フローをどれくらい確実に予測できるかが、その評価の信頼性のポイントとなる。

この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員(プレミアム
会員又は一般会員)としてのログインが必要です。
通常、Profession Journalはプレミアム会員専用の閲覧サービスですので、プレミアム
会員のご登録をおすすめします。
プレミアム会員の方は下記ボタンからログインしてください。

プレミアム会員のご登録がお済みでない方は、下記ボタンから「プレミアム会員」を選択の上、お手続きください。

連載目次

筆者紹介

岸田 康雄

(きしだ・やすお)

公認会計士、税理士、中小企業診断士、国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会検定会員)
日本公認会計士協会経営研究調査会「事業承継専門部会」委員

昭和45年大阪府生まれ。一橋大学大学院商学研究科修了(経営学及び会計学専攻)。
監査法人、投資銀行を経て、現在、青山アクセス税理士法人にて資産税業務に従事している。
2011年度日本公認会計士協会東京会経営委員会委員長。
2013年1月に研究報告書「開業した公認会計士の高齢化と事業承継について」を発表。税理士業界における会計事務所M&Aの普及と啓蒙活動に取り組んでいる。

M&Aに関するご相談はこちらまで → 【M&A情報

【著書】
・『金融機関・税理士・FP・PBのための事業承継・相続における生命保険活用ガイド』(清文社)
・『中小企業のための 会社売却(M&A)の手続・評価・税務と申告実務』(清文社)
・『税理士・会計事務所のためのM&Aアドバイザリーガイド』(中央経済社)
・『証券投資信託の開示実務』共著(中央経済社)
など
 

関連書籍

中小企業の事業再生等ガイドラインの実務

弁護士 福岡真之介 著 弁護士 片井慎一 著 公認会計士・税理士 松田隆志 著

Q&A 中小企業における「株式」の実務対応

東京中小企業投資育成株式会社 公認会計士・税理士 中野威人 著

中小企業の事業承継

税理士 牧口晴一 著 名古屋商科大学大学院教授 齋藤孝一 著

図解&条文解説 税理士法

日本税理士会連合会 監修 近畿税理士会制度部 編著

〔目的別〕組織再編の最適スキーム

公認会計士・税理士 貝沼 彩 著 公認会計士・税理士 北山雅一 著 税理士 清水博崇 著 司法書士・社会保険労務士 齊藤修一 著

わたしは税金

公認会計士・税理士 鈴木基史 著

組織再編税制大全

公認会計士・税理士 佐藤信祐 著

経営危機に陥った社長さんを守る最後の救済策

公認会計士・税理士 橋口貢一 著

中小企業の運営・承継における理論と実務 ファミリービジネスは日本を救う

大阪弁護士会・日本公認会計士協会近畿会・ファミリービジネス研究会 著

非公開会社における少数株主対策の実務

弁護士法人ピクト法律事務所 代表弁護士 永吉啓一郎 著

中小企業のための 成功する 健康経営実践ガイド

特定社会保険労務士 稲田耕平 編著 社会保険労務士 阿藤通明 著 特定社会保険労務士 石原美由紀 著 産業医 今井鉄平 著 中小企業診断士 小川亮一 著 特定社会保険労務士 澤上貴子 著 特定社会保険労務士 鈴木光子 著 特定社会保険労務士 田中亮子 著 特定社会保険労務士 坂野祐輔 著 特定社会保険労務士 山岡洋秋 著 特定社会保険労務士 八巻裕香 著

相続・事業承継に役立つ生命保険活用術

税理士法人レディング 税理士 木下勇人 著

企業法務で知っておくべき税務上の問題点100

弁護士・税理士 米倉裕樹 著 弁護士・税理士 中村和洋 著 弁護士・税理士 平松亜矢子 著 弁護士 元氏成保 著 弁護士・税理士 下尾裕 著 弁護士・税理士 永井秀人 著

事業・財産承継の法務と税務 信託をいかに活用するか

三井住友信託銀行 田中和明 弁護士・公認会計士 中野竹司 編著

記事検索

メルマガ

メールマガジン購読をご希望の方は以下に登録してください。

#
#