《速報解説》
会計士協会、収益認識会計基準の公表等を受けて
監基報580「経営者確認書」を改正
~一部を除き2022年3月31日以後終了する事業年度に係る監査から適用~
公認会計士 阿部 光成
Ⅰ はじめに
2021年12月7日付けで(ホームページ掲載日は2021年12月10日)、日本公認会計士協会は、「監査基準委員会報告書580「経営者確認書」の改正」を公表した。
これにより、2021年10月18日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。「公開草案に対するコメントの概要及び対応」も公表されており、コメントを受けて公開草案から見直されている事項がある。
これは、「収益認識に関する会計基準」の公表、「金融商品に関する会計基準」の改正などを受けたものである。
文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。
Ⅱ 主な内容
経営者確認書の記載例において、以下で説明する文例が示されている。
詳細については「《付録2 経営者確認書の記載例》4.その他追加項目の確認事項(財務諸表監査全般に共通する事項)の記載例」をお読みいただきたい。
なお、経営者確認書の入手に当たっては、経営者に対して十分に説明することが経営者確認書の実効性の確保につながると考えているとの記載があるので、監査業務に従事する監査法人及び公認会計士は、被監査企業に対して十分に説明することになると考えられる。
1 売上関連
次の文例へ改正する。
顧客との契約から生じる収益は、約束した財又はサービスを顧客に移転することにより履行義務を充足した時に又は充足するにつれて、取引価格のうち、充足した履行義務に配分された額で認識し、適切に損益計算書に表示し、適切かつ十分に注記しております。
なお、契約資産を計上している場合は必要に応じて、「営業債権」を「営業債権及び契約資産」とする。
また、個別に確認すべき重要な検討事項(例えば、変動対価、独立販売価格や履行義務の充足に係る進捗度等の見積り)について確認項目として追加する必要があると判断した場合には、その内容を記載する。
2 金融商品関連
次の文例へ改正する。
市場価格のない株式等で、実質価額が著しく低下しているにもかかわらず減損処理を行っていないものについては、入手した事業計画等に基づいて、その実質価額は合理的な期間内に回復可能であると判断しております。
〇〇(特定の金融商品を記載)の時価の算定に用いた評価技法及びインプットに関する重要な情報を全て貴監査法人に提示し、また、当該金融商品の時価の算定に用いた評価技法及びインプットは、合理的であると判断しており、財務諸表等に適切に計上又は注記しております。
時価の算定に用いた第三者から入手した相場価格は、時価の算定に関する会計基準に従って算定されたものであると判断しております。
Ⅲ 適用時期等
2022年3月31日以後終了する事業年度に係る監査から適用する。
2021年1月14日付けで改正された《付録1》及び《付録2》の会計上の見積りの監査に関連する事項は、2023年3月決算に係る監査及び2022年9月に終了する中間会計期間に係る中間監査から実施する。ただし、それ以前の決算に係る監査及び中間会計期間に係る中間監査から実施することを妨げない。
(了)