公開日: 2025/10/16 (掲載号:No.640)
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谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第39回】「国税通則法115条」-税務訴訟における国税通則法と行政事件訴訟法との連続性とその限界(その2)-

筆者: 谷口 勢津夫

谷口教授と学ぶ

国税通則法構造手続

【第39回】

「国税通則法115条」

-税務訴訟における国税通則法と行政事件訴訟法との連続性とその限界(その2)-

 

大阪学院大学法学部教授
谷口 勢津夫

 

国税通則法115条(不服申立ての前置等)

(不服申立ての前置等)

第115条 国税に関する法律に基づく処分(第80条第3項(行政不服審査法との関係)に規定する処分を除く。以下この節において同じ。)で不服申立てをすることができるものの取消しを求める訴えは、審査請求についての裁決を経た後でなければ、提起することができない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。

一 国税不服審判所長又は国税庁長官に対して審査請求がされた日の翌日から起算して3月を経過しても裁決がないとき。

二 更正決定等の取消しを求める訴えを提起した者が、その訴訟の係属している間に当該更正決定等に係る国税の課税標準等又は税額等についてされた他の更正決定等の取消しを求めようとするとき。

三 審査請求についての裁決を経ることにより生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるとき、その他その裁決を経ないことにつき正当な理由があるとき。

2 国税に関する法律に基づく処分についてされた再調査の請求又は審査請求について決定又は裁決をした者は、その決定又は裁決をした時にその処分についての訴訟が係属している場合には、その再調査決定書又は裁決書の謄本をその訴訟が係属している裁判所に送付するものとする。

 

1 はじめに

前回は、松沢智教授の租税争訟法論(同『新版 租税争訟法-異議申立てから訴訟までの理論と実務-』(中央経済社・2001年)参照)における「意義及び審査から訴訟にいたるまでを租税争訟手続として一貫し体系化したい」(同「初版 はしがき」7頁)との考えから示唆を受け、「租税争訟法の特質」(同12頁)に関連する問題として更正と再更正との関係の問題を取り上げ検討し、もって「税務訴訟における国税通則法と行政事件訴訟法との連続性とその限界」を明らかにすることを試みた。

今回は、「税務訴訟における国税通則法と行政事件訴訟法との連続性と限界」の問題に関連して不服申立前置主義をいわば「連続性の強制」の問題として取り上げ、憲法上の適正手続保障(13条・31条参照)の税法における現れとして租税法律主義の内容を構成する手続的保障原則とりわけ司法的救済保障原則(拙著『税法基本講義〔第8版〕』(弘文堂・2025年)【27】参照)の見地から、納税者の「裁判を受ける権利」(憲32条)との関係で不服申立前置主義の問題性を検討することにする。その前に、まず、不服申立前置主義の趣旨・目的をみておこう。

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谷口教授と学ぶ

国税通則法構造手続

【第39回】

「国税通則法115条」

-税務訴訟における国税通則法と行政事件訴訟法との連続性とその限界(その2)-

 

大阪学院大学法学部教授
谷口 勢津夫

 

国税通則法115条(不服申立ての前置等)

(不服申立ての前置等)

第115条 国税に関する法律に基づく処分(第80条第3項(行政不服審査法との関係)に規定する処分を除く。以下この節において同じ。)で不服申立てをすることができるものの取消しを求める訴えは、審査請求についての裁決を経た後でなければ、提起することができない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。

一 国税不服審判所長又は国税庁長官に対して審査請求がされた日の翌日から起算して3月を経過しても裁決がないとき。

二 更正決定等の取消しを求める訴えを提起した者が、その訴訟の係属している間に当該更正決定等に係る国税の課税標準等又は税額等についてされた他の更正決定等の取消しを求めようとするとき。

三 審査請求についての裁決を経ることにより生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるとき、その他その裁決を経ないことにつき正当な理由があるとき。

2 国税に関する法律に基づく処分についてされた再調査の請求又は審査請求について決定又は裁決をした者は、その決定又は裁決をした時にその処分についての訴訟が係属している場合には、その再調査決定書又は裁決書の謄本をその訴訟が係属している裁判所に送付するものとする。

 

1 はじめに

前回は、松沢智教授の租税争訟法論(同『新版 租税争訟法-異議申立てから訴訟までの理論と実務-』(中央経済社・2001年)参照)における「意義及び審査から訴訟にいたるまでを租税争訟手続として一貫し体系化したい」(同「初版 はしがき」7頁)との考えから示唆を受け、「租税争訟法の特質」(同12頁)に関連する問題として更正と再更正との関係の問題を取り上げ検討し、もって「税務訴訟における国税通則法と行政事件訴訟法との連続性とその限界」を明らかにすることを試みた。

今回は、「税務訴訟における国税通則法と行政事件訴訟法との連続性と限界」の問題に関連して不服申立前置主義をいわば「連続性の強制」の問題として取り上げ、憲法上の適正手続保障(13条・31条参照)の税法における現れとして租税法律主義の内容を構成する手続的保障原則とりわけ司法的救済保障原則(拙著『税法基本講義〔第8版〕』(弘文堂・2025年)【27】参照)の見地から、納税者の「裁判を受ける権利」(憲32条)との関係で不服申立前置主義の問題性を検討することにする。その前に、まず、不服申立前置主義の趣旨・目的をみておこう。

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連載目次

谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」

筆者紹介

谷口 勢津夫

(たにぐち・せつお)

大阪学院大学法学部教授

1956年高知県生まれ。京都大学法学部卒業、同大学大学院法学研究科博士後期課程単位修得退学。甲南大学法学部教授、大阪大学大学院高等司法研究科教授を経て2022年4月より現職。大阪大学名誉教授。ほかに大阪大学大学院高等司法研究科長・大阪大学法務室長、アレクサンダー・フォン・フンボルト財団奨励研究員(Forschungsstipendiat der Alexander von Humboldt-Stiftung)・ミュンヘン大学客員研究員、日本税法学会理事長、租税法学会理事、IFA(International Fiscal Association)日本支部理事、資産評価政策学会理事、司法試験考査委員、公認会計士試験試験委員、独立行政法人造幣局契約監視委員会委員・委員長、大阪府収用委員会委員・会長、大阪府行政不服審査会委員・会長、公益財団法人日本税務研究センター評議員・同センター理事・同センター「日税研究賞」選考委員、公益財団法人納税協会連合会「税に関する論文」選考委員、公益社団法人商事法務研究会「商事法務研究会賞」審査委員、近畿税理士会・近畿税務研究センター顧問など(一部現職。ほか歴任)。

主要著書は『租税条約論』(清文社・1999年)、『租税回避論』(清文社・2014年)、『租税回避研究の展開と課題〔清永敬次先生謝恩論文集〕』(共著・ミネルヴァ書房・2015年)、『税法の基礎理論』(清文社・2021年)、『税法創造論』(清文社・2022年)、『税法基本判例Ⅰ』(清文社・2023年)、『基礎から学べる租税法〔第4版〕』(共著・弘文堂・2025年)、『税法基本講義〔第8版〕』(弘文堂・2025年)など。
 
  

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