公開日: 2024/05/09 (掲載号:No.568)
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谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第26回】「国税通則法72条・73条(・74条)」-徴収権の期間制限(消滅時効)-

筆者: 谷口 勢津夫

谷口教授と学ぶ

国税通則法構造手続

【第26回】

「国税通則法72条・73条(・74条)」

-徴収権の期間制限(消滅時効)-

 

大阪学院大学法学部教授
谷口 勢津夫

 

国税通則法72条(国税の徴収権の消滅時効)

(国税の徴収権の消滅時効)

第72条 国税の徴収を目的とする国の権利(以下この節において「国税の徴収権」という。)は、その国税の法定納期限(第70条第3項(国税の更正、決定等の期間制限)の規定による更正若しくは賦課決定、同条第4項の規定による賦課決定、前条第1項第1号の規定による更正決定等、同項第3号の規定による更正若しくは賦課決定又は同項第4号の規定による更正決定等により納付すべきものについては、第70条第3項若しくは前条第1項第1号若しくは第3号に規定する更正、第70条第4項に規定する賦課決定、前条第1項第1号に規定する裁決等又は同項第4号に規定する更正決定等があつた日とし、還付請求申告書に係る還付金の額に相当する税額が過大であることにより納付すべきもの及び国税の滞納処分費については、これらにつき徴収権を行使することができる日とし、過怠税については、その納税義務の成立の日とする。次条第3項において同じ。)から5年間行使しないことによつて、時効により消滅する。

2 国税の徴収権の時効については、その援用を要せず、また、その利益を放棄することができないものとする。

3 国税の徴収権の時効については、この節に別段の定めがあるものを除き、民法の規定を準用する。

 

国税通則法73条(時効の完成猶予及び更新)

(時効の完成猶予及び更新)

第73条 国税の徴収権の時効は、次の各号に掲げる処分に係る部分の国税については、当該各号に定める期間は完成せず、その期間を経過した時から新たにその進行を始める。

一 更正又は決定 その更正又は決定により納付すべき国税の第35条第2項第2号(申告納税方式による国税等の納付)の規定による納期限までの期間

二 過少申告加算税、無申告加算税又は重加算税(第68条第1項、第2項又は第4項(同条第1項又は第2項の重加算税に係る部分に限る。)(重加算税)の重加算税に限る。)に係る賦課決定 その賦課決定により納付すべきこれらの国税の第35条第3項の規定による納期限までの期間

三 納税に関する告知 その告知に指定された納付に関する期限までの期間

四 督促 督促状又は督促のための納付催告書を発した日から起算して10日を経過した日(同日前に国税徴収法第47条第2項(差押えの要件)の規定により差押えがされた場合には、そのされた日)までの期間

五 交付要求 その交付要求がされている期間(国税徴収法第82条第2項(交付要求の手続)の通知がされていない期間があるときは、その期間を除く。)

2 前項第5号の交付要求に係る強制換価手続が取り消された場合においても、同項の規定による時効の完成猶予及び更新は、その効力を妨げられない。

3 国税の徴収権で、偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れ、若しくはその全部若しくは一部の税額の還付を受けた国税又は国外転出等特例の適用がある場合の所得税に係るものの時効は、当該国税の法定納期限から2年間は、進行しない。ただし、当該法定納期限の翌日から同日以後2年を経過する日までの期間内に次の各号に掲げる行為又は処分があつた場合においては当該各号に掲げる行為又は処分の区分に応じ当該行為又は処分に係る部分の国税ごとに当該各号に定める日の翌日から、当該法定納期限までに当該行為又は処分があつた場合においては当該行為又は処分に係る部分の国税ごとに当該法定納期限の翌日から進行する。

一 納税申告書の提出 当該申告書が提出された日

二 更正決定等(加算税に係る賦課決定を除く。) 当該更正決定等に係る更正通知書若しくは決定通知書又は賦課決定通知書が発せられた日(当該更正決定等に係る賦課決定通知書の送達に代え、口頭で賦課決定の通知がされた場合には、当該賦課決定の通知がされた日)

三 納税に関する告知(賦課決定通知書が発せられた国税に係るもの(賦課決定通知書の送達に代え、口頭で賦課決定の通知がされた国税に係るものを含む。)を除く。) 当該告知に係る納税告知書が発せられた日(当該告知が当該告知書の送達に代え、口頭でされた場合には、当該告知がされた日)

四 納税の告知を受けることなくされた源泉徴収等による国税の納付 当該納付の日

4 国税の徴収権の時効は、延納、納税の猶予又は徴収若しくは滞納処分に関する猶予に係る部分の国税(当該部分の国税に併せて納付すべき延滞税及び利子税を含む。)につき、その延納又は猶予がされている期間内は、進行しない。

5 国税(附帯税、過怠税及び国税の滞納処分費を除く。)についての国税の徴収権の時効が完成せず、又は新たにその進行を始めるときは、その完成せず、又は新たにその進行を始める部分の国税に係る延滞税又は利子税についての国税の徴収権の時効は、完成せず、又は新たにその進行を始める。

6 国税(附帯税、過怠税及び国税の滞納処分費を除く。)が納付されたときは、その納付された部分の国税に係る延滞税又は利子税についての国税の徴収権の時効は、その納付の時から新たにその進行を始める。

 

1 徴収権の期間制限に対する私法的規制の原則

前回租税債権の期間制限前回参照)のうち確定権の期間制限について検討したが、今回は徴収権の期間制限について検討することにする。

税制調査会「国税通則法の制定に関する答申(税制調査会第二次答申)」(昭和36年7月)8頁は、「徴収権については、現行の時効制度をそのまま維持するものとする。」と述べたが、この点について同「国税通則法の制定に関する答申の説明(答申別冊)」(昭和36年7月)33頁は、「徴収権は一般の私債権ときわめて近似した性格をもち、特別に自力執行権と優先徴収権が認められることを除けば、むしろ私債権と同一に取り扱うことが適当である。」(下線筆者)と説明している。

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【第26回】

「国税通則法72条・73条(・74条)」

-徴収権の期間制限(消滅時効)-

 

大阪学院大学法学部教授
谷口 勢津夫

 

国税通則法72条(国税の徴収権の消滅時効)

(国税の徴収権の消滅時効)

第72条 国税の徴収を目的とする国の権利(以下この節において「国税の徴収権」という。)は、その国税の法定納期限(第70条第3項(国税の更正、決定等の期間制限)の規定による更正若しくは賦課決定、同条第4項の規定による賦課決定、前条第1項第1号の規定による更正決定等、同項第3号の規定による更正若しくは賦課決定又は同項第4号の規定による更正決定等により納付すべきものについては、第70条第3項若しくは前条第1項第1号若しくは第3号に規定する更正、第70条第4項に規定する賦課決定、前条第1項第1号に規定する裁決等又は同項第4号に規定する更正決定等があつた日とし、還付請求申告書に係る還付金の額に相当する税額が過大であることにより納付すべきもの及び国税の滞納処分費については、これらにつき徴収権を行使することができる日とし、過怠税については、その納税義務の成立の日とする。次条第3項において同じ。)から5年間行使しないことによつて、時効により消滅する。

2 国税の徴収権の時効については、その援用を要せず、また、その利益を放棄することができないものとする。

3 国税の徴収権の時効については、この節に別段の定めがあるものを除き、民法の規定を準用する。

 

国税通則法73条(時効の完成猶予及び更新)

(時効の完成猶予及び更新)

第73条 国税の徴収権の時効は、次の各号に掲げる処分に係る部分の国税については、当該各号に定める期間は完成せず、その期間を経過した時から新たにその進行を始める。

一 更正又は決定 その更正又は決定により納付すべき国税の第35条第2項第2号(申告納税方式による国税等の納付)の規定による納期限までの期間

二 過少申告加算税、無申告加算税又は重加算税(第68条第1項、第2項又は第4項(同条第1項又は第2項の重加算税に係る部分に限る。)(重加算税)の重加算税に限る。)に係る賦課決定 その賦課決定により納付すべきこれらの国税の第35条第3項の規定による納期限までの期間

三 納税に関する告知 その告知に指定された納付に関する期限までの期間

四 督促 督促状又は督促のための納付催告書を発した日から起算して10日を経過した日(同日前に国税徴収法第47条第2項(差押えの要件)の規定により差押えがされた場合には、そのされた日)までの期間

五 交付要求 その交付要求がされている期間(国税徴収法第82条第2項(交付要求の手続)の通知がされていない期間があるときは、その期間を除く。)

2 前項第5号の交付要求に係る強制換価手続が取り消された場合においても、同項の規定による時効の完成猶予及び更新は、その効力を妨げられない。

3 国税の徴収権で、偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れ、若しくはその全部若しくは一部の税額の還付を受けた国税又は国外転出等特例の適用がある場合の所得税に係るものの時効は、当該国税の法定納期限から2年間は、進行しない。ただし、当該法定納期限の翌日から同日以後2年を経過する日までの期間内に次の各号に掲げる行為又は処分があつた場合においては当該各号に掲げる行為又は処分の区分に応じ当該行為又は処分に係る部分の国税ごとに当該各号に定める日の翌日から、当該法定納期限までに当該行為又は処分があつた場合においては当該行為又は処分に係る部分の国税ごとに当該法定納期限の翌日から進行する。

一 納税申告書の提出 当該申告書が提出された日

二 更正決定等(加算税に係る賦課決定を除く。) 当該更正決定等に係る更正通知書若しくは決定通知書又は賦課決定通知書が発せられた日(当該更正決定等に係る賦課決定通知書の送達に代え、口頭で賦課決定の通知がされた場合には、当該賦課決定の通知がされた日)

三 納税に関する告知(賦課決定通知書が発せられた国税に係るもの(賦課決定通知書の送達に代え、口頭で賦課決定の通知がされた国税に係るものを含む。)を除く。) 当該告知に係る納税告知書が発せられた日(当該告知が当該告知書の送達に代え、口頭でされた場合には、当該告知がされた日)

四 納税の告知を受けることなくされた源泉徴収等による国税の納付 当該納付の日

4 国税の徴収権の時効は、延納、納税の猶予又は徴収若しくは滞納処分に関する猶予に係る部分の国税(当該部分の国税に併せて納付すべき延滞税及び利子税を含む。)につき、その延納又は猶予がされている期間内は、進行しない。

5 国税(附帯税、過怠税及び国税の滞納処分費を除く。)についての国税の徴収権の時効が完成せず、又は新たにその進行を始めるときは、その完成せず、又は新たにその進行を始める部分の国税に係る延滞税又は利子税についての国税の徴収権の時効は、完成せず、又は新たにその進行を始める。

6 国税(附帯税、過怠税及び国税の滞納処分費を除く。)が納付されたときは、その納付された部分の国税に係る延滞税又は利子税についての国税の徴収権の時効は、その納付の時から新たにその進行を始める。

 

1 徴収権の期間制限に対する私法的規制の原則

前回租税債権の期間制限前回参照)のうち確定権の期間制限について検討したが、今回は徴収権の期間制限について検討することにする。

税制調査会「国税通則法の制定に関する答申(税制調査会第二次答申)」(昭和36年7月)8頁は、「徴収権については、現行の時効制度をそのまま維持するものとする。」と述べたが、この点について同「国税通則法の制定に関する答申の説明(答申別冊)」(昭和36年7月)33頁は、「徴収権は一般の私債権ときわめて近似した性格をもち、特別に自力執行権と優先徴収権が認められることを除けば、むしろ私債権と同一に取り扱うことが適当である。」(下線筆者)と説明している。

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連載目次

谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」

筆者紹介

谷口 勢津夫

(たにぐち・せつお)

大阪学院大学法学部教授

1956年高知県生まれ。京都大学法学部卒業、同大学大学院法学研究科博士後期課程単位修得退学。甲南大学法学部教授、大阪大学大学院高等司法研究科教授を経て2022年4月より現職。大阪大学名誉教授。ほかに大阪大学大学院高等司法研究科長・大阪大学法務室長、アレクサンダー・フォン・フンボルト財団奨励研究員(Forschungsstipendiat der Alexander von Humboldt-Stiftung)・ミュンヘン大学客員研究員、日本税法学会理事長、租税法学会理事、IFA(International Fiscal Association)日本支部理事、資産評価政策学会理事、司法試験考査委員、公認会計士試験試験委員、独立行政法人造幣局契約監視委員会委員・委員長、大阪府収用委員会委員・会長、大阪府行政不服審査会委員・会長、公益財団法人日本税務研究センター評議員・同「日税研究賞」選考委員、公益財団法人納税協会連合会「税に関する論文」選考委員、公益社団法人商事法務研究会「商事法務研究会賞」審査委員、近畿税理士会・近畿税務研究センター顧問など(一部現職。ほか歴任)。

主要著書は『租税条約論』(清文社・1999年)、『租税回避論』(清文社・2014年)、『租税回避研究の展開と課題〔清永敬次先生謝恩論文集〕』(共著・ミネルヴァ書房・2015年)、『税法の基礎理論』(清文社・2021年)、『税法基本講義〔第7版〕』(弘文堂・2021年)、『基礎から学べる租税法〔第3版〕』(共著・弘文堂・2022年)、『税法創造論』(清文社・2022年)、『税法基本判例Ⅰ』(清文社、2023年)など。
 
  

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