公開日: 2026/07/23 (掲載号:No.678)
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[令和8年度税制改正解説]関連者間取引に係る書類の整理保存の特例創設の影響と実務対応 【前編】「改正の背景と特例措置の内容」

筆者: 川瀬 裕太

令和8年度税制改正解説

関連者間取引に係る書類の整理保存の特例創設の影響と実務対応

【前編】

「改正の背景と特例措置の内容」

太陽グラントソントン税理士法人 ディレクター
税理士 川瀬 裕太

 

1 はじめに

令和8年度税制改正により、関連者間取引に係る書類の整理保存の特例措置が創設されることとなった。本連載では、この新たに創設された関連者間取引に係る書類の整理保存の特例措置について解説する。

【前編】では、まず改正の背景と特例措置の内容について確認する。

 

2 改正の背景

企業グループ内の法人間取引、特に共通費用の配賦を伴う取引は、取引条件や対価の算定過程が不明確になりやすく、恣意的な支払額の調整が行われやすい傾向にある。現状、取引内容や支払額の根拠を詳細に確認できる資料が受領・作成されていない事例も見られ、既存の保存書類だけでは経費の支払額の適正性を十分に検証できず、正確な実態把握が困難であった。こうした弊害を解消すべく、本特例措置が設けられるに至った。

 

3 関連者間取引に係る書類の整理保存の特例措置

(1) 概要

企業グループ内の関連者(下記(3)参照)との間で関連者間取引(詳細は【後編】にて解説)を行った場合には、支払いを行う法人の法人税の課税所得の計算上保存が義務付けられている書類等にその取引に関する資産又は役務の提供の明細、その取引における支払金額の計算の明細及びその取引に係る支払金額を算定するために必要な事項の記載等がないときは、これらの事項を明らかにする書類等を取得・作成し、保存することを義務付けられることとなる。

(2) 適用対象法人

青色申告の承認を受けている内国法人、内国法人である普通法人等(普通法人、協同組合等並びに収益事業を行う公益法人等及び人格のない社団等)が適用対象となる一方、外国法人はその対象から除外されている(法規59の2、67の2)。

(3) 関連者の範囲

関連者は、対象法人との間に次の関係があるものをいう。移転価格税制における関連者と同様の基準により判定するが、移転価格税制と異なり外国法人に限定されないため、関連者には内国法人も含まれる点に留意したい(法規59の2③)。

① 資本関係

イ 親子関係

2つの法人のいずれか一方の法人が他方の法人の発行済株式等(自己株式を除く)の50%以上を直接又は間接に保有する関係(法規59の2③一)

ロ 兄弟姉妹関係

2つの法人が同一の者によってそれぞれその発行済株式等の50%以上を直接又は間接に保有される場合におけるその2つの法人の関係(法規59の2③二)

② 実質支配関係

次の事実その他これに類する事実(特定事実)が存在することにより2つの法人のいずれか一方の法人が他方の法人の事業の方針の全部又は一部につき実質的に決定できる関係(法規59の2③三)

 他方の法人の役員の2分の1以上又は代表する権限を有する役員が、一方の法人の役員若しくは使用人を兼務している者又は一方の法人の役員若しくは使用人であった者であること

 他方の法人がその事業活動の相当部分を一方の法人との取引に依存して行っていること

 他方の法人がその事業活動に必要とされる資金の相当部分を一方の法人からの借入れにより、又は一方の法人の保証を受けて調達していること

基本的には資本関係により判定するが、役員の派遣、取引の依存状況、資金の貸付けなどによって実質的に法人の意思決定を支配しているケースを考慮し、実質支配関係も含まれる。

③ 資本関係と実質支配関係の連鎖がある場合

イ 2つの法人が資本関係又は実質支配関係にある複数の法人を介して連鎖がある場合における2つの法人の関係(法規59の2③四)

ロ 2つの法人が、同一の者との間で資本関係又は実質支配関係にある複数の法人を介して連鎖がある場合における2つの法人の関係(法規59の2③五)

④ 間接保有の計算

資本関係の場合、直接に保有する株式等の保有割合に間接に保有する株式等の保有割合とを合計した割合によって、50%以上の資本関係があるか否かを判定することとなっている(法規59の2④)。

なお、ここでいう間接保有の株式等の割合は、50%以上の出資の連鎖がある場合に足し算方式で計算する(法規59の2⑤)。これは掛け算方式による割合ではない点に留意が必要である。

(4) 関連者の判定時期

関連者に該当するかどうかは、それぞれの取引が行われた時の現況により判定する(法規59の2⑧)。

(5) 罰則

青色申告の承認の取消事由の一つに、その事業年度に係る帳簿書類の備付け、記録又は保存が法人税法126条(青色申告法人の帳簿書類)1項に規定する財務省令で定めるところに従って行われていないこととある(法法127①一)。

したがって、財務省令(法規59の2)で定められている一定の事項を記載した書類の保存がない場合には、青色申告の承認の取消事由となり得る。

(6) 適用開始時期

令和8年4月1日以後に開始する事業年度に行う関連者間取引について適用される(改正法規附則8)。

 

〔凡例〕
法法・・・法人税法
法規・・・法人税法施行規則
改正法規附則・・・所得税法施行規則の一部を改正する省令(令和8年財務省令第17号)附則
(例)法規59の2③一・・・法人税法施行規則第59条の2第3項第1号

〈追記〉

令和8年6月30日付で公表された「関連者間取引に係る書類の整理保存の特例」に係る事務運営指針等についての速報解説は下記となります。
《速報解説》 令和8年度税制改正に伴う事務運営指針・法人税基本通達が公表される~関連者間取引に係る書類の整理保存の特例の“国税上の考え方”が明らかに~

(了)

【後編】は7/30に公開されます。

令和8年度税制改正解説

関連者間取引に係る書類の整理保存の特例創設の影響と実務対応

【前編】

「改正の背景と特例措置の内容」

太陽グラントソントン税理士法人 ディレクター
税理士 川瀬 裕太

 

1 はじめに

令和8年度税制改正により、関連者間取引に係る書類の整理保存の特例措置が創設されることとなった。本連載では、この新たに創設された関連者間取引に係る書類の整理保存の特例措置について解説する。

【前編】では、まず改正の背景と特例措置の内容について確認する。

 

2 改正の背景

企業グループ内の法人間取引、特に共通費用の配賦を伴う取引は、取引条件や対価の算定過程が不明確になりやすく、恣意的な支払額の調整が行われやすい傾向にある。現状、取引内容や支払額の根拠を詳細に確認できる資料が受領・作成されていない事例も見られ、既存の保存書類だけでは経費の支払額の適正性を十分に検証できず、正確な実態把握が困難であった。こうした弊害を解消すべく、本特例措置が設けられるに至った。

 

3 関連者間取引に係る書類の整理保存の特例措置

(1) 概要

企業グループ内の関連者(下記(3)参照)との間で関連者間取引(詳細は【後編】にて解説)を行った場合には、支払いを行う法人の法人税の課税所得の計算上保存が義務付けられている書類等にその取引に関する資産又は役務の提供の明細、その取引における支払金額の計算の明細及びその取引に係る支払金額を算定するために必要な事項の記載等がないときは、これらの事項を明らかにする書類等を取得・作成し、保存することを義務付けられることとなる。

(2) 適用対象法人

青色申告の承認を受けている内国法人、内国法人である普通法人等(普通法人、協同組合等並びに収益事業を行う公益法人等及び人格のない社団等)が適用対象となる一方、外国法人はその対象から除外されている(法規59の2、67の2)。

(3) 関連者の範囲

関連者は、対象法人との間に次の関係があるものをいう。移転価格税制における関連者と同様の基準により判定するが、移転価格税制と異なり外国法人に限定されないため、関連者には内国法人も含まれる点に留意したい(法規59の2③)。

① 資本関係

イ 親子関係

2つの法人のいずれか一方の法人が他方の法人の発行済株式等(自己株式を除く)の50%以上を直接又は間接に保有する関係(法規59の2③一)

ロ 兄弟姉妹関係

2つの法人が同一の者によってそれぞれその発行済株式等の50%以上を直接又は間接に保有される場合におけるその2つの法人の関係(法規59の2③二)

② 実質支配関係

次の事実その他これに類する事実(特定事実)が存在することにより2つの法人のいずれか一方の法人が他方の法人の事業の方針の全部又は一部につき実質的に決定できる関係(法規59の2③三)

 他方の法人の役員の2分の1以上又は代表する権限を有する役員が、一方の法人の役員若しくは使用人を兼務している者又は一方の法人の役員若しくは使用人であった者であること

 他方の法人がその事業活動の相当部分を一方の法人との取引に依存して行っていること

 他方の法人がその事業活動に必要とされる資金の相当部分を一方の法人からの借入れにより、又は一方の法人の保証を受けて調達していること

基本的には資本関係により判定するが、役員の派遣、取引の依存状況、資金の貸付けなどによって実質的に法人の意思決定を支配しているケースを考慮し、実質支配関係も含まれる。

③ 資本関係と実質支配関係の連鎖がある場合

イ 2つの法人が資本関係又は実質支配関係にある複数の法人を介して連鎖がある場合における2つの法人の関係(法規59の2③四)

ロ 2つの法人が、同一の者との間で資本関係又は実質支配関係にある複数の法人を介して連鎖がある場合における2つの法人の関係(法規59の2③五)

④ 間接保有の計算

資本関係の場合、直接に保有する株式等の保有割合に間接に保有する株式等の保有割合とを合計した割合によって、50%以上の資本関係があるか否かを判定することとなっている(法規59の2④)。

なお、ここでいう間接保有の株式等の割合は、50%以上の出資の連鎖がある場合に足し算方式で計算する(法規59の2⑤)。これは掛け算方式による割合ではない点に留意が必要である。

(4) 関連者の判定時期

関連者に該当するかどうかは、それぞれの取引が行われた時の現況により判定する(法規59の2⑧)。

(5) 罰則

青色申告の承認の取消事由の一つに、その事業年度に係る帳簿書類の備付け、記録又は保存が法人税法126条(青色申告法人の帳簿書類)1項に規定する財務省令で定めるところに従って行われていないこととある(法法127①一)。

したがって、財務省令(法規59の2)で定められている一定の事項を記載した書類の保存がない場合には、青色申告の承認の取消事由となり得る。

(6) 適用開始時期

令和8年4月1日以後に開始する事業年度に行う関連者間取引について適用される(改正法規附則8)。

 

〔凡例〕
法法・・・法人税法
法規・・・法人税法施行規則
改正法規附則・・・所得税法施行規則の一部を改正する省令(令和8年財務省令第17号)附則
(例)法規59の2③一・・・法人税法施行規則第59条の2第3項第1号

〈追記〉

令和8年6月30日付で公表された「関連者間取引に係る書類の整理保存の特例」に係る事務運営指針等についての速報解説は下記となります。
《速報解説》 令和8年度税制改正に伴う事務運営指針・法人税基本通達が公表される~関連者間取引に係る書類の整理保存の特例の“国税上の考え方”が明らかに~

(了)

【後編】は7/30に公開されます。

連載目次

令和8年度税制改正解説

関連者間取引に係る書類の整理保存の特例創設の影響と実務対応

筆者紹介

川瀬 裕太

(かわせ・ゆうた)

太陽グラントソントン税理士法人 ディレクター
税理士

京都大学大学院経営管理教育部卒業。大手税理士法人勤務を経て、2015年7月より現職。
日系企業、外資系企業への申告書作成業務やM&A、グループ企業内再編案件の税務アドバイザリー業務、海外進出企業の税務アドバイザリー業務に従事。オーナー系企業の事業承継対策、納税資金対策や自社株対策を中心としたコンサルティング業務も行うなど幅広く活動している。

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