〔業種別Q&A〕
労使間トラブル事例と会社対応
【第18回】
「派遣先の休業・中途解約の場合の労働問題」
〈人材派遣業・人材紹介業〔Q1〕〉
弁護士法人 ロア・ユナイテッド法律事務所
パートナー弁護士 石居 茜
〈人材派遣業・人材紹介業の特徴と特有の労務問題〉
人材派遣業や人材紹介業では、自社のプロパー従業員を雇用しているため、解雇やパワハラといった一般企業と同様の労働問題が発生します。しかし、それに加えて、それぞれのビジネスモデルに起因する業界特有の労務問題が存在します。
【人材派遣業の特徴と特有の労務問題】
- 派遣元と派遣先の二重構造:雇用主(派遣元)と実際の業務の指揮命令を行う者(派遣先)が異なるため、労働基準法などの関連法令における責任が派遣元と派遣先で分担されるという大きな特徴があります。
- 中途解約や休業時の対応義務:派遣先の都合で労働者派遣契約が中途解約されたり休業となったりした場合でも、派遣元と派遣労働者との雇用契約は期間満了まで継続します。そのため、派遣元には休業手当の支払いや新たな就業機会の確保などの義務が生じます。
- 多様な課題への対応:有期雇用・無期雇用の選択、派遣労働者の雇止め、法改正に伴う同一労働同一賃金への対応など、検討すべき人事労務の課題が多岐にわたります。
- 紛争時の影響拡大リスク:トラブルが労働局への申告や外部労働組合との団体交渉などに発展した場合、取引先である派遣先をも巻き込んだ大きな紛争に発展するリスクを孕んでいます。
【人材紹介業の特徴と特有の労務問題】
- 職業安定法や厚労省指針の厳格な遵守:法令により、求人情報などの的確な表示が義務付けられているほか、求人・求職者情報を正確かつ最新の内容に保つことが厳しく求められます。
- 紹介手数料をめぐるトラブル:紹介した人材が早期に自己都合退職した際の「紹介手数料の返還約定」の解釈をめぐる紛争や、手数料の未払いトラブルが実務上多く見られます。
- 不適切な転職勧奨の禁止:「就職お祝い金」などの名目で求職者に金銭等を提供し、転職を勧奨することは、厚労省の指針によって禁止されています。
【まとめ】
両業界ともに、関連法令や指針への違反は行政指導や企業名の公表、事案によっては罰則といったペナルティに繋がるリスクがあります。そのため、トラブルが顕在化する前の平時から、労働者派遣契約書や人材紹介契約書、求人サイトの規約といった各種文書を適法に整備しておく「予防法務」の視点が非常に重要となります。
【Q】
当社は登録型の人材派遣事業を行っています。この度、取引先である派遣先企業から、業績悪化を理由に労働者派遣契約を期間途中で中途解約されてしまいました(または休業を余儀なくされました)。当該派遣先に派遣されていた労働者に対し、当社は残りの派遣期間満了までの賃金を支払わなければならないのでしょうか。また、すぐに次の派遣先が見つからない場合、派遣先がなくなったことを理由として、派遣労働者との雇用契約を期間途中で解約(解雇)することはできるのでしょうか。
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