公開日: 2026/10/08 (掲載号:No.689)
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PJ Bookmark-October 2026- 「その生前贈与、渡したあとのことまで考えていますか?」

筆者: Profession Journal 編集部

カテゴリ:



B
PJ Bookmark
── October 2026 ──

◇

その生前贈与、
渡したあとのことまで考えていますか?

年の瀬が近づくと、「年内に贈与を済ませておきたい」という相談が増えてくるかと思います。

暦年課税か相続時精算課税か、誰に何を渡すか・・・生前贈与は、相続を待たずに財産を動かせる数少ない手段です。

ところが実務で問題になるのは、制度の中身そのものよりも、その手前や先にあることが少なくありません。要件のカウントを一つ間違えただけで特例が使えなくなり、届出書を一枚出し忘れただけで課税方式が変わり、うまく渡せたはずの財産が数年後にかえって家族を悩ませる。

今回は「生前贈与・資産承継」を切り口に、渡す前・渡すとき・渡したあとで実務がつまずくポイントを、分野を横断して5本ご紹介します。

 

〇 「渡せば終わり」ではない贈与の実務

 

まず、配偶者への贈与です。婚姻期間20年の夫婦間で使える贈与税の配偶者控除は定番の対策ですが、要件の数え方を誤ればその年の贈与は無駄になり、渡したあとの財産管理まで見ておかないと別の問題が待っています →1本目。

税務
〔失敗事例から考える〕この相続対策の問題はドコ!?
【第2回】「贈与税の配偶者控除に関する失敗事例(その1)」~「婚姻期間」のカウントミスを原因とする贈与契約の不成立と自宅管理の未対応~
執筆:公認会計士・税理士 木下勇人
婚姻期間20年を記念して妻に自宅を贈与しようとしたところ、その年が来る前に妻が認知症を発症してしまった、そんな事例から始まる一本です。失敗の直接の原因は、配偶者控除の「婚姻期間20年」を「1月1日現在」で数えてしまったカウントミス。住宅取得等資金贈与の年齢要件などと混同しやすい落とし穴です。ただ、この記事の読みどころはその先にあります。仮にミスがなく贈与できていたとしても、妻の認知症によって共有名義の自宅は担保にも売却にも出せなくなる。「課税関係さえよければいい」では済まされない、財産管理まで見据えた助言とは何かを考えさせられます。「税理士=財産管理の一翼を担う存在」という筆者の言葉が、読み終えたあとに残る記事です。

次は、子や孫へ渡すときの課税方式の選択です。相続時精算課税を選ぶつもりが、届出書の提出を失念して暦年課税になってしまった税賠事例から、手続の重さを確認します →2本目。

税務
「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント
【事例151(贈与税)】「期限内の相続時精算課税選択届出書及び贈与税申告書の提出を失念したため、結果として暦年課税制度での申告となり、過大納付が発生してしまった事例」
執筆:税理士 齋藤和助
相続時精算課税で申告する依頼を受け、届出書も申告書も作成していた。それなのに、提出そのものを失念してしまった。届出書が一枚間に合わなかっただけで課税方式は暦年課税に切り替わり、過大納付が生じて賠償請求に至った事例です。単純な提出ミスだからこそ、申告書自体のダブルチェック体制で防げるという指摘は重く響きます。あわせて、令和5年度改正による生前贈与加算期間の7年への延長や、精算課税への110万円基礎控除の創設といった有利選択を誤らないための知識も整理されています。制度を理解していることと、手続をやり切ることは別なのだと、あらためて突きつけられる一本となっています。

視点を法務に移すと、孫への承継では養子縁組という選択肢が出てきます。孫養子にどれだけの節税効果があるのか、具体的な数字とともにたどります →3本目。

法務
養子縁組を使った相続対策と法規制・手続のポイント
【第16回】「孫養子の相続税の節税効果」
執筆:弁護士・税理士 米倉裕樹
孫を養子にすると相続税はどれだけ変わるのか。この記事は、当初の財産が10億円・5億円・2億円という3つのケースについて、何も対策しない場合、孫を養子にした場合、子の配偶者を養子にした場合を、実際の税額まで計算して比較しています。孫養子には2割加算がかかるにもかかわらず、世代を飛ばして承継できることで、トータルでは相応の節税効果が生じる。数字で示されるとより説得力があります。筆者は弁護士でもあり、子の配偶者を養子にした場合の離婚・再婚リスクなど、税額だけでは見えない法務の懸念にも目を配っているので読みごたえがあります。節税手段として語られがちな養子縁組を、法的な効果とリスクの両面から捉え直せる一本です。

オーナー経営者の相続対策としてよく使われる「毎年の贈与」にも、連年贈与や名義預金とみなされる落とし穴があります。事業承継の現場からその勘どころを押さえます →4本目。

会計
事例でわかる[事業承継対策]解決へのヒント
【第5回】「毎年同額の金額を贈与する際の注意点」
執筆:太陽グラントソントン税理士法人(事業承継対策研究会)
「子に毎年1,000万円ずつ贈与していきたい」。事業と資産を引き継ぐための、よくある相談です。ところがこの方法には、「もともと決まっていた総額を分割して渡しただけ」と見られて定期金の贈与とされるリスクや、通帳や印鑑を親が管理していたために名義預金とされるリスクがあります。記事では、こうした落とし穴を避ける鍵が「贈与の都度、双方が合意していること」にあると示し、贈与契約書の作成、受贈者による財産管理、受贈者名義での申告といった具体策まで落とし込んでいます。オーナー経営者への助言で使う場面の多い、実務直結の一本です。

最後は、ベテランコンサルタントの実例語りです。よかれと思った節税策が時代や家族の変化で空回りする様子を通じて、「対策の優先順位」そのものを問い直します →5本目。

読み物
老コンサルタントが出会った『問題の多い相続』のお話
【第8回】「その相続対策、早計ではありませんか?」~相続増税と時代の流れで、変わる"優先順位"~
執筆:財務コンサルタント 木山順三
締めくくりは、ベテラン財務コンサルタントの体験談です。逆縁で娘婿が再婚し、可愛がってきた孫との縁が薄れてしまった話。相続時精算課税を適用したことを15年後に忘れていた話。妻にと思って贈与したのに、その妻に先立たれてしまった話。よかれと思った節税策が、家族や時代の変化で空回りする実例が並びます。そのうえで筆者は、自身の「遺産分割の優先順位」が長年の経験を経てどう変わってきたかを率直に語ります。節税ありきで対策を急ぐ前に、一度立ち止まって考えたくなる、そんな味わい深い一本です。

Afterword

今回は「生前贈与・資産承継」を切り口に、配偶者・子・孫それぞれへの承継と、その落とし穴を5本ご紹介しました。要件の確認、手続の徹底、法務の視点、そして「そもそも急ぐべきか」という問い直しまで、贈与という一つの行為にこれだけの目配りが要るのだと、あらためて感じます。

PJには、ほかにも相続・贈与にまつわる記事が数多くあります。年内の対策を相談される機会が増えるこの時期、気になるテーマがあればぜひ探してみてください。

Profession Journal

(了)

「PJ Bookmark」は、不定期の掲載となります。



B
PJ Bookmark
── October 2026 ──

◇

その生前贈与、
渡したあとのことまで考えていますか?

年の瀬が近づくと、「年内に贈与を済ませておきたい」という相談が増えてくるかと思います。

暦年課税か相続時精算課税か、誰に何を渡すか・・・生前贈与は、相続を待たずに財産を動かせる数少ない手段です。

ところが実務で問題になるのは、制度の中身そのものよりも、その手前や先にあることが少なくありません。要件のカウントを一つ間違えただけで特例が使えなくなり、届出書を一枚出し忘れただけで課税方式が変わり、うまく渡せたはずの財産が数年後にかえって家族を悩ませる。

今回は「生前贈与・資産承継」を切り口に、渡す前・渡すとき・渡したあとで実務がつまずくポイントを、分野を横断して5本ご紹介します。

 

〇 「渡せば終わり」ではない贈与の実務

 

まず、配偶者への贈与です。婚姻期間20年の夫婦間で使える贈与税の配偶者控除は定番の対策ですが、要件の数え方を誤ればその年の贈与は無駄になり、渡したあとの財産管理まで見ておかないと別の問題が待っています →1本目。

税務
〔失敗事例から考える〕この相続対策の問題はドコ!?
【第2回】「贈与税の配偶者控除に関する失敗事例(その1)」~「婚姻期間」のカウントミスを原因とする贈与契約の不成立と自宅管理の未対応~
執筆:公認会計士・税理士 木下勇人
婚姻期間20年を記念して妻に自宅を贈与しようとしたところ、その年が来る前に妻が認知症を発症してしまった、そんな事例から始まる一本です。失敗の直接の原因は、配偶者控除の「婚姻期間20年」を「1月1日現在」で数えてしまったカウントミス。住宅取得等資金贈与の年齢要件などと混同しやすい落とし穴です。ただ、この記事の読みどころはその先にあります。仮にミスがなく贈与できていたとしても、妻の認知症によって共有名義の自宅は担保にも売却にも出せなくなる。「課税関係さえよければいい」では済まされない、財産管理まで見据えた助言とは何かを考えさせられます。「税理士=財産管理の一翼を担う存在」という筆者の言葉が、読み終えたあとに残る記事です。

次は、子や孫へ渡すときの課税方式の選択です。相続時精算課税を選ぶつもりが、届出書の提出を失念して暦年課税になってしまった税賠事例から、手続の重さを確認します →2本目。

税務
「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント
【事例151(贈与税)】「期限内の相続時精算課税選択届出書及び贈与税申告書の提出を失念したため、結果として暦年課税制度での申告となり、過大納付が発生してしまった事例」
執筆:税理士 齋藤和助
相続時精算課税で申告する依頼を受け、届出書も申告書も作成していた。それなのに、提出そのものを失念してしまった。届出書が一枚間に合わなかっただけで課税方式は暦年課税に切り替わり、過大納付が生じて賠償請求に至った事例です。単純な提出ミスだからこそ、申告書自体のダブルチェック体制で防げるという指摘は重く響きます。あわせて、令和5年度改正による生前贈与加算期間の7年への延長や、精算課税への110万円基礎控除の創設といった有利選択を誤らないための知識も整理されています。制度を理解していることと、手続をやり切ることは別なのだと、あらためて突きつけられる一本となっています。

視点を法務に移すと、孫への承継では養子縁組という選択肢が出てきます。孫養子にどれだけの節税効果があるのか、具体的な数字とともにたどります →3本目。

法務
養子縁組を使った相続対策と法規制・手続のポイント
【第16回】「孫養子の相続税の節税効果」
執筆:弁護士・税理士 米倉裕樹
孫を養子にすると相続税はどれだけ変わるのか。この記事は、当初の財産が10億円・5億円・2億円という3つのケースについて、何も対策しない場合、孫を養子にした場合、子の配偶者を養子にした場合を、実際の税額まで計算して比較しています。孫養子には2割加算がかかるにもかかわらず、世代を飛ばして承継できることで、トータルでは相応の節税効果が生じる。数字で示されるとより説得力があります。筆者は弁護士でもあり、子の配偶者を養子にした場合の離婚・再婚リスクなど、税額だけでは見えない法務の懸念にも目を配っているので読みごたえがあります。節税手段として語られがちな養子縁組を、法的な効果とリスクの両面から捉え直せる一本です。

オーナー経営者の相続対策としてよく使われる「毎年の贈与」にも、連年贈与や名義預金とみなされる落とし穴があります。事業承継の現場からその勘どころを押さえます →4本目。

会計
事例でわかる[事業承継対策]解決へのヒント
【第5回】「毎年同額の金額を贈与する際の注意点」
執筆:太陽グラントソントン税理士法人(事業承継対策研究会)
「子に毎年1,000万円ずつ贈与していきたい」。事業と資産を引き継ぐための、よくある相談です。ところがこの方法には、「もともと決まっていた総額を分割して渡しただけ」と見られて定期金の贈与とされるリスクや、通帳や印鑑を親が管理していたために名義預金とされるリスクがあります。記事では、こうした落とし穴を避ける鍵が「贈与の都度、双方が合意していること」にあると示し、贈与契約書の作成、受贈者による財産管理、受贈者名義での申告といった具体策まで落とし込んでいます。オーナー経営者への助言で使う場面の多い、実務直結の一本です。

最後は、ベテランコンサルタントの実例語りです。よかれと思った節税策が時代や家族の変化で空回りする様子を通じて、「対策の優先順位」そのものを問い直します →5本目。

読み物
老コンサルタントが出会った『問題の多い相続』のお話
【第8回】「その相続対策、早計ではありませんか?」~相続増税と時代の流れで、変わる"優先順位"~
執筆:財務コンサルタント 木山順三
締めくくりは、ベテラン財務コンサルタントの体験談です。逆縁で娘婿が再婚し、可愛がってきた孫との縁が薄れてしまった話。相続時精算課税を適用したことを15年後に忘れていた話。妻にと思って贈与したのに、その妻に先立たれてしまった話。よかれと思った節税策が、家族や時代の変化で空回りする実例が並びます。そのうえで筆者は、自身の「遺産分割の優先順位」が長年の経験を経てどう変わってきたかを率直に語ります。節税ありきで対策を急ぐ前に、一度立ち止まって考えたくなる、そんな味わい深い一本です。

Afterword

今回は「生前贈与・資産承継」を切り口に、配偶者・子・孫それぞれへの承継と、その落とし穴を5本ご紹介しました。要件の確認、手続の徹底、法務の視点、そして「そもそも急ぐべきか」という問い直しまで、贈与という一つの行為にこれだけの目配りが要るのだと、あらためて感じます。

PJには、ほかにも相続・贈与にまつわる記事が数多くあります。年内の対策を相談される機会が増えるこの時期、気になるテーマがあればぜひ探してみてください。

Profession Journal

(了)

「PJ Bookmark」は、不定期の掲載となります。

連載目次

筆者紹介

Profession Journal 編集部

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