確定拠出年金制度の改正をめぐる今後の展望」
【第1回】
「今回改正の背景と全体像」
特定非営利活動法人確定拠出年金総合研究所(NPO DC総研)
理事長 秦 穣治
【はじめに】
厚生労働省は、公的年金制度の見直し等にあわせて企業年金制度の改正を目指しており、2013年10月には社会保障審議会企業年金部会を立ち上げ、計15回に及ぶ部会審議の後に、今年4月に「確定拠出年金法等の一部を改正する法律案」を提出した。
「法律案」に盛られた内容は、部会で審議されたもののすべてを含んではおらず、特に税制関連項目に関しては今後財務省との交渉を踏まえてより深化していくものと期待される。税制上の課題はいずれ述べるが、少なくとも「企業年金部会等を通して厚生労働省が企業年金を今後どのような方向に改正させていきたいのか」という姿が見えてきた。
本稿では、現段階での、厚生労働省の方向観を踏まえて、今後、以下の項目について、順次解説を行っていく。
【第1回】 今回改正の背景と全体像
【第2回】 今回改正が意味すること①
【第3回】 今回改正が意味すること②
【第4回】 今回法改正案に盛り込まれたこと①
【第5回】 今回法改正案に盛り込まれたこと②
【第6回】 今後検討されること
本連載では現企業年金制度に関するあらましの知識をお持ちの方を対象にしているが、充分な知識をお持ちでないと思っておられる方々にも問題の本質をご理解いただけるよう努力している。現企業年金制度に関する情報については、厚生労働省のHPにある企業年金についてのコンテンツをご参照いただきたい。
なお、改正法律案そのものの説明を除き、筆者の私見が多数述べられていることを注記させていただく。
1 改正の背景
〈全体像〉
上図〈全体像〉にあるが、今回の企業年金制度改正の中心は確定拠出年金制度(DC)である。理由はいくつか考えられるが、
- 厚生年金基金制度は、先に発生した虚偽投資事件に絡み、かなりの改正が既に行われた。
- 確定給付年金制度(DB)も成熟した制度として、また、それなりの歴史を有する、いわば、企業年金の優等生として既に多くの利点を有し、使い勝手が良い制度になっている。
- それに対してDC制度はスタートしてからやっと12年が経過したばかりで、日本の企業年金制度としては新しい制度であり、かつ、税制上の優遇策を巡り常に逆風にさらされてきたことから、使い勝手を良くする方策が数多く残されている。
といったところが理由であろう。
加えて、退職給付会計の国際化の側面を見逃すわけにはいかない。DCが生まれる以前には、日本の制度は、退職一時金制度を含めてすべて確定給付の制度であり、社員に対して、予め決められた仕組みで退職金額を支払うこととなっていた。一般的だったのは、『退職時の給与水準×勤続年数×一定の係数』というもので、年功序列型賃金及び終身雇用を助長していた。
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