税務判例を読むための税法の学び方【84】
〔第9章〕代表的な税務判例を読む
(その12:「一時所得の計算における所得税法34条2項の
「その収入を得るために支出した金額」の範囲②」(最判平24.1.13))
立正大学法学部准教授
税理士 長島 弘
連載の目次はこちら
5 裁判所の判断(福岡高裁平成21年7月29日判決)の判断)
これは裁判所ホームページや税務大学校の税務訴訟資料にて判決が公開されているため、入手し、読んでいただきたい。
控訴審においても、
所得税が個人の得た所得に対して課税される租税であることに鑑みれば、その所得の意義をいわゆる純所得、すなわち、個人が稼得した収入金額から当該個人が当該収入を得るために支出した必要経費等を控除した金額とすることは純理論的にはむしろ正しいといえよう。
としながらも、
一時所得といっても、その所得発生の態様はさまざまであるので、・・・必要経費に相当する費用にあたるものとして「その収入を得るために支出した金額」としたうえ、さらに、括弧書きで「その収入を生じた行為をするため、又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る。」との限定を加えたものと思われる。しかしながら、・・・一時所得については、その発生の態様がさまざまであることからして必要経費が一義的に算出しうるか疑問があるうえ、特に、生命保険契約等に基づき支払を受ける生命保険金、あるいは本件のような養老保険契約に基づき支払を受ける満期保険金の場合には、収入と必要経費との関係が直接的でないことからして、「その収入を得るために支出した金額(その収入を生じた行為をするため、又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る。)の合計額」と定義したところで、その文言(なお、所得者本人が負担した金額に限るとは規定していない。)だけでは、仮に、生命保険契約等に基づく生命保険金等の一時金又は損害保険契約等に基づく損害保険金等の満期返戻金等が、一時所得とされる場合に、その一時所得の金額の計算上控除される保険料等は、その一時金を取得した者自身が負担したものに限られるのか、それとも、その生命保険金等又は損害保険金等の受給者以外の者が負担していたものも含まれるのかについては、法文上必ずしも明らかではないというしかないのである。
として、
所得税法における所得の本来的意義から、所得税法34条2項にいう「その収入を得るために支出した金額」として控除できるのは、当然、所得者本人が負担した金額に限られるとする、控訴人の主張は採用することができない。
この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員(プレミアム
会員又は一般会員)としてのログインが必要です。
通常、Profession Journalはプレミアム会員専用の閲覧サービスですので、プレミアム
会員のご登録をおすすめします。
プレミアム会員の方は下記ボタンからログインしてください。
プレミアム会員のご登録がお済みでない方は、下記ボタンから「プレミアム会員」を選択の上、お手続きください。