事例で検証する最新コンプライアンス問題 【第31回】「紅麹関連製品による健康被害と問題公表の遅延(上)」
K製薬は1919年に設立され、東京証券取引所プライム市場に上場し、医薬品や医薬部外品などを製造販売する企業である。
K製薬は、紅麹を用いて「悪玉コレステロールを下げる」機能性表示食品(本件製品)を販売していたが、2024年1月中旬以降、相次いで「本件製品を摂取した顧客に腎障害等が発生した」との連絡を受けた。後に判明したことだが、紅麹の培養タンクに青カビが混入し、腎毒性のある天然化合物「プベルル酸」が生成されたことが原因であった。
K製薬が本件製品を回収するとリリースしたのは、3月22日である。既に最初の症例連絡から2ヶ月強が経過していた。そうしたこともあり、本件との関連が疑われる被害は、医療機関を受診した者2,556名、入院516名、死亡397名にまで拡大した(2024年10月20日付K製薬からの速報値)。また、結果として代表取締役会長が辞任し、代表取締役社長も代表を降りて補償担当の取締役へと降格となった。
K製薬では、なぜ迅速なリリースができなかったのか。K製薬が設定した事実検証委員会の2024年7月22日付「調査報告書」に基づいて分析する。
〈ベテラン社員活躍のための〉高齢者雇用Q&A 【第1回】「高齢者雇用の現状と今後の課題」
当社は現在、定年年齢を60歳とし、65歳までの再雇用制度を導入しております。
これから対象となる社員が増えてくる中で、制度の見直しを検討しています。高齢者雇用の今後について、どのように考えればよいのでしょうか。
税理士事務所の労務管理Q&A 【第22回】「労働局のあっせん制度」
労働局から「貴事務所で勤務していたA氏から、種々のいじめや嫌がらせにより退職を余儀なくされたため、慰謝料の支払いを求めたい旨のあっせんの申立てがあった」との通知がありました。在職中は、多少トラブルがありましたが、円満退職したものと思っていました。どのように対応すればよいのでしょうか。
〈2024年11月施行〉フリーランス法のポイント 【前編】「フリーランス法の概要と下請法・労働関係法令との相違点」
近年、働き方の多様化が進展し、フリーランスという働き方が普及している中で、フリーランスが発注者から一方的に契約を打ち切られたり、支払期日までに報酬が支払われなかったり、発注者からハラスメントを受けたりする等のトラブルが多く発生している。
このようなフリーランスの取引上のトラブルについては、独占禁止法(優越的地位の濫用規制)や下請法の適用による解決も考えられるが、競争秩序維持という公益保護を目的とする独占禁止法や資本金区分などにより適用対象が限定された下請法による規制には限界があり、フリーランスとの取引の適正化を図ることには困難が伴うことも多い。
〔検証〕適時開示からみた企業実態 【事例98】株式会社ファーマフーズ「株主提案に対する当社取締役会意見に関するお知らせ」(2024.9.24)
今回取り上げる開示は、株式会社ファーマフーズ(以下「ファーマフーズ」という)が2024年9月24日に開示した「株主提案に対する当社取締役会意見に関するお知らせ」である。同社の株主から、「最低でも向こうの5年間は配当を増額し株主の信用を取り戻すため」という理由により、1株当たり年間50円の配当を実施せよという提案がなされ、これに対して次のように反対している(赤い下線は筆者による)。
給与計算の質問箱 【第58回】「源泉所得税の扶養親族等の数の変更時期」
源泉所得税の扶養親族等の数に変更があった場合、いつから給与計算に反映させればよいか、ご教示ください。
なお、当社の給与計算は月末締め翌月25日支払です。
税理士が知っておきたい不動産鑑定評価の常識 【第58回】「鑑定評価の過程には不動産鑑定士の判断が累積する」~鑑定評価書の利用者からみた留意点~
前回は、不動産の鑑定評価という行為が、自然的要素よりも人間的要素の強いものであることを述べました。今回は、鑑定評価書の利用者にこのことをより身近に感じていただくために、不動産鑑定士の判断が累積されて鑑定評価の作業が進められていく複数の過程を例に、そのイメージを掴んでみたいと思います。
それとともに、鑑定評価書の利用者が、そこに記載された様々な判断の結果が妥当なものであるかどうかを見極めるために押さえておきたい留意点についても述べていきます。
《税理士のための》登記情報分析術 【第17回】「代表取締役等の住所非表示措置」
令和6年10月1日から、代表取締役等の住所非表示措置が施行された。会社の登記記録には、これまで代表取締役等の住所が記載されてきたが、希望者が申出を行えば一定の要件のもとに、住所の記載を最小行政区画までに留めるという制度である(以下、「本制度」という)。税理士にも本制度の利用を希望する顧問先から相談が寄せられる可能性があるため、本連載でその概要を紹介するものとする。
従業員の解雇をめぐる企業対応Q&A 【第2回】「従業員を労務提供能力の欠如や規律違反行為を理由に解雇する場合の注意点」
前回において、解雇には、大別して、労働者側に存する理由に基づく解雇と、会社側の経営上の事情等による解雇がある旨説明したが、今回は、労働者側に存する理由に基づく解雇(懲戒解雇以外)のポイントについて説明する。
〈Q&A〉税理士のための成年後見実務 【第11回】「親族から通帳を見せてほしいと言われた場合の対応」
顧客の成年後見人を引き受けましたが、あるとき本人の家族から「通帳を見せてほしい」と言われました。応じなければならないのでしょうか。