社外取締役の教科書 【第3回】「社外取締役の職務・活動内容(その1)」
これから社外取締役の職務活動を説明していくに際し、活動の前提としての義務、すなわち社外取締役が会社に対して負う義務につき確認したい。
その名称が示すとおり、社外取締役も会社法上の「取締役」であることに変わりはない。そのため、法が取締役に対して課している各種義務については、社外取締役も等しく負うことになる。
養子縁組を使った相続対策と法規制・手続のポイント 【第3回】「普通養子縁組の手続と虚偽縁組の回避策」
現行法における普通養子縁組は、戸籍法の定めるところにより届け出るだけで、その効力(前回参照)が生じる(民799・739・801)。市町村長は、届出の審査に当たって形式的審査権しか有しないため、その審査は戸籍法が定める証明資料、戸籍簿の記載、及びこれに準ずる資料によるほかは、届出自体によって行いうる範囲に限定される。
そのため、実際には当事者間に縁組意思がないにもかかわらず、届出が受理されてしまう事態も生じ得る。現行法下の手続規定やその解釈もそれに拍車をかける要因となっている。昨今、高齢者の資産を狙った虚偽の養子縁組届事件が多発しているのもこのような事情が背景にある。
常識としてのビジネス法律 【第25回】「会社法《平成26年改正対応》(その6)」
取締役と会社との間の関係は委任に関する規定に従う(330条)ので、取締役は会社に対して善良な管理者としての注意義務を負担する(民644条)。善管注意義務とは、会社の業務および経理等に対して相当程度の知識、経験および能力を有する標準型の人が職務を行うにあたり通常払うであろう注意の程度を指す。これを具体的に示せば、取締役は法令および定款ならびに総会の決議を遵守し、会社のため忠実にその職務を行う義務を負うことになる(355条)。したがって、忠実義務は善管注意義務を明確にしたもので、これとは別の高度の義務を規定したものではない(最高裁昭和45年6月24日判決)。
社外取締役の教科書 【第2回】「『社外』取締役になれるのは誰か?(要件論)」
特に平成26年会社法改正においては、社会の耳目を集める重大な改正がなされた。
すなわち、監査役会設置会社(公開会社かつ大会社であるものに限る)で有価証券報告書の提出義務がある会社については、事業年度の末日において社外取締役を置いていない場合には、取締役は、定時株主総会において、「社外取締役を置くことが相当でない理由」を説明しなければならないものとされた(会社法327条の2)。
養子縁組を使った相続対策と法規制・手続のポイント 【第2回】「養子縁組の効果」
今回は、普通養子縁組、特別養子縁組を行うことで、いかなる効果が生じるかについて解説する。
両者の効果の違いは、普通養子縁組では、養子と実親との親族関係は消滅せず、縁組後も相互に相続・扶養の権利義務は存続するのに対し、特別養子縁組では、養子と実方(養子からみて、自分の自然血族関係にある親族)の父母及びその血族との親族関係は終了することにある。
社外取締役の教科書 【第1回】「社外取締役制度のねらいとは何か?(目的論)」
社外取締役を巡る現状は、ここ数年で目まぐるしい変化・発展を重ねている。
本連載では、すでに複雑なものとなっている社外取締役制度について一通りの知識を体系的に整理し、ビジネスパーソンあるいは会社と関わりが深い士業にとっての「教科書」となることを目標に解説したい。
養子縁組を使った相続対策と法規制・手続のポイント 【第1回】「養子縁組の種類と成立要件・養子縁組が認められなかった裁判例」
このように、養子縁組を利用した相続対策は、現行法制度のもとでは一定の歯止めがかけられているものの、対策次第では、養子縁組を利用することで相続税が軽減される結果とはなりえる。
ただし、あくまでも、養子縁組の法制度を潜脱しないことが大前提である。
現行養子縁組の法制度に関する正確かつ詳細な知識がないままに、相続税対策に主眼を置いた養子縁組を行うことは、かえって大きなリスクを伴うことになる。
そこで、本連載では養子縁組を使った相続対策を検討・紹介する前提として、まずは養子縁組の法制度・手続のポイントから詳細かつわかりやすく解説を行うこととする。
常識としてのビジネス法律 【第24回】「会社法《平成26年改正対応》(その5)」
取締役会設置会社の各取締役は取締役会の構成員にすぎないが、株主総会に出席するほか、会社の運営が軌道を外れた場合に各種の訴えを提起することができる。すなわち、株主総会決議取消の訴え(831条)、株主総会決議不存在・無効の訴え(830条)、会社の組織に関する行為の無効の訴え(828条)などの提起である。
〈まずはこれだけおさえよう〉民法(債権法)改正と企業実務への影響 【第5回】「保証」
現行民法465条の2においては、継続的に行われている売買取引から発生した債務をすべて保証する場合のように、貸金等債務を含まない包括根保証については規制されていない。もっとも、保証人の責任を予め限定しておき、保証人にとって責任の範囲を予測可能なものにするという要請は、貸金等債務とその他の取引から発生した債務とで異なることはない。
常識としてのビジネス法律 【第23回】「会社法《平成26年改正対応》(その4)」
取締役、会計参与、監査役および執行役は、株主総会において議題や議案について説明する必要があるが、加えて、株主の求めた事項について説明をする義務を負う(314条)。 株主の質問権の正当な行使を妨げたときは、総会決議の手続きに瑕疵があることになり、決議取消しの事由になる。
株主には決議事項のみならず報告事項についても質問権があり、取締役等にはそれらについて原則として説明義務がある。しかし、どの取締役等が説明するかは原則自由であり、説明補助者や顧問弁護士に説明させてもよい。ただし、まず議長が指名するのは取締役等であり、その指名された取締役等が説明補助者を使うことが許されるということを知っておく必要がある。あくまで会社法は取締役等の説明義務と規定しているからである。