民法改正(中間試案)―ここが気になる!― 【第3回】「売買」
売買契約に関する改正の特徴は、法律構成の明確化と整理である。すなわち、特に新しく規定するというよりは、判例等を明確にし、また、解釈を整理するものが中心である。
もっとも、こうした明確化や整理について、ビジネス法務上は、契約書に反映することで既に行われていることが少なくない。言い換えると、本改正に意義があるのは、契約書において明確に定めない場合、すなわち、個人的な売買や契約書を重視しない事業者による売買であろう。
民法改正(中間試案)―ここが気になる!― 【第2回】「保証人保護(2)」
前回に説明した個人保証の制限については、導入されるかどうか、まだ不明である。しかし、過去の保証人トラブルの原因においては、主債務者が保証人に虚偽の説明をしたり、保証人が保証債務について誤解をしていることがあったり、また、主債務の状況を知らずに保証人となって想像以上の過大な保証債務を負うことなどがよく見られた。
そこで、保証人が保証債務を負うにあたって保証制度やそのリスクを正確に理解できるよう、債権者に説明義務及び情報提供義務を課すことが検討されている。
民法改正(中間試案)―ここが気になる!― 【第1回】「保証人保護(1)」
平成25年2月26日、民法(債権関係)の改正に関する中間試案が法務省から公表され、6月17日までのパブリック・コメント手続に付されている。
この債権法改正については、まず改正そのものの手続について問題がないとはいえず、また、改正内容も、これまで積み重ねられてきた取引や裁判の実務が変更を余儀なくされるなど、多大なる影響を及ぼす可能性があるため、その社会的影響が大きいといえる。そのため、賛成するべきかどうか、慎重な対応が必要である。
そして、慎重な対応をするためには、まずは中間試案の内容を把握しなければならない。
ところが、債権法改正の範囲は広範囲にわたっており、そのすべてを把握することは大変である。
親族図で学ぶ相続講義 【第5回】「相続欠格」
相続欠格というのは、「相続をする資格を欠く」という意味です。
ですから、相続欠格に当たる人は相続人となることができません。
民法には、次のように書いてあります。
「石原産業役員責任追及訴訟第一審判決」から読む会社経営者としての責任の分水嶺【3】
10 フェロシルトが産業廃棄物であることについて責任が認められた取締役
(1) 平成13年4月27日開催の取締役会に出席した取締役
平成13年4月27日開催の取締役会に出席した取締役について、Y5及びY23も含め、役職と属性及びフェロシルトの廃棄物性に関して認識していた事情をもとに、いずれも廃棄物処理法違反であるかどうかを認識し得なかったとして、責任を認めていない。
親族図で学ぶ相続講義【第4回】「数次相続と遺産分割(その3)」
さて、前回(2013年3月7日 No.9)は、甲野太郎が所有していたX不動産を(亡)甲野一男に相続させることに成功しました。
次の問題は、第二の相続(平成24年4月10日に甲野一男が死亡)において、X不動産を甲野一郎に相続させるための方法です。
第二の相続における相続人は、甲野桜子(配偶者)、甲野一郎(長男)、甲野次郎(次男)の3名です。この3名はすべて存命ですから、この点についてはややこしい問題はありません。
しかし、第二の相続における難問は、甲野一郎(長男)と甲野次郎(次男)が未成年者であることなのです。
「石原産業役員責任追及訴訟第一審判決」から読む会社経営者としての責任の分水嶺【2】
本判決では、Y1以外の取締役の注意義務違反行為を、
ア フェロシルトの開発、生産、管理、搬出に関する義務違反
イ 産業廃棄物の不法投棄に関する監視義務〔調査義務〕違反
の2種類に義務を分類し、その中で、
① 取締役四日市工場長
② 生産構造再構築計画実行本部(略称:実行本部)の構成員
③ 酸化チタン事業構造改革推進会議(略称:推進会議)の構成員
④ フェロシルトの生産開始時の取締役
⑤ フェロシルトの搬出開始時の取締役
に区分して責任の有無を論じている。
以下、責任の有無について紹介する。
「石原産業役員責任追及訴訟第一審判決」から読む会社経営者としての責任の分水嶺【1】
本件は、会社が各地に販売した土壌埋戻材(商品名:フェロシルト)が環境を汚染する物質であったこと、すなわち実質的には産業廃棄物であったことが問題となり、これを販売・搬出等したことに対する取締役の責任が問題となった事件である。
会社は、主力製品である酸化チタンの生成過程において発生する産業廃棄物である汚泥(アイアンクレー)を有効活用しようと加工し、土壌埋戻材として各地に販売した。
しかし、平成13年8月頃、搬出先の依頼により検査がなされ、フェロシルトから、発ガン性有害物質である六価クロム等有害物質が土壌環境基準値を超えて検出された。そして、会社が自社で保管しているフェロシルトを検査したところ、同様に六価クロムが検出された。それにもかかわらず、担当者が検出結果を隠匿したこともあり、会社は子会社を通じてフェロシルトを顧客に販売・搬出した。
親族図で学ぶ相続講義【第3回】「数次相続と遺産分割(その2)」
では、前回(2013年2月7日 No.5)の続きです。
みなさんの税理士事務所に、被相続人の甲野太郎が所有していた「X不動産の名義を甲野一郎にしたい」という依頼があったらどうするか。
本問は「数次相続」の案件ですから、「相続は1件ずつ」という原則に従って考えることになります。
では、まず、第一の相続(平成24年3月20日に甲野太郎が死亡)について検討しましょう。