〈小説〉『資産課税第三部門にて。』 【第3話】「準備調査」~実子とみなす者~
「何を勘違いしたんだい?」 田中統括官は、谷垣調査官の顔を見た。
「家系図を見てください。このケース、税法上の相続人は何人いると計算しますか?」
田中統括官は再び家系図に目を向けた。
「夫は既に亡くなっている・・・子供のCとDは後妻の子供だから当然相続人になる・・・そして、後妻の養子としてAとBがいる・・・」
田中統括官はここで少し首をかしげた後、机の上にある税務六法をめくった。
「そうだった・・・」
女性会計士の奮闘記 【第35話】「M子、初めてN男の会社へ」
〔M子〕部門別損益計算書ができたか見に来たのよ。
〔N男〕そうか・・・実はあれから、あんまり進んでないんだ。
〔M子〕相変わらずのんびりしてるわね。人件費の欄は入れられたの?
〔N男〕・・・。
此の国にも『日本企業』! 【第11回】「《ASEAN》 ピンチをチャンスに変えるため、日本から世界へ~野村興産(株)~」
先週、フィリピン・マニラで地元の製造業や官公庁を対象に、ちょっと変わったセミナーが開かれました。
内容は「このたびマニラで、蛍光灯や電池などの水銀含有廃棄物を国際条約に従って廃棄処理をするサービスを始めたので、廃棄物の処理にお困りの方はぜひお使いください。」というもので、地元の廃棄物処理事業者と一緒にこのセミナーを主催したのが、今回ご紹介する野村興産(株)です。
〈小説〉『資産課税第三部門にて。』 【第2話】「書面添付(その2)」~重加算税の二重賦課~
「統括官、とりあえず法人税の税務調査によって更正された数値に基づいて、株価を出してみましょうか。」 谷垣調査官の声が再び弾んだ。
「それと・・・」 谷垣調査官は、田中統括官の顔を見て言った。
「これって、もしこちらで更正処分をした場合、重加算税を賦課決定しても大丈夫ですよね。」
女性会計士の奮闘記 【第34話】「デリケートな数値は慎重に」
〔M子〕で、東京営業所のリーダーは何て言ってきたの?
〔N男〕“自分の部門は2人しかいないから、人件費を記入したら東京営業所のもう一人のお給料がわかってしまう“ってさ。
〔M子〕まあ、それもそうね・・・。
此の国にも『日本企業』! 【第10回】「《モザンビーク》 水産資源のフロンティア開発に夢を託して~ガルフ食品(株)~」
日本から遠く離れたそんな国にどうして、と思って調べてみると、モザンビークにはガルフ食品(株)以外にもすでに日系の水産加工メーカー1社が進出しているとのこと。最近ではマグロが取れなくなった、あるいはサンマの資源が減少しているなど、水産国・日本にとって心配なニュースも少なくない中で、モザンビークは日本企業の活躍ぶりが目立つ進出先のようです。
〈小説〉『資産課税第三部門にて。』 【第1話】「書面添付(その1)」~意見聴取後の修正申告~
「おい、谷垣君!」
田中統括官が谷垣調査官を呼んだ。
昨年7月の人事異動で、谷垣調査官は、河内税務署資産課税第三部門に配属された。
谷垣調査官は、国専(国税専門官採用)40期生である。
「法人課税部門からこんな資料をもらったんだけど。」
田中統括官はそう言いながら、資料を谷垣調査官に見せた。
「何ですか?」 谷垣調査官は、資料を見ながら尋ねた。
「見れば分かるだろう。」 田中統括官は、少し怒ったように言った。
「法人課税部門の調査結果だよ。」
女性会計士の奮闘記 【第33話】「根気強く数値を埋めていきましょう」
〔M子〕あともう少しね。今月は毎年やっている実地棚卸の時期でしょ。今月の月次決算が出来たら、全部の数字を埋められるわね。
〔N男〕そうだな、頑張るよ。あっ、そうそう、M子に聞こうと思ってたんだけど、経費の一番下の行に“本社経費”っていうのがあるだろう。これってなんだったっけ。
此の国にも『日本企業』! 【第9回】「《パラグアイ》 好奇心をビジネスチャンスに~(有)オニギリ・パラグアイ社~」
日本から見るとちょうど地球の反対側にあたる南米・パラグアイの首都アスンシオンに、昨年3月オープンしたお寿司とおにぎりのテイクアウト専門店「オニギリ・パラグアイ」の1号店があります。
この店を経営するのは若手経営者の伊賀上眞海(いがうえ・まさひろ)さん。まだ地元の大学に在学中なのですが、ビジネスマインドの豊かな同級生と一緒に起業して約1年半、アスンシオンの食に対する好奇心が高い層をターゲットに、順調にビジネスを展開しているということでお話を伺いました。
〔小説〕『東上野税務署の多楠と新田』~税務調査官の思考法~ 【第12話】「明かされた真実」
多楠は誰も残っていない部門のデスクで今日の書類の整理を行い、しばらく今日の反面先であった出来事の余韻に浸っていた。
“たぶん、これは峰岸課長が言うように丸誠の専務主導による売上除外に違いない。やはり岩井上席の説は正しかったんだ。だけど、いつどこで事案がひっくり返るかわからない。明日の反面調査と残りの三本木商会の帳簿を確認してから新田さんに話をしても遅くないだろう。”