会計リレーエッセイ 【第5回】「IFRS財務諸表は投資家にとって有用か?」
企業経営者が、投資家やアナリストがIFRS財務諸表を読んでいないと主張するのを聞くことは、まれなことではない。
その証拠として、彼らは、財務諸表に関する投資家やアナリストからの質問をほとんど受けたことがないという事実を指摘している。
真剣な投資家やアナリストがIFRS財務諸表に興味を示さないということはほとんどあり得ないことを考えると、この主張は、IFRS財務諸表それ自体の主要な欠陥というよりも、おそらく、通常は年次報告期間末から数ヶ月後である財務報告の公表のタイミングによって、より影響を受けたものであろう。
投資家やアナリストが、利益情報リリースや投資家説明会など、よりタイムリーに提供される情報に焦点を当てていることは事実であるが、このようなコミュニケーションには、年次IFRS財務諸表と整合的な財務情報が含まれている。
逸話的な証拠によると、投資家やアナリストは、年次財務諸表を、利益情報リリースの内容を確認し、興味のある特定事項に関する詳細を入手し、そして、財務諸表の数字が監査されているという安心を得るために利用している。
しかし、投資家がIFRS財務諸表に興味がないという主張に抗弁することが難しい、より根本的な理由がある。
会計リレーエッセイ 【第4回】「IFRS雑感」
筆者は、2001年4月から2011年6月まで国際会計基準審議会(IASB)の理事を務めた。その後、有限責任あずさ監査法人に勤め、そこでは、アジア地域の国際財務報告基準(IFRS)の普及に関する仕事をしている。
その関係で、韓国、マレーシア、インドネシア及び台湾といった国々を訪問する機会がある。これらの国々では、2011年又は2012年からIFRSが導入され、少なくともすべての上場企業に強制適用されている。また、韓国やマレーシアの場合には、IASBが新設・改訂する都度自国で適用しているIFRSに反映されている。
IFRSは今、どうなっているのか?【後編】
IFRSの議論は、2012年6月に開催された企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議を最後にストップした。同会議で、金融庁事務局が挙げた11項目に対する委員からの意見聴取が終わったからであろう。
では、この会議後、IFRSにはどのような動きがあったのであろうか。