IFRSの適用と会計システムへの影響 【第2回】「『複数元帳』への対応」
従来の会計システムでは、通常、総勘定元帳は1つです。これまでは複数の総勘定元帳を用意して1つの事実に対し異なった会計処理をするという考え方は、基本的にありませんでした。
よって、これまでの会計システムを使ってIFRSを適用する企業及びそのグループ各社がIFRSと日本基準の2つの総勘定元帳を手配するには、会計システムを2つ用意する必要が生じます。
日本の会計について思う 【第11回】「のれんの会計処理をめぐる経緯」
前回私は、「修正国際基準(公開草案)の意義と3つの疑問」というテーマで、修正国際基準に対して若干の疑問点を提示しつつも、戦略的な意味でこれを評価するコメントを書かせていただいた。
今回はその公開草案第1号が取り扱っている「のれんの会計処理」について、その経緯の概略を述べることとする。それは、のれんの会計処理を巡って、日本はこれまで欧、米、国際の思惑に翻弄されてきたとの思いを私自身が強く抱いているからである。その点で今回の国際修正基準の公表は、まだ公開草案の段階ではあるが、良い意味で一矢を報いる可能性を持つと考えるのである。それは公開草案第2号「その他の包括利益の会計処理」についても同様である。
IFRSの適用と会計システムへの影響 【第1回】「IFRSをめぐる現状」
そのため、上場企業はIFRSを適用した場合、現在自社で適用している会計基準(日本基準、一部米国基準)とどのような差があり、また適用するためにはいつまでに何をしなければいけないのかを知ろうと躍起になっていました。
システムベンダーや会計系のコンサルタントたちは、「現状のシステムではIFRSに対応できない」とか「IFRSへの対応を急がないと間に合わなくなる。」といって各社をあおっていました。
IFRS導入プロジェクト再開に向け、その目的を問う
ところが、ここ最近になって企業のグローバル競争力強化に関して報道や紙面を賑わすようになったのに加えて、従来のIFRS 任意適用要件が緩和されたことも重なり、IFRS 導入の動きが再び活発化している。
具体的には、従来は国際的な財務・事業活動を実施かつ海外子会社の資本金が20億円以上という要件であったが、今後はIFRS 連結財務諸表を適正に作成できる体制等を整備すれば上場及び公開準備企業でも適用可能とされている。
日本の会計について思う 【第10回】「修正国際基準(公開草案)の意義と3つの疑問」
今回はこのうち①と②の2つの項目に限定して公開草案が作成された。
それはなぜか。
IFRSの任意適用を拡大するには、上記のすべてについて「修正国際基準」を作成する方が良いともいえる。しかし、ASBJはあえて2つに限定した。
ここに、ASBJの深慮と苦労が凝縮されていると思われる。
日本の会計について思う 【第7回】「日本再生ビジョンとIFRS」
政府は2014年6月24日に新しい成長戦略をまとめた。これに先立つ5月23日、自由民主党の日本経済再生本部が「日本再生ビジョン」を公表した。
日本の会計について思う 【第1回】「IFRS任意適用拡大への期待」
最近、IFRS(国際会計基準)の議論にかつての熱気が感じられない。
民主党政権下の2011年6月、自見金融担当大臣がそれまで既定の路線と思われたIFRSアドプション案を撤回して議論を白紙に戻して以来、熱気は失われたままである。
その際、日本公認会計士協会は白紙撤回に反発したが、日本経団連会員企業の一部有志は白紙撤回を歓迎するなど、IFRS導入をめぐって日本国内でも意見が分かれてしまった。
一定の条件下でIFRSを導入することに賛成の立場を一貫してとってきた私にとって、白紙撤回は日本の会計の将来にとって憂うるべきことと思われた。
「連結財務諸表の用語、様式及び 作成方法に関する規則等の一部を 改正する内閣府令」の解説 ―IFRS任意適用要件緩和の内容とその背景、 今後の展望について―
2013年6月19日、金融庁企業会計審議会は、
① International Financial Reporting Standards(以下、「IFRS」という)の任意適用要件の緩和
② IFRSの適用の方法
③ 単体開示の簡素化についての考え方
を整理した、「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」(以下、「方針」という)を公表した。
当該方針に基づき、8月26日には、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(以下、「連結財規」という)等の一部を改正する内閣府令(案)」等が公表され、10月28日に内閣府令(第70号)が公布された。
当改正の趣旨は、IFRS任意適用企業を増加させることにあるといえる。以下では、主な改正内容やその背景等について概説する。
会計リレーエッセイ 【第8回】「IFRS早期適用会社の監査人としての実務的な検討事項」
前回までの会計リレーエッセイの登場者は、この分野では国際的に活躍している日本を代表する方々ばかりであり、いきなり私のようなものがレベルを落としてよいものか迷うところであるが、それを承知でお読みいただきたい。
たまたま私が業務執行を担当していた関与先であるトーセイ株式会社(東証一部上場)がIFRSの早期適用をすることになり、まさにその意思決定プロセスから現場の苦労に至るまで監査人として立ち会うことができたので、その時に感じたIFRS適用の実態と私見を述べたい。