谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第32回】「国税通則法78条(79条)」-国税不服審判所-
国税不服審判所は、国税に関する法律に基づく処分についての不服申立て(税通75条)のうち国税庁長官に対する審査請求(同条1項2号、2項2号)以外の審査請求に対する裁決を行う機関(裁決機関)であり(同78条1項)、組織法上は国税庁の附属機関である(財務省設置法22条1項。行組8条も参照)。
谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第31回】「国税通則法75条(~77条の2・80条)」-租税不服申立要件-
国税通則法第8章は「不服審査及び訴訟」に関する規定を定めている。同章の規定はいわゆる租税争訟ないし税務争訟に関する規定であり、税法の体系上は、納税義務の成立・承継及び消滅に関する法(租税実体法)に対して目的従属的な関係に立つ租税手続法のうち、成立した納税義務の確定及び履行の過程に関する法(税通第2章~第7章の3及び税徴。租税行政法)と並ぶ納税者の権利救済に関する法(租税争訟法ないし租税救済法)に属する(拙著『税法基本講義〔第7版〕』(弘文堂・2021年)【86】参照)。
谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第30回】「国税通則法74条の11(~74条の13の4)・74条の14」-調査終了の際の手続における信頼保護効果と理由附記「セット論」-
前回は、平成23年度[11月]税制改正による税務調査(質問検査)手続の改正のうち事前通知手続について検討したが、今回は、事前通知手続と並んであるいはこれとの関連において(事前通知事項の事後通知については前回3参照)同改正の重要事項である調査終了の際の手続(税通74条の11)について検討することにする。
谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第29回】「国税通則法74条の9・74条の10」-事前通知の意義と例外-
事前通知制度について、その導入の背景・経緯を含め、次のとおり、簡にして要を得た解説がされている(金子宏『租税法〔第24版〕』(弘文堂・2021年)1001頁)。
〈事例から理解する〉税法上の不確定概念の具体的な判断基準 【第20回】「推計課税に求められる「必要性」と「合理性」」
本件調査において、調査担当職員は、請求人に対し、再三にわたり帳簿等を提示するよう求めたにもかかわらず、請求人は様々な理由を付けてこれを拒否したものである。(略)これらによれば、調査担当職員は、本件調査によるも、請求人の事業所得の金額について実額で把握するに足りる資料を得られなかったものと認められるから、推計の必要性を肯定することができる。
谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第28回】「国税通則法74条の2(~74条の6)・74条の7(~74条の8)」-狭義の質問検査と広義の質問検査-
国税通則法は第7章の2において、税制調査会「国税通則法の制定に関する答申(税制調査会第二次答申)」(昭和36年7月)における「特定の税目に特有なものは別として、可能な限り、この制度に関する規定を整備統一して国税通則法に規定することとすべきである」という考え方(同「国税通則法の制定に関する答申の説明(答申別冊)」(昭和36年7月)82頁)を、約50年後の平成23年度[11月]税制改正によってようやく実現した。この点については、次の解説がされている(財務省「平成24年度 税制改正の解説」231頁)。
〈事例から理解する〉税法上の不確定概念の具体的な判断基準 【第19回】「税務上「錯誤無効」が許容される余地はあるか」
① 監督官庁の許認可を要する法人である審査請求人(請求人)は、株式会社A(A社)を分社型分割により新たに設立し、請求人の純資産額(資本金等の額1,000万円+利益積立金額3億7,300万円)の85%に当たる資産(3億2,600万円)をA社に承継し、その対価としてA社からA社普通株式200株の発行を受けた。
② 請求人と請求人代表者の弟であるBは、請求人が有するA社株式200株をBに譲渡し、その対価として、Bが有する請求人の普通株式170株を請求人が譲り受ける旨の株式譲渡契約(本件譲渡契約)を締結した。
③ 原処分庁は、本件譲渡契約に基づきBが請求人からA社株式の譲渡を受けたことは、いわゆるみなし配当の対象になるとして、源泉所得税の納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分をした。
谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第27回】「国税通則法第7章の2」-質問検査総説-
国税通則法第7章の2は平成23年度[11月]税制改正における同法の改正によって創設されたが、その創設は、「昭和36年の国税通則法制定に関する答申では、質問検査権を統一的に同法に盛り込むべきとしたが、質問検査の内容や態様がかなり相違するとして見送られた経緯がある。」(日本弁護士会連合会日弁連税制委員会編『国税通則法コンメンタール 税務調査手続編』(日本法令・2023年)148頁[舘彰男執筆])といわれる、税制調査会「国税通則法の制定に関する答申(税制調査会第二次答申)」(昭和36年7月)の答申内容の単なる「復活」ではない。
〈事例から理解する〉税法上の不確定概念の具体的な判断基準 【第18回】「租税法律主義において信義則違反の主張はどう評価されるか」
本件調査担当職員は、原処分に係る調査において、請求人らの関与税理士に対して、本件貸付金債権の価額を、元本の価額である5,000万円として修正申告の慫慂に応じるのであれば、その利息の額である1,765万4,793円は課税しないと発言した。
このことは、請求人らに対する誤指導であり、当該発言が、調査の終了していない段階でされたことを含めて、原処分は信義則に反する違法な処分である。