「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例132(贈与税)】 「所得制限により「住宅取得資金贈与の非課税特例」は適用できないにもかかわらず、合計所得金額の内容を誤認し、適用できると誤った説明を行ったため、これを実行してしまい、所轄税務署の指摘を受け、修正申告することになってしまった事例」
令和X年分の贈与税につき、合計所得金額が2,000万円を超えており、所得制限により、「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」(以下「住宅取得資金贈与の非課税特例」という)は適用できないにもかかわらず、税理士が合計所得金額の内容を誤認し、適用できると誤った説明を行ったため、依頼者が実母から入金を受けた1,000万円に「住宅取得資金贈与の非課税特例」を適用して暦年課税で申告をした。
〈令和5年度改正及び改正通達を踏まえた〉生前贈与加算・相続時精算課税制度のポイント 【第3回】「相続時精算課税制度の見直し②」~被災土地・建物の特例~
相続時精算課税の適用を受けて取得した土地又は建物が、贈与日からその特定贈与者の死亡に係る相続税の期限内申告書の提出期限までの間に、令和6年1月1日以後の災害(※1)によって一定の被害を受けた場合(※2)には、税務署長の承認を受けることにより、相続税の課税価格へ加算又は算入される土地又は建物の価額を、その贈与時の価額から災害による被災価額を控除した残額とすることができる(措法70の3の3①、措通70の3の3-1)。
相続税の実務問答 【第93回】「相続財産の中に特定非常災害の区域内の土地がある場合の相続税の申告期限」
令和5年6月10日に父が亡くなりました。父は、石川県W市の自宅に母と2人で暮らしていましたが、5年前に母が亡くなった後は、名古屋市内の姉の家に移り住み、姉の家族と同居していました。父の相続人は、姉、私及び妹の3人で、私と妹は東京に住んでいます。
父の遺産は、5年前まで父が居住していたW市内の自宅建物とその敷地のほか預貯金や有価証券などで、自宅建物とその敷地は妹が相続することになっています。正月休みにW市の自宅の整理をしようと考えていたところ、1月1日に令和6年能登半島地震が発生し、それどころではなくなってしまいました。父の遺産の総額は1億円を超えそうで、相続税の申告が必要だと思われますが、申告期限までにW市の自宅の整理ができそうにありません。相続税の申告期限を延ばすことはできないのでしょうか。
〈令和5年度改正及び改正通達を踏まえた〉生前贈与加算・相続時精算課税制度のポイント 【第2回】「相続時精算課税制度の見直し①」~基礎控除の創設~
【第1回】の「生前贈与加算制度の見直し」においても述べたとおり、相続時精算課税制度の使い勝手を向上させるため、相続時精算課税においても基礎控除110万円が設けられた。
また、相続時精算課税により贈与を受けた土地又は建物について、災害により一定の被害を受けた場合には、相続時に相続税の課税価格へ加算又は算入される金額を再計算することができることとなった。
なお、土地又は建物の相続税の課税価格へ加算又は算入される金額の再計算の詳細については、次回の【第3回】において解説を行う。
〈令和5年度改正及び改正通達を踏まえた〉生前贈与加算・相続時精算課税制度のポイント 【第1回】「生前贈与加算制度の見直し」
令和5年度税制改正において、「相続開始前に暦年課税による贈与があった場合の相続税の課税価格への加算対象期間等」及び「相続時精算課税制度」について見直しがされ、令和5年12月8日には、この改正に関連する相続税法基本通達等の一部改正が国税庁より公表された。
相続税の実務問答 【第92回】「相続時精算課税における特別控除の選択適用」
私は、令和5年中に、父から500万円の現金の贈与を受けましたので贈与税の申告をしなければなりません。この贈与税の申告に当たっては、相続時精算課税を選択するつもりです。
ところで、数年後に父は自らが経営する会社の役員を退職する予定であり、その際に、その会社の株式を私に贈与してくれるようです。相続時精算課税を選択した場合には、2,500万円の特別控除を適用することができるとのことですが、株式の贈与を受けた際の税負担を軽減するために、今回の贈与税の申告では、特別控除を適用せず、株式の贈与を受けた年分の贈与税について特別控除2,500万円の全額を使用したいと思います。このような特別控除額の適用年分の選択をすることはできるのでしょうか。
さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第94回】「農地売主相続事件」~最判昭和61年12月5日(訟務月報33巻8号2149頁)~
Aは、Bに対し、所有する農地を4,500万円で売却した。この売買契約においては、契約と同日に手付金600万円、2ヶ月後に内金1,000万円、4ヶ月後に残代金を支払うこととされ、また、残代金の支払と同時に所有権移転の登記申請と農地の引渡しが行われることとされた。
Bは、内金の支払後、農地をC社に転売した。そして、AとC社は、農業委員会に対し、当該農地について転用の届出を行い、これは2週間ほどで受理された。なお、届出後、C社は、当該土地に建物を建てるべく、建築確認申請を行った。
ところが、その後Aが急死したため、契約の履行が遅れ、予定日より15日遅れて残代金が支払われ、その翌日、所有権移転登記が行われた。
相続税の実務問答 【第91回】「第一次相続と第二次相続の相続人が1人となった場合の第二次相続の小規模宅地等の特例の適用」
令和4年2月に父が亡くなりました(第一次相続)。父の相続人は、母と私の2名でした。主な父の遺産は、両親と私が居住していたA建物とその敷地でした。相続税の申告期限までに遺産分割ができませんでしたので、法定相続分に従って相続税の課税価格を計算して申告及び納税を済ませました。
その後も父の遺産について母と私の間で遺産分割協議ができないまま、令和5年9月に母が亡くなってしまいました(第二次相続)。
母が亡くなってしまったため、父の相続人及び父の相続人であった母の相続人は、私1人となってしまい、他に父及び母の相続人はいません。また、父も母も遺言を残していませんでしたので包括受遺者もいません。
第二次相続の相続税の申告は、A建物とその敷地の2分の1及び母の固有財産を私が相続により取得した財産として計算することとします。私は引き続きA建物に居住していますが、その敷地について小規模宅地等の特例を適用することができるでしょうか。
相続税の実務問答 【第90回】「第一次相続と第二次相続の相続人が1人である場合の第一次相続における配偶者の税額軽減等の適用」
令和4年2月に父が亡くなりました(第一次相続)。父の相続人は、母と私の2名でした。父の遺産は、両親と私が居住していたA建物(私は、今でもA建物に居住しています)とその敷地、それに銀行預金でした。相続税の申告期限までに遺産分割ができませんでしたので、法定相続分に従って相続税の課税価格を計算して申告及び納税を済ませました。
その後も父の遺産について遺産分割協議ができないまま、令和5年9月に母が亡くなってしまいました(第二次相続)。
母が亡くなってしまったため、父の相続人及び父の相続人である母の相続人は、私1人となってしまい、他に父及び母の相続人はいません。また、父も母も遺言を残していませんでしたので包括受遺者もいません。このような場合、もはや父の遺産の分割協議はできないと言われましたが、父の相続税について、配偶者の税額軽減の規定や小規模宅地等の特例を適用することはできないのでしょうか。
〈事例から理解する〉税法上の不確定概念の具体的な判断基準 【第12回】「相続税法第32条第1項柱書の更正の請求期限における「事由が生じたことを知った日」とはいつか」
① 被相続人は平成23年8月4日に死亡し(相続人は被相続人の子3名)、相続税の法定申告期限までに相続財産の一部が未分割であったため、これを法定相続分の割合に従って取得したものとして相続税の期限内申告書を提出したところ、未分割財産に含まれる宅地について小規模宅地等の特例の適用を受けるため、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付した。
② 請求人の1人は、平成27年2月23日付で、他の請求人らを相手方として遺産分割調停(本件調停)を申し立てた。
③ 請求人らは、平成27年7月30日付で、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出し、原処分庁はこれを承認した。
④ 請求人らは平成27年10月29日付の遺産分割協議書を作成して、本件調停外で遺産分割(本件遺産分割)したため、請求人の1人は同年11月4日付で本件調停の申立てを取り下げた。
⑤ 請求人らは、平成28年3月4日、本件遺産分割を前提とし、未分割遺産だった宅地に小規模宅地等の特例を適用した上で課税価格を計算したところの更正の請求(本件各更正請求)をした。
⑥ 原処分庁は、本件各更正請求は相続税法第32条に規定する「当該事由が生じたことを知った日(平成27年10月29日)」の翌日から4ヶ月を経過する日(平成28年2月29日)よりも後にされており、期限を徒過したものであるとして、更正すべき理由がない旨の通知処分をした。