法人税の解釈をめぐる論点整理
《交際費》編
【第1回】
弁護士 木村 浩之
─ 本連載の趣旨 ─
法人税は、わが国の基幹税の1つとされており、全国で約300万の法人に申告義務が課されている。その所得の申告に当たり、法人税法22条1項は、「内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする」とのシンプルな規定を置いているが、益金及び損金の範囲をめぐっては、さまざまな解釈上の不明確さがあるほか、いたるところに不明確な「別段の定め」が設けられており、その解釈適用について争いになることが多い。
本連載は、このような不明確さを孕んだ法人税法を解釈適用するに当たり、実務上問題となることが多い論点について、いくつかのテーマごとに整理した上で、適宜裁判例等を引用しながら実務上の考え方について解説するものである。
なお、テーマについては、実務上問題となることが多い分野から順次取り上げていくこととしたい。
本連載が、適正な法人税の処理の一助となれば幸いである。
〈過去の掲載記事〉
※タイトルをクリックしてください。
《減価償却》編 (全6回)
- 【第1回】
1 はじめに
2 減価償却資産の範囲
(1) 減価償却資産の一般的要件
(2) 棚卸資産等に該当しないこと
(3) 事業の用に供していること
(4) 時の経過により減価すること
(5) 自己が保有する資産であること - 【第2回】
3 固定資産の取得価額
(1) 問題の所在
(2) 資産の取得に付随する費用の意義
(3) 資産を事業の用に供するための直接要した費用の意義
(4) その他の論点 - 【第3回】
4 少額の減価償却資産等の判定
(1) 問題の所在
(2) 固定資産の判定単位
(3) 使用可能期間 - 【第4回】
5 資本的支出と修繕費の区分
(1) 問題の所在
(2) 資本的支出と修繕費の意義
(3) 資本的支出と修繕費の区分 - 【第5回】
6 償却限度額の計算
(1) 限度額計算の意義
(2) 近年の税制改正と限度額計算
(3) 増加償却について - 【第6回】
7 耐用年数表の適用
(1) 耐用年数の意義
(2) 耐用年数をめぐる基本論点
(3) 耐用年数の短縮について
8 除却損失の計上
(1) 除却損失の意義
(2) 有姿除却の要件
(3) 除却損失と取得価額
9 おわりに
《寄附金》編 (全5回)
- 【第1回】
1 はじめに
2 寄附金の範囲(総論)
3 隣接費用との区分
(1) 広告宣伝費等との区分
(2) 交際費等との区分
(3) 役員又は従業員に利益供与がなされた場合の費用区分 - 【第2回】
4 貸倒損失等との区分
(1) 総論
(2) 事実上の貸倒債権の放棄
(3) 債務整理手続における債権放棄等
(4) 子会社等の再建支援のための損失負担 - 【第3回】
5 対価性の有無等
(1) 総論
(2) 牽連関係について
(3) 実質的な反対給付について - 【第4回】
(4) 価格設定の合理性について
(5) 小括
6 特殊の相手方に対する寄附金
(1) 公的団体に対する寄附金
(2) グループ法人間の寄附金 - 【第5回】
7 資本等取引と寄附金
(1) 低額出資
(2) 高額出資
(3) 自己株式の取得
(4) 現物配当
(5) DES(デット・エクイティ・スワップ)
8 おわりに
《役員給与》編 (全9回)
- 【第1回】
1 はじめに
2 役員の範囲
(1) 税法上の「役員」
(2) みなし役員の範囲 - 【第2回】
(3) 使用人兼務役員の範囲
(4) 小括 - 【第3回】
3 定期同額給与
(1) 定期同額給与の意義
(2) 3ヶ月経過後の通常改定
(3) 臨時改定事由 - 【第4回】
(4) 業績悪化改定事由
(5) 法定外の給与改定がなされた場合
(6) その他の論点 - 【第5回】
4 事前確定届出給与
(1) 事前確定届出給与の意義
(2) 届出期限
(3) 「確定額」の意義
(4) 届出内容と実際の支給状況が異なる場合 - 【第6回】
5 過大給与
(1) 過大給与該当性の判断基準
(2) 実質基準について
(3) 使用人兼務役員について - 【第7回】
6 認定賞与
(1) 認定賞与の意義
(2) 役員の親族等に対する利益の供与
(3) 法人役員間の取引
(4) 使途不明金
(5) 債権放棄(債務免除) - 【第8回】
7 退職給与
(1) 退職給与の意義
(2) 「退職」の意義 - 【第9回】
(3) 役員の退職給与の損金算入時期
(4) 過大退職給与
8 おわりに
1 はじめに
法人が支出する交際費の中には、事業との関連性が必ずしも高いとはいえないものが含まれており、また、無制限に損金算入を認めるとすれば、いたずらに冗費・濫費を増大させ、法人の所得金額が操作されるおそれもある。特に、法人の役員等が交際費を使用する際には、それが役員等に対する現物給与には該当しないとしても、どの程度法人の事業と関連性を有するものであるか不透明な場合がある。
そこで、交際費(ただし、一定の範囲のものは除かれる。後記2(2)参照)については、中小法人の場合に限り、定額の控除限度額(現在800万円)を定めて、その限度額の範囲内で損金算入を認め、それを超える部分については損金算入を認めないものとされている(措法61の4)。
ただし、交際費のうち接待飲食費については、平成26年度税制改正により、大法人であっても、50%に相当する金額までは損金算入が認められることになった。また、中小法人については、かかる50%の特例と上記の控除限度額のいずれか有利な方の選択適用が認められることになっている。
いずれにせよ、交際費については、一定の範囲で損金不算入とされていることから、税務調査などで、交際費の範囲等をめぐって問題となるケースは実に多い。そこで、本稿では、交際費をめぐる論点について整理した上で、あわせて問題となることが多い使途不明金(使途秘匿金)についても取り上げて解説することとしたい。
本稿で取り上げる予定のテーマは、以下のとおりである。
〇 交際費の範囲(総論)
〇 飲食費の交際費該当性
〇 リベートの交際費該当性
〇 使途不明金(使途秘匿金)
2 交際費の範囲(総論)
(1) 交際費の要件
交際費課税の対象となる交際費とは、「交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの」(措法61の4④柱書)をいい、その要件は次のとおり整理することができる。
この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員(プレミアム
会員又は一般会員)としてのログインが必要です。
通常、Profession Journalはプレミアム会員専用の閲覧サービスですので、プレミアム
会員のご登録をおすすめします。
プレミアム会員の方は下記ボタンからログインしてください。
プレミアム会員のご登録がお済みでない方は、下記ボタンから「プレミアム会員」を選択の上、お手続きください。