法人税の解釈をめぐる論点整理
《寄附金》編
【第2回】
弁護士 木村 浩之
(前回はこちら)
4 貸倒損失等との区分
(1) 総論
損失については、通常は「任意に」生じるものでないことから、寄附金には該当しない。例えば、貸し付けていた債権が債務者の資力の悪化によって回収不能になった場合には、その損失は「任意に」生じたものではなく、債権放棄をしたとしても、貸倒損失として損金算入が認められる。
これに対して、法人が特段の理由なくして、債権放棄、債務引受などの損失負担をする場合には、その損失は「任意に」生じたものであり、単なる利益の移転行為として寄附金に該当することになる。
このように、債権放棄等には、貸倒損失等として寄附金には該当しない場合と任意の利益移転として寄附金に該当する場合とがあり得ることになる。そこで、それらの区分が問題となる。
この点、一般には、寄附金に該当するか否かは、債権放棄等が「任意に」なされたものか否かという観点から区別されるのであり、その任意性については実質的に判断されることになる。実質的に判断して、その債権放棄等に任意性がないと評価される場合には、寄附金には該当せず、貸倒損失等として損金算入が認められる。
そのように任意性がないものとして寄附金の範囲から除かれる貸倒損失等には、次のようなものがあり得る。
〈寄附金の範囲から除かれる貸倒損失等〉
① 事実上の貸倒債権の放棄
② 債務整理手続における債権放棄等
③ 子会社等の再建支援のための損失負担
以下では、それぞれの要件等について解説することしたい。
(2) 事実上の貸倒債権の放棄
ア 要件
貸倒損失として寄附金の範囲から除かれるための要件は、債権の全額が回収不能であることが客観的に明らかであることが必要であり、そのことは、
ⅰ) 債務者の資産状況、支払能力等
ⅱ) 債権回収に必要な労力、債権額と取立費用との比較衡量(費用対効果)
などを踏まえて、社会通念に従って総合的に判断されるべきものであると解されている(最判平成16年12月24・民集58巻9号2637頁)。
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