中小企業特別措置の適用停止に係る
「平均所得金額」の算定方法
【第1回】
「平均所得金額の意義と対象となる租税特別措置」
弁護士・公認不正検査士 下尾 裕
平成29年度税制改正により、平成31年4月1日以後に開始する事業年度より、一定以上の所得を有する中小企業においては、租税特別措置法(以下「措法」という)に基づく特別措置の一部の適用が停止されることとなった。
そこで、本連載では2回に分けて、「平均所得金額」を基準とする特別措置の適用停止制度の概要を明らかにするとともに、「平均所得金額」の算定方法等について解説する。
1 平成29年度税制改正による「平均所得金額」概念の導入
措法は従前より、地域経済の柱として雇用の大半を担いながらも、財務基盤の弱い「中小企業者」(以下の1及び2のいずれかに該当する法人(措法42の4⑧六、措令27の4⑫))を支援する趣旨から、中小企業者に対し、軽減税率等の特別措置を設けていた。
【中小企業者の要件】
1 資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人のうち、以下の要件をいずれも充たす法人
① 同一の大規模法人(資本金1億円超の法人又は資本もしくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人。ただし、中小企業投資育成株式会社を除く)に発行済株式等総数の2分の1以上を保有されていないこと
② 複数の大規模法人に発行済株式等総数の3分の2以上を保有されていないこと
2 資本又は出資を有しない法人のうち、常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人
しかしながら、これらの特別措置はあくまで資本金の額等を基準に形式的に判定する枠組みになっていたことから、例えば、大企業並みの所得がある株式会社であっても、資本政策上、資本金の額を1億円以下にすることにより適用を受けることが可能であり、上記本来の趣旨とは必ずしも整合しない運用実態が散見されるところであった。
そこで、平成29年度税制改正は、平成31年4月1日以後に開始する事業年度分の法人税に関し、「平均所得金額」、すなわち、課税所得の3年平均が15億円を超える中小企業者については、特定の特別措置の適用を停止する改正を行った(措法42の4⑧六の二)。
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