《速報解説》
国税庁、最高裁判決を踏まえた混合配当の取扱いについて公表
~混合配当の際に算出される直前払戻等対応資本金額等につき減少資本剰余金額を上限に~
公認会計士・税理士 霞 晴久
国税庁は、2021年10月25日、同HP『お知らせ』において、「最高裁判所令和3年3月11日判決を踏まえた利益剰余金と資本剰余金の双方を原資として行われた剰余金の配当の取扱いについて」を公表した。
このお知らせ(以下「本件お知らせ」という)は、最高裁判所令和3年3月11日判決(以下「本件最判」という)において、利益剰余金と資本剰余金の双方を原資として行われた剰余金の配当(以下「混合配当」という)が行われた場合における「株式又は出資に対応する部分の金額」の計算方法の規定について、一定の限度において、違法なものとして無効である旨判示されたことを契機とするものである。
本件は、内国法人であるX(連結親会社)が、外国子会社(米国デラウエア州法に基づき設立されたLLC)から、それぞれの決議を別にする混合配当を受け、同配当のうち資本剰余金部分については法人税法(平成27年法律第9号による改正前のもの。以下、「法」という)24条1項3号(注:現行法24条1項4号)の資本の払戻しの一形態である「剰余金の配当(資本剰余金の額の減少に伴うものに限る。)」に、利益剰余金部分については法23条1項1号にいう「剰余金の配当(・・・資本剰余金の額の減少に伴うもの・・・を除く。)」に該当することを前提に連結事業年度の連結確定申告をしたところ、所轄税務署長から、これらの剰余金の配当は、それぞれの効力発生日が同じ日であることなどから、その全額が法24条1項3号の資本の払戻しに該当するとして法人税の更正処分を受けたため、当該更正処分の一部の取消しを求めた事案である。
本件最判では、次のような判断が示された。
混合配当は、その全体が法に規定する資本の払戻しに該当するものというべきであり、株式対応部分金額の計算方法について定める法施行令(平成26年政令第138号による改正前のもの)23条1項3号(上記注参照)の規定のうち、資本の払戻しがされた場合の直前払戻等対応資本金額等の計算方法を定める部分は、混合配当につき、減少資本剰余金額を超える直前払戻等対応資本金額等が算出される結果となる限度において、法の趣旨に適合するものではなく、法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効というべきである。
今後は、本件最判に従い、現行の法施行令23条1項4号及び同様の規定である所得税法施行令61条2項4号について、混合配当があった場合に算出される直前払戻等対応資本金額等につき減少資本剰余金額を上限として取り扱うこととされた。
本件お知らせでは、上記取扱いが今後どのように法施行令の改正の文言に反映されていくかについては具体的に示されていないが、改正施行令の施行を待たず、過去に遡って上記取扱いが適用されるものとして一般に告知されたものと解される。したがって、本件お知らせでは、上記取扱いにより直前払戻等対応資本金額等の再計算を行った結果、過去に行った申告内容等に異動が生じ、納付税額等が過大となる株主等納税者は、国税通則法の規定に基づき所轄の税務署に更正の請求を行うことができる(※)としている。
(※) ただし、本件お知らせでは、法定申告期限等から5年を経過している法人税又は所得税については、減額更正を行うことはできない(国税通則法23条1項本文)として注意喚起している。
(了)