公開日: 2021/12/09 (掲載号:No.448)
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“国際興業事件”を巡る5つの疑問点~プロラタ計算違法判決を生んだ根本原因~ 【第1回】

筆者: 霞 晴久

国際興業事件つの疑問点

~プロラタ計算違法判決を生んだ根本原因~

【第1回】

 

公認会計士・税理士 霞 晴久

 

はじめに

国際興業事件の最高裁判決(※1)(以下「本件最判」という)では、配当を行う子会社の配当直前の利益積立金がマイナスである場合、減少する資本剰余金を上回る「払戻等対応資本金額等」が計算され、その結果、利益剰余金を原資とする部分の一部まで資本の払戻しとして取り扱われることとなるため、「払戻等対応資本金額等」を算定するプロラタ計算の法人税法施行令(法令23①三(現行四))は、法人税法の趣旨に適合するものではなく、同法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効であるという結論が導かれた。

(※1) 最高裁令和3年3月11日第一小法廷判決(令和元年(行ヒ)第333号)、TAINSコード:Z888-2354。

本件において、X(原告、被控訴人、被上告人)は、米国に所在する子会社から、資本剰余金を原資にする配当(以下「資本配当」という)と利益剰余金を原資とする配当(以下「利益配当」という)を同時に収受したのであるが、この場合のXのみなし配当(法法23の2により益金不算入となる)及び子会社株式の譲渡損失(当然に損金に算入される)の計算方法が争われたのである。このように、資本配当と利益配当を同時に行うことを混合配当と呼ぶ。

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国際興業事件つの疑問点

~プロラタ計算違法判決を生んだ根本原因~

【第1回】

 

公認会計士・税理士 霞 晴久

 

はじめに

国際興業事件の最高裁判決(※1)(以下「本件最判」という)では、配当を行う子会社の配当直前の利益積立金がマイナスである場合、減少する資本剰余金を上回る「払戻等対応資本金額等」が計算され、その結果、利益剰余金を原資とする部分の一部まで資本の払戻しとして取り扱われることとなるため、「払戻等対応資本金額等」を算定するプロラタ計算の法人税法施行令(法令23①三(現行四))は、法人税法の趣旨に適合するものではなく、同法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効であるという結論が導かれた。

(※1) 最高裁令和3年3月11日第一小法廷判決(令和元年(行ヒ)第333号)、TAINSコード:Z888-2354。

本件において、X(原告、被控訴人、被上告人)は、米国に所在する子会社から、資本剰余金を原資にする配当(以下「資本配当」という)と利益剰余金を原資とする配当(以下「利益配当」という)を同時に収受したのであるが、この場合のXのみなし配当(法法23の2により益金不算入となる)及び子会社株式の譲渡損失(当然に損金に算入される)の計算方法が争われたのである。このように、資本配当と利益配当を同時に行うことを混合配当と呼ぶ。

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連載目次

“国際興業事件"を巡る5つの疑問点
~プロラタ計算違法判決を生んだ根本原因~

【第1回】

はじめに

《疑問点1》 利益積立金がマイナスの法人が何故配当することができたのか

《疑問点2》 プロラタ計算の分母は、払戻し等の直前の株主資本の状態を示しているか

【第2回】

《疑問点3》 KC社からの金銭配当を資本配当と利益配当に分けて行うことは、株式譲渡損を意図的に作出する恣意的な行為に当たらないか

(1) プロラタ計算導入の経緯と本件最判の意義

(2) 資本配当を行うことによるXの節税効果

【第3回】

《疑問点4》 そもそも外国法人の資本金等の額及び利益積立金の額は算定可能か

(1) 株主に対する「資本金等の額」の通知義務を負わない外国法人

(2) 純粋で混じり気のない資本金等の額と利益積立金の額の分配

【第4回】

《疑問点5》 別件裁判例では、外国上場会社の財務諸表上の数値を用いてみなし配当を計算しているのではないか

(1) タイコ・インターナショナル事件

(2) T社事件判決の問題点

おわりに

【追補】

1 はじめに

2 問題の所在

3 改正法施行令の内容

4 残された課題

筆者紹介

霞 晴久

(かすみ・はるひさ)

公認会計士・税理士
霞晴久公認会計士事務所 所長

監査法人トーマツ、新日本監査法人、国税不服審判所等を経て現在霞晴久公認会計士事務所所長。千葉商科大学大学院会計ファイナンス研究科客員教授。監査法人勤務時代は会計監査、国際税務、海外赴任(フランス及びベルギーに通算14年滞在)及び不正調査に従事。国税不服審判所入所前は、日系企業が買収したベルギー法人のCFOを勤める。
主な著書・論文として「ユーロの会計税務と法律」(共著、清文社1999年)、「EU加盟国の税法」(共著、中央経済社2002年)、「新版架空循環取引」(共著、清文社2019年)、及び「破産手続きにおける債務の確定と前期損益修正をめぐる問題」(月刊『税理』2020年10月号)等がある。
 

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