公開日: 2025/04/10 (掲載号:No.614)
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谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第36回】「国税通則法99条(98条、101条~103条)」-国税不服審判所の独立性と法令解釈権-

筆者: 谷口 勢津夫

谷口教授と学ぶ

国税通則法構造手続

【第36回】

「国税通則法99条(98条、101条~103条)」

-国税不服審判所の独立性と法令解釈権-

 

大阪学院大学法学部教授
谷口 勢津夫

 

国税通則法99条(国税庁長官の法令の解釈と異なる解釈等による裁決)

(国税庁長官の法令の解釈と異なる解釈等による裁決)

第99条 国税不服審判所長は、国税庁長官が発した通達に示されている法令の解釈と異なる解釈により裁決をするとき、又は他の国税に係る処分を行う際における法令の解釈の重要な先例となると認められる裁決をするときは、あらかじめその意見を国税庁長官に通知しなければならない。

2 国税庁長官は、前項の通知があつた場合において、国税不服審判所長の意見が審査請求人の主張を認容するものであり、かつ、国税庁長官が当該意見を相当と認める場合を除き、国税不服審判所長と共同して当該意見について国税審議会に諮問しなければならない。

3 国税不服審判所長は、前項の規定により国税庁長官と共同して国税審議会に諮問した場合には、当該国税審議会の議決に基づいて裁決をしなければならない。

 

1 はじめに

第32回に続き前回も国税不服審判所制度について検討し、特に前回は国税不服審判所の調査審理手続に関して争点主義的運営の要請を検討した。その中で、行政不服審査法の平成26年6月改正(平成26年法律第68号)に伴う国税通則法の平成26年6月改正(平成26年法律第69号)によって、国税不服審判所の調査審理手続が当事者主義の観点から見直され、国税不服審判所の準司法機関性が強められたことを明らかにした(前回参照)。

国税通則法のこの改正は、これに先立つ平成26年度税制改正(平成26年法律第10号)による国税不服審判所の独立性の強化を踏まえたものである(宇賀克也『解説 行政不服審査法関連三法』(弘文堂・2015年)205-206頁参照)。ここでいう「国税不服審判所の独立性」は、国税通則法99条1項の規定が「国税庁長官が発した通達に示されている法令の解釈と異なる解釈」(以下「通達解釈と異なる解釈」という。この略称については、志場喜徳郎ほか共編『国税通則法精解〔令和4年改訂・17版〕』(大蔵財務協会・2022年)1243頁参照)により裁決すること等を国税不服審判所に認めていることを意味するものと解されるが、その「独立性」の程度ないし限界は、同項に規定する「解釈」という文言をどのように解釈するかによって、異なるように思われる。

この「解釈」の解釈問題は、国税不服審判所の法令解釈権に関わる問題であるが、従来ほとんど検討されてこなかったように思われる。そこで、今回は、この問題を中心に国税不服審判所の独立性について検討することにする。ただ、その検討に入る前に、まず、国税通則法99条についてその沿革及び趣旨等をみておくことにしよう。

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国税通則法構造手続

【第36回】

「国税通則法99条(98条、101条~103条)」

-国税不服審判所の独立性と法令解釈権-

 

大阪学院大学法学部教授
谷口 勢津夫

 

国税通則法99条(国税庁長官の法令の解釈と異なる解釈等による裁決)

(国税庁長官の法令の解釈と異なる解釈等による裁決)

第99条 国税不服審判所長は、国税庁長官が発した通達に示されている法令の解釈と異なる解釈により裁決をするとき、又は他の国税に係る処分を行う際における法令の解釈の重要な先例となると認められる裁決をするときは、あらかじめその意見を国税庁長官に通知しなければならない。

2 国税庁長官は、前項の通知があつた場合において、国税不服審判所長の意見が審査請求人の主張を認容するものであり、かつ、国税庁長官が当該意見を相当と認める場合を除き、国税不服審判所長と共同して当該意見について国税審議会に諮問しなければならない。

3 国税不服審判所長は、前項の規定により国税庁長官と共同して国税審議会に諮問した場合には、当該国税審議会の議決に基づいて裁決をしなければならない。

 

1 はじめに

第32回に続き前回も国税不服審判所制度について検討し、特に前回は国税不服審判所の調査審理手続に関して争点主義的運営の要請を検討した。その中で、行政不服審査法の平成26年6月改正(平成26年法律第68号)に伴う国税通則法の平成26年6月改正(平成26年法律第69号)によって、国税不服審判所の調査審理手続が当事者主義の観点から見直され、国税不服審判所の準司法機関性が強められたことを明らかにした(前回参照)。

国税通則法のこの改正は、これに先立つ平成26年度税制改正(平成26年法律第10号)による国税不服審判所の独立性の強化を踏まえたものである(宇賀克也『解説 行政不服審査法関連三法』(弘文堂・2015年)205-206頁参照)。ここでいう「国税不服審判所の独立性」は、国税通則法99条1項の規定が「国税庁長官が発した通達に示されている法令の解釈と異なる解釈」(以下「通達解釈と異なる解釈」という。この略称については、志場喜徳郎ほか共編『国税通則法精解〔令和4年改訂・17版〕』(大蔵財務協会・2022年)1243頁参照)により裁決すること等を国税不服審判所に認めていることを意味するものと解されるが、その「独立性」の程度ないし限界は、同項に規定する「解釈」という文言をどのように解釈するかによって、異なるように思われる。

この「解釈」の解釈問題は、国税不服審判所の法令解釈権に関わる問題であるが、従来ほとんど検討されてこなかったように思われる。そこで、今回は、この問題を中心に国税不服審判所の独立性について検討することにする。ただ、その検討に入る前に、まず、国税通則法99条についてその沿革及び趣旨等をみておくことにしよう。

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連載目次

谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」

筆者紹介

谷口 勢津夫

(たにぐち・せつお)

大阪学院大学法学部教授

1956年高知県生まれ。京都大学法学部卒業、同大学大学院法学研究科博士後期課程単位修得退学。甲南大学法学部教授、大阪大学大学院高等司法研究科教授を経て2022年4月より現職。大阪大学名誉教授。ほかに大阪大学大学院高等司法研究科長・大阪大学法務室長、アレクサンダー・フォン・フンボルト財団奨励研究員(Forschungsstipendiat der Alexander von Humboldt-Stiftung)・ミュンヘン大学客員研究員、日本税法学会理事長、租税法学会理事、IFA(International Fiscal Association)日本支部理事、資産評価政策学会理事、司法試験考査委員、公認会計士試験試験委員、独立行政法人造幣局契約監視委員会委員・委員長、大阪府収用委員会委員・会長、大阪府行政不服審査会委員・会長、公益財団法人日本税務研究センター評議員・同「日税研究賞」選考委員、公益財団法人納税協会連合会「税に関する論文」選考委員、公益社団法人商事法務研究会「商事法務研究会賞」審査委員、近畿税理士会・近畿税務研究センター顧問など(一部現職。ほか歴任)。

主要著書は『租税条約論』(清文社・1999年)、『租税回避論』(清文社・2014年)、『租税回避研究の展開と課題〔清永敬次先生謝恩論文集〕』(共著・ミネルヴァ書房・2015年)、『税法の基礎理論』(清文社・2021年)、『税法基本講義〔第7版〕』(弘文堂・2021年)、『基礎から学べる租税法〔第3版〕』(共著・弘文堂・2022年)、『税法創造論』(清文社・2022年)、『税法基本判例Ⅰ』(清文社、2023年)など。
 
  

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