谷口教授と学ぶ
国税通則法の構造と手続
【第36回】
「国税通則法99条(98条、101条~103条)」
-国税不服審判所の独立性と法令解釈権-
大阪学院大学法学部教授
谷口 勢津夫
国税通則法99条(国税庁長官の法令の解釈と異なる解釈等による裁決)
(国税庁長官の法令の解釈と異なる解釈等による裁決)
第99条 国税不服審判所長は、国税庁長官が発した通達に示されている法令の解釈と異なる解釈により裁決をするとき、又は他の国税に係る処分を行う際における法令の解釈の重要な先例となると認められる裁決をするときは、あらかじめその意見を国税庁長官に通知しなければならない。
2 国税庁長官は、前項の通知があつた場合において、国税不服審判所長の意見が審査請求人の主張を認容するものであり、かつ、国税庁長官が当該意見を相当と認める場合を除き、国税不服審判所長と共同して当該意見について国税審議会に諮問しなければならない。
3 国税不服審判所長は、前項の規定により国税庁長官と共同して国税審議会に諮問した場合には、当該国税審議会の議決に基づいて裁決をしなければならない。
1 はじめに
第32回に続き前回も国税不服審判所制度について検討し、特に前回は国税不服審判所の調査審理手続に関して争点主義的運営の要請を検討した。その中で、行政不服審査法の平成26年6月改正(平成26年法律第68号)に伴う国税通則法の平成26年6月改正(平成26年法律第69号)によって、国税不服審判所の調査審理手続が当事者主義の観点から見直され、国税不服審判所の準司法機関性が強められたことを明らかにした(前回3参照)。
国税通則法のこの改正は、これに先立つ平成26年度税制改正(平成26年法律第10号)による国税不服審判所の独立性の強化を踏まえたものである(宇賀克也『解説 行政不服審査法関連三法』(弘文堂・2015年)205-206頁参照)。ここでいう「国税不服審判所の独立性」は、国税通則法99条1項の規定が「国税庁長官が発した通達に示されている法令の解釈と異なる解釈」(以下「通達解釈と異なる解釈」という。この略称については、志場喜徳郎ほか共編『国税通則法精解〔令和4年改訂・17版〕』(大蔵財務協会・2022年)1243頁参照)により裁決すること等を国税不服審判所に認めていることを意味するものと解されるが、その「独立性」の程度ないし限界は、同項に規定する「解釈」という文言をどのように解釈するかによって、異なるように思われる。
この「解釈」の解釈問題は、国税不服審判所の法令解釈権に関わる問題であるが、従来ほとんど検討されてこなかったように思われる。そこで、今回は、この問題を中心に国税不服審判所の独立性について検討することにする。ただ、その検討に入る前に、まず、国税通則法99条についてその沿革及び趣旨等をみておくことにしよう。
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