企業担当者のための
「不正リスク対応基準」の理解と対策
【第1回】
「不正リスク対応基準の設定背景と不正リスクの想定」
公認会計士 金子 彰良
はじめに
不正リスク対応基準は、監査の有効性を確保しようとするものである。一方で、不正リスク対応基準の設定を契機に、企業が当事者意識をもって不正リスクと向き合うことも必要である。そこにおいて、企業がとるべき不正リスクへの対応は不正リスク要因の検討と不正リスクに対する予防策が中心となる。
不正リスク対応基準において、監査人が注力するのは財務報告の重要な虚偽表示につながる不正である。企業にとっては、他社の不正事案を知ることで、自社の不正リスクを想定する助けとすることが考えられる。他社の不正事案からわかることは、財務報告の重要な虚偽表示につながる不正のほとんどが「不正な財務報告」であるということである。
不正リスク対応基準の設定を契機に、企業では組織内の不正を阻止する風土の醸成と不正リスクの観点からリスク・コントロールの再評価が求められている。【第1回】では、不正リスク対応基準をめぐる現状把握として、不正リスク対応基準の設定背景と不正リスクの想定について解説する。
なお、文中の意見に関する部分は、筆者の個人的な見解である。また、本稿で触れている個別の事案については、これらが一般的にも起こりうることを鑑みて、企業が不正リスクに対応する際の参考になることを目的として記載している。特定の会社の経営管理のしくみを批判・批評することを目的としていないことをお断りしておく。
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