《速報解説》
会計士協会、近年増加している
非パブリック型のブロックチェーンを活用した受託業務に係る
内部統制の保証報告書に関する実務指針案を公表
公認会計士 阿部 光成
Ⅰ はじめに
2021年2月3日、日本公認会計士協会は、保証業務実務指針「非パブリック型のブロックチェーンを活用した受託業務に係る内部統制の保証報告書に関する実務指針」(公開草案)を公表し、意見募集を行っている。
これは、保証業務実務指針3402「受託業務に係る内部統制の保証報告書に関する実務指針」に基づいて、非パブリック型のブロックチェーンを活用したサービスを対象として実施する際の指針を提供するものである。
意見募集期間は2021年3月5日までである。
文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。
Ⅱ 主な内容
ブロックチェーンネットワークに参加するコンピュータ(又は参加者)をノードといい、コンセンサスアルゴリズムに参加するノードに特に制限がない場合を「パブリック型ブロックチェーン」という(3項)。
一方、非パブリック型ブロックチェーンとは、参加するノードが制限されている場合のうち、1つの企業や組織に限定されていれば「プライベート型ブロックチェーン」といい、複数の組織体に限定されていれば「コンソーシアム型ブロックチェーン」ということが多い(3項)。
1 適用範囲
実務指針は、非パブリック型ブロックチェーンのうち、主としてコンソーシアム型ブロックチェーンを活用したサービスを対象とした適用指針を定めている。ただし、プライベート型ブロックチェーンを活用したサービスについても、実務指針に準拠することができる(A1項)。
2 保証業務の範囲
ブロックチェーンの場合には、関連する当事者が多岐にわたると想定される。
このため、「付録4 当事者関係の類型」に基づき参加者と保証業務にて担保する契約当事者・保証範囲について明確に整理し、保証業務契約を締結することが重要である(A3項)。
3 受託会社確認書
コンソーシアム型ブロックチェーンにおいて複数の参加者を受託会社として識別した場合、受託会社確認書は複数の受託会社から連名、又はそれぞれの受託会社から入手することが考えられる(A6項。「付録1 受託会社確認書の記載例」)。
4 証拠の入手
次のことが記載されている。
① 記述書に関する証拠の入手
② 内部統制のデザインに関する証拠の入手
③ 内部統制の運用状況の有効性に関する証拠の入手
5 経営者確認書
コンソーシアム型ブロックチェーンにおいて、複数の参加者を受託会社として識別する場合、経営者確認書は複数の受託会社から連名、又はそれぞれの受託会社から入手することになる(A22項。「付録3 経営者確認書の記載例」)。
6 保証報告書
コンソーシアム型ブロックチェーンにおいて、複数の参加者を受託会社として識別する場合、保証報告書の宛先は複数の受託会社連名、又はそれぞれの受託会社とすることが考えられる(A23項)。
コンソーシアム型ブロックチェーンにおいて、保証報告書の範囲に含まれない参加者が存在する場合は、保証業務の範囲を明確にするため、保証報告書の範囲の記載において明示することが適切である(A23項。「付録2 受託会社監査人の保証報告書の文例」)。
(了)