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これからの会社に必要な『登記管理』の基礎実務 【第1回】「商業登記記録は「会社の履歴書」」

筆者:本橋 寛樹

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これからの会社に必要な

『登記管理』基礎実務

【第1回】

「商業登記記録は「会社の履歴書」」

 

司法書士法人F&Partners
司法書士 本橋 寛樹

 

はじめに

いきなりだが、まず自社又は顧問先の企業が以下のチェックリストに当てはまるか、確認していただきたい。

◆ チェックリスト 

□ 役員の任期到来の時期を把握している。

□ 登記記録と定款の記載に不一致がない。

□ 会社代表者の住所変更に伴う登記を変更のたびに行っている。

□ 全株主の氏名、住所、持株数、株式取得年月日を株主名簿に反映している。

□ 株主、役員の全員と連絡をとれる状態であり、株主、役員の意思表示は問題なく行われる。

□ 株主総会や取締役会に参加資格のある者に漏れなく決議の機会を与えている。

□ 株主の構成に変動がある場合に、会社所定の書式によって経過を証明できる。

□ 議事録や定款等の備置書類を時系列に沿って保管し、必要に応じて取り出せる。

□ 株主総会で定款変更の決議のたびに、定款を更新している。

チェックの結果はいかがであっただろうか。

上記項目のうち一つでも漏れがあるという会社は、これから始まる本連載の解説を読み進め、活用していただきたい。

本連載『これからの会社に必要な『登記管理』の基礎実務』では、主に会社の実務担当者や、法人案件に携わる税理士等を対象に、登記に至るまでの過程を軸とする社内整備の方策について、司法書士の立場から、分かりやすく、かつ、実践的に解説していく。

 

商業登記記録は「会社の履歴書」

本連載を読み進めていくうえで、まず、

商業登記記録 = 会社の履歴書

とイメージしていただきたい。

会社情報を精査するには、商業登記記録が記載される、法務局発行の「履歴事項全部証明書」を活用する。

この「履歴事項全部証明書」だが、省略して表記すると「履歴書」になる。つまり、商業登記記録は文字通り、「会社の履歴書」のようなものといえる。

個人の履歴書には、氏名、住所、生年月日をはじめとして、学歴や資格、職歴等の項目がある。一方、商業登記記録には、個人の履歴書に対応する、会社の商号、本店、会社の成立年月日をはじめとして、資本金、役員構成、機関設計等の項目がある。

 

共通点は?

例えば個人の履歴書の場合、入社を希望する会社の書面審査において、一定の審査水準を超えると、その書面審査を通過できる。逆に一定の水準を満たさないと、面接等の次のステップに進めない。誤字・脱字や、矛盾点がみられたり、転職回数が重なったりすると、審査の水準が満たされない可能性が高くなる。

上記のことは、会社の場合にも当てはまる。取引を検討するにあたり、対象会社の商業登記記録を確認することになるが、審査の水準を満たせば、取引開始のステップに近づく。逆に最低限の水準を満たしていないと、取引が見送りになるおそれがある。登記記録と会社資料の記載に不一致があったり、本店移転や商号変更が頻繁に行われたりするといった点は、会社の信用力低下に結びつく。

 

相違点は?

個人の履歴書と会社の商業登記記録には、上記のような共通点がある一方、次のとおり相違点がある。

会社の履歴書の特徴をまとめると、以下のとおりである。

※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。

《更新の有無》

個人の履歴書は一度提出すれば足り、内容の更新は想定されていない。

一方、商業登記記録は適宜更新される。本店や商号等を変更すれば、その登記手続をしなければならない。また、株式会社では法令上、取締役や監査役の任期に関する規定が設けられている。役員の構成員に変動がなくても、役員の任期が到来すれば同一の者を選任し、その登記手続をしなければならない。

《意思決定の当事者》

個人の履歴書には、学校や職場、資格取得等の、入社を希望する個人が過去に下した意思決定の蓄積が記載される。

一方、商業登記記録には、役員と株主が同一人の一人会社を除いて、役員、株主の複数の者が過去に決議をした会社の意思決定の蓄積が記録される。例えば、株主総会では株主が取締役選任の意思決定を行い、取締役会では取締役が代表取締役選定の意思決定を行う。

《公開の有無》

個人の履歴書は、入社を希望する会社においてのみ閲覧される。外部への公開は想定されていない。

一方、商業登記記録は、法務局で誰でも閲覧できる。公開の範囲に制限がなく、不特定多数の者に閲覧される。

以上、商業登記記録の特徴をまとめると次のとおりである。

一定の時期に、複数の者の意思決定によって更新され、誰でも閲覧することができる記録

 

本連載の今後の進め方

本連載では、下図のとおり、商業登記記録の特徴を踏まえて、登記に至るまでの過程として、『任期管理』『株主管理』『議事録管理』の3点に着目する。

そして、この3点の総称を『登記管理』と定義する。

会社の登記管理が万全であれば、その会社の意思決定が迅速かつ忠実に登記記録に反映され、会社の信用力向上を期待できる。

他方で、登記管理が不十分であると、会社の意思決定が滞ったり、覆ったりする等のリスクを伴い、会社の信用力低下が懸念される。

※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。

*  *  *

次回は、登記管理を怠った場合、どのようなリスクが生じるのかという点について紹介したい。

(了)

この連載の公開日程は、下記の連載目次をご覧ください。

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筆者紹介

  • 本橋 寛樹

    (もとはし・ひろき)

    司法書士

    東京都出身
    平成23年3月 早稲田大学社会科学部社会科学科卒
    平成24年10月 司法書士試験合格
    東京都内の司法書士法人に勤務、相続・商業登記を中心に実務経験を積む
    平成28年3月 司法書士法人F&Partners入所

    【事務所】
    司法書士法人F&Partners(京都事務所)
    〒604‐8162
    京都市中京区七観音町623番地第11長谷ビル5階
    TEL:075-256-4548
    URL:http://www.256.co.jp/

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