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これからの会社に必要な『登記管理』の基礎実務 【第2回】「登記管理を怠るリスク」

筆者:本橋 寛樹

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これからの会社に必要な

『登記管理』基礎実務

【第2回】

「登記管理を怠るリスク」

 

司法書士法人F&Partners
司法書士 本橋 寛樹

 

はじめに

前回定義した登記管理をもとに、今回はその登記管理を怠るリスクについて考察する。

自社や顧問先企業に当てはめて、リスクを洗い出す観点で読み進めてもらいたい。

 

登記管理を怠るリスク

まず、事業活動と登記管理は「別物」であるという認識が肝心である。

事業活動の好不調にかかわらず、登記管理は適宜行う必要がある。リスクが潜在的にとどまっている間は、目の前の事業活動に直接的な影響が及ばないため、手当てを施す必要がないように思える。しかし、手当てをしない期間が長くなるにつれて潜在的なリスクが顕在化し、事業活動に打撃を与えるおそれが高まる。

いったんリスクが顕在化すると、正常の状態に戻すのは容易ではない。

では、実際にどのようなリスクが顕在化するのか。

下表は、リスクの顕在化前と顕在化後の一例をまとめたものである。
リスクの顕在化前	リスクの顕在化後 役員の任期更新を失念して、役員変更等の登記手続をしばらくしていない。	登記期間を遵守しないことによるペナルティとして、裁判所から過料が課せられる。 	12年以上登記手続をしていないと、会社の意思によらずに会社が解散される危機に直面する。 	登記記録に解散の表記が入ると、取引懸念の材料となる。 株主名簿の整備が不十分で、全株主の所在を把握しきれていない。	株主総会の決議を覆される請求を受けるリスクを抱え込むことになる。 会社の意思決定のスピード感が失われる。 議事録が散逸、紛失しており、第三者からの閲覧や提出を求められた場合に対応できない。	税務署や法務局、金融機関等に議事録や定款等の提出が困難となり、手続が滞る。また、議事録等があれば、容易に主張できる事実でさえも、証明に困難を極める。

上表を図示すると、次のようになる。
※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。

それでは、なぜリスクが生じてしまうのだろうか。次にその要因を考察する。

 

リスクが生じる要因

「企業が登記管理を怠る」というリスクが生じる要因は、主に次の3点である。

 会社主導の管理を要する点

 中長期にわたる管理を要する点

 相次ぐ法改正等の対応不足

 会社主導の管理を要する点

役員の任期管理について、役所が会社に対して役員の任期到来の時期を前もって知らせる制度はない。このため、会社が自発的に任期の到来時期を把握し、その時期に役員の選任決議とその登記手続をする必要がある。

株主管理について、登記には株式の所有者情報や変動が反映されない。会社が主導となって、株主関係書類を作成のうえ、管理をする。

例えば、会社が株主名簿を作成、備置きし、必要に応じて、株主名簿記載事項証明書等の関係書類の発行を行う。また、株主構成に変動があれば、株主は会社に所定の書類を提出し、会社が株主名簿の更新等の処理をする。

 中長期にわたる管理を要する点

役員の任期管理では、任期が1年である場合を除き、任期満了に伴う役員変更の登記手続は数年に一度となる。会社の実務担当者が異動すると、業務の引継ぎにおいて漏れが生じる可能性がある。

株主管理は、会社が存続する間は継続して行う必要がある。例えば、株主名簿の名義書換えは、一つ一つの手続は独立しているが、その積み重ね次第で株主の管理状況が左右される。

議決権行使の観点から、株式の分散や、株主に起こりうる相続発生、判断能力の低下等に備えて、中長期にわたる対策を立てていく必要がある。

 相次ぐ法改正等の対応不足

平成18年の会社法施行後、登記に直結する会社法、商業登記に関する法改正等が相次いでいる。

役員の任期を最長の10年と定めている株式会社や任期規定が適用されない有限会社であれば、最後の登記手続から長期間経過しており、現行制度や運用に沿っているか見直しの機会を設ける時期に差しかかっているだろう。

以下の表を通して、法改正等の対応がとられているか、今一度確認していただきたい。

【会社法施行後の、登記に直結する法改正等】
時 期 内 容	影 響 平成18年5月1日	・会社法の施行により制度や用語が 一新される。 ・役員の任期が最長10年に伸長可能 となる。 ・株券不発行が原則となる。	会社法に沿った内容に定款を整備する。 平成26年度以降	最後の登記から12年を経過する株式会社を対象にみなし解散の登記手続が進められる。	役員の任期満了時期を確認し、任期到来時期に役員の改選、登記手続を行う。 平成27年5月1日	監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨が新たな登記事項となる。	監査役の変更登記時に監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の登記の有無を検討する。 平成28年10月1日	登記事項で株主総会の決議を要する場合、登記申請時に株主リストを添付する。	株主総会で議決権を行使することができる株主を特定するため、会社にとっては株主名簿の設備が急務となる。

 

まとめ

登記管理を怠るリスクが生じる要因を振り返ると、以下のような体制づくりが実現できれば、リスク回避に結びつくと考える。

法改正等に対応しながら

会社主導で

中長期的に管理し続けられる

体制づくり

*  *  *

次回からは、登記管理の軸となり、また登記管理を怠るリスクを回避する体制づくりの一環となる、「役員の任期管理」について解説していく。

(了)

次回は5/11の公開予定です。

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筆者紹介

  • 本橋 寛樹

    (もとはし・ひろき)

    司法書士

    東京都出身
    平成23年3月 早稲田大学社会科学部社会科学科卒
    平成24年10月 司法書士試験合格
    東京都内の司法書士法人に勤務、相続・商業登記を中心に実務経験を積む
    平成28年3月 司法書士法人F&Partners入所

    【事務所】
    司法書士法人F&Partners(京都事務所)
    〒604‐8162
    京都市中京区七観音町623番地第11長谷ビル5階
    TEL:075-256-4548
    URL:http://www.256.co.jp/

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