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これからの会社に必要な『登記管理』の基礎実務 【第11回】「株主管理の仕組みづくり」-株主名簿整備〈着手編〉-

筆者:本橋 寛樹

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これからの会社に必要な

『登記管理』基礎実務

【第11回】

「株主管理の仕組みづくり」

-株主名簿整備〈着手編〉-

 

司法書士法人F&Partners
司法書士 本橋 寛樹

 

はじめに

前回の株主名簿整備の必要性をふまえて、本稿では、株主名簿を整備するための手順について解説する。

自社の株主管理を本格的に見直したいと考えている読者は、株主名簿整備のための下記3ステップに着手してみよう。これらのステップを実践することにより、自社の株主をどの程度管理できているかを把握し、今後の株主管理の体制づくりのベースを築くことができる。

《株主名簿整備のための3ステップ》

ステップ①:株主に関する資料を集める

ステップ②:株主名簿の記載事項に当てはめる

ステップ③:株主全員と連絡が取れるかを確認する

それでは各ステップを詳しくみていこう。

 

ステップ①:株主に関する資料を集める

まず、株主に関する資料を集める必要がある。

多くの読者が活用する資料は、次の3点になると思われる。

  • 同族会社等の判定に関する明細書(法人税申告書別表二)
  • 原始定款
  • 自社でWordやExcel等で管理しているデータ

このうち「自社でWordやExcel等で管理しているデータ」は、その作成時、別表二や原始定款等の株主に関する資料を参照しているはずである。このため、どの資料をもとに作成されたかを精査することが望ましい。

なお、拙稿の「株主名簿整備の方法と会社のリスクマネジメント」のなかで、資料名とその詳細について解説しているので参考とされたい。

【登記記録から株主情報の変更を読み取れる場合】

登記記録には株主の氏名及び住所は記載されないが、株主に関する資料とあわせて登記記録を精査すると、会社が把握していた株主情報に変更があることを読み取れる場合がある。

① 代表取締役の住所の記載

株式会社の代表取締役は氏名及び住所が登記される(会社法第911条第3項第14号)が、その代表取締役が株主の場合、別表二に記載の住所と登記記録に記載の住所が異なっていることがある。別表二の住所の記載が古ければ、その記載を最新の状態に更新すればよい。

一方、登記記録上の住所の記載が古ければ、代表取締役の住所変更の登記手続をする必要がある。

《別表二の記載例》

《登記記録例》

② 原始定款

原始定款には、会社設立当時の株主(発起人)の氏名及び住所、割当株式数が記載される。登記記録の発行済株式数と記載が異なっていれば、会社設立後に株式数が変更されたと読み取れる。

《原始定款の記載例》

《登記記録》

 

ステップ②:株主名簿の記載事項に当てはめる

ステップ①の資料をもとに、株主名簿の書式に当てはめる。株主名簿の書式は、少なくとも株主名簿の記載事項が網羅されていれば任意のものでよい。

《株主名簿の記載事項(会社法第121条)》

 株主の氏名・住所

 保有株式の数(種類株式発行会社にあっては株式の種類及び種類ごとの数)

 取得年月日

 株券番号(※)

(※) 株券を発行しない会社では株券番号はなし。一例として備考欄に株券不発行と記載する。

《記入例》

 

ステップ③:株主全員と連絡が取れるかを確認する

ステップ②で記載した株主名簿において、次のような株主はいなかっただろうか。

 亡くなっている株主がいる

 退職した役員や従業員が株主である

これらの株主は、今後会社から株主への連絡が困難となり、株主の所在が不明となりうる例である。

に関して、相続により株式を取得した者は、会社に株主名簿の書換を請求することができる(会社法第133条第2項)。

またに関しては、株主の住所に変更がある場合、一般的な定款では、次のように、株主が会社に届出する旨の規定が定められている。

《定款の規定例》

(株主の住所等の届出等)

第〇条 当会社の株主(中略)は当会社所定の書式により、その氏名又は名称及び住所並びに印鑑を当会社に届け出なければならない。届出事項等に変更を生じたときも、同様とする。

しかし、株式を取得した者や株主(以下、「株主側」という)がこれらの会社法や定款の規定を知っているとは限らない。そうなると、株主側から変更の届出や名義書換の請求がなされるという保証はない。

会社が株主側から変更の届出や名義書換の請求を待ち、株主の相続や住所等の情報を知らないという状況が続けば、いずれ会社から株主側に連絡を取ることさえ難しくなってしまうだろう。

そこで、株主の所在が不明となり、株式が分散する前に、会社から株主側に対して連絡を取ることを推奨したい。上記①②のケースに対して下記のとおり対応することで、株式の分散の防止につなげられる。

 亡くなっている株主がいる場合

〈対応策〉
株式の相続の詳細を相続人に聴取し、会社から株式の売渡しの請求を行う。

 退職した役員や従業員が株主である場合

〈対応策〉
株式の売買を持ちかける。

 

連絡が取れない株主への対応

まったく連絡が取れない株主であっても株主の権利が失われるわけではない。

連絡が取れない株主が保有する株式を会社が処分する手段として、例えば、裁判所が関与する、「所在不明株主の株式売却制度」がある。

【参考】 裁判所ホームページ
所在不明株主の株式売却許可申立書

(注) 5年以上の継続した期間や官報公告等の諸手続を要する点に着目されたい。

株主側と連絡が取れなくなってから対応するよりも、株主側と連絡が取れるうちに、裁判所の関与なしで株主側との話し合いのうえ、会社が株式を取得する等の対応を取る方が会社にとって負担が少なく済むのではないだろうか。

 

中長期的な株主管理に向けて

株主名簿整備のための3ステップを実践してみて、自社の株主名簿は漏れなく整備できたたろうか。

もし株主名簿を整備する過程で株主に関して不明確な情報があれば、株主に関する資料の保管方法や会社が株主と接触する頻度が万全ではないといえる。

*  *  *

次回は、株主に関する資料の保管方法や会社が株主と接触する頻度に着目し、中長期にわたって株主管理を行うための運営方法について解説する。

(了)

「これからの会社に必要な『登記管理』の基礎実務」は、毎月第1週に掲載されます。

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筆者紹介

  • 本橋 寛樹

    (もとはし・ひろき)

    司法書士

    東京都出身
    平成23年3月 早稲田大学社会科学部社会科学科卒
    平成24年10月 司法書士試験合格
    東京都内の司法書士法人に勤務、相続・商業登記を中心に実務経験を積む
    平成28年3月 司法書士法人F&Partners入所

    【事務所】
    司法書士法人F&Partners(京都事務所)
    〒604‐8162
    京都市中京区七観音町623番地第11長谷ビル5階
    TEL:075-256-4548
    URL:http://www.256.co.jp/

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