コーポレートガバナンス・コードのポイントと
企業実務における対応のヒント
【第11回】
(最終回)
「投資家との建設的な対話を促進するための開示」
~統合報告を活用した攻めと守りのガバナンス力の対話~
PwCあらた監査法人 パートナー
久禮 由敬
PwCあらた監査法人 マネージャー
公認会計士 三代 英敏
2015年7月1日より、あらた監査法人は法人名称を「PwCあらた監査法人」に変更している。
〔適切な情報開示と透明性の確保〕
2015年6月1日よりコーポレートガバナンス・コード(以下「CGコード」)の適用が開始された。
既に新様式の「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」を提出済みの企業もあるが、「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」の記載内容にとどまらず、CGコードへの対応を検討中という企業は多くあると思われる。
本連載の最終回となる本稿では、CGコードの【基本原則3】と【原則3-1.情報開示の充実】について解説し、実務対応のヒントを提供することを目的とする。なお、文中の意見にわたる部分は、筆者の私見であることをお断りしておく。
原則3-1では、以下の事項について開示し、主体的な情報発信を行うべきである、とされている。
(ⅰ) 会社の目指すところ(経営理念等)や経営戦略、経営計画
(ⅱ) 本コードのそれぞれの原則を踏まえた、コーポレートガバナンスに関する基本的な考え方と基本方針
(ⅲ) 取締役会が経営陣幹部・取締役の報酬を決定するに当たっての方針と手続
(ⅳ) 取締役会が経営陣幹部の選任と取締役・監査役候補の指名を行うに当たっての方針と手続
(v) 取締役会が上記(ⅳ)を踏まえて経営陣幹部の選任と取締役・監査役候補の指名を行う際の、個々の選任・指名についての説明
原則3-1は、CGコード原則のうち特定の事項を開示すべきとする11原則の1つであるため、「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」の「コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示」において記載が求められている(本連載【第8回】参照)。
これらの事項は、会社の意思決定の透明性・公正性を確保し、実効的なコーポレートガバナンスを実現するとの観点から開示が求められている。
また、【基本原則3】では、開示・提供される情報が株主との間で建設的な対話を行う上での基盤となることも踏まえ、そうした情報が、正確で利用者にとって分かりやすく、情報として有用性の高いものとなるようにすべきである、としている。したがって、企業は、ひな型的な記述や具体性を欠く記述は避けなければならず、このことは補充原則3-1①でも要求されている。
また、コーポレートガバナンス・コードとともに、「車の両輪」と呼ばれる日本版スチュワードシップ・コードが公表されてから1年以上が経過し、2015年6月11日時点で191の機関投資家が受入れを表明している。これらの機関投資家からは、企業と建設的な対話を行うために有用な情報の開示がより一層期待されている。
〔有用な情報の開示とは?〕
では、企業が投資家との間で建設的な対話を行うために有用な情報の開示とは、どのような開示であろうか。
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