会計事務所の事業承継
~事務所を売るという選択肢~
【第6回(最終回)】
「計算例でみる
会計事務所の価値評価」
公認会計士・税理士 岸田 康雄
1 後継者がいない会計事務所の価値評価
会計事務所のM&Aでは、その譲渡対象のほとんどは、顧客との顧問契約や職員の雇用契約といった無形資産である。
無形資産の譲渡といっても、財産評価基本通達によれば「営業権を認識しない。」とされているため、当事者間の交渉を通じて、「斡旋料」が時価で支払われることになる。
後継者(親族内)がいない場合の会計事務所の価値評価を考えてみよう。
所長は、M&Aを行わなければ、引退と同時に廃業することになる。それゆえ、所長が引退するまでの数年間の所得しか獲得することができず、後継者に引き継ぐべき事業価値は実現できないことになる。
ここで、65歳で引退すると考えている所長が、60歳で会計事務所を売却すると仮定する。すなわち、キャッシュ・フロー(=税引後利益と税引後給与)を毎年1,500万円、5年間だけ獲得できるという設定である。
この場合の事業価値の評価については、業界慣行では経常売上高の1年分とされているものの、理論的には5年分のキャッシュ・フローの割引現在価値を計算しなければならない。ここでは割引率15%を適用する。
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