公開日: 2021/06/03 (掲載号:No.422)
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新収益認識基準適用にあたっての総復習ポイント 【前編】

筆者: 西田 友洋

新収益認識基準適用にあたっての総復習ポイント

【前編】

 

RSM清和監査法人
公認会計士 西田 友洋

 

ASBJより2018年3月30日に企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準(以下、「収益基準」という)」及び企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針(以下、「収益指針」という)」が公表された。

その後、収益基準及び収益指針は2020年3月31日に改正され表示科目、注記事項が明確になった。さらに、収益指針は2021年3月26日に改正され、電気事業及びガス事業において検針日基準による収益認識を認めない旨が明らかになった。

 

1 適用時期

収益基準及び収益指針は、原則、2021年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用される(収益基準81)。

 

2 会計方針の変更の取扱い

収益基準及び収益指針の適用は、「会計基準等の改正に伴う会計方針の変更」として取り扱われる(収益基準84)。

〔原則〕

新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用する。

なお、下記(1)の簡便的な処理が認められている。

〔容認〕

適用初年度の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の適用初年度の累積的影響額を、適用初年度の期首の利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用することができる

なお、下記(2)の簡便的な処理が認められている。

(1) 原則処理に従って収益基準及び収益指針を適用する場合

原則処理に従って遡及適用する場合、以下のからの方法の1つ又は複数を適用することができる(収益基準85)。

 適用初年度の前事業年度の期首より前までに従前の取扱いに従ってほとんどすべての収益の額を認識した契約は、適用初年度の前事業年度の財務諸表及び四半期(又は中間)財務諸表(注記事項を含む)(合わせて「適用初年度の比較情報」という)を遡及的に修正しない。

 適用初年度の期首より前までに従前の取扱いに従ってほとんどすべての収益の額を認識した契約に変動対価が含まれる場合、当該契約に含まれる変動対価の額について、変動対価の額に関する不確実性が解消された時の金額を用いて適用初年度の比較情報を遡及的に修正する。

 適用初年度の前事業年度内に開始して終了した契約について、適用初年度の前事業年度の四半期(又は中間)財務諸表を遡及的に修正しない。

 適用初年度の前事業年度の期首より前までに行われた契約変更について、すべての契約変更を反映した後の契約条件に基づき、以下の(ⅰ)から(ⅲ)の処理を行い、適用初年度の比較情報を遡及的に修正する。

(ⅰ) 履行義務の充足分及び未充足分の区分

(ⅱ) 取引価格の算定

(ⅲ) 履行義務の充足分及び未充足分への取引価格の配分

(2) 容認処理に従って収益基準及び収益指針を適用する場合

① 全般的な取扱い

容認処理に従って適用する場合、適用初年度の期首より前までに従前の取扱いに従ってほとんどすべての収益の額を認識した契約に、新たな会計方針を遡及適用しないことができる(収益基準86)。

② 契約変更

容認処理に従って適用する場合、契約変更について、以下の(ⅰ)又は(ⅱ)のいずれかを適用し、その累積的影響額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減することができる(収益基準86)。

(ⅰ) 適用初年度の期首より前までに行われた契約変更について、すべての契約変更を反映した後の契約条件に基づき、上記(1)(ⅰ)から(ⅲ)の処理を行う。

(ⅱ) 適用初年度の前事業年度の期首より前までに行われた契約変更について、すべての契約変更を反映した後の契約条件に基づき、上記(1)(ⅰ)から(ⅲ)の処理を行う。

【IFRS及び米国会計基準を適用している場合(収益基準87)】

IFRS又は米国会計基準を連結財務諸表に適用している企業(又はその連結子会社)が当該企業の個別財務諸表に収益基準及び収益指針を適用する場合、適用初年度において、IFRS 第15号「顧客との契約から生じる収益」又はFASB Accounting Standards CodificationのTopic 606「顧客との契約から生じる収益」のいずれかの経過措置の定めを適用することができる。

また、収益基準第84項から第86 項の定め(上記参照)にかかわらず、IFRS を連結財務諸表に初めて適用する企業(又はその連結子会社)が当該企業の個別財務諸表に収益基準及び収益指針を適用する場合、適用初年度において、IFRS第1号「国際財務報告基準の初度適用」における経過措置に関する定めを適用することができる。

3月決算の会社においては、進行期の期首(4月1日)から適用されるため、第1四半期より適用する必要がある。そこで、今回は、新収益認識基準適用にあたっての総復習として、2回にわたって新収益認識基準のポイントを解説する。【前編】の今回は「会計処理」について解説し、次回の【後編】では「開示」について解説する。

 

3 会計処理の総復習ポイント

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会計方針の取扱い 新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用するか、適用初年度の期首の利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用するか(下記2を検討)を決定したか。 - 会計方針の取扱い 〈新たな会計方針を適用初年度の期首の利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用した場合〉  収益基準及び収益指針適用前の取引について、新基準に従って会計処理しなければいけない取引はないか検討したか。  短信、事業報告書、有価証券報告書及び四半期報告書の経理の状況より前の記載において、前期比較を用いて損益の状況を説明する場合、収益基準及び収益指針の適用による影響を記載したか。 - 【STEP1】 契約の識別  同一の顧客(当該顧客の関連当事者を含む)と同時又はほぼ同時に締結した複数の契約で、複数の契約を結合し、単一の契約とみなして会計処理するものがないか検討したか。  関連当事者の範囲を検討したか。  「同時又はほぼ同時」の時期を検討したか。 ・商品又は製品の販売契約と保守サービス契約を同時に締結 ・ソフトウェアのライセンス販売とカスタマイズサービス契約を同時に締結 ・工事契約を複数に分けている場合 【STEP1】 契約の識別 契約の結合の代替的な取扱いを検討したか。 【代替的な取扱い】  以下の(1)及び(2)のいずれも満たす場合、複数の契約を結合しないことができる。 (1)顧客との個々の契約が当事者間で合意さ れた取引の実態を反映する実質的な取引 の単位であると認められること (2)顧客との個々の契約における財又はサービ スの金額が合理的に定められていることによ り、当該金額が独立販売価格と著しく異な らないと認められること  工事契約及び受注制作のソフトウェアで、当事者間で合意された実質的な取引の単位を反映するように複数の契約(異なる顧客と締結した複数の契約や異なる時点に締結した複数の契約を含む)を結合した際の収益認識の時期及び金額と、当該複数の契約について結合しない場合の収益認識の時期及び金額との差異に重要性が乏しいと認められる場合、複数の契約を結合し、単一の履行義務として識別することができる。 ・受注製作のソフトウェアで契約を複数に分けている場合 ・ビル工事で、各テナントごとに工事契約を締結している場合(各テナントは関連当事者ではない) 【STEP1】 契約の識別 契約の変更がある場合、どの会計処理にする必要があるか検討したか。 【契約変更の会計処理】 (1)元々の契約と変更契約が実質的に独立した契約である場合 元々の契約と変更契約を、それぞれ独立した(別の)契約として会計処理する。 (2)元々の契約と変更契約が実質的に独立した契約ではない場合 (ⅰ)元々の契約を解約し、新たな契約を締結したものと仮定して会計処理する。 (ⅱ)契約変更を元々の契約の一部と仮定して会計処理する。 (ⅲ)上記(ⅰ)と(ⅱ)の組み合わせ 【重要性が乏しい場合】 契約変更による財又はサービスの追加が既存の契約内容に照らして重要性が乏しい場合、上記(1)、(2)(ⅰ)及び(ⅱ)のいずれの方法を適用することができる。 ・契約範囲の変更 ・契約価格の変更 ・追加工事、サービス追加に伴う契約の追加 ・仕様変更 【STEP2】 履行義務の識別 契約(複数の契約を結合した後の契約群も含む)の中に複数の履行義務がないか検討したか。 【重要性が乏しい場合】 約束した財又はサービスが、顧客との契約の観点で重要性が乏しい場合、当該約束を履行義務として識別しないことができる。 【出荷及び配送活動】 顧客が商品又は製品に対する支配を獲得した後に行う出荷及び配送活動については、履行義務として識別しないことができる。 ・一括請負契約 ・ソフトウェアライセンスの販売と各種サービス(インストールサービス、ソフトウェアアップデート、テクニカルサポートなど)の提供 ・設備の販売と据付サービスの提供 ・財又はサービスの提供とそれに対する保証 ・特許権のライセンス供与と製造サービスの提供 ・フランチャイズのライセンス供与と設備の提供 ・請求済未出荷契約 【STEP3】 取引価格の算定 取引価格に第三者のために回収する額が含まれていないか検討したか。 ・消費税 ・たばこ税 【STEP3】 取引価格の算定  取引価格に変動対価がないか検討したか。  変動対価の見積り方法を検討したか。 ・値引き ・リベート ・販売手数料 ・インセンティブ ・仮単価、仮価格 ・ペナルティー ・業績に基づく割増金 ・返品権付きの販売、 【STEP3】 取引価格の算定  契約において重要な金融要素がないか検討したか。  重要な金融要素がある場合、金利相当分を除いた現金販売価格で収益を認識したか(割引計算を行ったか)。 【重要性が乏しい場合】 対価の回収期間1年以内であれば金利相当分を調整しないことができる。 【割賦基準での収益認識】 割賦金の回収期限の到来日又は入金日に収益を認識することは認められない。 ・割賦販売 ・長期工事契約 【STEP3】 取引価格の算定  取引価格に現金以外の対価がないか検討したか。  現金以外の対価がある場合、対価を時価により算定したか。 - 【STEP3】 取引価格の算定  顧客に支払われる対価がないか検討したか。  顧客に支払われる対価に変動対価(変動要素)がないか検討したか。  顧客に支払われる対価を売上から控除して会計処理したか。 ・リベート ・販売手数料 ・キャッシュバック ・値引き ・棚代 ・広告宣伝費の補填 ・クーポン、バウチャー ・協賛金 ・売上割引 【STEP4】 履行義務への取引価格の配分  複数の履行義務がある場合、取引価格全体を各履行義務の独立販売価格の比率により各履行義務に配分したか。  独立販売価格をどのように算定又は見積もるかを検討したか。 【独立販売価格】 「独立販売価格」とは、財又はサービスを独立して企業が顧客に販売する場合の価格をいう。 - 【STEP4】 履行義務への取引価格の配分 値引きについて、各履行義務への配分を行ったか。 - 【STEP4】 履行義務への取引価格の配分 変動対価について、各履行義務への配分を行ったか。 - 【STEP4】 履行義務への取引価格の配分 事後的な取引価格の変動について、各履行義務への配分を行ったか(既に充足した履行義務に配分された額については、取引価格が事後的に変動した期に修正を行ったか(反映したか))。 - 【STEP5】 履行義務の充足による収益の認識 一時点で充足される履行義務であるか(下記17を検討)、又は一定の期間にわたり充足する履行義務か(下記18を検討)を検討したか。 - 【STEP5】 履行義務の充足による収益の認識 〈一時点で充足される履行義務の場合〉  顧客に資産に対する支配が移転する時点を検討したか。  国内販売において出荷基準、着荷基準を採用することができるか検討したか。  割賦基準は採用することはできないため、どの時点で収益認識すべきか検討したか。 【出荷基準・着荷基準】 商品又は製品の国内の販売において、出荷時から支配が顧客に移転される時までの期間が通常の期間である場合には、出荷時や着荷時に収益を認識することができる。 ・海外輸出取引 ・出荷基準及び着荷基準取引 ・割賦基準取引 【STEP5】 履行義務の充足による収益の認識 〈一定の期間にわたり充足する履行義務の場合〉  進捗度の測定方法(アウトプット法又はインプット法)をどれにするか決定したか。  アウトプット法及びインプット法の欠点を考慮したか。  契約の初期段階において、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積もることができない場合、原価回収基準(費用と同額の売上を計上する方法)を採用することを検討したか。  工事完成基準を適用する場合、対象工事の範囲(期間、金額等)を決定したか。 【アウトプット法】 例示:生産単位数、引渡単位数等 欠点:履行義務の充足に係る進捗度を見積もるために使用されるアウトプットが直接的に観察できない場合があり、過大なコストをかけないとアウトプット法の適用に必要な情報が利用できない場合がある 【インプット法】 例示:労働時間、発生した費用、かかった時間、機械の使用時間等 欠点:インプットと財又はサービスに対する支配の顧客への移転との間に直接的な関係がない場合がある 【原価回収基準】 契約の初期段階において、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積もることができない場合には、当該契約の初期段階に収益を認識せず(原価回収基準を採用せず)、当該進捗度を合理的に見積もることができる時から収益を認識することができる。 【工事完成基準】 期間がごく短い工事契約及び受注制作のソフトウェアに限り、完全に履行義務を充足した時点で収益を認識することができる。 【毎月の検針による使用量に基づく収益認識】 検針日から決算日までの使用料を見積もり、収益を認識する。 ・工事契約 ・受注制作のソフトウェア ・コンサルティングサービス ・電気又はガス提供契約 本人・代理人 履行義務ごとに「本人」に該当するか、「代理人」に該当するか(下記20を検討)、検討したか。 【本人と判定する際に考慮する指標の例示】 (1)財又はサービスを提供するという約束の履行に対して主たる責任を有しているか。 (2)在庫リスクを有しているか。 (3)財又はサービスの価格の設定において裁量権を有しているか。 ※信用リスクは代理人であるという判定を覆すために利用される可能性があるため、本人の判定の際には考慮しない。 - 本人・代理人 〈代理人に該当する場合〉 売上を純額で会計処理したか(売上と売上原価を相殺したか)。 【本人の場合】 売上と売上原価について、総額で会計処理する。 ・卸売業の直送取引 ・小売業の消化仕入 財又はサービスに対する保証  契約に財又はサービスに対する保証が当該財又はサービスが合意された仕様に従っているという保証(法律で要求されている保証)又は、保証サービス(顧客にサービスを提供する保証)が含まれていないか検討したか。  財又はサービスに対する保証が当該財又はサービスが合意された仕様に従っているという保証(製品保証など)のみである場合、引当金として会計処理したか。  保証サービスがある場合、1つの履行義務として識別することを検討したか。 ・(保証サービス)製品の操作方法について訓練サービスを受ける権利の提供 ・(保証サービス)家電量販店における延長保証 ・(合意された仕様に従っているという保証又は保証サービス)欠陥商品の交換 返品権付き販売  返品権付き販売がないか検討したか。  返品調整引当金は計上できないことを検討したか。  返品されると見込まれる商品・製品の対価については、収益を認識せず、返金負債を認識したか。  返金負債の決済時に顧客から商品・製品を回収する権利について返品資産を認識したか。  正常品と交換するために欠陥のある商品又は製品を顧客が返品することができる契約は、上記21「財又はサービスに対する保証」に従って会計処理したか。 ・出版業 ・音楽業 ・医薬品販売業 追加的な財又はサービスに対する顧客のオプション  顧客との契約において、既存の契約(商品・製品の販売やサービスの提供)に加えて追加の財又はサービスを取得するオプションを顧客に付与する場合、そのオプションが当該契約を締結しなければ顧客が受け取れない重要な権利を顧客に提供するものであるか検討したか。  ポイント等について1つの履行義務(契約負債)として識別したか。  ポイント部分(契約負債)へ取引価格を配分する際に、原価ベースではなく、販売価格ベースで配分したか。 ・ポイント制度 ・販売インセンティブ ・顧客特典クレジット ・契約更新オプション 顧客により行使されない権利(非行使部分)  顧客から企業に、返金が不要な前払いがなされた場合、将来において企業から財又はサービスを受け取る権利が顧客に付与され、企業は当該財又はサービスを移転する(又は移転するための準備を行う)義務を負うが、顧客は当該権利のすべてを行使しない場合があるか検討したか。  顧客により行使されない権利(非行使部分)について、商品券等の販売時点では契約負債を認識し、その後、権利行使のパターンに従い、収益を認識したか。 ・商品券 ・プリペイドカード 返金が不要な契約における取引開始日における顧客からの支払  顧客が契約において取引開始日又はその前後に、返金が不要な支払が必要となる取引があるか検討したか。  顧客からの支払が「約束した財又はサービスの移転を生じさせるものか」、又は「将来の財又はサービスの移転に対するものか」を検討したか。  顧客からの支払が「約束した財又はサービスの移転を生じさせるもの」である場合、その財又はサービスを提供した時点で収益を認識したか。  顧客からの支払が「将来の財又はサービスの移転に対するもの」である場合、将来の財又はサービスを提供する期間にわたり収益を認識したか。 ・スポーツクラブ会員契約の入会手数料 ・ゴルフ場の入会金 ・不動産賃貸における礼金 ・電気通信契約の加入手数料 ・サービス契約のセットアップ手数料 ・供給契約の当初手数料 ライセンスの供与  契約にライセンスの供与が含まれているか検討したか。  ライセンスの供与が他の財又はサービスと別個のものであるかどうか、又は別個のものではなくても1つの履行義務の主要な履行義務がライセンスの供与であるかを検討したか。 ・ソフトウェア ・動画、音楽等のメディアエンターテインメント ・フランチャイズ ・特許権、商標権及び著作権 ライセンスの供与 〈ライセンスを供与する約束が別個のものである場合又は別個のものではなくても、1つの履行義務の主要な履行義務がライセンスの供与である場合〉  ライセンス期間にわたり存在する企業の知的財産にアクセスする権利か、ライセンスが供与される時点で存在する企業の知的財産を使用する権利かを検討したか。  ライセンス期間にわたり存在する企業の知的財産にアクセスする権利の場合、一定の期間にわたり充足される履行義務として会計処理したか。  ライセンスが供与される時点で存在する企業の知的財産を使用する権利の場合、その一時点で充足される履行義務として会計処理したか。 【ライセンスの性質】 以下の(1)から(3)のすべてに該当する場合、「ライセンス期間にわたり存在する企業の知的財産にアクセスする権利」に該当する。いずれかに該当しない場合は、「ライセンスが供与される時点で存在する企業の知的財産を使用する権利」に該当する。 (1)顧客が権利を有している知的財産に著しく影響を与える活動を企業が行うことが、契約により定められている又は顧客により合理的に期待されていること (2)顧客が権利を有している知的財産に著しく影響を与える企業の活動により、顧客が直接的に影響を受けること (3)顧客が権利を有している知的財産に著しく影響を与える企業の活動の結果として、企業の活動が生じたとしても、財又はサービスが顧客に移転しないこと 同上 売上高又は使用量に基づくロイヤルティ 知的財産のライセンス供与に対して受け取る売上高又は使用量に基づくロイヤルティが知的財産のライセンスのみに関連しているか、あるいは当該ロイヤルティにおいて知的財産のライセンスが支配的な項目であるか。 同上 売上高又は使用量に基づくロイヤルティ 〈上記28に該当する場合〉 当該売上高又は使用量に基づくロイヤルティについて、以下の(1)又は(2)のいずれか遅い方で、収益を認識したか。 (1)知的財産のライセンスに関連して顧客が売上高 を計上する時又は顧客が知的財産のライセンスを使用する時 (2)売上高又は使用量に基づくロイヤルティの一部又は全部が配分されている履行義務が充足(又は部分的に充足)される時 同上 買戻契約 「企業が商品・製品を買い戻す義務(先渡取引)、企業が商品・製品を買い戻す権利(コール・オプション)」を有しているか(下記31を検討)、又は「企業が顧客の要求により商品・製品を買い戻す義務(プット・オプション)」を有しているか(下記32を検討)検討したか。 - 買戻契約 〈先渡取引及びコール・オプションの場合〉 買戻契約が先渡取引及びコール・オプションの場合、リース取引又は金融取引として会計処理したか。 - 買戻契約 〈プット・オプションの場合〉 買戻契約がプット・オプションの場合、リース取引、金融取引又は返品権付きの販売として会計処理したか。 - 有償支給取引  有償支給取引があるか検討したか。  支給品を買い戻す義務を負っているかどうか検討したか(下記34又は35を検討)。 ・製造業における下請けへの部品加工依頼 有償支給取引 〈支給品を買い戻す義務を負っていない有償支給取引の場合〉 支給品を買い戻す義務を負っていない場合、収益を認識せず、支給品の消滅を認識したか。 同上 有償支給取引 〈支給品を買い戻す義務を負っている有償支給取引の場合〉 支給品を買い戻す義務を負っている場合、収益を認識せず在庫を計上し続けているか(なお、連結財務諸表では、支給品の消滅を認識せず在庫を計上するが、個別財務諸表では、支給品の消滅を認識することができる)。 同上 委託販売契約  委託販売契約があるか検討したか。  委託販売契約がある場合、委託先が最終顧客に販売した時に収益を認識したか。 - 請求済未出荷契約  請求済未出荷契約があるか検討したか。  請求済未出荷契約の収益認識時期が妥当であるか検討したか。  残存履行義務(商品又は製品販売後の保管サービスの提供等)があるか検討したか。 - 全般 収益基準及び収益指針の適用に当たり、重要性を考慮したか。 - 全般 自社の経営者及び経理・営業・システム・総務担当者等に対して収益基準及び収益指針の研修又は説明を行ったか。 - 全般 子会社及び関連会社においても検討したか。 - 全般 監査人の残高確認手続において、確認状(確認書)への金額の記載をどのように行うか検討したか。 - 全般 収益基準及び収益指針の適用により、売上や利益が変動し、連結の範囲の変更が必要ないか検討したか。 - 全般  収益の認識時期等の変更による内部統制の変更が必要ないか検討したか。  社内の規程の変更が必要ないか検討したか(例えば、経理、賞与、ストック・オプション、株式給付信託制度等)。 - 全般 〈内部統制監査を受けている場合〉 収益基準及び収益指針の適用により、売上や利益が変動し、内部統制の評価範囲の変更が必要ないか検討したか。 - 全般  予算等の社内資料の変更が必要ないか検討したか。  予算等の変更により、繰延税金資産の回収可能性、固定資産の減損等への影響がないか検討したか。 - 法人税・税効果  収益基準及び収益指針の適用後の法人税における調整項目を把握したか(法人税法は改正され、会計と法人税は基本的に一致しているため、上記「2 会計方針の変更の取扱い」の「容認処理」を採用している場合、調整項目が多く出ることは想定されない。一方、「原則処理」を採用し、過年度の処理について遡及処理している場合、調整項目が相当程度、発生することが想定される)。  税効果への影響を検討したか。 - 消費税  会計処理の単位(履行義務単位)と消費税の課税標準の単位(取引・契約単位)が異なる取引について、会計処理用のデータと消費税用のデータの両方を管理できるようにしているか。  変動対価の見積りがある取引について、会計処理用のデータ(変動対価の見積り必要)と消費税用のデータ(変動対価の見積り不可)の両方を管理できるようにしているか。 (消費税法は収益基準及び収益指針に応じて改正されていないため、会計と消費税で異なる点が多く発生する可能性がある) ・ポイント ・代理人取引における純額処理 ・取引価格を複数の履行義務へ配分した場合 ・返品権付き販売 ・重要な金融要素が含まれる取引 ・変動対価 借入 財務制限条項等に抵触しないか検討したか

 

【参考】 ASBJホームページ

(了)

【後編】は6/17に掲載されます。

新収益認識基準適用にあたっての総復習ポイント

【前編】

 

RSM清和監査法人
公認会計士 西田 友洋

 

ASBJより2018年3月30日に企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準(以下、「収益基準」という)」及び企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針(以下、「収益指針」という)」が公表された。

その後、収益基準及び収益指針は2020年3月31日に改正され表示科目、注記事項が明確になった。さらに、収益指針は2021年3月26日に改正され、電気事業及びガス事業において検針日基準による収益認識を認めない旨が明らかになった。

 

1 適用時期

収益基準及び収益指針は、原則、2021年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用される(収益基準81)。

 

2 会計方針の変更の取扱い

収益基準及び収益指針の適用は、「会計基準等の改正に伴う会計方針の変更」として取り扱われる(収益基準84)。

〔原則〕

新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用する。

なお、下記(1)の簡便的な処理が認められている。

〔容認〕

適用初年度の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の適用初年度の累積的影響額を、適用初年度の期首の利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用することができる

なお、下記(2)の簡便的な処理が認められている。

(1) 原則処理に従って収益基準及び収益指針を適用する場合

原則処理に従って遡及適用する場合、以下のからの方法の1つ又は複数を適用することができる(収益基準85)。

 適用初年度の前事業年度の期首より前までに従前の取扱いに従ってほとんどすべての収益の額を認識した契約は、適用初年度の前事業年度の財務諸表及び四半期(又は中間)財務諸表(注記事項を含む)(合わせて「適用初年度の比較情報」という)を遡及的に修正しない。

 適用初年度の期首より前までに従前の取扱いに従ってほとんどすべての収益の額を認識した契約に変動対価が含まれる場合、当該契約に含まれる変動対価の額について、変動対価の額に関する不確実性が解消された時の金額を用いて適用初年度の比較情報を遡及的に修正する。

 適用初年度の前事業年度内に開始して終了した契約について、適用初年度の前事業年度の四半期(又は中間)財務諸表を遡及的に修正しない。

 適用初年度の前事業年度の期首より前までに行われた契約変更について、すべての契約変更を反映した後の契約条件に基づき、以下の(ⅰ)から(ⅲ)の処理を行い、適用初年度の比較情報を遡及的に修正する。

(ⅰ) 履行義務の充足分及び未充足分の区分

(ⅱ) 取引価格の算定

(ⅲ) 履行義務の充足分及び未充足分への取引価格の配分

(2) 容認処理に従って収益基準及び収益指針を適用する場合

① 全般的な取扱い

容認処理に従って適用する場合、適用初年度の期首より前までに従前の取扱いに従ってほとんどすべての収益の額を認識した契約に、新たな会計方針を遡及適用しないことができる(収益基準86)。

② 契約変更

容認処理に従って適用する場合、契約変更について、以下の(ⅰ)又は(ⅱ)のいずれかを適用し、その累積的影響額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減することができる(収益基準86)。

(ⅰ) 適用初年度の期首より前までに行われた契約変更について、すべての契約変更を反映した後の契約条件に基づき、上記(1)(ⅰ)から(ⅲ)の処理を行う。

(ⅱ) 適用初年度の前事業年度の期首より前までに行われた契約変更について、すべての契約変更を反映した後の契約条件に基づき、上記(1)(ⅰ)から(ⅲ)の処理を行う。

【IFRS及び米国会計基準を適用している場合(収益基準87)】

IFRS又は米国会計基準を連結財務諸表に適用している企業(又はその連結子会社)が当該企業の個別財務諸表に収益基準及び収益指針を適用する場合、適用初年度において、IFRS 第15号「顧客との契約から生じる収益」又はFASB Accounting Standards CodificationのTopic 606「顧客との契約から生じる収益」のいずれかの経過措置の定めを適用することができる。

また、収益基準第84項から第86 項の定め(上記参照)にかかわらず、IFRS を連結財務諸表に初めて適用する企業(又はその連結子会社)が当該企業の個別財務諸表に収益基準及び収益指針を適用する場合、適用初年度において、IFRS第1号「国際財務報告基準の初度適用」における経過措置に関する定めを適用することができる。

3月決算の会社においては、進行期の期首(4月1日)から適用されるため、第1四半期より適用する必要がある。そこで、今回は、新収益認識基準適用にあたっての総復習として、2回にわたって新収益認識基準のポイントを解説する。【前編】の今回は「会計処理」について解説し、次回の【後編】では「開示」について解説する。

 

3 会計処理の総復習ポイント

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会計方針の取扱い 新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用するか、適用初年度の期首の利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用するか(下記2を検討)を決定したか。 - 会計方針の取扱い 〈新たな会計方針を適用初年度の期首の利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用した場合〉  収益基準及び収益指針適用前の取引について、新基準に従って会計処理しなければいけない取引はないか検討したか。  短信、事業報告書、有価証券報告書及び四半期報告書の経理の状況より前の記載において、前期比較を用いて損益の状況を説明する場合、収益基準及び収益指針の適用による影響を記載したか。 - 【STEP1】 契約の識別  同一の顧客(当該顧客の関連当事者を含む)と同時又はほぼ同時に締結した複数の契約で、複数の契約を結合し、単一の契約とみなして会計処理するものがないか検討したか。  関連当事者の範囲を検討したか。  「同時又はほぼ同時」の時期を検討したか。 ・商品又は製品の販売契約と保守サービス契約を同時に締結 ・ソフトウェアのライセンス販売とカスタマイズサービス契約を同時に締結 ・工事契約を複数に分けている場合 【STEP1】 契約の識別 契約の結合の代替的な取扱いを検討したか。 【代替的な取扱い】  以下の(1)及び(2)のいずれも満たす場合、複数の契約を結合しないことができる。 (1)顧客との個々の契約が当事者間で合意さ れた取引の実態を反映する実質的な取引 の単位であると認められること (2)顧客との個々の契約における財又はサービ スの金額が合理的に定められていることによ り、当該金額が独立販売価格と著しく異な らないと認められること  工事契約及び受注制作のソフトウェアで、当事者間で合意された実質的な取引の単位を反映するように複数の契約(異なる顧客と締結した複数の契約や異なる時点に締結した複数の契約を含む)を結合した際の収益認識の時期及び金額と、当該複数の契約について結合しない場合の収益認識の時期及び金額との差異に重要性が乏しいと認められる場合、複数の契約を結合し、単一の履行義務として識別することができる。 ・受注製作のソフトウェアで契約を複数に分けている場合 ・ビル工事で、各テナントごとに工事契約を締結している場合(各テナントは関連当事者ではない) 【STEP1】 契約の識別 契約の変更がある場合、どの会計処理にする必要があるか検討したか。 【契約変更の会計処理】 (1)元々の契約と変更契約が実質的に独立した契約である場合 元々の契約と変更契約を、それぞれ独立した(別の)契約として会計処理する。 (2)元々の契約と変更契約が実質的に独立した契約ではない場合 (ⅰ)元々の契約を解約し、新たな契約を締結したものと仮定して会計処理する。 (ⅱ)契約変更を元々の契約の一部と仮定して会計処理する。 (ⅲ)上記(ⅰ)と(ⅱ)の組み合わせ 【重要性が乏しい場合】 契約変更による財又はサービスの追加が既存の契約内容に照らして重要性が乏しい場合、上記(1)、(2)(ⅰ)及び(ⅱ)のいずれの方法を適用することができる。 ・契約範囲の変更 ・契約価格の変更 ・追加工事、サービス追加に伴う契約の追加 ・仕様変更 【STEP2】 履行義務の識別 契約(複数の契約を結合した後の契約群も含む)の中に複数の履行義務がないか検討したか。 【重要性が乏しい場合】 約束した財又はサービスが、顧客との契約の観点で重要性が乏しい場合、当該約束を履行義務として識別しないことができる。 【出荷及び配送活動】 顧客が商品又は製品に対する支配を獲得した後に行う出荷及び配送活動については、履行義務として識別しないことができる。 ・一括請負契約 ・ソフトウェアライセンスの販売と各種サービス(インストールサービス、ソフトウェアアップデート、テクニカルサポートなど)の提供 ・設備の販売と据付サービスの提供 ・財又はサービスの提供とそれに対する保証 ・特許権のライセンス供与と製造サービスの提供 ・フランチャイズのライセンス供与と設備の提供 ・請求済未出荷契約 【STEP3】 取引価格の算定 取引価格に第三者のために回収する額が含まれていないか検討したか。 ・消費税 ・たばこ税 【STEP3】 取引価格の算定  取引価格に変動対価がないか検討したか。  変動対価の見積り方法を検討したか。 ・値引き ・リベート ・販売手数料 ・インセンティブ ・仮単価、仮価格 ・ペナルティー ・業績に基づく割増金 ・返品権付きの販売、 【STEP3】 取引価格の算定  契約において重要な金融要素がないか検討したか。  重要な金融要素がある場合、金利相当分を除いた現金販売価格で収益を認識したか(割引計算を行ったか)。 【重要性が乏しい場合】 対価の回収期間1年以内であれば金利相当分を調整しないことができる。 【割賦基準での収益認識】 割賦金の回収期限の到来日又は入金日に収益を認識することは認められない。 ・割賦販売 ・長期工事契約 【STEP3】 取引価格の算定  取引価格に現金以外の対価がないか検討したか。  現金以外の対価がある場合、対価を時価により算定したか。 - 【STEP3】 取引価格の算定  顧客に支払われる対価がないか検討したか。  顧客に支払われる対価に変動対価(変動要素)がないか検討したか。  顧客に支払われる対価を売上から控除して会計処理したか。 ・リベート ・販売手数料 ・キャッシュバック ・値引き ・棚代 ・広告宣伝費の補填 ・クーポン、バウチャー ・協賛金 ・売上割引 【STEP4】 履行義務への取引価格の配分  複数の履行義務がある場合、取引価格全体を各履行義務の独立販売価格の比率により各履行義務に配分したか。  独立販売価格をどのように算定又は見積もるかを検討したか。 【独立販売価格】 「独立販売価格」とは、財又はサービスを独立して企業が顧客に販売する場合の価格をいう。 - 【STEP4】 履行義務への取引価格の配分 値引きについて、各履行義務への配分を行ったか。 - 【STEP4】 履行義務への取引価格の配分 変動対価について、各履行義務への配分を行ったか。 - 【STEP4】 履行義務への取引価格の配分 事後的な取引価格の変動について、各履行義務への配分を行ったか(既に充足した履行義務に配分された額については、取引価格が事後的に変動した期に修正を行ったか(反映したか))。 - 【STEP5】 履行義務の充足による収益の認識 一時点で充足される履行義務であるか(下記17を検討)、又は一定の期間にわたり充足する履行義務か(下記18を検討)を検討したか。 - 【STEP5】 履行義務の充足による収益の認識 〈一時点で充足される履行義務の場合〉  顧客に資産に対する支配が移転する時点を検討したか。  国内販売において出荷基準、着荷基準を採用することができるか検討したか。  割賦基準は採用することはできないため、どの時点で収益認識すべきか検討したか。 【出荷基準・着荷基準】 商品又は製品の国内の販売において、出荷時から支配が顧客に移転される時までの期間が通常の期間である場合には、出荷時や着荷時に収益を認識することができる。 ・海外輸出取引 ・出荷基準及び着荷基準取引 ・割賦基準取引 【STEP5】 履行義務の充足による収益の認識 〈一定の期間にわたり充足する履行義務の場合〉  進捗度の測定方法(アウトプット法又はインプット法)をどれにするか決定したか。  アウトプット法及びインプット法の欠点を考慮したか。  契約の初期段階において、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積もることができない場合、原価回収基準(費用と同額の売上を計上する方法)を採用することを検討したか。  工事完成基準を適用する場合、対象工事の範囲(期間、金額等)を決定したか。 【アウトプット法】 例示:生産単位数、引渡単位数等 欠点:履行義務の充足に係る進捗度を見積もるために使用されるアウトプットが直接的に観察できない場合があり、過大なコストをかけないとアウトプット法の適用に必要な情報が利用できない場合がある 【インプット法】 例示:労働時間、発生した費用、かかった時間、機械の使用時間等 欠点:インプットと財又はサービスに対する支配の顧客への移転との間に直接的な関係がない場合がある 【原価回収基準】 契約の初期段階において、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積もることができない場合には、当該契約の初期段階に収益を認識せず(原価回収基準を採用せず)、当該進捗度を合理的に見積もることができる時から収益を認識することができる。 【工事完成基準】 期間がごく短い工事契約及び受注制作のソフトウェアに限り、完全に履行義務を充足した時点で収益を認識することができる。 【毎月の検針による使用量に基づく収益認識】 検針日から決算日までの使用料を見積もり、収益を認識する。 ・工事契約 ・受注制作のソフトウェア ・コンサルティングサービス ・電気又はガス提供契約 本人・代理人 履行義務ごとに「本人」に該当するか、「代理人」に該当するか(下記20を検討)、検討したか。 【本人と判定する際に考慮する指標の例示】 (1)財又はサービスを提供するという約束の履行に対して主たる責任を有しているか。 (2)在庫リスクを有しているか。 (3)財又はサービスの価格の設定において裁量権を有しているか。 ※信用リスクは代理人であるという判定を覆すために利用される可能性があるため、本人の判定の際には考慮しない。 - 本人・代理人 〈代理人に該当する場合〉 売上を純額で会計処理したか(売上と売上原価を相殺したか)。 【本人の場合】 売上と売上原価について、総額で会計処理する。 ・卸売業の直送取引 ・小売業の消化仕入 財又はサービスに対する保証  契約に財又はサービスに対する保証が当該財又はサービスが合意された仕様に従っているという保証(法律で要求されている保証)又は、保証サービス(顧客にサービスを提供する保証)が含まれていないか検討したか。  財又はサービスに対する保証が当該財又はサービスが合意された仕様に従っているという保証(製品保証など)のみである場合、引当金として会計処理したか。  保証サービスがある場合、1つの履行義務として識別することを検討したか。 ・(保証サービス)製品の操作方法について訓練サービスを受ける権利の提供 ・(保証サービス)家電量販店における延長保証 ・(合意された仕様に従っているという保証又は保証サービス)欠陥商品の交換 返品権付き販売  返品権付き販売がないか検討したか。  返品調整引当金は計上できないことを検討したか。  返品されると見込まれる商品・製品の対価については、収益を認識せず、返金負債を認識したか。  返金負債の決済時に顧客から商品・製品を回収する権利について返品資産を認識したか。  正常品と交換するために欠陥のある商品又は製品を顧客が返品することができる契約は、上記21「財又はサービスに対する保証」に従って会計処理したか。 ・出版業 ・音楽業 ・医薬品販売業 追加的な財又はサービスに対する顧客のオプション  顧客との契約において、既存の契約(商品・製品の販売やサービスの提供)に加えて追加の財又はサービスを取得するオプションを顧客に付与する場合、そのオプションが当該契約を締結しなければ顧客が受け取れない重要な権利を顧客に提供するものであるか検討したか。  ポイント等について1つの履行義務(契約負債)として識別したか。  ポイント部分(契約負債)へ取引価格を配分する際に、原価ベースではなく、販売価格ベースで配分したか。 ・ポイント制度 ・販売インセンティブ ・顧客特典クレジット ・契約更新オプション 顧客により行使されない権利(非行使部分)  顧客から企業に、返金が不要な前払いがなされた場合、将来において企業から財又はサービスを受け取る権利が顧客に付与され、企業は当該財又はサービスを移転する(又は移転するための準備を行う)義務を負うが、顧客は当該権利のすべてを行使しない場合があるか検討したか。  顧客により行使されない権利(非行使部分)について、商品券等の販売時点では契約負債を認識し、その後、権利行使のパターンに従い、収益を認識したか。 ・商品券 ・プリペイドカード 返金が不要な契約における取引開始日における顧客からの支払  顧客が契約において取引開始日又はその前後に、返金が不要な支払が必要となる取引があるか検討したか。  顧客からの支払が「約束した財又はサービスの移転を生じさせるものか」、又は「将来の財又はサービスの移転に対するものか」を検討したか。  顧客からの支払が「約束した財又はサービスの移転を生じさせるもの」である場合、その財又はサービスを提供した時点で収益を認識したか。  顧客からの支払が「将来の財又はサービスの移転に対するもの」である場合、将来の財又はサービスを提供する期間にわたり収益を認識したか。 ・スポーツクラブ会員契約の入会手数料 ・ゴルフ場の入会金 ・不動産賃貸における礼金 ・電気通信契約の加入手数料 ・サービス契約のセットアップ手数料 ・供給契約の当初手数料 ライセンスの供与  契約にライセンスの供与が含まれているか検討したか。  ライセンスの供与が他の財又はサービスと別個のものであるかどうか、又は別個のものではなくても1つの履行義務の主要な履行義務がライセンスの供与であるかを検討したか。 ・ソフトウェア ・動画、音楽等のメディアエンターテインメント ・フランチャイズ ・特許権、商標権及び著作権 ライセンスの供与 〈ライセンスを供与する約束が別個のものである場合又は別個のものではなくても、1つの履行義務の主要な履行義務がライセンスの供与である場合〉  ライセンス期間にわたり存在する企業の知的財産にアクセスする権利か、ライセンスが供与される時点で存在する企業の知的財産を使用する権利かを検討したか。  ライセンス期間にわたり存在する企業の知的財産にアクセスする権利の場合、一定の期間にわたり充足される履行義務として会計処理したか。  ライセンスが供与される時点で存在する企業の知的財産を使用する権利の場合、その一時点で充足される履行義務として会計処理したか。 【ライセンスの性質】 以下の(1)から(3)のすべてに該当する場合、「ライセンス期間にわたり存在する企業の知的財産にアクセスする権利」に該当する。いずれかに該当しない場合は、「ライセンスが供与される時点で存在する企業の知的財産を使用する権利」に該当する。 (1)顧客が権利を有している知的財産に著しく影響を与える活動を企業が行うことが、契約により定められている又は顧客により合理的に期待されていること (2)顧客が権利を有している知的財産に著しく影響を与える企業の活動により、顧客が直接的に影響を受けること (3)顧客が権利を有している知的財産に著しく影響を与える企業の活動の結果として、企業の活動が生じたとしても、財又はサービスが顧客に移転しないこと 同上 売上高又は使用量に基づくロイヤルティ 知的財産のライセンス供与に対して受け取る売上高又は使用量に基づくロイヤルティが知的財産のライセンスのみに関連しているか、あるいは当該ロイヤルティにおいて知的財産のライセンスが支配的な項目であるか。 同上 売上高又は使用量に基づくロイヤルティ 〈上記28に該当する場合〉 当該売上高又は使用量に基づくロイヤルティについて、以下の(1)又は(2)のいずれか遅い方で、収益を認識したか。 (1)知的財産のライセンスに関連して顧客が売上高 を計上する時又は顧客が知的財産のライセンスを使用する時 (2)売上高又は使用量に基づくロイヤルティの一部又は全部が配分されている履行義務が充足(又は部分的に充足)される時 同上 買戻契約 「企業が商品・製品を買い戻す義務(先渡取引)、企業が商品・製品を買い戻す権利(コール・オプション)」を有しているか(下記31を検討)、又は「企業が顧客の要求により商品・製品を買い戻す義務(プット・オプション)」を有しているか(下記32を検討)検討したか。 - 買戻契約 〈先渡取引及びコール・オプションの場合〉 買戻契約が先渡取引及びコール・オプションの場合、リース取引又は金融取引として会計処理したか。 - 買戻契約 〈プット・オプションの場合〉 買戻契約がプット・オプションの場合、リース取引、金融取引又は返品権付きの販売として会計処理したか。 - 有償支給取引  有償支給取引があるか検討したか。  支給品を買い戻す義務を負っているかどうか検討したか(下記34又は35を検討)。 ・製造業における下請けへの部品加工依頼 有償支給取引 〈支給品を買い戻す義務を負っていない有償支給取引の場合〉 支給品を買い戻す義務を負っていない場合、収益を認識せず、支給品の消滅を認識したか。 同上 有償支給取引 〈支給品を買い戻す義務を負っている有償支給取引の場合〉 支給品を買い戻す義務を負っている場合、収益を認識せず在庫を計上し続けているか(なお、連結財務諸表では、支給品の消滅を認識せず在庫を計上するが、個別財務諸表では、支給品の消滅を認識することができる)。 同上 委託販売契約  委託販売契約があるか検討したか。  委託販売契約がある場合、委託先が最終顧客に販売した時に収益を認識したか。 - 請求済未出荷契約  請求済未出荷契約があるか検討したか。  請求済未出荷契約の収益認識時期が妥当であるか検討したか。  残存履行義務(商品又は製品販売後の保管サービスの提供等)があるか検討したか。 - 全般 収益基準及び収益指針の適用に当たり、重要性を考慮したか。 - 全般 自社の経営者及び経理・営業・システム・総務担当者等に対して収益基準及び収益指針の研修又は説明を行ったか。 - 全般 子会社及び関連会社においても検討したか。 - 全般 監査人の残高確認手続において、確認状(確認書)への金額の記載をどのように行うか検討したか。 - 全般 収益基準及び収益指針の適用により、売上や利益が変動し、連結の範囲の変更が必要ないか検討したか。 - 全般  収益の認識時期等の変更による内部統制の変更が必要ないか検討したか。  社内の規程の変更が必要ないか検討したか(例えば、経理、賞与、ストック・オプション、株式給付信託制度等)。 - 全般 〈内部統制監査を受けている場合〉 収益基準及び収益指針の適用により、売上や利益が変動し、内部統制の評価範囲の変更が必要ないか検討したか。 - 全般  予算等の社内資料の変更が必要ないか検討したか。  予算等の変更により、繰延税金資産の回収可能性、固定資産の減損等への影響がないか検討したか。 - 法人税・税効果  収益基準及び収益指針の適用後の法人税における調整項目を把握したか(法人税法は改正され、会計と法人税は基本的に一致しているため、上記「2 会計方針の変更の取扱い」の「容認処理」を採用している場合、調整項目が多く出ることは想定されない。一方、「原則処理」を採用し、過年度の処理について遡及処理している場合、調整項目が相当程度、発生することが想定される)。  税効果への影響を検討したか。 - 消費税  会計処理の単位(履行義務単位)と消費税の課税標準の単位(取引・契約単位)が異なる取引について、会計処理用のデータと消費税用のデータの両方を管理できるようにしているか。  変動対価の見積りがある取引について、会計処理用のデータ(変動対価の見積り必要)と消費税用のデータ(変動対価の見積り不可)の両方を管理できるようにしているか。 (消費税法は収益基準及び収益指針に応じて改正されていないため、会計と消費税で異なる点が多く発生する可能性がある) ・ポイント ・代理人取引における純額処理 ・取引価格を複数の履行義務へ配分した場合 ・返品権付き販売 ・重要な金融要素が含まれる取引 ・変動対価 借入 財務制限条項等に抵触しないか検討したか

 

【参考】 ASBJホームページ

(了)

【後編】は6/17に掲載されます。

連載目次

新収益認識基準適用にあたっての総復習ポイント

【前編】 ★無料公開中★

1 適用時期

2 会計方針の変更の取扱い

(1) 原則処理に従って収益基準及び収益指針を適用する場合

(2) 容認処理に従って収益基準及び収益指針を適用する場合

3 会計処理の総復習ポイント

【後編】

4 四半期決算におけるポイント

(1) 表示の総復習ポイント

(2) 注記の総復習ポイント

5 年度決算におけるポイント

(1) 表示の総復習ポイント

(2) 注記の総復習ポイント

《注記事項のまとめ》

筆者紹介

西田 友洋

(にしだ・ともひろ)

史彩監査法人 パートナー
公認会計士

2007年10月に準大手監査法人に入所。2019年8月にRSM清和監査法人に入所。2022年2月に史彩監査法人に入所。
主に法定監査、上場準備会社向けの監査を中心に様々な業種の会計監査業務に従事する。また、会社買収に当たっての財務デューデリジェンス、IPOを目指す会社への内部統制コンサル及び短期調査、収益認識コンサル実績もある。
他に、決算留意事項セミナーや収益認識セミナー等の講師実績もある。

【日本公認会計士協会委員】
監査・保証基準委員会 委員(現任)
監査・保証基準委員会 起草委員会 起草委員(現任)
中小事務所等施策調査会 「監査専門委員会」専門委員(現任)
品質管理基準委員会 起草委員会 起草委員
中小事務所等施策調査会 「SME・SMP対応専門委員会」専門委員
監査基準委員会「監査基準委員会作業部会」部会員

【書籍】
「図解と設例で学ぶ これならわかる連結会計」(共著/日本実業出版社)等

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