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国際課税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

国際課税レポート 【第9回】「現役世代の「タックス・フリーダム・デイ」」~「手取り」と企業の「雇用コスト」~

国際課税レポート 【第9回】 「現役世代の「タックス・フリーダム・デイ」」 ~「手取り」と企業の「雇用コスト」~   税理士 岡 直樹 (公財)東京財団政策研究所主任研究員   5月13日は何の記念日か 税に関し、5月13日は何の記念日だろうか。 税の専門家である読者の皆さんでもすぐにはピンとこないかもしれないが、2024年5月13日は日本の「タックス・フリーダム・デイ」である。 これは、平均的な収入を得た日本の労働者が、その年に支払わなければならない所得税、社会保険料、そして消費税を支払い終えるためには、1月1日から何日までかかるかを示す指標だ。社会保険料には、雇用主負担分も含められている。非営利の研究機関であるフランスのモリナリ経済研究所とアメリカのソロス財団が公表している(他のシンクタンク等からも同様の指標が公表されている)。 この日を過ぎてからの収入、すなわち、5月14日以降の収入は全額が“手取り”であり、自分のために使うことができるようになる。 税や社会保険料負担を示す指標として、「国民負担率」が知られている。令和6年度の国民負担率(見通し)は、45.1%、国民負担に財政赤字を加えた潜在的な国民負担率は、50.9%となる見通しとされている(※)。 (※) 財務省「令和6年度の国民負担率を公表します」参照 国民負担率が、国民全体でみた税と社会保険料負担の金額の国民所得(国内に住む人々が国内・国外で得た所得の合計)に対する比率を示すものであるのに対し、タックス・フリーダム・デイは現役世代(被雇用者)の平均的な収入に対する税・社会保険料負担をより実態に近い形で示しており、国際比較を行うこともできる。 また、OECDは、雇用コストに対する税・社会保険料の負担割合を「税のくさび」(Tax wedge)として捉え、公表している。こちらは、収入から、税のくさびを差し引くことで手取りの割合を求めることができる。 以下では、現役世代(労働者)の負担に関する国際的な指標である「タックス・フリーダム・デイ」と「手取り割合(税のくさび)」を紹介することとしたい。   タックス・フリーダム・デイの国際比較 タックス・フリーダム・デイは、同じ条件で各国の税・社会保障負担について国際比較することにより、税、社会保障政策を構想するうえでの参考に資することを目的の1つとしている。下記の【表1】に、G7各国の状況を紹介する。 【表1】 タックス・フリーダム・デイ(2024) (出所) モリナリ経済研究所(仏)、ソロス財団(米)「The Tax Burden on Global Workers」(2024)8頁を基に筆者作成 【表1】からは、イギリスを除く欧州各国のタックス・フリーダム・デイは7月と遅く(負担が重いことを意味する)、アメリカは4月と早い(負担が軽い)ことが分かる。イギリス、カナダは5月初め、日本は5月中旬になっている。   「手取り」割合の国際比較 OECDは、企業の雇用コスト(被雇用者の給与の額及び社会保険料雇用主負担分の額)に対する税・社会保険料(雇用者・被用者分)の負担割合を「税のくさび」(Tax wedge)と呼び、単身者と子育てカップル(子ども2人)別に示している。 企業の雇用コストから税のくさびを控除したものが「手取り」であると観念し、企業の雇用コストに対する労働者の手もとに残る割合(%)を整理すると下記【表2】のようになる。 【表2】 平均的な労働コストに対する手取り割合%(2023) (注) 共稼ぎの場合、子育てカップル(子ども2人)のうち1人は平均的な給与の額の67%の収入があるものとしている。 (出所) OECD「Taxing Wages 2024」より筆者作成 これによると、いずれのタイプの納税者も、最も手取り割合が大きいのはアメリカで、企業の雇用コストの7割(単身者)から8割(片稼ぎの子育てカップル)が手もとに残っている。 一方、手もとに残る割合が低いのはフランス及びドイツであり、単身者の場合は約5割、子育てカップルの場合でも6割程度しか手もとに残らない。 日本の手取り割合は67%(単身者)から72%(片稼ぎの子育てカップル)であり、7割程度は手もとに残っている。手もとに残る割合はおおむねOECD平均並みとなっている。   雇用主負担分の社会保険料・VAT負担の考慮 被雇用者の給与の額(Gross salary)から税・社会保障を控除した金額が差し引かれ、残りが”手取り“となる。 しかし、給与支払明細書に記載されるこれらの金額のほかに、給与支払明細書に記載はないが、雇用主が負担する社会保険料等の雇用主負担分がある。 タックス・フリーダム・デイを公表しているモリナリ経済研究所(仏)、ソロス財団(米)は、給与総額(税引き前給与の額)に雇用主負担分の社会保険料を加えた金額を「実質給与総額」(Real Gross Saraly)と呼んでいる。これは、雇用者からみた労働者1人を雇用するためのコストである。 G7各国における「実質給与総額」(企業が労働者1人を雇用するためのコスト)と、被雇用者にとっての「手取り」(給与額面から被用者負担の税・社会保険料を控除した金額)を下記【表3】に示す。 【表3】 実質給与総額と手取り(2024) (単位:USD) (注) アメリカについては、州による課税(所得税、小売売上税)がある。人口の多い州Top5州の平均税率を用いている。【表4】において同じ。 (出所) モリナリ経済研究所(仏)、ソロス財団(米)「The Tax Burden on Global Workers」(2024)10頁を基に筆者作成 さらに、手取り金額から納税者が負担するVATの金額(推計)を控除した金額を、「実質純給与の金額」としている。 【表4】 VAT負担の考慮とタックス・フリーダム・デイ (出所) モリナリ経済研究所(仏)、ソロス財団(米)「The Tax Burden on Global Workers」(2024)10頁を基に筆者作成 各項目の計算方法の概要は次のとおり。   雇用のためのコスト 最後に、企業が労働者1人を雇用するために必要なコストである「実質給与総額」の金額のランキングを下記【表5】で紹介する。 【表5】 労働者1人あたりの雇用コスト(米ドル)のランキング(2024) (注) 平均的な給与の額(OECDによる)に、雇用主の社会保険料負担を加えた金額。2023年7月17日の換算レートで米ドルに換算。 (出所) モリナリ経済研究所(仏)、ソロス財団(米)「The Tax Burden on Global Workers」(2024)16頁を基に筆者作成 この表からは、日本は雇用のためのコストはG7の中で最も低いことが分かる。 その理由だが、実質給与総額に占める雇用者負担の社会保険料の割合は、わが国が16.6%であり、フランスの43%やイタリアの30%の半分程度だが、11.5%のイギリスや7.6%のアメリカよりは高い(負担割合は、【表3】において②社会保険料(雇用者)の①実質給与総額に対する割合をいう)。 したがって、労働コストが低い理由は雇用主の社会保険料負担が少ないからではなく、そもそもわが国の賃金が低いことに由来したものである。わが国の1人あたり給与総額は3万6,000ドル程度で、6万ドル以上の米国、ドイツ、カナダの3分の2以下であり、ドルベースで見た場合、G7諸国の中で最低となっている。   まとめ わが国では、現在、「103万円の壁」、「106万円の壁」など、一定の所得金額を超えると税や社会保険料の納付義務が生じたり、扶養から外れたりする金額基準の在り方について議論がなされている。 この議論は、給与明細に記載される給与の額から控除される金額を減らすことにより”手取り”を増やす方法の在り方に注目したものであるが、本稿で紹介したように、国際的な議論では雇用主の雇用コスト、労働者の手取り(take-home-pay)の両方に注目した指標が参照されている。 被用者や雇用主が負担する社会保険料は、現在及び将来における給付(特に厚生年金)につながるものである。タックス・フリーダム・デイの計算においては、給付が考慮されていない点について批判がある。しかし、税・社会保障負担の在り方の検討にあたり、勤労世代の負担の全体像を捉えるうえで有用な指標の1つとなりうることを示唆していると言えるだろう。 (了)
#598(掲載号)
#岡 直樹
2024/12/12
税務 税務・会計 解説 解説一覧 財産評価

Q&Aでわかる〈判断に迷いやすい〉非上場株式の評価 【第49回】「〔第5表〕直前期末方式、直前期末修正法、直後期末方式の選択と適用の検討」

Q&Aでわかる 〈判断に迷いやすい〉非上場株式の評価 【第49回】 「〔第5表〕直前期末方式、直前期末修正法、直後期末方式の選択と適用の検討」   税理士 柴田 健次   Q 経営者甲(令和6年10月20日相続開始)が100%所有している甲株式会社の株式を長男が相続しています。甲株式会社は、令和5年に取引先の重大な過失により損害が発生し、同年11月1日に損害賠償請求権として50,000千円の金員を受領することで和解が成立しています。取引先は資金の準備に時間を要したため、実際に支払いが行われたのは、令和6年5月1日です。甲株式会社は、直前期末において損害賠償金の権利について処理は行わず、受領した時において雑収入として計上しています。 甲株式会社は12月決算で直前期末は令和5年12月31日となり、同日における帳簿上の純資産価額は200,000千円です。なお、直後期末の令和6年12月31日時点における帳簿上の純資産価額は260,000千円です。 この場合に、甲の相続税の甲株式会社の株式価額の算定上、第5表「1株当たりの純資産価額(相続税評価額)の計算明細書」における相続税評価額による純資産価額及び帳簿価額による純資産価額は、それぞれいくらになりますか。 なお、直前期末及び直後期末における帳簿上の純資産価額には、含み損益はないものとします。また、甲株式会社は、売上の管理を月単位で行っているため、仮決算方式での算定は困難であり、課税時期から直後期末までの間における資産及び負債の著しい変動はないものとします。 A 第5表「1株当たりの純資産価額(相続税評価額)の計算明細書」の相続税評価額及び帳簿価額による純資産価額は、下記《A案》、《B案》及び《C案》が考えられます。 本問の場合には、直前期末から課税時期までの間に資産及び負債について著しい変動があるため《A案》は認められず、《B案》及び《C案》については、仮決算方式との整合性を考慮したものとして、それぞれ認められるものと思料されます。 《A案》直前期末方式 《B案》直前期末修正法 (※) 200,000千円+50,000千円-50,000千円×37%=231,500千円 《C案》直後期末方式  ◆  ◆  ◆ ① 仮決算方式と直前期末方式 第5表の純資産価額の計算は、原則として仮決算方式で評価するべきこととされていますが、評価会社が課税時期において仮決算を行っていないため、課税時期における資産及び負債の金額が明確でない場合において、直前期末から課税時期までの間に資産及び負債について著しく増減がなく評価額の計算に影響が少ないと認められるときは、直前期末方式により計算することができるものとされています。 したがって、直前期末から課税時期までの間に資産及び負債について著しく増減がある場合については、直前期末方式により計算ができません。 仮決算方式と直前期末方式を比較すると下記の通りとなります。 (※) 帳簿価額は、会計上の帳簿価額ではなく税務上の帳簿価額となります。   ② 直後期末方式 実務上においては、評価会社が課税時期において仮決算を行っていないことが多いため、直前期末方式で計算することが一般的となりますが、課税時期が直後期末に近く、かつ、課税時期から直後期末までの間の資産及び負債の著しい増減がないと認められる場合には、直後期末の資産及び負債の帳簿価額で計算することも認められます。 平成25年10月22日の東京地裁判決(TAINSコード:Z263-12314)は、下記のとおり課税庁が直後期末方式により純資産価額を計算した数値について瑕疵があるとはいえないと判断し、直後期末方式を認めた事例です。   ③ 直前期末修正法 直前期末から課税時期までの間に資産及び負債について著しく増減がある場合については、直前期末方式により計算ができないため、仮決算方式を採用することが原則的な取扱いとなります。ただし、仮決算を行わなくても、直前期末の数値を修正することで直前期末から課税時期までの資産及び負債の変動を考慮できる場合には、そのような方法(以下「直前期末修正法」という)も認められるものと考えられます。 国税不服審判所平成27年3月4日裁決(TAINSコード:F0-3-417)は、直前期末修正法を採用した事例です。直前期末から課税時期までの間に債務免除が行われた場合には、直前期末の数値は債務免除の金額が考慮されていないため、債務免除の金額を考慮して純資産価額を算定するべきとして、下記のとおり判断しています。 (下線部は筆者による)   ④ 損害賠償金の益金算入時期 他の者から支払いを受ける損害賠償金の益金算入時期は、原則としてその支払いを受けるべきことが確定した日の属する事業年度の益金の額に算入するとされていますが、法人がその損害賠償金の額について実際に支払いを受けた日の属する事業年度の益金の額に算入している場合には、これを認めるとされています(法基通2-1-43)。   ⑤ 本問の場合の当てはめ 本問の場合には、直前期末から課税時期までの間に資産の大きな変動がありますので、直前期末方式《A案》は認められないことになります。そして、仮決算方式が困難であり、かつ、課税時期から直後期末までの間における資産及び負債の著しい変動もない状況ですので、直後期末方式《C案》も認められるものと考えられます。 また、直前期末の数値を修正することで直前期末から課税時期までの資産及び負債の変動を考慮できる直前期末修正法《B案》も合理的なものとなりますので認められるものと考えられます。 ただし、納税者側が《B案》で当初申告したことに対して、課税庁が《C案》で増額更正処分をすることは、法的な根拠がない課税処分であるため、認められるべきものではないものと思料されます。 なお、《B案》の場合に損害賠償金に対する法人税額等相当額を負債に計上することが可能かについて疑問が生じますが、損害賠償請求権の帳簿価額をどのように処理するかによって、控除の可否が決定します。 すなわち、下記《B案》の場合には損害賠償金に対する法人税額等相当額の負債計上が認められると考えられますが、下記《B´案》の場合には、法人税額等相当額を負債計上できません。 《B案》 《B´案》 《B案》の考え方は、評価会社が仮決算を行っていないため、課税時期の直前期末における資産及び負債を基として1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)を計算する場合における損害賠償金に対応する法人税額等は、仮決算方式との整合性を図るため、負債に計上するべきとするものです。考え方としては本連載【第25回】で解説した保険差益に対する法人税額等の計上と同様です。 《B´案》の場合には、相続税評価額と帳簿価額の差額50,000千円が生じていますので、下記のとおり第5表の⑧欄で法人税額等相当額の控除がされます。 《B案》の場合も《B´案》の場合も最終的な1株当たりの純資産価額は同額となります。 ただし、本問の場合には、課税時期時点において損害賠償金に対する雑収入が発生していますので、仮決算方式との整合性を考慮し、上記《B案》の考え方が相当となります。   ☆実務上のポイント☆ 直前期末から課税時期までの間に資産及び負債の著しい変動がある場合には、原則として仮決算方式で計算することになりますが、例外処理として直前期末修正法、直後期末方式があります。いずれの方法でも仮決算方式との整合性を考慮する必要があります。 (了)
#598(掲載号)
#柴田 健次
2024/12/12
消費税・地方消費税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

〈適切な判断を導くための〉消費税実務Q&A 【第4回】「ポイント負担金が課税仕入れに該当するか否かの判断の要点」

〈適切な判断を導くための〉 消費税実務Q&A 【第4回】 「ポイント負担金が課税仕入れに該当するか否かの判断の要点」   税理士 石川 幸恵   【Q】 私は美容室を経営しており、集客のために美容関連の予約サイトを利用しています。この予約サイトは共通ポイント制度と連携しており、消費者がサイト経由で予約し、来店すると、施術料金に応じた共通ポイントがポイント運営会社から消費者に付与されます。付与されたポイント相当額は「ポイント負担金」という名目で、当店にポイント運営会社から請求されます。 このポイント負担金は、消費者が予約サイトを使ったことで生じ、施術料金に応じて金額が決まりますので、実質的には予約サイトやポイントプログラムの利用料であり、消費税の課税仕入れといえるのではないでしょうか。しかし、国税庁ホームページの解説では「ポイント負担金は対価性がない」ことを前提とした処理を紹介しており、実際にポイント運営会社からの請求明細にも消費税は記載されていません。なぜ「ポイント負担金は対価性がない」とされるのでしょうか。理由を教えてください。 【A】 美容室の経営を行う法人(請求人)が、ポイント負担金は課税仕入れに係る支払対価の額に該当するとして消費税等の更正の請求を行いましたが、原処分庁は更正をすべき理由がない旨の通知処分を行ったことから、請求人が国税不服審判所にその全部の取消しを求めた事案があります(国税不服審判所令和3年10月7日裁決(TAINSコード:F0-5-368))。 審判所はポイント運営会社における経理処理や利用約款等の記載事項を検討し、ポイント負担金は個別具体的な課税資産の譲渡等が行われたことを条件として支払われたといい得る対応関係があるとは認められないから、課税仕入れに係る支払対価の額に該当しないと判断しています。 ◆ ◆ 解 説 ◆ ◆ 令和5年10月に適格請求書等保存方式(インボイス制度)が導入されたことにより、ある支払いが「課税の対象なのか」「税率は標準税率か軽減税率か」という点は、適格請求書により売手から買手に正確に伝えられるようになり、判断に迷うことは少なくなった。 しかし、共通ポイント制度のように比較的新しく、しかも急拡大しているような取引においては、今後、異なる判断が出てくる可能性もあるので、適格請求書の記載事項のみに依拠するのは危険である。本稿では、裁決事例を基にポイント負担金が課税仕入れに該当するかどうかについて、本稿執筆時点での考え方を整理する。   (1) 共通ポイント制度におけるポイント負担金の基本的な仕組み 共通ポイント制度はポイント運営会社、ポイント制度の加盟店、ポイントを利用する消費者の三者が関係する取引である。前回は顧客がポイントを利用した際のお金の流れについて整理したが、今回は消費者にポイントが付与される際のお金とポイントの流れを整理してみよう。 ※国税庁ホームページ「共通ポイント制度を利用する事業者(加盟店A)及びポイント会員の取引の概要」を基に筆者加工 裁決事例では予約サイトを使った取引であるが、飲食店や小売店で会計の際にポイントカードやアプリを提示して「共通ポイントを貯める」場合も同じ流れである。   (2) 「課税仕入れに係る支払対価の額」の法令解釈 審判所は消費税法第2条第1項第12号「課税仕入れの定義」等に基づいて、課税仕入れについて主に次のように解釈している。 ◆消費税法第2条第1項第12号   (3) ポイント制度の利用約款等の内容によって消費税の課税仕入れに該当するケースとは 審判所は次の点より、ポイント負担金を課税仕入れに係る支払対価の額に該当しないと判断している。 ポイント運営会社の利用約款等にポイント負担金が課税仕入れに該当するかしないかという直接的な記述があることは期待できないので、上記の点に着目し、ポイント負担金が個別具体的な課税資産の譲渡等の対価であるか否かを検討することになろう。   (4) ポイント負担金の性格 審判所は、ポイント負担金は会員に対し付与したポイントの原資とするために加盟店からポイント運営会社に対して支払われたものであると認めている。 また、朝長英樹氏によれば、ポイント運営会社は、会員にポイントを付与した加盟店と会員がポイントを使用した加盟店との間で金銭を授受するためのトンネルのような役割を果たしているのであって、運営会社においてはその金銭の額のいずれもが課税資産の譲渡等の対価の額の授受はないので不課税であると述べている(※)。 (※) 朝長英樹「TKCWEBコラム特別寄稿 共通ポイントの消費税の処理(2023年9月)」   (5) 共通ポイント付与時の処理例 最後に、国税庁ホームページで紹介されているポイント負担金に関する経理処理を確認する。 〈加盟店〉 また、ポイント運営会社の仕訳は国税庁ホームページには紹介されていないが、上記と同様にポイント負担金に対価性がない場合は、次のような仕訳となると考えられる。 〈ポイント運営会社〉 (※) 勘定科目は筆者による例示である。 (了)
#598(掲載号)
#石川 幸恵
2024/12/12
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事例でわかる[事業承継対策]解決へのヒント 【第66回】「先代経営者の相続対策の巻き戻し」

事例でわかる[事業承継対策] 解決へのヒント 【第66回】 「先代経営者の相続対策の巻き戻し」   太陽グラントソントン税理士法人 (事業承継対策研究会) パートナー 税理士 日野 有裕   相談内容 私Xは卸売業Y社の2代目社長です。創業者である先代Zより3年前に事業、株式を引き継ぎ、Zは引退しました。昨年、Zは82歳で亡くなり、遺産分割や相続税の申告等の手続きは無事に終わりました。Zの存命中は詳細に聞くことはできませんでしたが、以下の通り、Y社の株主は分散し、また、複数の子会社があります。 Zと先代の顧問税理士が一緒になって相続対策を進めてきたようで、実際の承継にあたり、会社規模の割に相続税等のコストは低く抑えられたと聞いています。 ただ、私としては非上場会社なので経営に関与しない株主に決算書を見せたくはありません。また、存在理由の分からない複数の子会社の代表取締役に就任しており、本業に集中できませんので整理していきたいと考えています。 ちなみに、私は株主であるJ社及びM氏との面識はありますが、N氏には会ったこともありません。 整理を進めるにあたっての注意点等ありますでしょうか。 ■ □ ■ □ 解 説 □ ■ □ ■ [1] 過去の経緯について 一世代前の非上場会社の相続対策においては、配当還元株主に株式を持ってもらうことにより、相続対象となる株式数を減少させることが頻繁に行われてきました。 ご相談の場合、取引先J社については現状も取引があるとのことなので、急いで買い戻す必要もないと考えられますが、譲渡の経緯や譲渡価格はJ社にヒアリングするなどして、確認しておくのがよいでしょう。 一方、個人株主のM氏やN氏は先代のZ氏と同年代で高齢と思われるため、早急に連絡を取り、譲渡経緯や譲渡価格をヒアリングするとともに、すぐに買戻交渉を行うべきです。 M氏やN氏が死亡すると彼らの相続人と買戻価格交渉を行うことになってしまい、時間やコストがかかる可能性があります。   [2] 株式の集約 株式の購入には、多額の資金が必要となる可能性が高いので、分散した株式は資産管理会社で買い取ることが一般的です。Y社で自己株式として取得することも考えられますが、対象株式が20%あることから安値買取りでの株主間贈与のリスクや、M氏、N氏側でのみなし配当による総合課税となることから今回は考慮しないこととしました。 少数株主(J社、M氏、N氏)から同族株主である資産管理会社C社への譲渡価額の算定は、課税上の弊害がない限り、以下の条件付きで財産評価基本通達178から189-7によることが認められています(法基通9-1-14)。 もし、交渉の結果、上記で算定した株価(例えば100)より低い株価(例えば40)で取得できた場合の課税関係は、以下の通りとなります。   [3] 子会社の整理 子会社の整理については、以下の観点から検討することをお勧めします。 (1) D社 親会社であるY社と取引がなく、今後、Y社に不動産経営を行う意思がないのであれば、Y社によるD社株式の売却を検討すべきです。不動産を個別に売却することも可能ですが、株式として売却したほうが手続きとしては簡便です。 (2) E社 親会社であるY社との取引もあることから、親会社に取り込むか、子会社のままとして存続させるか、以下の観点による検討が必要です。 (3) F社 休眠会社ということであれば、速やかにY社と合併又は解散してしまうのが良いと考えます。解散よりも合併の方が手続き的には簡便ですが、F社の今までの事業内容や財務状況を踏まえて判断することになります。   [4] 結論 一世代前の事業承継対策の結果、株式の分散や子会社が乱立している事例は少なからず見られるところです。業績を伸ばすための対策もあれば、相続対策を目的としたものもありますが、そのことが後継者の事業運営の足かせになることもあります。 株式の買取交渉や、会社再編の実行については、通常数年にわたるプロジェクトとなるため、資金負担や株価への影響を考慮しながら取り組んでいく必要があります。このプロジェクトが落ち着いた段階で、次はX氏自身の事業承継・相続対策を始めることができます。 実際の手続きに際しては、税理士等の専門家に相談することをお勧めします。   (了)
#598(掲載号)
#太陽グラントソントン税理士法人 事業承継対策研究会
2024/12/12
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暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第57回】

暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第57回】   東洋大学法学部准教授 泉 絢也   (4) 「法人課税信託」該当性 以下、本信託の法人課税信託該当性を検討する。 頭出しをしておくと、ここで取り扱う主たる法的論点は、法人課税信託の1つである「受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託」には「受益権を表示する『紙片』を発行する旨の定めがない信託」が含まれるか否か、「証券」には紙片の発行のないものも含まれるか否かという点である。 ア 「受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託」該当性 (ア) 受益権を表示する「紙片」を発行する旨の定めがない信託は含まれないとする見解 法人税法2条29号の2は、次の①~⑤に掲げる信託(集団投資信託、退職年金等信託及び特定公益信託等を除く)を法人課税信託と定めている。 ただし、一般の投資家である個人が受益者であることを前提としていること、また、本信託はデラウェア州法定信託法に基づいて設立されたものであり、投信法上の投資信託には該当しないことなどからすれば、本信託は②ないし⑤のいずれにも該当しない。 特定受益証券発行信託のように信託法の概念を直接的に取り込んでいない上記①の「受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託」(法法2二十九の二イ)には、外国法を準拠法とする信託で受益権を表示する証券を発行する旨の定めのあるものが含まれると解される(佐藤英明『新版 信託と課税』469頁(弘文堂、2020)、財務省「平成19年度 税制改正の解説」308頁、法人税基本通達12の6-1-1参照)。 そうであれば、本信託について、単にデラウェア州法定信託法を準拠法とし設立されたものであるという理由で、上記①に該当しないと判断されることはない。 そして、本信託はその未分割受益権を表す本件持分を発行するため、上記①の「受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託」に該当するように思われるが、「証券」を発行する旨の定めがあるといえるかが問題となりうる。 実際にそのような証券を発行していることが要件となっているわけではなく、そのような証券を発行する旨の定めがあればこの要件を満たすことになるが、それがどのようなものに定められているかまでは言及されていない。 この点については、当該信託の法律関係を規律するものに定められていればよいと考える。 よって、本信託との関係では、少なくともデラウェア州法、目論見書又は信託契約書にその旨の定めがあればこの要件を満たすことになることを前提として考察を進める。 この場合の証券の意義について、法令用語辞典で説明されているように「財産法上の権利義務に関する記載のされた紙片」(大森政輔ほか編『法令用語辞典〔第11次改訂版〕』407頁(学陽書房、2023))であるという解釈を採用するならば、受益権を表示する「紙片」を発行する旨の定めがない信託は「受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託」に含まれないことになるから、本信託については「受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託」に該当しないという見解が考えられる。 すなわち、本件持分については、個々の証書は発行されず、記名式・振替式を採用することが定められており、結局のところ、本信託に係る個々の受益権を表示する紙片は発行されず、各本件持分の所有者は電子的方式により記録されているようであるから、本信託は「受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託」に該当しないというのである。 上記解釈に対しては、法令によっては、権利と証券を厳密に区別せずに、振替式のものが証券に含まれるかどうかが解釈に委ねられている場合もあるという指摘も想起されるが(高橋康文編著=尾崎輝宏『逐条解説 新社債、株式等振替法』32頁(金融財務事情研究会、2006)参照)、少なくとも法人税法は、「受益権」とこれを表示する「証券」を区別していることから、かような指摘は妥当しない。 もっとも、上記解釈ないし見解に対しては、2つの観点から反論が考えられる。 第1の反論は、事実認定ないし契約解釈等の領域に属する。 すなわち、「受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託」は「財産法上の権利義務に関する記載のされた紙片」である証券を発行する旨の定めのある信託を意味すると解した場合に、次のような定めがあることに着目して、本件持分に対して個々の証書は発行されないとしても「受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託」に該当する可能性が残されているのではないかというものである。 (※) 大券の様式の参考として、Hashdex Bitcoin ETFに係るものを参照 ただし、これらの記載を前提としても、上記のとおり、本件持分については、個々の証書は発行されず、記名式・振替式を採用することが定められており、結局のところ、本信託の受益権を表示する紙片は発行されず、大券も含めて本件持分の所有権は電子的方式により記録されていることになるという再反論が考えられる。 第2の反論は、上記解釈について再検討をせまるものであり、次回以降、検討を進める。 なお、仮に、本信託の委託者はスポンサーであり、デラウェア州で設立されたリミテッドライアビリティカンパニーであるスポンサーが日本の租税法上の法人に該当し(参考として、東京高判平成19年10月10日訟月54巻10号2516頁、東京高判平成23年12月20日税資261号順号11837、最判平成27年7月17日民集69巻5号1253頁など参照)、本信託の効力発生時に受託者がスポンサーの特殊関係者であると認定された場合を想定するともう少し議論が続いていく。 デラウェア州法定信託法3808条(a)は、準拠証書(governing instrument(※))に別段の定めがあるものを除き、信託は永久に存続する旨を定め、本信託に係る信託契約書7条も同様に永久に存続すると定めている。 (※) 信託契約や信託宣言であるとを問わず、法定信託を設定し、又はその事務の管理と業務遂行に関して規定する文書。デラウェア州法定信託法3801(e)。 他方、目論見書や信託契約書においては、本信託の終了日は決まっておらず、スポンサーは、その単独の裁量で、いかなる理由でも、いかなる時点においても、本信託を解散できるとされている。このことをもって、上記③イの「存続期間が20年を超えるものとされていたこと」の要件に該当しないと判断されるかという論点を検討する必要が出てくる。   (了)
#598(掲載号)
#泉 絢也
2024/12/12
会計 監査 税務・会計 解説 解説一覧 財務諸表監査

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第163回】ブックオフグループホールディングス株式会社「特別調査委員会調査報告書(公表版)(2024年10月15日付)」

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第163回】 ブックオフグループホールディングス株式会社 「特別調査委員会調査報告書(公表版)(2024年10月15日付)」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   【ブックオフグループホールディングス株式会社 特別調査委員会の概要】   【ブックオフグループホールディングス株式会社の概要】 ブックオフグループホールディングス株式会社(以下「BOGH」と略称する)は、1991年8月設立。設立時の社名は株式会社ザ・アール。1992年6月、商号をブックオフコーポレーション株式会社に変更。2018年10月、ブックオフグループホールディングス株式会社を設立して、ブックオフコーポレーション株式会社を完全子会社化。書籍・ソフトメディア等のリユースショップ「BOOKOFF」のチェーン本部としてフランチャイズシステム及び直営店舗の運営を主たる事業とする。 グループ会社は、国内連結子会社(孫会社を含む)9社、海外連結孫会社4社、持分法適用関連会社1社となっている。連結売上高111,657百万円、連結経常利益3,448百万円、資本金100百万円。従業員数1,689名(2024年5月期実績)。本店所在地は神奈川県相模原市南区。東京証券取引所プライム市場上場。会計監査人は、有限責任監査法人トーマツ東京事務所(以下、「監査法人トーマツ」と略称する)。   【特別調査委員会による調査報告書の概要】 1 特別調査委員会設置の経緯 (1) 社内調査委員会設置の経緯 BOGHでは、2024年5月28日、子会社が運営する店舗(B店)につき、アパレル在庫約3,000万円の帳簿残高と実際の在庫残高の差異(以下、「帳在差異」と略称する)が判明したため、BOGHは同月31日、期末(2024年5月期)の実地棚卸結果の点検を強化することを決定し、ブックオフ事業部へ指示をするとともに、監査法人トーマツに対し、B店に係る前記の事案と、直近で発生したA店に関する不正の疑義がある事案(架空買取による店舗従業員の横領。また、それを隠蔽するための不適切な在庫計上が行われていたというもの)について情報を共有した。 6月3日、BOGHは、監査法人トーマツと協議を行い、前記の各事案に係る今後の対応として、これらの事案に関する調査を行うことを決定し、当該調査については、現時点において代表取締役等の組織上層部がこれらの事案を主導した事実等、いわゆる組織的不正であると評価すべき事実が明らかになっているものではないことから、BOGHの役職員で構成される調査委員会をもってこれを行うこととし、翌日、社内調査委員会を設置した。 (2) 組織的不正の可能性に関する社内調査委員会の調査の限界及び他の複数店舗での不正行為疑義の同時的発覚 6月4日から10日、ブックオフ事業部が実施した期末の実地棚卸結果の点検について、社内調査委員会の主導により、ブックオフ事業部が再点検を実施したところ、新たにC店について帳在差異の発生と架空買取の事実が判明し、同月11日時点までの調査によれば、A店における事案及びC店における一部の事案については、帳在差異が発生した原因が、店舗従業員の架空買取による横領という個人的な動機によるものであると認められるものの、C店における一部の事案及びB店の事案は、必ずしも店舗従業員の個人的な動機によるものであるとは認められず、組織的不正の懸念が払拭できないことが判明した。 組織的不正の存否についての調査には調査主体たる調査委員会の独立性と実効性の担保が必要であるところ、社内調査委員会では、独立性と実効性が担保できない懸念が生じ、さらに、ブックオフ事業部の再点検により、6月13日にE店、17日にD店、19日にG店、H店及びF店の各店舗において不正行為の疑義が認められる事案(いずれも架空在庫計上に関するもの)が順次判明するに至った。これらの状況に鑑み、BOGHは6月18日開催の取締役会において、これらの行為に関し、外部専門家により構成される調査委員会における調査を実施する方向性につき協議を開始した。 (3) 特別調査委員会の設置 以上の経緯を経て、BOGHは、6月25日、外部専門家によって構成される特別調査委員会を設置し、前記各事案について調査することを取締役会により決議し、同日、特別調査委員会が本調査を実施する旨の適時開示を行った。 2 特別調査委員会による重点検証事項 特別調査委員会は、BOGHグループの中核事業である国内ブックオフ事業の業務フローは、大別すると、商品買取、商品管理(棚卸)、販売の3段階に区分することができることから、不正行為を多角的・横断的に調査するために、まずは俯瞰的に業務フローの各段階における不正リスク(内部統制上の問題を内包する不正行為)の洗い出しを行い、BOGHの社内規程(ガイドライン・マニュアル)等の資料、業務フローに関するヒアリング、現地視察等により、国内ブックオフ事業を中心に、各事業の業務の実態を把握したうえで、これまでに発覚した各事案が、業務フローにおけるどの段階で発生したものであるかについて確認・検証し、次のとおり、本調査の重点的検証事項としてまとめている。 〈「商品買取」の段階において想定される不正リスク〉 〈「商品管理(棚卸)」の段階において想定される不正リスク〉 〈「販売」の段階において想定される不正リスク(内部統制上の問題を内包する不正行為)〉 〈商品買取 ➡ 商品管理(棚卸)➡ 販売の3段階における不正リスクの分類に必ずしも馴染まない類型の不正リスク〉 3 特別調査委員会による調査結果の概要 (1) 認定した不正行為等の概要 特別調査委員会は、調査の結果、BOGHグループの26店舗と1事業部(美術骨董グループ)において、次のとおり、不正行為が行われていたことが判明したと報告している。 (2) 組織的不正の存否についての判断の概要 特別調査委員会は、調査の結果、重点的検証事項の1つである組織的不正については、その存在が認められなかったと判断している。 その理由として、特別調査委員会は、「組織的不正」の存否の判断に影響する要素として抽出できる、①不正意図希薄性、②個人利得性及び③権限者不関与性を挙げて、発見された不正行為について、これらの要素を評価した結果、本件事案の全てにつき、組織的不正の存在は認められないものと判断している。 さらに、付言して、本件実行行為については、同じ分類に属する不正行為等でも、それぞれの行為は必ずしも型どおり同一の態様という特徴を示しているものではなく、本件実行行為者がそれぞれの判断により個別事情に応じて実行していることが認められ、事案間又は店舗間で同じ分類の不正行為等を実行することにつき不正な意思の疎通・連携が図られている事実も認められなかったと説明している。 (3) 本件事案の内容及び影響額 BOGHが、10月18日に行った決算説明会の冒頭で、代表取締役社長の堀内康隆氏は、不正の内容について、次のように説明した。 4 特別調査委員会による原因分析(調査報告書150ページ以下) 特別調査委員会は、不正行為等の発生原因を次のようにまとめている。 特別調査委員会は、「不正行為等の防止に対する組織的な対応の不十分さ」の具体例として、BOGHグループでは、複数の店舗で認められた架空買取について、2016年に発覚した架空買取事案を契機として、原則として、買取金額を査定する査定者とレジ登録をして代金支払をする精算者を分離し、査定者は、レジ登録及び代金支払を担当することはできないという精算者分離がルールとして設けられたにもかかわらず、精算者分離が徹底されないことを原因とした不正行為等は複数回生じていたものの、BOGHグループでは、精算者分離を全店舗で徹底するための具体的かつ実効的な措置が講じられていなかったことを挙げている。 本件調査においても、精算者分離が形骸化又は容易に潜脱されたことにより、架空買取、水増し査定による差額横領、セット買取による買取点数の過少申告といった不正行為等が複数件発生していたことが確認されていることから、経営陣が、不正発生を端緒として、適切な時期に適切な指示又は対応を行っていれば、発生を防止、又はより早期に発見し是正することができた可能性が高いものと認められるとして、経営陣の対応を批判している。 5 特別調査委員会による再発防止に係る提言(調査報告書160ページ以下) 特別調査委員会は、再発防止に係る提言を次のようにまとめている。 特別調査委員会による再発防止の提言の特徴をいくつか検証しておきたい。 まず、特別調査委員会が、本件不正が組織的ではないという心証を得ることになった「不正意図希薄性」である。「店舗従業員におけるコンプライアンス意識の改革」のなかで、特別調査委員会は、本件実行行為者たる店舗従業員においてルールを遵守するという意識が欠如又は不足していたことを指摘するとともに、この程度のルール違反であれば構わないといった意識からスタートし、徐々に大きなルール違反に及んでいく事案があったことに言及し、店舗従業員に対して、決められたルールは必ず遵守するという強い意識を植え付けることが必要であると提言している。 さらに、特別調査委員会は、原因分析の項目でも触れたとおり、BOGH取締役会及び監査等委員会並びに内部監査報告会においては、内部監査部から、店舗における不正行為等の発生の報告を受け、再発防止について相当程度の議論がされていたことは認めたものの、今後は、不正発生を端緒として、店舗横断的な同種不正の再発防止策に関し、関係各部門に具体的かつ実効的な対策の検討を指示し、かつ、実際に具体的かつ実効的な対策が講じられたか否かの確認の実施等のフォローアップを行う仕組みを構築し、実践していくことの必要性を強調している。   【調査報告書の特徴】 株式会社エコノスの特別調査委員会調査報告書を取り上げた本連載【第157回】で、筆者は、BOGHが6月25日に「特別調査委員会の設置及び2024年5月期決算発表の延期に関するお知らせ」をリリースしたことを受けて、「同業他社への影響」のなかで、次のように述べている。 特別調査委員会による調査報告書には、株式会社エコノスの事案に関する記述は見当たらず、筆者の記述はいささか勇み足であったようだが、BOGHグループ内で度々発覚していた従業員不正が、十分な対策が行われないまま放置されてきたとの報告書の指摘には驚いた。不正による影響額は約81百万円と、過年度決算を修正するほどの金額ではなかったものの、後述するように、調査費用と監査費用は550百万円と見込まれて特別損失に計上されており、経営陣の責任は決して小さくはないものと考える。 期末棚卸における帳簿残高と実地棚卸残高の不一致に端を発した今回の不正は、社内調査を含めて約4ヶ月の時間をかけ、164ページという大部の報告書にまとめられ、公表された。特別調査委員会がまとめた19項目にわたる「不正リスク」は、中古品の買取・販売を行っている店舗を有する企業の全てに応用可能なものであると言えるほど網羅的であり、実務での有用性は高いものと思料する。 1 BOGHによる再発防止策 2024年11月12日、BOGHは、「再発防止策の策定及び役職者の処分に関するお知らせ」をリリースし、特別調査委員会の提言を踏まえて、次のような再発防止策を公表した。 BOGHによる再発防止策は、特別調査委員会による提言を実務レベルでより詳細にしたものであると評価できるが、特別調査委員会が「不正行為等の防止に対する組織的な対応の強化」の中で提言していた、BOGH取締役会及び監査等委員会並びに内部監査報告会の構成員である経営陣が、内部監査部から、不正行為等の発生の報告を受けた際に、不正発生を端緒として、店舗横断的な不正の再発防止策に関し、対策の検討を指示し、かつ、対策が講じられたか否かの確認の実施等のフォローアップを行う仕組みを構築し、実践していくことについては言及がなく、厳しい評価をすれば、経営陣が率先して行うべき再発防止策の柱を欠いたものとなっていると考える。 2 役員報酬の自主返上と役員人事 前項の「再発防止策の策定及び役職者の処分に関するお知らせ」で、BOGHは、「役職者の処分」として、決算発表等の遅延に対する経営責任を明確にするために、2024年5月期にかかる業績連動報酬について減額し、本件事案の発生に対する管理監督責任並びに再発防止策を徹底する観点から、代表取締役、取締役、事業運営を担当する執行役員について、月額報酬を自主返上することを公表した。 なお、不正に関与した店長をはじめとする従業員に対する処分については、本稿執筆時点では、公表されていない。 (1) 業績連動報酬減額 〈ブックオフグループホールディングス株式会社〉 〈ブックオフコーポレーション株式会社〉 (2) 月額報酬の自主返上(報酬返上期間:2024年11月~2025年1月) 〈ブックオフグループホールディングス株式会社〉 3 特別調査費用引当金の繰入れ BOGHが、2024年10月22日に提出した2024年5月期の有価証券報告書には、特別損失として「特別調査費用等引当金繰入額」が550百万円計上されている。連結損益計算書の注記には、次のような説明が記されている。 (了)
#598(掲載号)
#米澤 勝
2024/12/12
会計 税務・会計 解説 解説一覧

〔まとめて確認〕会計情報の月次速報解説 【2024年11月】

〔まとめて確認〕 会計情報の月次速報解説 【2024年11月】   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2024年11月1日から11月30日までに公開した速報解説のポイントについて、改めて紹介する。 具体的な内容は、該当する速報解説をお読みいただきたい。   Ⅱ 新会計基準関係 企業会計基準委員会は次のものを公表している。 ① 2024年年次改善プロジェクトによる企業会計基準等の修正(内容:「金融商品に関する会計基準」(企業会計基準第10号)など多くのものを修正している) ② 2024年年次改善プロジェクトによる企業会計基準等の改正(案)(内容:包括利益の表示、特別法人事業税及び種類株式の取扱いについて改正するもの。意見募集期間は2025年1月20日まで)   Ⅲ 企業内容等開示関係 次のものが公表されている。 ① 「記述情報の開示の好事例集2024(第1弾)」(内容:サステナビリティに関する考え方及び取組の開示①(全般的要求事項、個別テーマ)に関する好事例集。金融庁) ② 「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正(案)(内容:政策保有株式の開示について改正するもの。意見募集期間は2024年12月26日まで)   Ⅳ 監査法人等の監査関係 監査法人及び公認会計士の実施する監査などに関連して、次のものが公表されている。 ① 「倫理規則」の改正に関する公開草案(内容:タックス・プランニング業務及び関連業務に関して改正するもの。意見募集期間は2025年1月6日まで) ② 「財務報告内部統制監査基準報告書第1号「財務報告に係る内部統制の監査」の改正」(公開草案)(内容:監査基準報告書(序)「監査基準報告書及び関連する公表物の体系及び用語」に基づく要求事項と適用指針の明確化などを行うもの。意見募集期間は2024年12月16日まで)   Ⅴ 監査役等の監査関係 監査役等の実施する監査などに関連して、次のものが公表されている。 〇 「『監査役会等の実効性評価』の実施と開示の状況」(内容:監査役会等の実効性評価を実施している企業の実態を把握し、今後の監査役会等の実効性評価の取組みに関して提言している) (了)
#598(掲載号)
#阿部 光成
2024/12/12
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従業員の解雇をめぐる企業対応Q&A 【第4回】「整理解雇の4要素と具体的場面における注意点」

従業員の解雇をめぐる企業対応Q&A 【第4回】 「整理解雇の4要素と具体的場面における注意点」   弁護士 柳田 忍   1 はじめに 整理解雇とは、会社側の経営上の事情等により生じた人員削減としての解雇である。 整理解雇も他の解雇と同様、客観的に合理的な理由と社会的相当性が必要であるが(労契法16条)、その判断は、①人員削減の必要性、②解雇回避努力、③人選の相当性、④手続の相当性という4つの要素に基づいてなされることになる。また、会社側の事情による解雇であるから、労働者に理由が存する解雇よりも有効性が認められるハードルは高い。 ①~④全てが満たされなければ客観的に合理的な理由と社会的相当性は認められないとする見解もあるが、近時の裁判例は、①~④のどれか1つが欠けたからといって解雇無効とするのではなく、これらを総合考慮して解雇の有効性を判断する傾向にある。すなわち、1つの要素について十分ではない場合には他の要素に求められるレベルがより高くなる可能性がある。 また、①~③については使用者が、④については労働者が主張立証責任を負うと考えられている。   2 整理解雇の4要素のポイント 上記①~④の要素のポイントは以下のとおりである。 ① 人員削減の必要性 整理解雇に際しては、人員削減を行う経営上の必要性が求められるが、人員削減をしなければ企業が倒産するとか、経営が赤字であるといった事態に至っていなくても、経営合理化のために行う人員削減に必要性が認められる場合もある。人員削減の必要性の有無に関しては、裁判所は経営のプロである使用者の判断を尊重する傾向にあるといわれているが、先述のとおり、要素①~③については使用者が主張立証責任を負うわけであるから、人員削減の必要性を具体的に説明できるようにしておくべきである。 また、人員削減の必要性が肯定されたとしても、認められる必要性の程度によっては②解雇回避努力等の他の要素についてより求められるレベルが高まる可能性があることにも注意が必要である。 ② 解雇回避努力 解雇回避努力としては、新規採用の停止、役員報酬・賃金のカット、配転・出向・転籍、一時帰休、希望退職者募集等が考えられる。これら全ての解雇回避措置を実施しなければならないというわけではないが、当該企業の体力や規模・業種等に照らして実現可能な措置を尽くす必要がある。 なお、「新規採用」については、解雇回避努力の他、①人員削減の必要性を否定する方向に働き得る事情であるが、新たに人材を採用する場合であっても、業績回復を図って業態転換や新規事業参入等のために外部から専門性を有する人材を採用するような場合には、これらの要素が否定されない可能性がある。 また、対象従業員に対して割増退職金を提案して退職勧奨を行うことも解雇回避努力(ないし④手続の相当性等)として評価される可能性がある。 ③ 人選の相当性 整理解雇に際しては、客観的合理的かつ公平な基準を設定し、これに基づき公正に選定することが求められる。勤務成績・勤務態度、雇用形態(正規従業員か否か)、年齢等が基準とされる場合が多いが、基準として妥当かどうかは個別の事案ごとに判断されるものであり、どの基準が客観的合理的かつ公平といえるかは一概にはいえない。もっとも、労働組合の組合員であることを選定基準とする場合、合理性を否定されることが多い。 例えば、ある支店や部門を閉鎖する場合、当該支店や部門に在籍する従業員が対象とされることがあるが、当該従業員が当該支店や部門において高度な専門性を要する業務に従事するために採用されたにもかかわらず、かかる業務の必要性が失われたような場合は別として、そのような選定基準には合理性がないとされる可能性がある。当該従業員はたまたまその支店や部門に配転されただけであり、当該従業員を他の支店や部門に異動させて代わりに他の支店や部門の従業員を解雇の対象とすることも可能であるためである。 ④ 手続の相当性 使用者は、労働者や労働組合に対して、整理解雇の必要性やその時期・規模・方法、補償内容等について、誠実に説明を行い、協議に応じる必要がある。就業規則や労働協約にその旨の定めがない場合であっても、手続の相当性を欠く場合には、整理解雇が無効になり得る。   3 整理解雇の注意点 (1) 対象の従業員に帰責事由がある場合 勤務成績・勤務態度に問題があるなど、整理解雇の対象従業員に帰責事由がある場合、上記のとおり、③人選の合理性が認められる一事情とはなり得るが、対象従業員に帰責事由があることにより整理解雇の有効性の判断が緩和されるということはない。労働者の帰責事由に基づく解雇と整理解雇のそれぞれが客観的に合理的な理由と社会的相当性を満たす必要があることに注意が必要である。 (2) 会社解散に伴う解雇の場合 会社解散に伴う解雇については、(i)整理解雇法理が適用されるとする見解と、(ii)事業廃止の必要性及び手続の相当性(説明・協議等)を総合考慮して、解雇に客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当な場合、解雇は有効となるとする見解がある。 仮に(i)に拠るとしても、会社解散により全従業員を解雇する場合には、基本的に②解雇回避努力の措置を講じる余地はなく、③人選の相当性も問題にならないことから、①人員削減の必要性と④手続の相当性により判断されることになる。そして、会社解散に伴う解雇においては、原則として人員削減・事業廃止の必要性は認められることから、(i)と(ii)のいずれに拠るとしても、手続の相当性を満たすかどうかがポイントになる。 また、会社解散に伴う解雇が有効となるためには割増退職金を支給する必要があるかについては、月額給与1~4ヶ月程度の割増退職金の支給がなされたケースがある一方、割増退職金の提案なしに解雇が有効とされた裁判例も存在することから(※1)、必須とはいえないと思われる。 (※1) 静岡フジカラーほか2社事件(静岡地判平成16年5月20日)、三陸ハーネス事件(仙台地決平成17年12月15日)、帝産キャブ奈良(解雇)事件(奈良地判平成26年7月17日) なお、いわゆる偽装解散(事業の廃止を装って、別の法人で事業を継続する場合)に伴う解雇については、客観的に合理的な理由・社会的相当性が認められず、無効となる。 (3) グローバル企業における整理解雇の場合 グローバル企業において、本社の決定によりグローバル規模で人員削減が行われることになり、日本子会社においても当該方針に従って人員削減が行われる場合、①人員削減の必要性をグローバル単位・当該日本子会社単体のいずれで判断するのかが問題となり得る。仮にグローバル単位で人員削減の必要性が認められるとしても、日本子会社単体ではその必要性が認められないような場合には、①人員削減の必要性が認められない可能性があるため、日本子会社単体で見ても人員削減の必要性がある旨説明できるようにしておくべきである。 また、②解雇回避努力のための措置として配転を検討する場合、日本国内会社のみを対象として検討がなされる場合が多いと思われるが、グループ内異動の実例がある場合など、日本国外のグループ会社への異動に現実的可能性があるような場合には、これを検討しなければ②解雇回避努力を尽くしたと認められない可能性がある(※2)。 (※2) クレディ・スイス証券事件(東京高判平成24年10月31日、東京地判平成24年4月20日)   (了)
#598(掲載号)
#柳田 忍
2024/12/12
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〈Q&A〉税理士のための成年後見実務 【第13回】「身元保証人になってほしいと言われた場合の対応」

〈Q&A〉 税理士のための成年後見実務 【第13回】 「身元保証人になってほしいと言われた場合の対応」   司法書士法人F&Partners 司法書士 北詰 健太郎   【Q】 成年後見人として活動していますが、本人が施設に入居することになりました。 入居にあたって施設側から「身元保証人」になってほしいと言われています。身元保証人とは何でしょうか。 【A】 身元保証人とは、本人が負担する金銭債務を保証するとともに、本人に関して何らかの連絡や処置が必要になった場合に、対応を引き受ける人のことです。成年後見人は、身元保証人となることはできないとされています。身元保証人となった成年後見人が、本人に代わって施設の費用を支払った場合に、本人と成年後見人との間で利益相反が生じるなどの問題があるためです。 身元保証人は、高齢者施設への入居時以外にも、病院への入院や賃貸アパートへの入居などの際にも求められることがあり、成年後見人としてはよく直面する問題です。 ● ● ● ● 解 説 ● ● ● ● 1 施設入居時には身元保証人が求められる 成年被後見人が自分1人では生活することが困難になった場合には、成年後見人としては老人ホームなどの高齢者施設へ入居してもらうことを検討することになります。高齢者施設への入居にあたっては、身元保証人が求められる場合があります。 身元保証人は、本人の施設への金銭債務の支払いを保証し、本人に関して何らかの処置が必要になった場合に対応を引き受けることになります。施設側としても、施設の費用は高額になりがちで、本人が施設で生活をするうえではさまざまな連絡事項が生じることから、身元保証人がいないと施設入居を受け入れにくいといえます。 【身元保証契約の関係図】   2 成年後見人は身元保証人となれるのか 成年被後見人の親族が身元保証人を引き受けてくれる場合もありますが、身近に頼れる親族がいないというケースも少なくありません。そうした場合には、施設側から成年後見人に対して身元保証人となってほしいという打診がされることがあります。 成年後見人としては、身元保証人となることはできないとされていますが、身元保証人がいないと施設入居自体ができなくなることもあるため、非常に悩ましい問題です。実務の現場では、成年後見人の職務内容や、必要な範囲で成年被後見人の資産状況を説明するなどして、なんとか身元保証人を不要とする方向で調整をしているようです。 近年では身寄りがない高齢者が増加していることから、身元保証人を引き受けてくれる企業や団体も増えてきています。そうした企業等に依頼することも1つの選択肢ですが、悪質な事業者も存在することが問題視されており、しっかりと選定をすることが求められます。   3 「身元保証ニ関スル法律」について 成年後見人として活動していくと、成年被後見人のために非常に多くの書類に署名等を行うことになりますが、身元保証人のように、成年後見人にとって対応に注意を要する契約が存在するため、よく内容を理解したうえで署名等をすることが大切です。 なお、身元保証人について調べていくと、「身元保証ニ関スル法律」(昭和8年法律42号)に関する情報を目にすることがあると思いますが、この法律は雇用関係を対象にしたものであり、高齢者施設への入居の際に求められる身元保証人とは直接的な関係はありません。 (了)
#598(掲載号)
#北詰 健太郎
2024/12/12
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《速報解説》 石川県七尾市及び羽咋郡志賀町につき延長されていた令和6年能登半島地震に係る国税の申告期限が確定~期限は令和7年1月31日~

《速報解説》 石川県七尾市及び羽咋郡志賀町につき 延長されていた令和6年能登半島地震に係る国税の申告期限が確定 ~期限は令和7年1月31日~   Profession Journal編集部   国税庁は、令和6年能登半島地震の発生を受け、石川県及び富山県に納税地のある個人・法人を対象とした令和6年1月1日以降に到来する国税の申告・納付等の期限を延長する措置を公表しているが、既報のとおり、富山県及び石川県の一部地域についてはすでに延長措置を終了し、引き続き延長措置が講じられている地域は、石川県七尾市、輪島市、珠洲市、羽咋郡志賀町、鳳珠郡穴水町及び鳳珠郡能登町とされていた。 これら地域における具体的な延長期限については、被災者の状況に十分配慮しつつ検討するとしていたところ、12月9日付けの官報にて上記地域のうち石川県七尾市及び羽咋郡志賀町に納税地がある個人・法人については、令和7年1月31日を期限とする旨が告示された。 また、今回対象とされていない石川県輪島市、珠洲市、鳳珠郡穴水町及び鳳珠郡能登町については引き続き延長措置を継続するとしているほか、令和6年能登半島地震の影響により期日までに申告・納付等ができない場合には、所轄税務署長に申請して承認を受けることにより、引き続き期限延長措置を受けることは可能であること、また、申告は可能であっても、令和6年能登半島地震により財産に相当な損失を受けた場合や、国税を一時に納付することが困難な場合、所轄税務署長に申請することにより、原則として1年以内の範囲で、納税の猶予を受けることができるとする措置も引き続き行う。 なお、同じく12月9日付けで石川県七尾市及び羽咋郡志賀町における令和6年能登半島地震に係る審査請求の期限延長措置についても令和7年1月31日を期限とすること及び労働保険料、障害者雇用納付金などの申告・納期限の延長後の期限も同日とすることが、下記のとおり公表されている。 そのほか、上記告示に伴い地方税に係る申告等の期限の延長等についても総務省より下記のとおり通知が行われている。 *   *   * (了)
#Profession Journal 編集部
2024/12/10

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