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法人税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

令和8年度税制改正における『グループ通算制度』改正事項の解説 【第3回】

令和8年度税制改正における 『グループ通算制度』改正事項の解説 【第3回】   公認会計士・税理士 税理士法人トラスト 足立 好幸   2 通算法人の試験研究費の税額控除額の計算方法 通算法人の試験研究費の税額控除額(税額控除可能分配額)の計算方法は、次のとおりとなる(措法42の4①④⑦⑧一・二・三・八・九・十一・十二・十三・十七・⑲、42の4の2①②③、措令27の4㉝㊲、27の5①②③)。 なお、「重点産業技術試験研究費に係る税額控除制度(戦略技術領域型)」については、「Ⅱ 戦略技術領域型の研究開発税制の創設」(【第7回】)で解説する。 (1) 一般試験研究費に係る税額控除制度(一般型) ① 通算グループ全体の税額控除可能額の計算方法 ② 各通算法人の税額控除可能分配額の計算方法 各通算法人は、次の算式により計算した税額控除可能分配額を税額控除限度額(税額控除額)とします。 (※) 以降、「控除分配割合」という。   (続く)
#677(掲載号)
#足立 好幸
2026/07/16
国税通則 税務 税務・会計 解説 解説一覧

谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第43回】「国税通則法と国税徴収法との「一体的」観察・検討の観点(その1)」-租税債権の本質的要素-

谷口教授と学ぶ 国税通則法の構造と手続 【第43回】 「国税通則法と国税徴収法との「一体的」観察・検討の観点(その1)」 -租税債権の本質的要素-   大阪学院大学法学部教授 谷口 勢津夫   1 はじめに 前回、本連載の今後の方針として、国税通則法と国税徴収法との「一体的」観察により、納税者主導型租税手続と税務官庁主導型租税手続とを接合し、かつ、後者の最終段階の手続として国税徴収法による滞納処分手続を検討し(「国税通則法と国税徴収法との『一体的』観察・検討」に基づく「納税者主導型租税手続と税務官庁主導型租税手続との接合論」)、その検討内容・結果をコンメンタール的「読み物」として述べていくことにした(前回6参照)。 そのような方針は、昭和30年代に始まった国税徴収法の改正論議が十分に応えるものではなかった「租税基本法的要請」(中川一郎=清永敬次編『コンメンタール国税通則法』(税法研究所・加除式[1989年追録第5号加除済])E16頁[須貝脩一=清永敬次執筆]。太字筆者。なお、同頁ではこの要請は国税通則法との関係で論じられている)に応えようとする筆者の問題意識に基づくものである。ここで「租税基本法的要請」とは、「納税義務に関する基本的租税債権債務の法律関係が、行政手続によるという他の特徴によつておおいかくされてはならない。その意味において、租税法律関係の明確化が納税者の権利利益の保護に資し、また、行政官庁の手続きを誤りなからしめるために、要請される。」(中川=清永編・前掲書E13頁[須貝=清永執筆])と説かれる場合におけるその「要請」をいうのである。 そうすると、国税通則法と国税徴収法との「一体的」観察・検討は、「租税法律関係の明確化」の観点から行うべきであるということになろうが、その前提として、まず、租税法律関係の意義ないし特色を明らかにしておく必要があると考えられる。この点に関して、次の見解の説くところは示唆に富むものである。 その見解は、租税及び租税法について、「租税は、私的部門で生産された冨の一部を、公共サービスの資金の調達のために、強制的に国家の手に移す手段であるから、それに関する法である租税法も、それに対応して、他の法の分野(特に私法)とは異なる種々の特色をもっている。」(金子宏『租税法〔第24版〕』(弘文堂・2021年)29頁)と述べ、これを「租税法律関係の特色」について次のとおり述べる見解(同29-30頁)である。 この見解は、「租税法律関係の中心」を「国家と納税義務者との間の債権・債務の関係」として捉え、そこでいう「国家」、「納税義務者」をそれぞれ「租税債権者」、「租税債務[者]」として捉えた上で、「租税債権者である国家」の手に留保されている種々の「特権」を、「租税法律関係の本質的要素」ではなく、「租税の徴収を確保し、かつ納税者相互間の公平を維持するため」の「立法政策」の構成要素(以下では「立法政策的要素」という)とみるものと解される。 前記の見解がそのような「特権」として挙げる制度、すなわち、「更正・決定を通じて租税債務の内容を確定する権限、更正・決定の補助手段としての質問・検査権、裁判所の手を借りずに自らの手で徴収を図るための自力執行権、滞納処分に際して租税債権に認められる一般的優先権等」の各制度は、租税法律関係の立法政策的要素であり、国税通則法と国税徴収法との「一体的」観察・検討においては、租税法律関係の明確化という租税基本法的要請の観点から検討すべきものであるから、次回以降、国税徴収法に則して検討していくことにする。 ただ、今回は、租税法律関係のうち国税徴収法の第一次的規律対象としての租税債権の本質的要素について検討しておくことにしたい。それは、以上では、前記の見解に従い租税法律関係を租税債権債務関係として捉えた上で、今後の検討の進め方やその観点を整理してきたが、よく考えてみると、その前に、租税の賦課徴収に関する国家権力の行使を租税債権の行使として構成するのは、そもそも、どのような考え方に基づくのかという根本問題(以下では「租税賦課徴収権の租税債権構成問題」という)を検討しておく必要があるように思われるからである。 そのような根本問題の検討を通じて租税債権の本質的要素を明らかにすることができれば、そのことは、租税法律関係の明確化という租税基本法的要請の観点から租税法律関係の立法政策的要素を検討するに当たっても、重要な意味をもつことになろう。   2 国家財産の代替物としての租税 ところで、租税の賦課徴収に関する国家権力も課税権の概念に含まれるが、課税権の多義性(谷口教授と学ぶ「税法基本判例」第1回Ⅱ1参照)を目の前にすると、前記の根本問題(租税賦課徴収権の租税債権構成問題)を検討するには、課税権の多義性に目を奪われることなく、国家が課税権の主体として行っている租税に関する根本決定を直視して検討する必要があるように思われる。 そのような検討に関しては、「租税国家の基礎概念」に関する検討において租税国家の本質を見据えながら「租税の概念」に関する問題のうち「租税の歴史性」について「租税と私有財産の前提」という見出しの下で下記のとおり論ずる見解(大畑文七『租税国家論』(有斐閣・1934年)49-51頁。旧漢字は改めた。下線筆者)が、有益な示唆を与えてくれるように思われる。 この見解は、「租税」を「一定条件に繋属する歴史的存在」すなわち「常に経済社会の発展と共に歴史的に変動する[存在]」とみた上で、現代の経済社会の基本原理である「自由主義」の下では、「国家の経済生活」の存在及びこれに伴う「経済生活の対象たる財貨」の必要性と「私有財産制度」及びこれに基づき「個人の自由」を旨とする「国民経済」の存在とを「大前提」にして、「租税」が成り立つと説くものである(筆者はこの見解について、特に租税国家における課税と財産権保障との関係を中心に、検討したことがある。拙稿「遡及課税と財産権の遡及的制約―課税と財産権保障との関係に関する一考察―」同志社法学429号(74巻3号・2022年)145頁、159-162頁参照)。 この見解に係る前記の引用文のうち租税賦課徴収権の租税債権構成問題の検討において特に重要と思われるのは、①「租税は個人の自由と所有権が認められて後初めて存在し得る現象である。」、②「例へば私有財産制度が無くなつた場合、即ち社会生産物が一応共同団体の所有となり、管理者の手によつて―其の経験的知識又は科学的統計的基礎に基き―再び各社会構成員の必要に応じて分配される如き場合に於ては租税は最早や其の存在を認め得ない。」、及び③「自由主義によつて国家財産を完全に払下げた無産国家が最も良く租税国家たり得る訳である。」の各文である。 これらにおいて述べられている内容を要約すると、国家は「自由主義によつて国家財産を完全に払下げた無産国家」(③)となることを選択した場合(②参照)、「私有財産制度」(②)を採用して初めて「租税」(①)の存在を前提として成立する国家すなわち「租税国家」(③)となる、といえよう。このことを「無産国家」としての「租税国家」の側からみると、「租税」は「無産国家」が「国家財産」と引き換えに手に入れたいわば「国有財産」である(国家財産の代替物としての租税)、ということができるように思われ、ここに、租税債権の本質的要素を見出すことができるように思われる。つまり、租税債権は、国家が「国家財産」を完全に払い下げ「無産国家」となりその「国家財産」と引き換えに手に入れた「国有財産」である、という点にその本質的要素を見出すことができるように思われるのである。   3 憲法30条=29条「4項」論 以上でみてきたような「一定条件に繋属する歴史的存在」としての租税の概念を「当然の前提」として、現行憲法も「納税の義務」(30条)及び「租税法律主義」(84条)を規定していると解される。このような理解は次の見解(法学協会編『註解日本国憲法 上巻』(有斐閣・1948年)295頁。旧漢字は改めた。下線・傍点筆者)の述べるところである。 ここで述べられている理解と同様の理解を筆者は従来から「憲法30条=29条『4項』論」として次のとおり説いてきた(拙著『税法基本講義〔第8版〕』(弘文堂・2025年)【24】。太字原文。筆者のこの見解については、石川健治「納税の義務」増井良啓ほか編『市場・国家と法―中里実先生古稀祝賀論文集』(有斐閣・2024年)487頁、519-522頁参照)。 以上のような理解によれば、「一定条件に繋属する歴史的存在」としての租税の概念を「当然の前提」として、現行憲法は租税に関する規律(「納税の義務」及び「租税法律主義」)を定め(30条、84条)、しかもそれらを根拠とする租税侵害を中核的内容とする私有財産制を保障していることからすると、「一定条件に繋属する歴史的存在」としての租税は、現行憲法下では、そのような歴史的存在にとどまらず、憲法上の地位を獲得した法的存在(憲法上の概念としての租税)として位置づけられることになろう。 ただ、租税が憲法上の概念としての法的地位を獲得したとしても、租税の本質的要素は変わることなく、租税は国家財産の代替物としての「国有財産」である。そのような憲法上の租税概念を前提にして、税法は租税の賦課徴収に関する国家権力の行使を、財産権の一種である債権(租税債権)の行使として構成し規定することにしたものと解される。 以上を要するに、歴史的存在としての租税であれ、憲法上の概念としての租税であれ、租税は国家財産の代替物としての「国有財産」であり、その法的性質としては債権(租税債権)であると解される。このことこそが、租税債権の本質的要素であると考えるところである。 (了)
#677(掲載号)
#谷口 勢津夫
2026/07/16
相続税・贈与税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

相続税の実務問答 【第121回】「債務の額の生前贈与加算額からの控除及び贈与税額の還付(暦年課税の場合)」

相続税の実務問答 【第121回】 「債務の額の生前贈与加算額からの控除及び贈与税額の還付(暦年課税の場合)」   税理士 梶野 研二   [答] あなたが負担した債務及び葬式費用は、あなたが相続により取得した財産の価額から控除し、控除しきれない金額は生前贈与加算額から控除することはできません。また、生前贈与に係る贈与税額が算出相続税額を上回る場合に、差額の還付を受けることはできません。   ● ● ● ● ● 説 明 ● ● ● ● ● 1 債務控除 相続又は遺贈(包括遺贈及び相続人に対する特定遺贈に限ります)(以下、「相続等」といいます)により財産を取得した者の相続税の課税価格に算入される価額は、相続等により取得した財産の価額の合計額から、①被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの(公租公課が含まれます)及び②被相続人の葬式費用で、その相続人又は包括受遺者(以下「相続人等」といいます)の負担する部分の金額を控除した残額となります(相法13①)。 (注) 制限納税義務者については、控除することのできる債務には制限があり、また、葬式費用を控除することはできません(相法13②)。 なお、「相続税の課税価格」とは相続税の課税標準、すなわち相続税の課税対象となる金額です。相続等により財産を取得した者が負担する被相続人の債務及び葬式費用の合計額が、相続等により取得した財産の価額の合計額(租税特別措置法第69条の4第1項に規定する小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例などの特例措置を適用する場合には、特例を適用した後の価額。以下、同じです)を上回る場合には、相続税の課税価格は0円となり、この金額が負数になることはありません。また、この上回る金額を他の相続人等の相続税の課税価格の計算において控除することができないことは、前回説明したとおりです。   2 生前贈与加算 相続又は遺贈により財産を取得した者が当該相続の開始前7年以内(注)に被相続人から贈与により財産を取得している場合で、贈与税の申告に当たり相続時精算課税を適用していないとき、すなわち暦年課税により贈与税が課税されているときは、その贈与により取得した財産(「加算対象贈与財産」といいます)の価額の合計額(加算対象贈与財産のうち相続の開始前3年以内に取得した財産以外の財産にあっては、その財産の価額の合計額から100万円を控除した残額)を相続税の課税価格に加算した価額を相続税の課税価格とみなして相続税額を計算することとされています(相法19①)。この加算を行う前の「相続税の課税価格」は上記1の債務控除をした後の金額となります。 (注) 令和12年12月31日までに行われた贈与については、経過措置が設けられています(令和5年所得税法等の一部を改正する法律附則19②③)。詳細は、本連載【第82回】「令和5年までに行われた贈与(暦年課税)の相続税の課税価格への加算」の説明を参照してください。 したがって、相続等により財産を取得した者が負担する被相続人の債務及び葬式費用の合計額が、相続又は遺贈により取得した財産の価額の合計額を上回る場合には、「相続税の課税価格」は0円となり、この0円に加算対象贈与財産の価額を加算した金額が、最終的に「相続税の課税価格」とみなされることとなります。このため、相続等により取得した財産の価額の合計額から控除しきれなかった債務及び葬式費用の額は切り捨てられることとなり、相続税額の計算には影響しないこととなります。相続税の申告書様式第1表の①欄から⑥欄も、この仕組みに沿って計算がされるようになっています。   3 贈与税額控除 加算対象贈与財産に対して課せられた贈与税の額は、算出相続税額(相続税の総額を各相続人等の課税価格の割合で按分計算して求めた金額(相続税法第18条第1項の適用がある場合には、同項の規定による2割加算を行った後の金額))から控除することとなります(相法19①)が、その贈与税額が算出相続税額を上回る場合には、納付する相続税額が0円となり、控除しきれない贈与税額は切り捨てられることとなり、贈与税額が還付されることはありません。   4 質問の場合 あなたは、相続によりお母様の遺産である家庭用動産など80万円の財産を取得しましたので、この金額が相続税の課税価格の計算の基になります。その上で、あなたは、お母様の債務である未払医療費20万円及び葬式費用100万円を負担しましたので、これらの金額の合計額(120万円)は、取得した財産の価額の合計額(80万円)から控除することとなりますが、あなたが負担した債務及び葬式費用の額の合計金額(120万円)が、あなたが相続により取得した財産の価額(80万円)を上回りますので、ここまでの計算では、あなたの相続税の課税価格は0円となります。 そして、あなたは令和6年にお母様から建物及びその敷地の贈与を受け、暦年課税により贈与税の申告を行い、500万円の贈与税を納付しています。あなたは相続によりお母様から財産を相続していますので、この加算対象贈与財産の価額を相続税の課税価格とみなして相続税額の計算をすることとなります。こうして算出されたあなたの相続税額からこの贈与税の額を控除した後の金額が、あなたの納付すべき相続税額となります。あなたの場合、加算対象贈与財産に係る贈与税額が算出相続税額を上回ることとなりますので、あなたの納付すべき相続税額は0円となります。そうしますと、相続税法第27条第1項の規定により、あなたは相続税の申告書を提出する必要はないこととなります。 なお、この上回る金額に相当する贈与税相当額について還付を受けることはできません。   (了)
#677(掲載号)
#梶野 研二
2026/07/16
会計 四半期(中間) 税務・会計 解説 解説一覧 財務会計

期中会計基準を学ぶ 【第1回】「基本的な考え方、構成及び範囲」

期中会計基準を学ぶ 【第1回】 「基本的な考え方、構成及び範囲」   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2025年10月16日、企業会計基準委員会は、「期中財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第37号。以下「期中会計基準」という)及び「期中財務諸表に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第34号。以下「期中適用指針」という)などを公表した。 これは、「中間財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第33号)と「四半期財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第12号)などについて、統合した会計基準等である。 期中会計基準は、2026年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の最初の期中会計期間から適用する(期中会計基準34項)。 本シリ-ズは、期中会計基準等について基本的な理解に資するように解説を行うものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 基本的な考え方 期中会計基準は、金融商品取引法に基づく第一種中間財務諸表等と、金融商品取引所の定める規則に基づく第1四半期及び第3四半期の四半期財務諸表の両方に適用可能となるように、「中間財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第33号)等と「四半期財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第12号)等を統合することを目的としている(期中会計基準BC13項)。 統合に際しての前提及び基本的な考え方は次のとおりである。 上記のように整理したことから、期中会計基準の開発にあたり再検討を実施せずに考え方を引き継いでいるものについては、企業会計基準第33号等及び企業会計基準第12号等の結論の背景をそのまま引用する記載となっている(期中会計基準BC17項)。   Ⅲ 期中会計基準の構成 期中会計基準の章立ては次のとおりである(期中会計基準BC18項)。 上記のほか、次の事項にも注意する。   Ⅳ 範囲 期中会計基準は、期中財務諸表を作成する場合に適用する(期中会計基準3項)。 「期中財務諸表」とは、期中連結財務諸表及び期中個別財務諸表をいう(期中会計基準4項(5))。 期中会計基準の適用対象となる期中財務諸表には、金融商品取引法に基づく半期報告書において開示される第一種中間財務諸表等が含まれる(期中会計基準BC21項、連結財務諸表規則1条1項2号、財務諸表等規則1条1項2号)。 次の事項に注意する。 (了)
#677(掲載号)
#阿部 光成
2026/07/16
労務 労務・法務・経営 社会保険

給与計算の質問箱 【第78回】「給料の締め日、支給日の変更」

給与計算の質問箱 【第78回】 「給料の締め日、支給日の変更」   税理士・特定社会保険労務士 上前 剛   Q 当社の給料の締め日は15日、支給日は25日です。締め日や支給日を変更する際に注意点があればご教示ください。 A 以下、解説する。 * * 解 説 * * 1 賃金支払いの5原則 労働基準法第24条において、賃金は通貨で直接労働者にその全額を毎月1回以上一定の期日を定めて払わなければならない、と定められている。これを賃金支払いの5原則という。 例えば、締め日は15日のままで支給日を翌月15日に変更した場合、7月15日締めの給料の支給日は8月15日になる。6月15日締めの給料の支給日は6月25日なので、6月25日の次が8月15日となり、7月は支給日がなくなってしまう。そうなると賃金支払いの5原則のうちの毎月1回以上払いの原則に抵触するため、何らかの対策をする。   2 就業規則 労働基準法第89条において、就業規則に記載する内容として絶対的必要記載事項(必ず記載しなければならない事項)と相対的必要記載事項(事業場で定めをする場合に記載しなければならない事項)がある。賃金の締め日と支給日は絶対的必要記載事項なので、変更するなら就業規則の変更が必要である。 〈絶対的必要記載事項〉 〈相対的必要記載事項〉   3 雇用保険被保険者離職証明書 備考欄に“賃金締切日変更”の旨を記載する。   4 算定基礎届 締め日を変更したことにより、支払基礎日数が暦日を超えて増加した場合は超過分の報酬を除外する。 例えば、締め日を15日から20日に変更した場合、前月16日~当月20日の給与計算期間のうち、前月16日~前月20日の給与を除外し、前月21日~当月20日で計算した報酬をその月の報酬とする。 締め日を変更したことにより、支払基礎日数が17日未満に減少した場合はその月を除外する。 (了)
#677(掲載号)
#上前 剛
2026/07/16
労務・法務・経営 法務

《税理士のための》登記情報分析術 【第38回】「死因贈与について理解しよう」

《税理士のための》 登記情報分析術 【第38回】 「死因贈与について理解しよう」   司法書士法人F&Partners 司法書士 北詰 健太郎   相続における財産承継の方法の一つとして遺言が活用されることがよくあるが、遺言とよく似た制度として「死因贈与」がある。死因贈与は遺言と比較すると実行する要件が緩やかではあるが、特有の注意点がある。   1 死因贈与は贈与契約である 死因贈与とは、贈与契約の一種であり一般的な贈与契約が贈与の合意の成立により効力が発生するのに対して、死因贈与は贈与者の死亡により効力が生じることになる。民法にも定めがなされており、明確に法的な根拠がある贈与の方法であるといえる。   2 遺贈に関する規定が準用される 死因贈与は贈与者の死亡により効力が生じる点が、遺言による贈与である「遺贈」と類似しており、両者の性質の違いに反しない限りで遺贈の規定が準用される。 準用されるものとしては、執行者や撤回・取消しの規定があり、死因贈与においても遺言執行者のように死因贈与の内容を実現する執行者を選任することができる。また、遺言がいつでも撤回可能であるとされているのと同様に、原則として死因贈与も贈与者において撤回することができるとされている(民法1022条)。 準用されないものとしては、遺言の場合は遺言能力についての定めがあり、15歳になれば遺言を作成できるが(民法961条)、死因贈与は契約であることから有効に締結をするためには成年に達していることが必要となる。また、遺言の作成について厳格な方式が定められているが、死因贈与については適用されず、一般的な贈与と同様に理論上は口頭による合意でも成立する。   3 死因贈与が活用されるケース 相続の実務において死因贈与が活用されるケースとしては、贈与者の死期が近づいた状況において、時間的な制約や体調等の事情により遺言の作成ができないケースがある。不動産などの重要な財産を承継させたい人がいる場合でも、自筆証書遺言は全文自書することが求められ、また公正証書は公証人の対応に時間がかかるなど、死期が近づいた状況では財産承継の手法として採用できないことが少なくない。この点、死因贈与は遺言のような厳格な作成方式は求められないため、パソコン等で贈与契約書を作成して当事者の署名押印を取り付ければ締結することができる。   4 仮登記が可能 不動産について死因贈与契約を締結した場合、権利を安定的なものにするために仮登記をすることができる。登記の申請方法は、贈与者が仮登記義務者となり、受贈者が登記権利者となる共同申請が原則だが、贈与者の承諾書(印鑑証明書付)を提供して受贈者が単独で申請することができる。 また、死因贈与契約書が公正証書で作成されており、公正証書に贈与者が所有権移転仮登記の申請を承諾している旨の記載がある場合には、贈与者の印鑑証明書の提供がなくとも贈与者が単独で始期付所有権移転の仮登記を申請することができるとされている。 死因贈与に関係する登記は事例が少ないため、不動産の死因贈与をする場合には必ず司法書士に相談を行うとよい。   5 死因贈与はいいことばかり? 本稿を読んでいると死因贈与はメリットが大きいようにも思われるが、さまざまな注意点がある。トラブルにつながるリスクもあるため、次回注意点等について紹介をする。 (了)
#677(掲載号)
#北詰 健太郎
2026/07/16
労務・法務・経営 法務

税理士が知っておきたい不動産鑑定評価の常識 【第79回】「土地の使用貸借であるが借主の死亡を直接の理由とせず、使用収益をなすに足るべき期間の経過により契約の終了を認めた裁判例」

税理士が知っておきたい 不動産鑑定評価の常識 【第79回】 「土地の使用貸借であるが借主の死亡を直接の理由とせず、使用収益をなすに足るべき期間の経過により契約の終了を認めた裁判例」   不動産鑑定士 黒沢 泰   1 はじめに 今回取り上げる事案も、前回と同じく使用貸借の終了に関して争われたものです。ただし、前回の事案は、貸主が死亡してその相続人と借主(親族)の間で使用貸借の終了をめぐり争われたものであるのに対し、今回の事案は、借主が死亡してその相続人と貸主(親族)の間で争われた点に相違があります。 いずれにしても、使用貸借とはいえ、その権利の消滅のために何がしかの対価の支払いが必要となっている点は共通しており、このような案件が鑑定評価の対象となった場合、不動産鑑定士には税務上の扱いとは異なる判断が求められます。   2 今回取り上げる裁判例 建物所有を目的とする土地の使用貸借において、民法第599条(※)の適用を否定した上で、「使用収益をなすに足るべき期間の経過」があったことを理由とする解約の申入れにより契約が終了したとされた事例(東京地裁平成7年10月27日判決(判例時報1570号、70頁))を取り上げます。 (※) 本件判決当時適用されていた民法条文であり、その趣旨は、使用貸借は借主の死亡によって終了するというものです。なお、現行民法では第597条第3項に編成替えされていますが、以下、判決当時の条文のまま掲載します。   3 事案の概要と裁判所の判断 (1) 事案の概要 (人的な関係) YはXの実妹であり、ZはYとその夫Aとの間の長女です(下記関係図のとおり)。 【人的関係図】 (経緯) 〇 Xの主張の基になった主な理由 本件土地の使用貸借は、親族関係に基づく恩恵的なものであり、Yの一家の居住を目的としたものであるが、現在においては借主であるAはすでに死亡し、娘のZは結婚して社宅に居住しており、結局、本件建物にはYだけが居住しているにすぎない。 (2) 裁判所の判断 本件審理に当たった裁判所は以下のとおり判断の上、本件使用貸借は終了したとの結論を下しました。 ① 本件契約は使用貸借に該当するか 以下の点からすれば、XはAに対し、本件土地を木造建物所有の目的で使用貸借したものと認められる。 ② 本件契約に民法第599条は適用されるか 民法第599条によれば、使用貸借は借主の死亡によってその効力を失うと規定されている。しかし、本件土地の使用貸借はAとYおよびZの家族の居住を確保するために行われたものであり、借主はAであるとはいえ、その妻がXの妹であるという関係から無償の貸借を得られたものである。このように、いわばYを介して使用貸借をするに至る特別な関係が成立していることなどの事情を勘案すれば、本件土地の使用貸借については民法第599条は適用されないと解するのが相当である。 ③ 本件契約は使用収益をなすに足るべき期間の経過により終了したか 本件審理に当たった裁判所は、上記のとおり本件には民法第599条は適用されないとしたものの、次の事実および諸事情を考慮し、Yにとって本件土地につき使用収益をなすに足るべき期間は経過したとして、使用貸借の終了を認めています。   4 まとめ 使用貸借はいうまでもなく無償契約であり、(親族間等のように)貸主・借主との特別の関係に基づいて成立することが多いため、民法上、借主の死亡によって終了するとされています。 この点、本件事案では裁判所が貸主・借主間の特殊な関係や契約の経緯等を考慮したためか、使用貸借は借主Aの死亡によっては終了しないと認定している点に大きな特徴がみられます。 しかし、現行民法第598条第1項(本件判決当時は民法第597条第2項但書がこれに該当)には、使用収益に関し、貸主は借主が使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは契約の解除をすることができる旨規定されており、本件判決の結論を導く際にもこのような考え方が拠り所となっている点に留意が必要です。 なお、本文にも記載したとおり、本件事案においては、貸主から相続後の借主であるYおよびZに対して立退料や代替家屋の提供を申し入れています。このような事実をもってしても、使用貸借が税務上は価値を認めない権利であるにもかかわらず、貸主から借主に退去(土地の返還)を求める際には、(補償的な意味合いを込めて)鑑定評価の際には何がしかの経済価値を織り込んでいるケースが多いことを裏付けることができると思います。 (了)
#677(掲載号)
#黒沢 泰
2026/07/16
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プロフェッションジャーナル No.676が公開されました!~今週のお薦め記事~

2026年7月9日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.676を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
#Profession Journal 編集部
2026/07/09
税務 税務・会計 解説 解説一覧

暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第96回】

暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第96回】   東洋大学法学部教授 泉 絢也   (3) 期待と限界 ア ブロックチェーン分析の有効性:期待と限界 このように、調査選定や個別の税務調査の場面において、税務当局が暗号資産の匿名性や分散性による税務執行上の課題に直面する際、ブロックチェーン分析は有効な手法となりうる。 ブロックチェーンに公開されているアドレスやトランザクションの情報を分析して、本人確認を行っているCEX等と結びつけることにより、匿名性や分散性を克服しようとする試みである。 いわば、オンチェーン情報である「公開されているトランザクション履歴」とオフチェーン情報である「本人確認済み口座情報」とを接点で結びつけることにより、仮名性の背後にある実在の納税者をあぶり出す点に特徴がある。 しかしながら、国内や海外のCEX等のいずれに結びつけるにしても、CEX等で本人確認が行われていることが前提となる。 この意味で、本人確認を行っているCEX等からの情報に依存する特定事業者等に対する報告の求め(通法74の7の2)やCARF(暗号資産等報告枠組み)と同様、ブロックチェーン分析を駆使したとしても、税務当局は暗号資産の匿名性や分散性が税務執行にもたらす問題を完全に乗り越えることができるわけではない。 特に、完全な自己管理型ウォレットを、本人確認を徹底している事業者との接点を一切持たない態様で利用している場合には、ブロックチェーン分析は「資金の流れ」は把握できても「誰の資金か」を特定するには至らない。 これは、ブロックチェーンには、トークンの「移転」の情報は記録されているが、「主体の身元」の情報は記録されていないという技術的特徴に由来する。 要するに、ブロックチェーン分析それ自体は、本人確認を行っていないCEXの口座やプライベートウォレットの管理者が誰であるのかを明らかにするものではない。 このため、納税者が、本人確認を行っているCEX等との接点を一切持たない形で本人確認を行っていないCEXの口座やプライベートウォレットを利用している場合には、そのような口座やウォレットの管理者を特定することは極めて困難となる。 この意味で、ブロックチェーン分析にも限界があるといえる。 このことは、少なくとも現時点においては、CEX等で本人確認手続が実施され、納税者がそのようなCEX等を利用していることが、暗号資産に対する適正な税務執行を確保する上で極めて重要な前提条件となっていることを示している。 換言すれば、暗号資産の適正課税を確保するためには、技術的分析能力のみならず、KYC(顧客確認)制度や情報報告・交換制度といった制度的インフラが不可欠なのである。 このことは、技術と制度は代替関係ではなく、補完関係に立つことを示唆している。 いずれにしても、ブロックチェーン分析は税務当局にとって重要な執行補助手段となりうる。 ブロックチェーン分析により、①「本人確認を行っていないCEXの口座やウォレットアドレス」が②「国内CEXその他の本人確認を行っているCEX等」と一度でもトランザクションのやりとりをしている場合、①を管理している者の身元を間接的に特定できる可能性がある。 これは、本人確認済みのCEX等との間でトランザクションの接点が存在すれば、その履歴を起点として当該事業者に対する照会を行うことができ、結果としてウォレットの管理主体の特定につながる可能性が生じるためである。 また、当該アドレスに関連付けられたトランザクション履歴や残高、同一人物によって管理されていると推定される他のウォレットやCEX口座を把握できる場合もある。 このようなクラスタリング分析は、単一のアドレスではなく、実質的に同一主体が管理していると推定されるアドレス群を束ねることにより、保有規模や資金移動の全体像を再構成する機能を有し、上記のような身元の特定の機会を増加させる。 さらに、DEX上のトランザクション等はブロックチェーン上に記録されているから、特定のウォレットアドレスがDEXで、いつ、どのような取引をどの程度の規模で行っているかという点を把握することも可能である。 これにより、CEXを経由しない取引についても、少なくとも移転数量や移転時期といった客観的データの把握は可能となる。 実務上は、これらの客観的データと市場価格データとを照合することで、損益計算の整合性検証が可能となる点も重要である。 例えば、取引時点の市場価格(時価)のデータを用いて、申告所得との乖離を検証することが可能となる。 なお、ブロックチェーン分析は、課税段階のみならず、徴収段階においても資産所在の把握という点で有意義なものである。 イ 国税庁がとるべき対応策 CARFを含む国内外の暗号資産関連の規制強化が進む中、税務執行の場面において、ブロックチェーン分析の存在感は一層高まると予想される。 日本においても、暗号資産の匿名性や分散性が引き起こす税務執行上の問題に対処するために、国税庁は高性能なブロックチェーン分析ツールを積極的かつ効果的に活用するとともに、そのために国税調査官の専門的トレーニングを強化する必要がある。 単なるツール導入にとどまらず、分析結果を法的証拠として適切に位置付ける能力の育成や事業者からの情報収集制度・国際情報交換制度と連動させる運用体制の構築が求められる。 現時点では、ブロックチェーン分析は、犯罪捜査の場面において一定の成果を上げているようである。 例えば、警察庁サイバー特別捜査部と埼玉県警など9府県警の合同捜査本部は、秘匿性が高いとされる暗号資産Moneroを悪用しマネーロンダリングを図っていたグループについて、Moneroの流れを追跡して容疑者を特定したと報じられている(※)。 (※) 2024年10月22日付日本経済新聞朝刊「クレカ不正か、首謀者摘発 警察庁など 仮想通貨追跡、被害1億円」 また、米国では、暗号資産所得の申告除外者を特定するプロジェクトの一環として、IRSの不正取締局は、IRSの職員に対して、600以上のブロックチェーン分析ツールのライセンスを配付している。 IRSの犯罪捜査部門は、デジタル資産のコンプライアンス違反に対処するために分析ツールを活用し、ブロックチェーン分析企業と組んで、デジタル資産を利用して所得を隠匿することで脱税を図っている可能性のある個人を特定することに成功している一方、民事調査部門における努力は間接的で無視できる程度にすぎず、改善の余地があるといわれている(※)。 (※) TIGTA, VIRTUAL CURRENCY TAX COMPLIANCE ENFORCEMENT CAN BE IMPROVED, REP. NO. 2024-300-030, at 9,14(July 10,2024). この点について、刑事分野で蓄積された分析技術が、今後民事課税分野への転用が期待される。 ウ まとめ ブロックチェーンは公開台帳である。 しかし、公開データであっても、それを意味ある情報に変換する能力は高度に専門化されている。「誰でも閲覧できる」という公開性と、「誰でも分析できる」という意味は同義ではないという点が重要である。 ここには、技術的分析能力、各種法制度、事業者協力体制、国際情報交換体制といった複数の要素が介在している。 別の視点から見れば、「データが存在すること」と「それを法的証拠として活用できること」とは別問題であるということである。 したがって、ブロックチェーン分析は、暗号資産の匿名性や分散性が引き起こす税務執行上の問題に対する万能の解決策ではない。 しかしながら、ブロックチェーン分析は、適切な制度的枠組みや専門的な調査体制の下で活用されることにより、納税者の特定や資金移動の把握を通じて、損益の計算や課税要件事実の認定を可能とする重要な分析手法となり得ることも否定できない。   (了)
#676(掲載号)
#泉 絢也
2026/07/09
所得税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

社長からの無理難題の断り方・かわし方 【第7回】「所得税の還付を受けることができる期限」

社長からの無理難題の 断り方・かわし方 第7回 所得税の還付を受けることができる期限 〈JUN税会〉 税理士 日髙 真帆   * * 解 説 * * 1 事実関係の把握 社長へのヒアリングと現状確認により、以下の事実が確認されました。   2 法的論点の整理 (1) 確定所得申告(所法120、121) 多くの給与所得者は年末調整によってその年分の所得税の精算が行われるため、確定申告をする必要はありませんが、次のいずれかに該当する者は確定申告が必要です。 (2) 還付を受けるための申告(所法122) 一方で(1)に該当せず、確定申告書を提出する義務がない人でも、以下のような場合に該当し、給与等から徴収された所得税額や予定納税をした所得税額が年間の所得税額より多い場合には、確定申告を行うことで所得税の還付を受けることができます。 (3) 期間の計算及び期限の特例(国通法10) 国税通則法は、国税についての基本的な事項及び共通的な事項を定めた法律です。この条文では、その期間の計算をいつから開始するのか、また期間計算による場合の期間の末日のほか、期間計算によらない期限について、これらが休日に当たる場合の期限の特例について定めています。 その期限が日曜日、国民の祝日法に定める休日その他全国的な一般の休日、土曜日又は12月29日から31日まで(以下「休日等」)に当たるときは、最後の休日等の翌日をもって期限とみなします。 ただし、この特例規定が適用される期限は、国税に関する法律に定める申告、申請、請求、届出その他書類の提出、通知、納付又は徴収に関する期限に限られ、単に計算の基準となっている期間の末日などは含まれません。 (4) 更正の請求(国通法23) 確定申告書の提出期限後に申告書に記載した税額等に誤りがあったことを発見した場合や、確定申告をしなかったために決定を受けた場合などで、申告等をした税額等が実際の所得税額より多かったときに、正しい額に訂正することを求める場合の手続きです。これにより、既に納税した税額と正しい税額との差額の所得税の還付を受けることができます。 (5) 還付金等の消滅時効(国通法74) 還付金等(過誤納金及び各税法に規定する国税の還付金)の請求権の消滅時効が5年であること及びその時効については、援用を要せず、時効完成後における利益の放棄ができないことを規定した条文です。つまり、還付金等を請求することができる日から5年を経過したときは、還付金請求権は時効により絶対的に消滅します。還付金のうち、各税法に定めている租税の還付金については、還付を請求することができる時から時効が進行します。なお、還付請求権の譲渡があった場合には、時効進行の効果は承継されるため、起算日は変わりません。   3 本件事例へのあてはめ (1) 確定申告の有無 社長は毎年年末調整のみ行っており、確定申告は行っていませんでした。 (2) 還付手続きの種類 年末調整のみで還付を受けるための確定申告も行っていなかったことから「還付申告」に該当します。 (3) 提出期限と手続き方法 還付申告の場合、還付請求権の起算日は翌年1月1日となります。したがって、令和2年分の所得税の還付請求権の起算日は令和3年1月1日となり、令和3年1月1日から5年以内が期限となるため、令和7年12月31日が令和2年分の所得税の還付申告の期限となります。   4 実務上の対応 (1) 更正の請求と還付申告の手続き すでに確定申告書を提出している場合、または還付を受けるための申告を行っている場合には、一定の事項を記載した更正の請求書にそれを証明する書類を添付して、納税地の所轄税務署長に提出します。よって、医療費控除の場合には領収書の提出が必要となります。 一方で、年末調整で完結し、確定申告書を提出していなかった場合には、その還付を受けようとする年分の確定申告書を納税地の所轄税務署長に提出します。この場合、通常の確定申告書と同じ形で申告を行うため、領収書等の添付は必要ありません。 (2) 提出期限の違い 「更正の請求」は、国税に関する法律の規定に従っていなかった場合又はその計算に誤りがあった場合に、その「法定期限」から5年以内に一定の事項を記載した更正の請求書を納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。ただし、確定申告を要しない人が還付を受けるために確定申告を行っている場合には、その「提出した日」から5年以内とされています。なお、提出期限が休日等に当たる場合は、これらの日の翌日が提出期限となり、起算日が休日等によりその翌日となった場合には、その提出期限も翌日となった日から5年以内となります。 一方で「還付申告」については提出期限が定められていませんが、暦年終了後の翌年1月1日以後いつでも還付申告書を提出することができることから、国税通則法74条1項の規定により還付請求の起算日が翌年1月1日となります。よって、翌年1月1日から5年以内が所得税の還付請求をできる期間となります。なお、例え12月31日が休日であったとしてもその期限が1月4日に延びることはありません。 給与所得者が多い我が国においては、それぞれ、「所得税が年末調整で完結する人」「確定申告を要する人」「確定申告を要しないが、還付を受けるために確定申告を行う人」の3種類に分かれ、それぞれの提出期限をまとめると次にようになります。
#676(掲載号)
#日髙 真帆
2026/07/09
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