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〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第70回】「「技術上の役務に対する料金」の該当性が問題となった事例(審裁令5.8.15)(その2)」~日印租税条約12条4項~
〈一角塾〉 図解で読み解く国際租税判例 【第70回】 「「技術上の役務に対する料金」の該当性が問題となった事例 (審裁令5.8.15)(その2)」 ~日印租税条約12条4項~ 井上 眞一 〈非居住者・外国法人の日本国内での事業活動に対する国内税法と租税条約の適用の流れ〉 3 検討 (1) インドLLPのわが国租税法上における外国法人該当性 わが国事業体が関連する国際的商取引の場合、わが国と取引先国の法律関係が問題となる。審判所は、当該裁決において、インド法に準拠して設立され、インドに所在する事業体J社を「インドLLP法に基づき設立された法人」であるとし、わが国租税法上の法人に該当するとしている。まず、わが国及びインド租税法における法人及びLLPの相違について検討をする。 わが国租税法については、所得税法2条1項6・7号及び法人税法2条1項3・4号で内国法人は「国内に本店又は主たる事務所を有する法人をいう。」及び外国法人は「内国法人以外の法人をいう。」と定義し、「法人の内外区別を法人の本拠地(本店又は主たる事務所)により行っている」(※5)だけで、「法人」についての定義がない。租税法上「法人」という文言は借用概念である。 (※5) 岡村忠生「米国デラウェア州法に基づいて組織されたリミテッド・パートナーシップの法人性」ジュリスト1466号(2015年)10頁。この中で岡村教授は、デラウェア州法LLP事件の最高裁判決について、本判決は、「租税法上の外国法人の意義について、明白な誤りをおかしている。」とし、「外国法に準拠する法人も内国法人となる場合があるし、逆もある。租税法の定義規定は『内国法人』と『外国法人』に共通する用語として『法人』を用いているから、最高裁は、両社に通ずる租税法上の『法人』の意味を探らなければならなかったはずである。」と批判している。 借用概念は「他の法分野におけると同じ意義に解釈するのが、租税法律主義=法的安定性の要請に合致している」(※6)と解し、「憲法を頂点におく同一法体系の下においては、同一用語は格別の理由がない限り同一の意味に解する」(※7)という統一説(※8)がほぼ定着している。しかし、「借用概念についても、合理的理由が存するかぎり、借用先の私法と異なる意味に解しうる余地が残されていることは当然のことである」(※9)と考えられる。 (※6) 金子宏『租税法〔第24版〕』弘文堂(2021年)127頁。 (※7) 村井正「『租税法における借用概念』の問題点」『現代租税法の課題』東洋経済新報社(1973年)60頁。最高裁第二小法廷昭和35年10月7日判決の原審からの引用。 (※8) 統一説・独立説・目的適合説の3つの見解がある。独立説は、「租税法の解釈にあたり、民法や商法の概念を借用したものであるとしても、その解釈は租税法独自に行うべきであるとする考え方」で、「独立説や統一説を理論的立場の表明であり、具体的解釈論のあり方を示すものとして、ティプケの目的適合説が主張される。」水野忠恒『所得税法の制度と理論-「租税法と私法」論の再検討』有斐閣(2006年)38頁。 (※9) 村井正『租税法と私法』大蔵省印刷局(1982年)127頁。 法人は、民法33条1項において「法人は、この法律その他の法律の規定によらなければ、成立しない」と規定され、外国法人は、同法35条1項において、「外国法人は、国、国の行政区画及び外国会社を除き、その成立を認許しない。ただし、法律又は条約の規定により認許された外国法人は、この限りでない。」と規定する。条文中の「認許」は、「外国法によって法人格を付与された社団又は財団に対して、国内において法人としての活動を承認することと解されている」(※10)。会社法においても1条で「会社の設立、組織、運営及び管理については、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによる。」、3条で「会社は、法人とする。」と規定される。すなわち、法人は民法や会社法によってのみ設立が認められる。 (※10) 日本公認会計士協会「外国事業体課税のあり方について」租税調査会研究報告第6号(中間報告)(2002年)3頁。したがって、外国で設立された法人格を有しない組織は、日本法においても法人格を有しないことになる。LLCがわが国私法上外国法人として取り扱われるかどうかは、「認許」の考え方に照らせば、LLCが(ア)外国の法律に基づいて設立されているか、(イ)法人格が付与されているか、(ウ)商事会社であるか、が判定基準となる。中里実『金融取引と課税-金融革命下の租税法-』有斐閣(1998年)第6節「セキュリタイゼイションと課税」2「租税法中心の議論と民法36条を前提とした議論」に同様の説明がある。 また、外国会社については会社法2条1項2号で「外国の法令に準拠して設立された法人その他の外国の団体であって、会社と同種のもの又は会社に類似するものをいう。」、同項1号で、会社は、「株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社をいう。」と定義する。同法5条において「会社(外国会社を含む。次条第1項、第8条及び第9条において同じ。)がその事業としてする行為及びその事業のためにする行為は、商行為とする。」と規定する。会社は法人とされ、「民法の認許の考え方にしたがえば、外国の民事会社は商事会社ではないから、当然に『認許』されるものではなく、法人格を付与されないことになる」(※11)。したがって、統一説における外国法人は、外国の法律に準拠して設立され、その外国法によって法人格が付与された商事会社ということになる。 (※11) 前掲(※9)3頁 次に判例から検討をすると、外国の法令に準拠して設立されたLLPのような事業体(判例には「組織体」という文言が使用されているが、以下「事業体」という)が、わが国法人税法上の外国法人に該当するか否かの問題について取り扱った事件に米国デラウェア州のInvestment Limited Partnership(投資事業有限責任会社、以下「LPS」という)の最高裁判決(平成27年7月17日民集69巻5号1253頁)がある。 最高裁平成27年7月17日判決に至るまでの、東京地裁平成23年7月19日判決及び東京高裁平成25年3月13日判決、大阪地裁平成22年12月17日判決及び大阪高裁平成25年4月25日判決、最高裁判決の第1審名古屋地裁平成23年12月14日及び原審名古屋高裁平成25年1月24日判決において、外国事業体がわが国において法人に該当するか否かの問題について分類すれば、①外国私法準拠法と②内国私法準拠法に分かれる(※12)。 (※12) 加藤友佳「米国リミテッド・パートナーシップの租税法上の「法人」該当性」ジュリスト1496号(2016年)112頁 最高裁判決は、原審である名古屋高裁判決での外国事業体判断を変更し、「外国法に基づいて設立された組織体が所得税法2条1項7号等に定める外国法人に該当するか否かを判断するに当たっては、まず、より客観的かつ一義的な判定が可能である」観点から「①当該組織体に係る設立根拠法令の規定の文言や法制の仕組みから、当該組織体が当該外国の法令において日本法上の法人に相当する地位を付与されていること又は付与されていないことが疑義のない程度に明白であるか否かを検討する」こととし、これができない場合には、次に、当該組織体の属性に係る観点から、「②当該組織体が権利義務の帰属主体であると認められるか否かを検討して判断すべきものであり、具体的には、当該組織体の設立根拠法令の規定の内容や趣旨等から当該組織体が自ら法律行為の当事者となることができ、かつ、その法律効果が当該組織体に帰属すると認められるか否かという点を検討する」ことになると判示し、米国デラウェア州改正統一リミテッド・パートナーシップ法(“DELAWARE REVISED UNIFORM LIMITED PARTNERSHIP ACT”(2025年3月現在は“DELAWARE REVISED UNIFORM PARTNERSHIP ACT”))に準拠して設立されたLPSについて、所得税法2条1項7号等に定める外国法人に該当するとした(※13)。 (※13) 金子宏教授は、前掲(※6)書553頁において、「LLPについては、設立地の法律によって法人格を与えられても、法人該当性の有無については、法人格の有無のほかに、その活動によって得られる損益の帰属主体であることがその本質的要素(本質的属性)であると解すべきところ(デラウェア州法がパートナーシップに法主体性を認めたのは、パートナーシップをめぐる取引の安定性・安全性を確保するためであると解される)、たとえば、デラウェア州のパートナーシップは損益の帰属主体ではなく、損益はパートナーにパススルーするから、法人には当たらないと解するべきである。」と述べている。 ただし、この後2017年2月に国税庁は、英文のみで「日本居住者がパートナーとなっている米国LPに支払われる所得は、米国LPからの配当にかかわらず、日本居住者のパートナーによって取得され、パートナーの手元にある現在の課税対象として扱われ、米国LPが米国連邦所得税の目的で法人として課税される団体として分類されることを選択しない限り、日本のパートナーの手元にある所得の性質と源泉は、当該所得が米国LPによって取得された源泉から直接取得されたかのように決定され」るとして、当該判決とは矛盾する通知を公表している。 推定ではあるが、この通知の背景として、2003年に改訂された「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約」(以下「日米租税条約」という)の締結の存在があったのではないだろうか。日米租税条約は4条6項においてentity classificationを規定している。すなわち、4条6項 において「a 日本(米国)から取得される所得で、米国(日本)において組織された団体(例えば、LLC、Partnership)を通じて取得され、米国(日本)の税法上、当該団体がいわゆるパススルーとして取り扱われる場合、受益者、構成員等である米国(日本)の居住者が受領する所得の部分にのみ租税条約の適用があり得る。 b 日本(米国)から取得される所得で、米国(日本)において組織された団体(例えば、LLC、Partnership)を通じて取得され、米国(日本)の税法上、当該団体が課税主体として取り扱われる場合、米国(日本)の団体が受領する所得の部分に租税条約の適用がありうる。」と、日米両締約国の間で課税上の取扱いが異なる事業体について、これらの事業体又はその構成員等の取得する所得に対して、一定の要件の下、条約の特典が与えられることを定めている。つまり、日米租税条約4条6項aが適用されるための変更であると考える。 次に、J社の法人該当性を検討すると、2005年に創設された、わが国の「有限責任会社事業組合契約に基づく法律」に準拠して設立されたLLP(有限責任事業組合)は、民法上の組合と同じ課税関係で取り扱われる。したがって、構成員課税(パススルー課税)となり、組織段階では課税せず、出資者に直接課税する仕組みで、LLPの事業で利益が出たときには、LLP段階で法人課税は課されず、出資者への利益分配に直接課税される。これに対して、インド法(THE LIMITED LIABILITY PARTNERSHIP ACT, 2008、以下「インドLLP」という)上のLLPは、第2章有限責任パートナーシップの性質の第3条で「有限責任パートナーシップは法人となる。」と定められ、第1項「有限責任パートナーシップは、この法律に基づいて設立され、法人化された団体であり、そのパートナーとは別の法的実体である。」と規定される。また、インドLLPは、法人税法において30%の法人税が課され、パススルー税制の制度はない。 統一説から見れば、J社はインドの法律に準拠して設立され、その法律によって法人格が付与された商事会社ということになる。インド国内では法人税が課税される。商事会社については、「商行為(絶対的商行為及び営業的商行為)を営業として行うことを目的として設立された会社」(※14)で、J社はX社とソフトウエア開発等の商行為をしているので商事会社に該当する。したがって、J社はわが国において外国法人として扱われる。 (※14) 法令研究会『法律用語辞典 第2版』有斐閣(2000年)722頁 次に、最高裁平成27年7月17日判決から検討しても、インド法条文により、外国法人に該当する。したがってJ社は外国法人に該当する。また、日印租税条約3条2項(f)は「『法人』とは、法人格を有する団体又は租税に関し法人格を有する団体として取り扱われる団体をいう。」とし、インドLLPはインドLLP法3条からも法人としての扱いが租税条約からも導ける。ただし、日印租税条約には、日米租税条約4条6項のentity classificationに関する条項が規定されていないが、このような条項があれば、双方の国の事業体が、どちらの国の法律に従うのかの判断が迅速かつ明確になる可能性がある。 (2) J社がX社の支店である可能性 インドLLP法3条で、「LLPは法人(body corporate)とする。(1)LLPは、この法律に基づいて設立され、法人化された法人である」ので、J社は法人である。したがって、X社とは別法人であり、支店の可能性はないだろう。それでは、J社が、X社の子会社の可能性はどうであろう。 わが国会社法における子会社は、2条3号で「会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社その他の当該会社がその経営を支配している法人として法務省令で定めるものをいう。」、そして、同条3号の2で子会社等について「イ 子会社、ロ 株式会社の経営を支配している者(法人であるものを除く。)として法務省令で定めるもの」と、子会社の判断基準を実質的な支配関係の有無で判断することになっている。法人税法においても、法人税基本通達9-4-1の(注)で「子会社等には、当該法人と資本関係を有する者のほか、取引関係、人的関係、資金関係等において事業関連性を有する者が含まれる。」と定義し、資本関係以外の実質的な要素によっても子会社になることが示され実質判定基準を示している。 インド会社法の「THE COMPANIES ACT, 2013」は、2条20項において、「会社」の定義を「会社とは、この法律または以前の会社法に基づいて設立された会社を意味する。」と規定する。同条87項において「『子会社(subsidiary company)』または『子会社(subsidiary)』とは、他の会社(つまり、親会社)との関係において、親会社が以下のいずれかの会社をいう」として、 ①取締役会の構成を支配している、又は②自己又は1社以上の子会社と共同で、総株式資本の半分以上を行使又は支配している。この条項の説明で、「会社」という表現には、あらゆる法人が含まれるとする。また、インドLLP法によれば、LLPには6条で少なくとも2名の個人のパートナー(partner)が必要とされる。7条において、パートナーのうち指定パートナー(designated partner)が2名必要で、うち1名はインド居住者(会計年度中に120日以上インドに滞在した者)でなければならないとされる。すべてのパートナーが法人である場合、又は1名以上のパートナーが個人と法人を兼ねるLLPの場合は、そのようなLLPのパートナー又はそのような法人の指名人である少なくとも2名の個人が指定パートナーとして行動することが規定されている。 わが国及びインドの法律から判断すると、J社はX社の子会社である。X社のJ社に対する出資割合は99.9%であり、J社と実質的支配関係にあると考えられる。インド法人税の税率は30%であるが、外国子会社合算税制における税負担割合の計算結果によっては、当該税制適用が該当する場合も考えられる。 (3) 日印租税条約12条条文からのアプローチ X社とJ社の間には契約関係がなく、成果物も不明である。日印租税条約は、12条6項において、「『技術上の役務に対する料金』とは、技術者その他の人員によって提供される役務を含む経営的若しくは技術的性質の役務又はコンサルタントの役務の対価としてのすべての支払金をいう。」とし、「技術上の役務に対する料金」にコンサルタント役務対価が含まれる。 日印租税条約12条7項に「使用料又は技術上の役務に対する料金の支払の基因となった使用、権利又は情報について考慮した場合において、使用料若しくは技術上の役務に対する料金の支払者と受益者との間又はその双方と第三者との間の特別の関係により、使用料又は技術上の役務に対する料金の額が、その関係がないとしたならば支払者及び受益者が合意したとみられる額を超えるときは、この条の規定は、その合意したとみられる額についてのみ適用する。この場合には、支払われた額のうち当該超過分に対し、この条約の他の規定に妥当な考慮を払った上、各締約国の法令に従って租税を課することができる。」と規定される。X社との契約で交わした合意した金額を超える場合、当該超過分に対する課税措置を規定している。 例えば、仮にJ社がX社の子会社に認定されなかった場合(当該裁決のようにJ社をX社とは独立した法人としてとらえた子会社として判断しない場合)、X社とJ社の間に契約がないことから合意金額がないことになり、この条約の他の規定に妥当な考慮を払った上、各締約国の法令に従って租税を課することができる。すなわち、源泉徴収義務はないことになる。 K社については、「付属書A及び付属書Bにおいて既に定義されている範囲を超える作業が生じた場合には、請求人とK社が別途合意した上で、K社が作業を行う旨合意したものと認められる」。次の文言が「そうすると、付属書A及び付属書Bは、請求人とK社との間で、本件プラットフォームの開発におけるK社の業務の範囲を定めたものであると認められる。」と続くことから、業務範囲を確認するための確認で、実際に付属書A及び付属書Bにおいて既に定義されている範囲を超える作業が生じた場合の合意があったか否かの検証が実施されたかは確認されていない。 (4) X社とK社及びL社とのソフトウエア取引について OECD及び米国は、ソフトウエア取引を含むデジタル・コンテンツ取引について規定を設けている。 OECDは、Model Tax Convention on Income and on Capital 2014 (Full Version)(以下「OECDモデル租税条約」という)The Tax Treatment of Software (adopted by the OECD Council on 23 July 1992)において、ソフトウエア取引の貿易が「サービス貿易」に関する作業の大部分を占めることから、国境を越えたソフトウエアの開発と移転に関して問題があるとし、この問題について分析をしている。 主な検討、分析した問題はソフトウエアの権利に関する加盟国の商法と慣行、ソフトウエアに対する支払の性質、加盟国の国内法及び二重課税に関する条約及びOECDモデル条約の適用とその規定の明確化又は修正である。また、ソフトウエアの税務処理に関連するOECDモデル二重課税条約の条項は、第7条:事業利益((Business Profits)、第12条:使用料(Royalties)、第13条:キャピタル・ゲイン、第21条:その他所得(Other Income)(原文は、第14条:独立した個人役務(Independent Personal Services)となっているが、2000年に条文から削除されている)に関連する可能性があるとする。 また、米国において、「デジタル・コンテンツに関連する取引の分類」について、最初1996年11月に最初の財務省規則案が公表され、1998年10月に財務省規則が発行された。当該規則は、その後数度の改定を経て、2025年1月14日には取引の分類についてのルールを変更した財務省規則(※16)「26 CFR Part1 INCOME TAX §1.861-18 Classification of ,and source of gross income from digital content transaction.」(以下「§1861-18」という)及び「§1861-19 Classification of cloud transactions」(以下「§1861-19」という)が規定された。 (※16) 「Federal Register/Vol.90, No8/Tuesday, January 14,2025/Rules and Regulations」2977頁~3003頁(2025年3月15日現在)。 §1861-18(a)で「デジタル・コンテンツ」(※17)と「コンピュータ・プログラム」(※18)の定義を定め、次の§1861-18(b)(1)では、デジタル・コンテンツに関連する一般的な取引を4つに分類する。①デジタル・コンテンツに対する著作権の譲渡、②デジタル・コンテンツのコピー(著作権で保護された複製品)の譲渡、③デジタル・コンテンツの開発又は変更のための役務の提供及び④デジタル・コンテンツの開発に関連するノウハウの提供の4つの取引である。 (※17) 「デジタル・コンテンツ」とは、コンピュータ・プログラムなどのデジタル形式で作成された情報の総称で、①著作権で保護されているもの、②著作権が保護されていない理由が、単に時間の経過によるものや作成者がコンテンツをパブリック・ドメインに提供したものが該当する。 (※18) 「コンピュータ・プログラム」とは、特定の結果をもたらすためにコンピュータ内で直接的又は間接的に使用される一連のステートメント又は命令であり、メディア、ユーザーマニュアル、ドキュメント、データーベース、又は同様のアイテムがコンピュータ・プログラムの操作に付随する場合は、それらすべてが含まれる。 そして、§1861-18(b)において、デジタル・コンテンツに関連する取引に複数要素が含まれる場合、上記の4つの取引のうち、原則として、その取引において顧客が受ける主な利益又は価値を確定することで支配的特徴を判断し、取引の種類を分類すると規定する。 このように米国においては、財務省規則§1861-18でデジタル・コンテンツ取引の分類と総収入の源泉、そして§1861-19においてクラウド取引はサービスの提供として分類することについて追加して規定している。また、OECDモデル租税条約及び米国財務省規則においては、デジタル・コンテンツ取引の具体的な例題が数多く示され、取引の分類や租税法上の扱いの参考になると思われる。 これに対して、2025年3月現在、わが国においては、デジタル・コンテンツに関する規定はない。審判所が決定した、X社とインドの各会社の取引についてまとめると、下記のとおりとなる。すべての取引が「技術上の役務に対する料金」とされている。 ソフトウエアは2種類に分類できる。システム・ソフトウエアとアプリケーション・ソフトウエアである。前者はコンピュータ自体の運用プロセスを目的とし、コンピュータの基本的な機能を提供するもので、後者はコンピュータを使用する場合の特定のタスクを実行するためのプログラムで、アプリケーションの幅広い標準ソフトウエアあるいはユーザーのためにカスタマイズされた特別のソフトウエアによって構成されている。 当該裁決に係るソフトウエアは、J社の場合、ソフトウエア開発業務が主で、成果物についても不明であるため、両方のソフトウエアの問題が考えられ、K社及びL社は、成果物から見ると、アプリケーション・ソフトウエアの問題であると考えられる。ソフトウエアの著作権の有無が取引の分類に影響する。 J社の場合、ソフトの内容が不明で、著作権の有無は判断できない。K社の場合、審判所は当該契約について「K社が、本件プラットフォームの開発に関して、原則として付属書A及び付属書Bにおいて定義された範囲の業務を行い、対価の最終支払までに当該定義された範囲の業務をすべて完了させ、本件プラットフォームに関するすべてのソフトウエア等を請求人に引き渡す旨定めた契約」であるとしている。また、X社が成果物を複製・改変版・派生製品の国内外への再販売が可能になる。したがって、成果物の所有は著作権を含めてX社が持つことになると考えられる。 類似の例として財務省規則§1861-18の参考例14及び15がある。例14は既存プログラムを相手側の要望どおり相手国の会計基準に準拠するように修正して、相手側が使用できるようにする契約がある例である。例15はコンピュータ・プログラムの開発のためのサービスの提供についての例で、新しいプログラムを作成した場合の例である。 修正プログラムが入ったソフトウエアをK社からX社に引き渡す取引が、§1861-18(b)(1)①か②に該当にする。このことから当該ソフトウエアの取引は譲渡と考えられる。しかし、契約により、K社が行った改良ソフトウエアを含む取引は、販売等が自由にできることから著作権がX社にあると思われる。 §1861-18(d)において、「サービスの提供 新しく開発又は変更されたデジタル・コンテンツを含む取引が、このセクションのパラグラフ(b)(1)に記載されているサービスの提供を含むかどうかの判断は、取引すべての事実と状況に基づいて行われ、必要に応じて、当事者の意図(合意と行動によって証明される)を含む、デジタル・コンテンツの著作権をどちらの当事者が所有するのか、及び損失リスクが当事者間でどのように配分されるのかが含まれる。」と規定し、著作権の付与状態で取引が分類される。 したがって、X社とK社の取引全体をデジタル・コンテンツの開発又は変更のための取引とみれば役務提供に該当すると思われる。ただし、既存ソフトウエアの著作権がL社に存在するのであれば、ソフトウエアの譲渡と新しいソフトウエアに係る役務提供の2段階の取引であったとも考えられる。L社については、L社が既成のソフトウエアの改良により成果物を作成したのか、まったく新しいソフトウエア作成したのか、また、その著作権がX社又はL社が所有するのか不明であるため、取引分類の判断は難しいと思われる。 4 おわりに 現代社会は、コンピュータの利用が一般化し、その範囲が驚異的なスピードで大きく拡大してきている。海外では、クレジット・カードなどを使用したネット決済が日常的に行われ、現金を使用する機会が少なくなってきている。また、AIを使用した問題解決及び処理、交通機関の自動運転化、ビジネスの業務効率化まで、様々な分野でコンピュータは現代社会に不可欠な存在となっている。社会のさらなる発展・進歩にはコンピュータ・ソフトウエアを含むデジタル・コンテンツの開発は欠かせない。今後益々、国境を越えたデジタル・コンテンツの開発や取引、移転の問題が大きくなる可能性がある。 わが国においては、ソフトウエアの分類、著作権や商標権等は租税法には定義規定はなく、借用概念により判断をしている状況で、今後、租税法律主義の観点からも改善が望まれる。 現在、各国ソフトウエアの支払の対価の取扱いは、事業所得(Business Profits)、使用料(Royalties)、譲渡所得(Capital Gains)、その他所得(Other Income)等に分かれている。この所得の取扱いの相違が、各国間の税法上の問題に発展する可能性もある。また、関連会社間等では、ソフトウエアを譲渡する場合、無償あるいは低コストで取引し、その後メンテナンス費用やシフトの定期的な改良等の作業料として対価を取得することも考えられる。 このように、ソフトウエアを含むデジタル・コンテンツの問題は、多種多様の問題を含んでいる。私法上の取り扱い、支払の対価の性質の確定及び国内租税法と租税条約等の規定の明確化と新たな事象への迅速な修正等の対応が、わが国を含む各国に必要になると考える。 (了)
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2025年3月期決算における会計処理の留意事項 【第5回】~米国の相互関税による会計処理等への影響~
2025年3月期決算における会計処理の留意事項 【第5回】 (追補) ~米国の相互関税による会計処理等への影響~ 史彩監査法人 パートナー 公認会計士 西田 友洋 ◎ 米国の相互関税による会計処理等への影響 2025年4月2日に米国のドナルド・トランプ大統領は、相互関税に関する大統領令を公表した。決算に当たって、当該大統領令による影響を検討する必要があるため、本解説では、相互関税による会計処理等への影響を解説する。 1 米国の相互関税 2025年4月2日に米国のドナルド・トランプ大統領は、相互関税に関する大統領令を公表した。主な内容は、以下のとおりである。 その後、ドナルド・トランプ大統領は4月9日に、56ヶ国・地域に対する相互関税を90日間(米国東部時間4月10日午前0時1分から7月9日午前0時1分まで。中国を除く56ヶ国・地域)停止し、中国に対しては税率を引き上げる大統領令に署名した。 主な国・地域の関税税率は以下のとおりである。 2 相互関税による会計処理等への影響 相互関税により、各国のGDPにマイナスの影響を及ぼすという意見が多い。一方、その影響がどれくらい長く続くのかは不明である。また、貿易は各国、米国との間の取引が多いが米国との取引だけで成り立っているものではなく、複雑に関わりあっていることから、実際の影響がどのようになるかは、現時点では不透明である。各国の貿易の流れも変わる可能性がある。また、株価、為替、金利等に与える影響もあると考えられる。 このような状況ではあるが、輸出産業だけでなく、多くの会社の業績等に影響する可能性は高いと考えられるため、決算にあたり、会計処理等の検討を行う必要がある。 (1) 事業計画への影響 固定資産の減損、税効果等の会計処理においては、事業計画をもとに検討する。事業計画は将来のことであるため、相互関税の影響についても、最新の情報を入手して、その影響を反映した上で作成することが必要である。 ここで、相互関税の影響がどれくらいになるかはわからないが、一方で、会計上の見積りは決算時点の情報を入手した上で、最善の見積りを行うということが必要であるため、「影響がよくわからないから検討しない」というのは適切ではない。決算時点で入手している情報をもとに十分に検討をした上で事業計画を作成し、それを元に固定資産の減損、税効果等の会計処理を行うことが必要である。 また、当期の決算だけでなく、翌期以降も影響する可能性があるため、翌期以降の決算においても、逐次、事業計画を見直す必要がある。 【事業計画作成の際のポイント】 (2) 関係会社株式の評価 相互関税により、関係会社(子会社又は関連会社)の業績に影響を及ぼす可能性がある。そのため、業績が良くない関係会社株式の評価は、留意する必要がある。 特に、中国に対する関税税率は高いため、中国への影響は大きいと考えられる。アメリカに輸出していなくても、国全体の景気が悪化し、業績が悪化するといった直接的な影響だけでなく、間接的な影響も大きい可能性がある。そのため、中国の関係会社株式の評価は、慎重に検討する必要がある。 特に、前期以前から実質価額が株式の取得価額の50%を下回っていて、事業計画に基づき回収可能性ありと判断していた場合、当期以降の決算に当たっては、相互関税の影響も考慮した上で、事業計画を作成し、回収可能性を慎重に検討する必要がある。 (3) 棚卸資産の評価 相互関税の直接的又は間接的な影響により、これまでのように棚卸資産を販売できず、棚卸資産の取得原価が正味売却価額を下回る場合には、棚卸資産の評価損を計上する必要がある。そのため、正味売却価額への影響がないか検討する必要がある。 (4) 開示 相互関税が重要な会計上の見積り項目に重要な影響を及ぼす場合、当該影響については、重要な会計上の見積り注記に記載することが考えられる。また、重要度や将来への影響等を考慮して、追加情報等として注記することも考えられる。 さらに、事業報告や有価証券報告書の【経理の状況】より前の【事業等リスク】に相互関税の影響を記載することも考えられる。 (5) 株主総会対策 株主総会で株主から質問されることも考えられるため、相互関税による影響を整理する必要がある。 (6) 内部統制報告制度の評価範囲 相互関税による業績への影響が大きい場合、今後、グループ各社、各事業の売上、利益等が全体に占める割合が変動する可能性がある。その場合、内部統制報告制度の評価範囲の変更の検討が必要となる可能性もある。 (了)
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〔業種別Q&A〕労使間トラブル事例と会社対応 【第3回】「偽装請負と判断されないためのポイント」
〔業種別Q&A〕 労使間トラブル事例と会社対応 【第3回】 〈製造業〉 〔Q3〕 「偽装請負と判断されないためのポイント」 弁護士法人 ロア・ユナイテッド法律事務所 パートナー弁護士 中野 博和 【Q】 当社では、他社から製品の製造を請け負っています。一般に、偽装請負とならないよう注意が必要であると言われていますが、偽装請負とはどのようなものなのでしょうか。また、偽装請負とならないようにするためには、どのような点に注意すればよいでしょうか。 【A】 偽装請負とは、形式的には請負契約や準委任契約などの業務委託としつつも、実態としてはその受託者の労働者に対して指揮監督をしているものをいいます。偽装請負とならないようにするためには、受託者の労働者に対し、指揮監督をしないように注意が必要です。 ▲ ▼ ▲ 解 説 ▲ ▼ ▲ 1 偽装請負とは 偽装請負とは、形式的には請負契約や準委任契約などの業務委託としつつも、実態としては、当該業務委託の委託者が受託者の労働者に対して指揮監督をしているものをいう。 製造業においては、例えば、業務委託の委託者が、受託者の製造現場等に赴いて受託者の労働者に対して指揮監督を行ったような場合に偽装請負となる。 2 偽装請負を行った場合のリスク (1) 刑事罰等のリスク ア 受託者のリスク 偽装請負が認められる場合、実態としては労働者派遣を行っていることとなるところ、労働者派遣事業を行うためには、厚生労働大臣の許可を得る必要がある(労働者派遣法5条1項)。 受託者が労働者派遣事業の許可を得ずに偽装請負を行った場合には、労働者派遣法5条1項に違反して労働者派遣事業を行ったものとして、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられる可能性がある(同法59条2号)。 なお、受託者が労働者派遣事業の許可を得ているにもかかわらず偽装請負が行われた場合においても、受託者は、その労働者に対する就業条件等明示義務などに違反していると思われるため、30万円以下の罰金に処せられる可能性がある(同法61条)。 イ 委託者のリスク 委託者は、受託者が労働者派遣事業の許可を得ずに偽装請負を行った場合、労働者派遣事業の許可を得ていない事業主から労働者派遣の役務提供を受けたものとして、労働者派遣法24条の2に違反し、厚生労働大臣から行政指導(同法48条1項)、改善命令(同法49条1項)及び勧告(同法49条の2第1項)がなされる可能性がある。勧告に従わなかった場合、その旨を公表される可能性がある(同法49条の2第2項)。 また、受託者が労働者派遣事業の許可を得ているにもかかわらず偽装請負が行われた場合においても、派遣先責任者(労働者派遣法41条)や派遣先管理台帳作成義務(同法42条)に違反していると思われるため、30万円以下の罰金に処せられる可能性がある(同法61条)。 (2) 労働契約申込みみなしのリスク 委託者が、労働者派遣法等の規定の適用を免れる目的で、請負その他労働者派遣以外の名目で契約を締結し、かつ、労働者派遣契約において定めなければならないものとして労働者派遣法26条1項各号に掲げられている事項を定めずに労働者派遣の役務の提供を受けた場合、これについて委託者が善意無過失でない限り、その時点において、委託者から、受託者の当該労働者に対し、労働契約の申込みをしたものとみなされる(労働者派遣法40条の6第1項5号、同項ただし書)。もっとも、上記のとおり、労働者派遣法等の規定の適用を免れる目的が認められることが前提であるため、委託者が善意無過失と認められることは、事実上困難であると思われる。 当該労働契約の申込みは、偽装請負行為が終了した日から1年が経過するまでは撤回することができない(同条2項)ため、この期間までに、当該労働者が労働契約の申込みを承諾する旨の意思表示をした場合には、委託者と当該労働者との間で労働契約が成立することになる。 (3) 安全配慮義務のリスク 委託者が受託者の労働者に指揮監督をしていた場合、委託者は当該労働者に対して安全配慮義務を負う可能性がある。当該労働者が怪我を負った場合、委託者に安全配慮義務違反があれば、委託者に対する当該労働者の損害賠償請求が認められる可能性がある。 3 偽装請負に関する区分基準 すでに述べたとおり、偽装請負とは、形式的には請負契約や準委任契約などの業務委託としつつも、実態としては、当該業務委託の委託者が受託者の労働者に対して指揮監督をしているものをいうため、偽装請負に当たらないようにするためには、当該業務委託の委託者が受託者の労働者に対して指揮監督をしないように注意する必要がある。 どのような場合に指揮監督をしているとして偽装請負に該当するのかについては、厚生労働省が「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年4月17日労働省告示第37号)や疑義応答集などを公表しているので参考になる。 特に、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」からすると、以下の(1)及び(2)のいずれにも該当すれば、偽装請負に当たらないということができる。 (1) 受託者が雇用する労働者の労働力を受託者が自ら直接利用するものであること 具体的には、次のアからウにより判断される。 ア 業務の遂行に関する指示その他の管理を自ら行うものであること 具体的には、次の①及び②により判断される。 特に①について、受託者が、一定期間において処理すべき業務の内容や量の注文を委託者から受けるようにし、当該業務を処理するのに必要な労働者数等を自ら決定し、必要な労働者を選定し、請け負った内容に沿った業務を行っていること、受託者が、作業遂行の速度を自らの判断で決定することができること、及び受託者が、作業の割り付け、順序を自らの判断で決定することができることなどが認められれば、受託者が業務の遂行に関する指示その他の管理を自ら行うものであると認められる。 イ 労働時間等に関する指示その他の管理を自ら行うものであること 具体的には、次の①及び②により判断される。 ①については、受託業務の行う具体的な日時(始業及び終業の時刻、休憩時間、休日等)について事前に受託者と委託者とで打ち合わせ、業務中は委託者から直接指示を受けることのないよう書面を作成し、それに基づいて受託者側の現場責任者を通じて具体的に指示を行っていることや、受託業務従事者が実際に業務を行った業務時間については、受託者自らが把握できるような方策を採っていることなどが認められれば、受託者が労働時間等に関する指示その他の管理を自ら行うものであると認められる。 ②については、受託業務の業務量の増加に伴う受託業務従事者の時間外、休日労働は、受託者側の現場責任者が業務の進捗状況等をみて決定し、指示を行っていることが認められれば、受託者が労働時間等に関する指示その他の管理を自ら行うものであると認められる。 ウ 企業における秩序の維持、確保等のための指示その他の管理を自ら行うものであること 具体的には、次の①及び②により判断される。 特に②については、受託者自らの労働者の委託者の工場内における配置も受託者が決定することや、業務量の緊急の増減がある場合には、前もって委託者から連絡を受ける体制にし、受託者が人員の増減を決定することなどが認められれば、受託者が企業の秩序の維持、確保等のための指示その他の管理を自ら行うものであると認められる。 (2) 請負契約により請け負った業務を自己の業務として当該契約の相手方から独立して処理するものであること 具体的には、次の①から③により判断される。 ③については、具体的には、次の(ⅰ)及び(ⅱ)により判断される。 特に(ⅰ)については、委託者からの原材料、部品等の受取りや受託者から委託者への製品の受渡しについて伝票等による処理体制が確立されていること、委託者の所有する機械、設備等の使用については、請負契約とは別個の双務契約を締結しており、保守及び修理を受託者が行うか、ないしは保守及び修理に要する経費を受託者が負担していることなどが認められれば、受託者が単に肉体的な労働力を提供するものでないと認められる。 (了)
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税理士事務所の労務管理Q&A 【第25回】「年次有給休暇取得日の通勤手当・皆勤手当の取扱い」
税理士事務所の労務管理Q&A 【第25回】 「年次有給休暇取得日の通勤手当・皆勤手当の取扱い」 特定社会保険労務士 佐竹 康男 年次有給休暇取得日における賃金の支払いは労働基準法で規定されていますが、通勤手当や皆勤手当の支払いの要否が問題になることがあります。 そこで今回は、年次有給休暇取得日の賃金について解説します。 * * 解 説 * * 1 年次有給休暇取得日の賃金の計算方法 労働者が年次有給休暇(以下「年休」という)を取得した際の賃金については、以下の3つから選択して支払うことになります(労働基準法39条9項)。ただし、事案ごとにその都度計算方法を変更することはできません。 年次有給休暇に関する事項は、就業規則の絶対的必要記載事項とされています。そのため、年次有給休暇に係る賃金の計算方法も、どの方法を選択するかについて、あらかじめ就業規則等に定めておく必要があります。 (1) 通常の賃金を支払う 〈就業規則の規定例〉 「通常の賃金」とは、労働者が通常どおり勤務していれば支払うことになる賃金のことをいいます。 (注1) 時間給制のパートタイム労働者等については、日によって所定労働時間が変わる労働者がいるケースでは、年休付与日の所定労働時間に応じて賃金を支払います。 (注2) 通常の賃金を支払う方法を選択する場合、通常の出勤をしたものとして扱えば十分であり、その都度上記の計算を行う必要はありません(行政解釈 昭和27年9月20日基発675号)。 (2) 平均賃金を支払う 〈就業規則の規定例〉 「平均賃金」とは、労働基準法で定められた休業手当や解雇予告手当等の金額を算定するための賃金額をいい、「3ヶ月間に支払われた賃金総額÷3ヶ月間の総暦日数」で求めます。賃金締切日がある場合は、直前賃金締切日から起算します。 また、日給、時間給等の場合は「3ヶ月間に支払われた賃金総額÷3ヶ月間の「労働日数」×60%相当額」が最低保障されます。 (3) 健康保険法で規定する標準報酬月額の30分の1に相当する額を支払う 〈就業規則の規定例〉 この場合、使用者は、過半数労働組合又は過半数を代表する者と書面による協定の締結が必要になり、この協定を締結した場合は、これにより賃金を支払わなければなりません。 事業所が社会保険未加入の場合には、標準報酬が適用できないため、実務上は他の2つの方法(上記(1)又は(2))が選択されることが一般的です。 2 通勤手当の支払の要否 (1) 「通常の賃金」(上記1(1))を支払っている場合 ① 通勤手当が実費補償的な性格のものである(出勤日のみ実費を支払う)場合 就業規則等で、「通勤手当は、実際に出勤した日についてのみ支給する。」旨を明記しておけば、年休取得日に通勤手当を支給しなくとも問題ありません。 ② 出勤日にかかわらず通勤手当を定額で支払っている場合 実費補償的性格のものとは言い難いため、年休取得日において、通勤手当の日割分を控除することは違法とまでは言えませんが、好ましくありません。通勤手当を支給する方が年休制度の趣旨に沿うことにもなるため、通勤手当はできるだけ控除しない方が妥当です。 ただし、労働者が退職するときに、退職日まで1ヶ月すべて年休を取得して、一切出勤しないケースがありますが、その場合は、通勤に要する費用はゼロですので、その月の通勤手当を不支給にしても問題ありません。 (2) 「平均賃金」(上記1(2))又は「健康保険法で規定する標準報酬月額の30分の1に相当する額」(上記1(3))を支払っている場合 それぞれの算定額に通勤手当が含まれていますので、別途通勤手当を支払う必要はありません。 3 皆勤手当の支払いの要否 皆勤手当を支給している事業所では、年休を取得した労働者に対して、皆勤手当の支給は必要です。 労働基準法附則第136条では、「年休を取得した労働者に対する、賃金の減額その他不利益な取扱い」を禁止しています(努力義務)。 年休取得を理由とした皆勤手当のカットも「不利益な取扱い」にあたり、年休取得の妨げになってしまうことから、禁止されていると解するのが妥当です。 したがって、皆勤手当を支給している事業所で、「年休を取得した場合には皆勤手当を支給しない」という取扱いにしている場合には、トラブルになる可能性もあるため、注意が必要です。 (了)
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〔検証〕適時開示からみた企業実態 【事例104】Japan Eyewear Holdings株式会社「監査等委員である取締役の辞任及び仮監査等委員選任の申し立てについて」(2025.3.10)
〔検証〕 適時開示からみた企業実態 【事例104】 Japan Eyewear Holdings株式会社 「監査等委員である取締役の辞任及び 仮監査等委員選任の申し立てについて」 (2025.3.10) 公認会計士/事業創造大学院大学教授 鈴木 広樹 1 今回の適時開示 今回取り上げる開示は、Japan Eyewear Holdings株式会社(以下「Japan Eyewear」という)が2025年3月10日に開示した「監査等委員である取締役の辞任及び仮監査等委員選任の申し立てについて」である。 監査等委員である取締役が「一身上の都合」により辞任して、監査等委員1名の欠員が生じるため、仮監査等委員選任の申し立てを裁判所に行うことにした、という内容である。 2 プライム市場への市場区分変更申請の取下げ スタンダード市場に上場しているJapan Eyewearは、東京証券取引所に対してプライム市場への市場区分変更を申請し(2024年11月28日開示「東京証券取引所プライム市場への市場区分変更申請に関するお知らせ」)、2025年2月10日にその市場区分変更が承認されていた(同日開示「東京証券取引所プライム市場への上場市場区分変更承認に関するお知らせ」)。 しかし、その4日後に、その市場区分変更申請を取り下げている(2025年2月14日開示「株式の売出しの中止及び市場区分の変更申請の取下げに関するお知らせ」)。 「内部管理体制に関連して確認すべき事項が発見された」ため、取り下げたとされているが、その「内部管理体制に関連して確認すべき事項」が何かは、明らかにされていなかった。 3 役員によるインサイダー取引 Japan Eyewearは、市場区分変更申請を取り下げた日から3日経った2025年2月17日、「(開示事項の経過)株式の売出しの中止及び市場区分の変更申請の取下げに関連した内部管理体制に関する確認事項のお知らせ」を開示した。 その「1.中止理由」の記載は次のとおりである。 つまり「内部管理体制に関連して確認すべき事項」とは、同社の役員によるインサイダー取引の疑いだったのである。 4 役員は監査等委員である取締役 Japan Eyewearは、役員によるインサイダー取引の疑いについて外部の弁護士による調査を実施し(2025年2月21日開示「当社役員による当社株式の売買に関する件について」)、今回の開示と同じ2025年3月10日、その調査結果を開示している(「(開示事項の経過)当社役員による当社株式の売買に関する件について」)。 その「1.調査の結果」の記載は次のとおりである(一部省略)。 驚くべき点は、インサイダー取引を行った役員は、監査等委員である取締役であった、というものである。 同開示の「2.再発防止策」には、「本調査結果において、本役員が本株式取得を行うに至った原因は、インサイダー取引規制や当社社内規程についての本役員の理解不足に尽きるとの指摘がなされ」たという記載がある。 なぜ同社はそのような人物を取締役に、しかも監査等委員に選んだのだろうか。筆者の周囲にも、法律や会計をまったく知らないのに、上場会社の監査等委員に就任している方がいるが、就任している方も選んだ会社も、そのリスクを認識していないようである。 5 辞任勧告すべきでは 「(開示事項の経過)当社役員による当社株式の売買に関する件について」の「3.今後の対応等」には「本日、本役員から辞任の申出があり、これを受理いたしました」とある。インサイダー取引を行った監査等委員である取締役は、今回取り上げた開示において「一身上の都合」により辞任したとされる、監査等委員である取締役だったのである。 「(開示事項の経過)株式の売出しの中止及び市場区分の変更申請の取下げに関連した内部管理体制に関する確認事項のお知らせ」の「2.今後の対応等」には、次のような記載がある(下線は筆者による)。 Japan Eyewearは、インサイダー取引を行った監査等委員である取締役が「一身上の都合」により辞任するのを認めるべきではなく、同氏に対して辞任勧告を行ったうえで「インサイダー取引を行ったことの責任をとって」辞任してもらうようにすべきだったのではないだろうか。それとも、そうした人物を監査等委員である取締役に選んでしまった自社の責任を感じているのだろうか。 6 性別掲載の意図に対する疑問 Japan Eyewearは、今回の開示の3日後の2025年3月13日、4月に開催される定時株主総会に付議する取締役候補者を開示している(「取締役候補者の選任及び執行役員の体制に関するお知らせ」)。 新任の監査等委員2名は弁護士と公認会計士であるため、今回の人選は問題ないかと思われるが、記載の仕方において気になる点がある。取締役候補者の性別まで記載されているのである。 役員候補者の性別まで記載する開示は珍しく、その開示を見た方の多くは違和感を覚えるのではないだろうか。これまで同社の取締役には女性がいなかったが、取締役候補者の中には女性が1名だけいる。同社は、新たに女性が取締役になることをアピールする意図でもあるのだろうか。 (了)
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《速報解説》 国税庁、「インボイスQ&A」を約1年ぶりに改訂~R7改正のリース税制の整備に伴い一部記載を見直し~
《速報解説》 国税庁、「インボイスQ&A」を約1年ぶりに改訂 ~R7改正のリース税制の整備に伴い一部記載を見直し~ Profession Journal編集部 令和7年4月21日付けで国税庁は、「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」(いわゆる「インボイスQ&A」)を約1年ぶりに改訂した。 今回追加された問答(全10問)は下記のとおり。 ただし、上記の10問はかねてより国税庁ホームページに公表されていたインボイスに関する資料である「多く寄せられるご質問(令和6年7月26日更新)」及び「インボイスの取扱いに関するご質問(令和7年2月25日更新)」に掲載された各問答を取り込んだものであり、新たに公表されたものではない。 また、追加問とは別に一部改訂された問答は全8問あり、注記や一部記載の見直しを行っているほか、海上運送法等の一部を改正する法律の施行に伴う記載の変更(問42)、令和6年度税制改正に係る記載の明確化(問106、問113)や令和7年度税制改正で行われたリース税制の整備に伴う記載の見直し(問40)などが行われている。 (了) ↓お勧め連載記事↓
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《速報解説》 JICPA、「監査ツール(実務ガイダンス)」の改正案を公表~倫理規則改正に伴い記載及び関係様式を変更~
《速報解説》 JICPA、「監査ツール(実務ガイダンス)」の改正案を公表 ~倫理規則改正に伴い記載及び関係様式を変更~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2025年4月21日、日本公認会計士協会は、「監査基準報告書300実務ガイダンス第1号「監査ツール(実務ガイダンス)」の改正」(公開草案)を公表し、意見募集を行っている。 これは、倫理規則改正に伴う記載の変更などである。 意見募集期間は2025年5月21日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な改正内容 次のとおりである(大きく変更している様式)。 (了)
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《速報解説》 会計士協会が「事後判明事実への対応に関する周知文書」を公表~要求事項等に従った事後判明事実への対応例を5つに区分して説明~
《速報解説》 会計士協会が「事後判明事実への対応に関する周知文書」を公表 ~要求事項等に従った事後判明事実への対応例を5つに区分して説明~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2025年4月17日、日本公認会計士協会は、「事後判明事実への対応に関する周知文書」(監査基準報告書560周知文書第1号)を公表した。 これは、事後判明事実への対応について、日本公認会計士協会の会員の理解に資するために公表するものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 事後判明事実に関しては、「監査意見不表明及び有価証券報告書等に係る訂正報告書の提出時期に関する周知文書」(監査基準報告書705周知文書第2号)が公表されている。 しかしながら、「監査意見不表明及び有価証券報告書等に係る訂正報告書の提出時期に関する周知文書」では、進行年度につき意見不表明とした後において、十分かつ適切な監査証拠が入手できず、過年度の有価証券報告書等を訂正すべき内容が確定できない場合については取り扱っていなかった。 「事後判明事実への対応に関する周知文書」は、事後判明事実に関連する監査基準報告書560「後発事象」の要求事項を概説し、次のように、当該要求事項等に従った事後判明事実への対応例を5つに区分して説明している。 (了)
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日本の企業税制 【第138回】「ガソリンの暫定税率をめぐる三党協議の行方」
日本の企業税制 【第138回】 「ガソリンの暫定税率をめぐる三党協議の行方」 一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部副本部長 魚住 康博 〇経緯 国会における「所得税法等の一部を改正する法律案」の審議が終盤に差し掛かった令和7年3月27日、自由民主党、公明党、日本維新の会による「ガソリンの暫定税率」に関する三党協議が開始された。 元々、令和7年度税制改正の議論が行われていた昨年12月、自由民主党、公明党、国民民主党の間で三党税調協議が進められ、12月11日には自公国幹事長同士による合意文書が作成されていた。そこでは、「いわゆる『ガソリンの暫定税率』は、廃止する」と明記されるとともに、「具体的な実施方法等については、引き続き関係者間で誠実に協議を進める」ことで合意に至っている。 ここでは、いわゆる「103万円の壁」の問題については令和8年から引き上げる旨が明記された一方で、「ガソリンの暫定税率」の廃止時期については記載されず、与党の令和7年度税制改正大綱では合意文書の引用に続いて、「自由民主党・公明党としては、引き続き、真摯に協議を行っていく」と記載された上で、自動車関係諸税の見直しについては、車体課税・燃料課税を含む総合的な観点から検討し、産業の成長と財政健全化の好循環の形成につなげていく旨とともに、車体課税については令和8年度税制改正において結論を得ることとされていた。 【自由民主党・公明党・国民民主党の幹事長合意文書(2024年12月11日署名)】 〇自公国三党税調協議の再開 このように、「103万円の壁」と「ガソリンの暫定税率」の両論点ともに幹事長合意以上の具体策までは自公国の三党税調で年内合意に至らず、年明けに議論が持ち越されていた。令和7年2月4日には、第217回国会の閣法第1号議案として、与党税制改正大綱を踏まえた「所得税法等の一部を改正する法律案」が衆議院に提出され、税制改正法案と予算の年度内成立を目指す与党は野党の協力を得るために、2月18日から自公国の三党税調協議を再開した。 協議において、国民民主党としては、ガソリンの値段が上がることで手取りを減らし、生活を圧迫する要因になっている状況にあることから、「ガソリン税の暫定税率」について、時期を明示して、できるだけ早く暫定税率を廃止することを主張していた。一方で与党としては、仮に暫定税率を廃止した場合に、国と地方を合わせて約1.5兆円とも言われる財源の手当ても考慮する必要があることから、令和8年度税制改正の自動車関係諸税全体の見直しの議論の中で、あわせて「ガソリンの暫定税率」廃止に向けての課題や解決策を明確にしていくスタンスを維持していた。 その後、2月26日までの短期間で都合5回にわたる自公国三党税調協議が行われたものの、結果的には合意に至らず、今後も協議が継続されることとなった。 〇国会審議 他方、自公国の三党税調協議の中では、壁となる「103万円」を「160万円」に引き上げる修正案を公明党が提示し、これを自由民主党が了承することで3月4日に与党修正案が衆議院に提出された。その後、参議院での審議も経て、3月31日に与党修正案が国会で成立している。 なお、「ガソリンの暫定税率」について国会審議では、「揮発油税及び地方揮発油税の『当分の間税率』は廃止に向けた検討を速やかに行うとともに、その廃止に当たっては、流通への影響や関係事業者の事務負担等に配慮するとともに、国及び地方公共団体の財政に悪影響を及ぼすことがないよう、安定的な財源を確保するなど必要な措置を講ずるものとすること」との附帯決議が行われている。 【揮発油税等の税率と税収】 〇自公維三党協議 その背景として、与党修正案については、自民党と公明党だけでなく、日本維新の会が賛成したことにより、国会での成立に至った。予算を含めて年度内成立を目指した与党としては、国民民主党とは別に日本維新の会との交渉を重ねていた中、教育無償化や社会保険・社会保障改革に加えて、「ガソリンの暫定税率」についても自公維の協議体を設置し、3月27日から三党での協議を正式に開始している。 第1回の自公維三党協議には、自民党から森山裕幹事長、小野寺五典政調会長、宮沢洋一税調会長、後藤茂之税調小委員長、上野賢一郎議員が、公明党から西田実仁幹事長、岡本三成政調会長、赤羽一嘉税調会長、竹内譲税調副会長、杉久武税調事務局長が、日本維新の会から岩谷良平幹事長、青柳仁士政調会長、斎藤アレックス議員、萩原佳議員がそれぞれ参加した。日本維新の会では、責任ある野党として真摯に協議をするためとした上で、今夏を目途にした暫定税率の廃止を主張している。 4月11日には第2回の自公維三党協議が開催され、実務者による建設的な議論を行う主旨で、自民党から後藤税調小委員長と上野議員が、公明党から竹内税調副会長と杉税調事務局長が、日本維新の会から青柳政調会長と萩原議員がそれぞれ参加した。 協議後の与党による説明では、会合ではまず、「ガソリンの暫定税率」が制定された経緯や現状の問題のほか、ガソリンの価格高騰対策について、政府から説明が行われている。その上で三党による議論を行い、地方財政との関係、地球温暖化対策との関係、社会インフラ整備の財源確保の問題のほか、流通に与える影響に関して、手持ち品還付の問題と交付金の問題が検討すべき課題として整理された。 次回以降、これら5つの点について、政府から深く掘り下げた資料が提出される予定である。また、日本維新の会からは、課題についての党としての考え方、あるいは早期に暫定税率を引き下げていくことの可能性について提言が行われる予定である。ただし、当初、4月14日の週にも第3回協議が開催されるとされていたが、先延ばしになりそうな見込みである。 今夏に実施される参議院議員選挙を睨んで、今後も与野党の議論が活発化することが予想される一方で、米国による関税の問題に起因する市場の混乱への対処も含めて補正予算の必要性も指摘されており、今後の自公維三党協議の行方から目が離せない。 (了)