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《速報解説》 国税不服審判所「公表裁決事例(令和3年1月~3月)」~注目事例の紹介~

 《速報解説》 国税不服審判所 「公表裁決事例(令和3年1月~3月)」 ~注目事例の紹介~   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   国税不服審判所は、2021(令和3)年9月29日、「令和3年1月から3月までの裁決事例の追加等」を公表した。追加で公表された裁決は表のとおり、国税通則法が7件(うち、重加算税の賦課決定に関するものが5件)、所得税法が1件で、合わせて8件となっている。 今回の公表裁決では、8件のうち7件が国税不服審判所によって、原処分庁の課税処分等の全部又は一部が取り消され、納税者の審査請求が棄却されたものは1件となっている。 【表:公表裁決事例令和3年1月~3月分の一覧】※本稿で取り上げた裁決 事例③から⑤については、相続税の申告時における生命保険金等の一部申告漏れの事案であり、⑥と⑦は、第三者が行った所得税の確定申告が問題となった事案である。本稿では、この2種類の事案(いずれも、国税不服審判所が、原処分庁の重加算税の賦課決定処分を取り消し、過少申告加算税のみを認めるという判断を示している)について、検討したい。 なお、複数の争点が存在する裁決に関しても、重加算税の賦課決定処分の可否に係る争点のみを取り上げることを、あらかじめお断りしておく。   1 みなし相続財産に該当する生命保険金の申告漏れについて、「仮装、隠蔽」を認めなかった事例・・・③、④、⑤ これらの事例は、みなし相続財産である複数の生命保険金等を取得した相続人(審査請求人)が、そのうち1件の生命保険金等を含めないで相続税の申告書を提出したことに対し、原処分庁が、こうした審査請求人の行為が国税通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たすとして、重加算税の賦課決定処分をしたものであり、国税不服審判所は、それぞれの事例において、次のように判示して、重加算税の賦課決定処分を取り消したものである。 (1) 事例③ 国税不服審判所は、認定した事実に基づき、被相続人が、その生前に農業協同組合との間で締結していた生命共済に係る契約に基づく死亡共済金について、審査請求人が、当初申告書の提出時において、相続税の申告すべき財産であることを認識していたことを認めたものの、審査請求人が税理士に対して殊更に共済金の存在を秘匿したとまでは認められないという判断をした。 そのうえで、審査請求人が当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたとうかがわせる事情が存在しないのみならず、むしろ、調査担当職員から共済金の申告漏れを指摘された後、遅滞なくそれに応じて修正申告書を提出していたことが認められることから、審査請求人の行為は国税通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たすとはいえず、これに反する原処分庁の主張は理由がないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した。 (2) 事例④ 国税不服審判所は、認定した事実に基づき、審査請求人が、被相続人が生前、G社との間で締結していた2口の生命保険契約に基づき支払を受けた死亡保険金のうち、相続税の申告書に記載していなかった1口の死亡保険金について、相続財産として申告が必要なものであることを認識したものと認めたものの、審査請求人は、被相続人の死亡後、保険担当者からの指摘を受けるまでは、死亡保険金に係る生命保険契約が締結されていた事実すら知らず、当初は申告すべき保険金は1口のみであると誤認していたことに加えて、各保険金の支払請求手続をした時期は、審査請求人が多忙な時期に当たっており、送付された死亡保険金の請求書類を審査請求人が約2ヶ月間そのまま放置していること、死亡保険金が預金口座に振り込まれているものの、通帳の残高の確認を審査請求人自身がしていない可能性があることから、死亡保険金の存在について、審査請求人が主張するような誤認や失念が生じた可能性がないとはいえないと判断した。 そのうえで、原処分庁の主張に対し、審査請求人がそもそも税理士等とのやり取りの際に、死亡保険金が存在しこれについて申告が必要であることを正しく認識していなかった可能性を否定できず、また、その後の行為からしても、当初から本件相続税の課税財産を過少に申告することを意図して特段の行動をしたと認めることができないことから、原処分庁の主張には理由がないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した。 (3) 事例⑤ 国税不服審判所は、認定した事実に基づき、審査請求人が、銀行支店の担当者からの説明を受けて、「相続税の申告書に記載のない保険契約について、納税のための生命保険契約であり、全て税金を納めるためのものであり、被相続人の財産にはならない」と、みなし相続財産として相続税の課税の対象となることはないと誤って理解してしまうなどした可能性も直ちに否定できないことから、この保険金について税理士に伝えなかった可能性も否定できないものというべきであり、審査請求人が保険金の存在について税理士に伝えなかったことをもって、当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたとまではいえず、他に審査請求人に特段の行動があったと認めるべき事情も見当たらないと判断した。 そのうえで、原処分庁の主張については、審査請求人が、保険金が相続税の課税の対象とならないものと誤解し、かかる誤解に基づいて、保険金について税理士に伝えなかった可能性を否定できないことから、原処分庁の主張には理由がないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した。   2 第三者の「隠蔽仮装行為」による過少申告と重加算税・・・⑥、⑦ この2つの事例は、審査請求人は異なるものの、「隠蔽仮装行為」を行った第三者は同一の者であると認められ、その手口も同じであるため、事実関係と国税不服審判所の判断については、まとめて説明したい。 (1) 事実関係 F社が経営するキャバクラ店において、ホステス業を営んでいた審査請求人は、常連客であったHに所得税の確定申告を依頼することとし、F社作成の支払調書と明らかに事業と関連性のない支払に係るものも含めて、多数の領収書類を渡していたが、4月下旬になっても所得税等の還付金が振り込まれなかったことから、所得税等の確定申告書が提出されているかを原処分庁に確認したところ、未提出である旨の回答があったため、Hに対し、同申告書の提出について確認したところ、Hは、審査請求人に係る虚偽の支払調書を作成のうえ、所得税等の確定申告書及び所得税青色申告決算書(一般用)を原処分庁に提出した。 (2) 国税不服審判所の判断 国税不服審判所は、Hの行為について、過大な源泉徴収税額を記載した虚偽支払調書を作成したうえで、これに基づいて申告書を作成し、申告書に虚偽支払調書を添付して原処分庁に提出しており、この虚偽支払調書の作成行為は、過少申告行為そのものとは別の隠蔽又は仮装行為に該当するとしたものの、Hが作成した試算表については、申告書及び決算書と同様に、架空の過大な必要経費の額が記載され、事実がわい曲されたものであったことは認めたものの、試算表の作成が、申告書の作成及び提出とは別の行為に該当すると認めることは困難であることから、Hが、審査請求人の事業所得に係る必要経費の計上につき、過少申告行為そのものとは別に、事実の隠蔽又は仮装と評価すべき行為を行ったとはいえないと判示した。 そして、審査請求人については、仮にHが税理士であると信じたとしても、通常の注意を払えば、Hが税理士の資格を有しないことを容易に認識することができたというべきであり、申告書作成の受任者を誠実に選定せず、かつ、Hが、審査請求人の確定申告につき、事実の隠蔽又は仮装行為を行うことを認識し、又は認識することができたものと認められるとし、全証拠によっても、申告書の作成及び提出に係るHの行為を、審査請求人の行為と同視することが相当でないとする特段の事情は認められないと判断した。 その結果、原処分庁による重加算税賦課決定処分のうち、源泉徴収税額の過大計上については、国税通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たしているものの、事業所得に係る必要経費の過大計上については、同項に規定する重加算税の賦課要件を満たしていないことから、その一部を取り消した。 (了)
#439(掲載号)
#米澤 勝
2021/10/06
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《速報解説》 会計士協会、DXの進展に伴い必要となるデジタルトラストの基礎知識と電子署名等のトラストサービスの利用に関するQ&Aを公表

《速報解説》 会計士協会、DXの進展に伴い必要となるデジタルトラストの基礎知識と 電子署名等のトラストサービスの利用に関するQ&Aを公表   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2021年10月5日、日本公認会計士協会は、「デジタルトラストの基礎知識と電子署名等のトラストサービスの利用に関するQ&A」(IT委員会研究報告第59号)を公表した。 これは、デジタルトラストの概要と、電子署名、タイムスタンプ等のトラストサービスに関する基礎的な知識を解説するものである。 デジタルトラストは、仮想空間において、個人や組織の匿名性と公開性をコントロールすることによって社会活動又は経済活動の信頼性を高めるためのデジタル技術を中心とした枠組みである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 デジタルトラストの概要 デジタルトラストは、仮想空間において、個人や組織の匿名性と公開性をコントロールすることによって社会活動又は経済活動の信頼性を高めるためのデジタル技術を中心とした枠組みである。 また、電子認証局が発行する電子証明書を使った電子署名、タイムスタンプ、eシール等はトラストサービスと呼ばれており、トラストサービスは、デジタルトラストを実現するためのソリューションとして位置付けられる。 電子署名、eシール、タイムスタンプについて、図表を用いて解説されている。 デジタル化が進む中、電子データとして記録された内容に、紙面における署名又は押印と同等の効力を得ることができる情報を付与する技術の利用が模索され、その代表的な技術として電子署名、eシールといった技術が使用されるようになった。 2 電子署名 電子署名のQ&Aとして、次の事項について記載している。 3 タイムスタンプ タイムスタンプのQ&Aとして、次の事項について記載している。 4 eシール eシールのQ&Aとして、次の事項について記載している。 (了)
#438(掲載号)
#阿部 光成
2021/10/06
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《速報解説》 消防庁からの消防団員報酬見直しに係る通知を受け、所基通28-9の改正案がパブコメに付される~消防団員の出動に係る報酬の取扱いを非課税から課税へ~

 《速報解説》 消防庁からの消防団員報酬見直しに係る通知を受け、 所基通28-9の改正案がパブコメに付される ~消防団員の出動に係る報酬の取扱いを非課税から課税へ~   税理士 菅野 真美   〔消防団員とは〕 消防団員とは、市町村の非常備の消防機関を構成するメンバーであり、多様な消防防災活動を行っている。全国で約81万人(令和2年4月1日時点)いる消防団員は、地方公務員の非常勤特別職という位置づけであり、報酬もある。 報酬は団員、団長等により区分され、令和2年度地方交付税算入額によると団員は年額36,500円、団長は年額82,500円であり、出動手当(1回あたり)は7,000円とされているが、実際には市町村により異なり、団員の報酬の年額の平均額は令和2年4月1日時点で3万925円となっている。   〔現行の所得税法での取扱い〕 全国に約81万人いる消防団員への報酬の所得税法上の取扱いについては所得税基本通達28-9により、下記のように定められている。 つまり、年額5万円以下の報酬は非課税であり、出動手当も費用弁償とされるため非課税である。   〔消防団員への報酬の見直し〕 消防庁では、消防団員数が減少している一方で、災害が多発し、団員の負担が増加していることを踏まえ、消防団員の処遇等に関する検討会を開催し検討を行った。そして、消防庁において「報酬等の基準」(年額報酬36,500円/年(団員級)、出動報酬8,000円/日(災害時))を策定し、各市町村等に令和3年4月13日付で通知を発出した。この結果、団員への報酬は、年額報酬と出動報酬(出動に応じた成果給的な報酬)の2種類となる。   〔通達の改正へ〕 この通知を受けて、所得税基本通達28-9を以下のように改正したいとして、令和3年11月1日まで意見公募が行われている(下線部分は改正箇所)。 つまり、5万円以下の定額の年額報酬は、従来通り非課税であるが、出動報酬は課税となる。 なお、改正通達は、令和4年4月1日以後に行う職務に係る報酬について適用される予定である。 (了)
#438(掲載号)
#菅野 真美
2021/10/05
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《速報解説》 公認会計士法等の改正を受け、会計士協会が「監査報告書に係るQ&A」の改正を確定~電磁的方法による監査報告書等の作成に関する11の設問を追加~

《速報解説》 公認会計士法等の改正を受け、 会計士協会が「監査報告書に係るQ&A」の改正を確定 ~電磁的方法による監査報告書等の作成に関する11の設問を追加~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2021年10月4日、日本公認会計士協会は、「監査報告書に係るQ&A」(監査基準委員会研究報告第6号)の改正を公表した。これにより、2021年7月26日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。公開草案に対するコメントの概要及び対応も公表されている。 これは、2021年5月19日に公布された「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」における公認会計士法の改正並びに2021年8月4日に公布された「公認会計士法施行規則」、「財務諸表等の監査証明に関する内閣府令」及び「財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令」の改正を受けたものである。公認会計士法の改正は2021年9月1日から施行される。 なお、2021年8月19日付けで(ホームページ掲載日は2021年8月26日)、日本公認会計士協会は、「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」における公認会計士法の改正等を受けて、次のものを公表している。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 監査報告書について、「自署・押印」から「署名」へ改正する(Q1-1、Q1-4)。 電磁的方法によって監査報告書等を作成することが可能となることから、「監査報告書の電子化に関するQ&A」として次の事項を記載している。 (了)
#438(掲載号)
#阿部 光成
2021/10/05
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《速報解説》 日本監査役協会、「監査役監査基準」等の公開草案を公表~改正会社法及び改訂版CGコード、監査人の監査基準の改訂に対応~

《速報解説》 日本監査役協会、「監査役監査基準」等の公開草案を公表 ~改正会社法及び改訂版CGコード、監査人の監査基準の改訂に対応~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2021年10月4日、日本監査役協会は、次のものの改定に関する公開草案を公表し、意見募集を行っている。 これは、会社法の改正及び改正会社法に係る法務省令の改正、コーポレートガバナンス・コードの改訂等を踏まえたものである。各機関設計間の記載振り・体裁の統一なども行われている。 意見募集期間は2021年10月15日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 改正会社法への対応 次のものである。   Ⅲ 改訂版コーポレートガバナンス・コードへの対応 次のものである。   Ⅳ 監査人の監査基準の改訂への対応 次のものである。 (了)
#438(掲載号)
#阿部 光成
2021/10/05
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《速報解説》 会計士協会が「専門実4400「合意された手続業務に関する実務指針」に係るQ&A」の改正案を公表~指針の改正に伴い「職業的専門家としての判断」「独立性」等について見直しや新設を行う~

《速報解説》 会計士協会が「専門実4400「合意された手続業務に関する実務指針」に係るQ&A」の改正案を公表 ~指針の改正に伴い「職業的専門家としての判断」「独立性」等について見直しや新設を行う~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2021年10月1日、日本公認会計士協会は、「監査・保証実務委員会研究報告第29号「専門業務実務指針4400「合意された手続業務に関する実務指針」に係るQ&A」の改正」(公開草案)を公表し、意見募集を行っている。 これは、2021年4月30日から意見募集されている「専門業務実務指針4400「合意された手続業務に関する実務指針」の改正」(公開草案。意見募集期限2021年6月30日)に伴うものである。 意見募集期間は2021年11月1日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 職業的専門家としての判断について(Q4) 合意された手続業務に関して、業務実施者は職業的専門家としての判断が求められる。 業務実施者は、業務の状況を考慮して、合意された手続業務の契約の新規の締結及び更新、並びに実施及び報告において職業的専門家としての判断を行使しなければならない(専門実4400第19項)。 2 独立性(Q8) 専門実4400に基づく合意された手続業務において、法令又は契約条件に基づく場合を除いて、業務実施者の独立性は求められていない。 しかしながら、各国の倫理規程、法令、その他の職業的専門家としての要求事項又は合意された手続業務の業務対象に関する契約、プログラムもしくは取決めにより、独立性に関する要求事項が規定される場合がある(専門実4400のA14項)とし、独立性に関して詳細に記載している。 3 合意された手続及びその手続実施結果の記載(Q11) 合意された手続及び手続の実施結果の記載に関する留意事項として、合意された手続業務の契約を締結する条件として、合意された手続及びその手続実施結果は、明確で、誤解を招かず、かつ、様々な解釈が生じない方法で、客観的に記述することが求められている(専門実4400第23項(3))とし、「手続実施結果の適切な記載」と「手続実施結果の不適切な記載」の例を示しつつ、詳細に記載している。 (了)
#438(掲載号)
#阿部 光成
2021/10/01
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《速報解説》 会計士協会、令和3年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しを受け、監査上の対応について注意を喚起~特にスキャナ保存制度下のスキャン文書の利用を前提とした監査への対応求める~

《速報解説》 会計士協会、令和3年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しを受け、監査上の対応について注意を喚起 ~特にスキャナ保存制度下のスキャン文書の利用を前提とした監査への対応求める~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2021年9月29日付けで(ホームページ掲載日は2021年9月30日)、日本公認会計士協会は、「令和3年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しを受けた監査上の対応について(お知らせ)」を公表した。 これは、令和3年度税制改正における電子帳簿等保存制度見直しを受けて、監査に携わる会員各位に注意喚起を図ることを目的とするものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 令和3年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しに伴い、2021年3月31日付けで、次の法令が改正されており、2022年1月1日から施行される予定である。 本改正により、特にスキャナ保存制度について、適正事務処理要件が廃止されるなど、適用において大幅な要件緩和がなされており、監査人がスキャナ保存の対象となる書類を監査証拠として利用する場合に、その真正性に関して慎重な検討が必要となる可能性も想定される。 日本公認会計士協会の会員各位におかれては、本改正の趣旨を十分に踏まえ、企業のスキャナ保存制度下において作成されたスキャン文書の利用を前提とした監査計画の策定、監査手続の実施に努めていただき、事前に被監査会社と協議の上、対応の必要性を検討していただきたいとのことである。 なお、本改正を受けて、新たな公表物の作成に着手し、検討を行っているとのことである。 参考として、【令和3年度税制改正における電子帳簿等保存制度見直しの概要】が記載されている。 (了)
#438(掲載号)
#阿部 光成
2021/10/01
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《速報解説》 国税庁、適格請求書発行事業者の登録申請受付開始(R3.10.1~)に伴い「適格請求書発行事業者公表サイト」を開設

《速報解説》 国税庁、適格請求書発行事業者の登録申請受付開始(R3.10.1~)に伴い 「適格請求書発行事業者公表サイト」を開設   Profession Journal編集部   本日(令和3年10月1日)より、インボイス(適格請求書)が発行できる事業者(適格請求書発行事業者)の登録申請受付がスタートした。 令和5年10月1日から施行される適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)では、売手は、買手である取引相手(課税事業者)からの求めに応じ、現在の「区分記載請求書」に「登録番号」、「適用税率」及び「消費税額等」の記載を追加したインボイス(適格請求書)を交付しなければならない。また、買手側は、仕入税額控除の適用を受けるために、原則として、取引相手(売手)である登録事業者から交付を受けたインボイスの保存等が必要となる。 ただし、インボイスを発行できるのは、税務署長の承認を受けた適格請求書発行事業者に限られ、適格請求書発行事業者となるためには、納税地の所轄税務署長に「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出して登録を受ける必要があり、この申請受付開始が令和3年10月1日とされていた。 なお、かねてより、登録された適格請求書発行事業者の情報(登録番号や登録日、氏名・名称など)については、国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」で確認できるとされていたところ、本日の申請受付開始に合わせ、この公表サイトが開設された。 公表サイトでは、令和3年10月中に登録申請書を提出し登録を受けた適格請求書発行事業者について、令和3年11月1日(月)に一括して掲載するとしており、こちらのページでは検索方法や検索結果の表示例、ダウンロード機能等について説明されている。 インボイス制度開始時(令和5年10月1日時点)で適格請求書発行事業者として登録を受けるためには、原則として令和5年3月31日までに登録申請書を提出する必要がある(一定の宥恕規定あり)。まだ時間的余裕はあると言えるが、すでに消費税の課税事業者となっている場合は、早めに登録を完了させることで取引先への周知もでき事業の安定につながる側面もあろう。一方、免税事業者の場合は、適格請求書発行事業者の登録を受けることで令和5年10月1日以降、課税事業者となるため、それに係る負担増や取引先からインボイスを求められる可能性などについて、こちらのリーフレットを確認する等、事前に検討を行う必要がある。 なお、登録申請書を郵送で提出する場合は既報のとおり、各国税局に設置された「インボイス登録センター」宛てとなるため、注意されたい。 (了) ↓お勧め連載記事↓
#438(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2021/10/01
お知らせ その他お知らせ

プロフェッションジャーナル No.438が公開されました!~今週のお薦め記事~

2021年9月30日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.438を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
#Profession Journal 編集部
2021/09/30
税務 税務・会計 解説 解説一覧

谷口教授と学ぶ「税法基本判例」 【第6回】「租税法規の文理解釈と租税通達の文理解釈」-最判令和2年3月24日訟月66巻12号1925頁-

谷口教授と学ぶ 税法基本判例 【第6回】 「租税法規の文理解釈と租税通達の文理解釈」 -最判令和2年3月24日訟月66巻12号1925頁-   大阪大学大学院高等司法研究科教授 谷口 勢津夫   Ⅰ はじめに 今回は、租税法律主義(形式的租税法律主義=法律によらない課税の禁止)の要請のうち税法の解釈適用、とりわけ税務行政による解釈適用に関する要請としての合法性の原則について、租税通達との関係を検討することにする。 合法性の原則は、「租税法は強行法であるから、課税要件が充足されている限り、租税行政庁に租税の減免の自由はなく、また租税を徴収しない自由もなく、法律で定められたとおりの税額を徴収しなければならない。」(金子宏『租税法〔第23版〕』(弘文堂・2019年)87頁)という要請として定式化されることがあるが、そのような定式化は、租税の減免等の納税者にとって有利な税務行政上の取扱いについてだけでなく不利な税務行政上の取扱いについても法律の根拠と効果裁量の否定を要求することを「当然の前提」とするものであると考えられる。 ただ、法律による行政の原理の伝統的な理解(侵害留保原理)によると、特に前者すなわち納税者にとって有利な取扱いについては法律の根拠と効果裁量の否定の要求が軽視されがちになるおそれがあることから、戦後における租税法律主義の民主主義的再構成及び債務関係説的再構成を受けて、そのようなおそれにいわば「警鐘」を鳴らすために前記のような定式化がされているものと解される。要するに、合法性の原則は、租税法律主義(法律によらない課税の禁止)が税務行政を名宛人とする場面におけるその「別称」ともいうべきものである(以上の理解については、拙稿「租税法律主義(憲法84条)」日税研論集77号(2020年)243頁、286頁以下のほか、谷口教授と学ぶ「税法の基礎理論」【第48回】参照)。 さて、今回取り上げる最判令和2年3月24日訟月66巻12号1925頁(以下「本判決」という)では、みなし譲渡課税(所税59条1項)における取引相場のない株式の時価(「当該株式の譲渡の時における価額」)が直接の争点であったが、その前提として、その評価方法を定める通達の「解釈」が問題となった。本判決には宇賀克也裁判官と宮崎裕子裁判官の補足意見(以下「宇賀補足意見」、「宮崎補足意見」という)が付されているが、これらの補足意見は通達の「解釈」の問題に関するものである。今回は、本判決を素材にして、租税通達の「解釈」の問題を検討することにする。 本件で問題となった通達の規定は所得税基本通達59-6であるが、本件当時のこの規定は、「その時における価額」(所税59条1項柱書)を「23~35共-9に準じて算定した価額による」とした上で、23~35共-9の(4)ニにおいて取引相場のない株式のうち売買実例のある株式等に該当しないものについて定められる、その株式の発行法人の1株当たりの純資産価額等を参酌して「通常取引されると認められる価額」を、59-6の(1)~(4)によることを条件に、財産評価基本通達(以下「評価通達」という)の178から189-7まで(取引相場のない株式の評価)の「例により算定した価額」とする旨を定めていた。ここで、59-6の(1)は、評価通達188の(1)に定める同族株主に該当するかどうかは、株式を譲渡又は贈与した個人の当該譲渡又は贈与直前の議決権の数により判定することとしていた。 このように、所得税基本通達59-6は、「その時における価額」すなわち時価の意義について、学説(金子・前掲書409頁、714頁、拙著『税法基本講義〔第7版〕』(弘文堂・2021年)【285】等参照)・判例(最判平成22年7月16日訟月57巻6号1910頁、最判平成25年7月12日民集67巻6号1255頁等)において分野を問わず一般に支持されている解釈に従い、「当該譲渡の時における客観的交換価値、すなわち、それぞれの資産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立する価額」(東京地判平成25年10月22日税資263号順号12315)というような解釈を採用した上で、これに該当する事実の認定に関して、評価通達の定める評価方法を包括的に採用したものと解される(財産評価が課税要件事実の認定であることについては前掲拙著【56】、「例による」の意義については角田禮次郎ほか編『法令用語辞典〔第10次改訂版〕』(学陽書房・2016年)785頁参照)。   Ⅱ 本判決と原判決との比較検討 本判決は、原審・東京高判平成30年7月19日訟月66巻12号1976頁(以下「原判決」という)の判断を破棄したが、その破棄された判断は次の判示(下線筆者)に基づくものである。 これに対して、本判決は、譲渡所得課税の趣旨に関する確立した判例の立場(最判昭和43年10月31日集民92号797頁、最判昭和47年12月26日民集26巻10号2083頁等)を前提にして、次のとおり判示し(下線筆者)、評価通達188の(3)の文言ないし文理から「離れた」判断を示した。 原判決と本判決とを対比すると、両判決は、みなし譲渡課税(所税59条1項)における取引相場のない株式の時価について、その意義の点では、同じく所得税基本通達59-6の解釈を採用しつつも、その(時価に該当する事実の認定のための)評価方法の点では、①「譲受人の会社への支配力」に着目するか(原判決)又は②「譲渡人の会社への支配力」に着目するか(本判決)で異なる判断を示している。 本判決は、所得税法59条1項に規定する「その時における価額」について所得税基本通達59-6と同じ解釈によって定立した規範に該当する事実を認定するに当たって、譲渡所得課税の趣旨に照らして事実認定方法(評価方法)について判断したものであるが、譲渡所得課税の趣旨が譲渡の時点で「譲渡人の下に生じている増加益」に対して課税することにある以上、前記の②に着目し「譲渡人の会社への支配力の程度に応じた評価方法」を用いるのが論理的かつ自然である。したがって、本判決は至極妥当な判断を示したものといえる。 これに対して、原判決は所得税基本通達59-6について「その文理に忠実に解釈する」として前記の判断を示しているが、しかし、「所得税基本通達59-6は、評価通達の『例により』算定するものと定めているので、相続税と譲渡所得に関する課税の性質の相違に応じた読替えをすることを想定しており、このような読替えをすることは、そもそも、所得税基本通達の文理にも反しているとはいえない」(宇賀補足意見)と考えるならば、原判決は必ずしもそのような文理解釈をしたものとはいえないように思われる。 原判決にはそのような問題もあるが、原判決の根本的な問題は、何よりもまず、租税法規と租税通達とで「文理解釈」の意味が異なることを正解していない点にある。この点については、項を改めて検討する。   Ⅲ 「他者拘束的」文理解釈と「自己拘束的」文理解釈 1 租税法規の文理解釈と租税通達の文理解釈との関係 税法の解釈について、租税法律主義の下では、次の見解(清永敬次『税法〔新装版〕』(ミネルヴァ書房・2013年)35頁)が説くように、厳格な解釈が要請され、それは文理解釈を意味することに異論はなかろう(金子・前掲書123頁、前掲拙著【44】等参照)。 税法の解釈について文理解釈が要請されるのは、上の見解が説くように、「法律によらない課税」を禁止し、もって租税法律主義(法律に基づく課税)を実現するためである。租税法律主義は課税権者による恣意的・不当な課税から国民の財産及び自由を保護することを目的とするが、その目的の実現のために税務行政に法律に基づく課税を命じるのである。換言すれば、税務行政は課税において、法律という他者(立法者)の制定したルールによって拘束されるのである。 この意味において、税法(租税法規)の文理解釈は、税務行政に対して「他者拘束」を厳格に要求する解釈方法である。このような「他者拘束的」文理解釈は、税務行政による恣意的・不当な課税を阻止するために重要な役割を果たすものであるが、その役割は「文理解釈の侵害防御権的機能・自由権保障機能」と呼ぶことができる(前掲拙著【44】参照)。 この機能は、租税法規の(「他者拘束的」)文理解釈においてこそ発揮されるものであり、税務行政が租税法規について自己の解釈を示した租税通達の文理解釈においては、直接的には発揮されない。租税通達の文理解釈において発揮されるのは、「通達の内容が法の正しい解釈に合致するものである」(最判昭和33年3月28日民集12巻4号624頁)場合に限られるのであり(この場合に税務行政を拘束するのは法的には租税法規であるが)、そうでない場合には、租税通達の文理解釈は、原判決が前記引用判示のその前段で説示する租税法規の文理解釈とは同列に論じることはできないのである。すなわち、「通達の文言をいかに文理解釈したとしても、その通達が法令の内容に合致しないとなれば、通達の文理解釈に従った取扱いであることを理由としてその取扱いを適法と認めることはできない。」(宮崎補足意見) 原判決はこのことを誤解している。「租税法規の解釈は原則として文理解釈によるべきであり、みだりに拡張解釈や類推解釈を行うことは許されないと解される」との原判決の判示は、「租税法規はみだりに規定の文言を離れて解釈すべきものではな[い]」(最判平成22年3月2日民集64巻2号420頁等)との確立した判例の立場に従ったものであり妥当な判示であるが、しかし、原判決には、このような租税法規の文理解釈と租税通達の文理解釈とを同列に論じたところに、根本的な誤解がある。 2 原判決の「真の誤解」 では、何が原判決をこのように「迷走」(藤谷武史「判批」ジュリスト1548号(2020年)10頁、11頁)させ根本的な誤解に陥らせたのであろうか。 原判決は、租税通達の文理解釈について判示するに当たって、「所得税基本通達及び評価通達は租税法規そのものではないものの、課税庁による租税法規の解釈適用の統一に極めて重要な役割を果たしており、一般にも公開されて納税者が具体的な取引等について検討する際の指針となっている」と説示しているが、この説示の内容ないし認識はそれぞれ妥当なものであり、「課税に関する納税者の信頼及び予見可能性を確保する」ことも重要である(宇賀補足意見参照)。問題は、原判決が「課税に関する納税者の信頼及び予見可能性を確保する見地」から租税通達の文理解釈の要請を導き出したところにあると考えられ、この問題こそが原判決を「迷走」させ根本的な誤解に陥らせたものと考えられる。 この点について、「本件通達に定めていない要件を、通達の改正をしないまま解釈により付加することは、租税法律主義の趣旨に抵触する。」と判示した東京高判平成23年8月4日税資261号順号11728(以下「平成23年東京高判」という)に着目し、「本件原審判決[=原判決]は、課税要件明確主義には言及していないが、通達に合理性がある限り、その通達の文言に忠実な解釈によることが納税者の予測可能性の確保のために必要である、という論理構造において、上記裁判例[=平成23年東京高判]の影響を見てとることができる。」と指摘する見解(藤谷・前掲「判批」11頁)がある。 確かに、原判決も平成23年東京高判も、「通達の文言を殊更に読み替えて異なる内容のものとして適用すること」(以下「文言の読み替え」という)と「本件通達に定めていない要件を、通達の改正をしないまま解釈により付加すること」(以下「要件の追加」という)という表現の違いはともかく、通達の文言から離れた解釈を問題にしこれを許さないものとする点では、共通しており、租税通達の解釈について文理解釈を要請するものと解される。その限りでは、前記の見解は正鵠を射たものといえよう。しかしながら、両判決において文理解釈の要請違反は、以下で述べるとおり、異なる意味をもつと考えられる。 原判決が許されないものとする「文言の読み替え」は、譲渡所得課税の趣旨には適合しており、逆に、読み換えをしないまま通達規定を文言どおり適用すると譲渡所得課税の趣旨に反する結果となるが故に、原判決(による租税通達の文理解釈)は租税法律主義(ここでは合法性の原則)「それ自体」に抵触する。つまり、原判決は「他者拘束的」文理解釈の要請に違反するものである。 これに対して、平成23年東京高判では、追加される要件の内容が組合課税の規定ないし趣旨に反するとはされておらず(そうでなければ、同判決を受けてされた平成24年改正後の所基通36・37共20柱書但書も組合課税の規定・趣旨に反することになろう)、「要件の追加」だけが租税法律主義の「趣旨」に抵触するとされているにとどまる。ここでいう租税法律主義の「趣旨」は、租税法律主義の予測可能性・法的安定性保障機能(前掲拙著【11】参照)を意味するものと解される。この機能は、原判決のいう「課税に関する納税者の信頼及び予見可能性を確保する見地」と言い換えてもよく、租税通達の解釈にも妥当すると考えられる。 そのような機能ないし「見地」からすると、税務行政は、自らが租税通達において示した租税法規の解釈を、当該通達の文言を離れて自由に(明示的な通達改正なしに)変更してはならないという拘束(自己拘束)を受けることになる(無論、明示的な通達改正の場合でも、信義則違反の問題は生じ得る)。平成23年東京高判では、租税通達についてこのような「自己拘束的」文理解釈の要請に反する解釈が許されないとされたと解される。 このように考えてくると、原判決は、「他者拘束的」文理解釈を検討すべきであった解釈問題について、「自己拘束的」文理解釈を検討した上で判断したところに、「真の誤解」があると考えるべきであろう。前記の見解が説くように原判決に平成23年東京高判の影響をみてとることができるとしても、「租税法律主義を根拠とした予測可能性の確保の要請から通達の『文理解釈』を導くという錯綜した論法」(藤谷・前掲「判批」11頁)は、平成23年東京高判それ自体が採用したものではなく、この判決の論理構造を誤解して原判決が採用したものとみるべきであろう。 なお、組合課税については、所得税法における個人単位主義や所得の帰属に関する定め(前掲拙著【202】【231】参照)の解釈によりパス・スルー課税が導き出されているが、組合損益の計算方法については通達で総額方式、中間方式及び純額方式の選択が認められ、その選択要件についても通達で定められるなど「法律の規律密度が極めて低く、通達が空隙を埋める役割を果たしている」(藤谷・前掲「判批」11頁)ことからすると、平成23年東京高判のように、租税通達について「自己拘束的」文理解釈を問題にする余地はあると考えられる(前掲拙著【39】参照)。この余地を排除するかどうかは立法の問題である。 これに関連して、もう1点付言しておくと、租税通達の「自己拘束的」文理解釈の要請が本領を発揮するのは、合法性の原則の枠外でその外在的例外として妥当する信義則(前掲拙著【83】参照)との関係においてであろう。「課税に関する納税者の信頼及び予見可能性を確保する見地から、上記各通達の意味内容についてもその文理に忠実に解釈するのが相当であり、通達の文言を殊更に読み替えて異なる内容のものとして適用することは許されないというべきである。」という原判決の考え方は、本件についてはともかく、一般論としては、信義則との関係で十分に成り立つものである。というのも、「通達の公表は、最高裁昭和60年(行ツ)第125号同62年10月30日第三小法廷判決・裁判集民事152号93頁にいう『公的見解』の表示に当たり、それに反する課税処分は、場合によっては、信義則違反の問題を生ぜしめる」(宇賀補足意見)からである。   Ⅳ おわりに 租税法規の文理解釈と租税通達の文理解釈との関係については、従来ほとんど意識的には論じられてこなかったように思われるが、「租税法の法令解釈において文理解釈が重要な解釈原則であるのと同じ意味で、文理解釈が通達の重要な解釈原則であるとはいえないのである。」(宮崎補足意見。下線筆者)ということを明らかにした点で、本判決は重要な意味をもつものである。「租税法令の解釈方法を巡る議論を整序する上で重要な意味を持つ判決と評価できよう。」(藤谷・前掲「判批」11頁)。 ただ、本判決の次の補足意見(①=宇賀補足意見、②=宮崎補足意見)が指摘した通達作成手法の問題は、租税法律主義の趣旨ないし予測可能性・法的安定性保障機能からすれば、改善すべき重要問題であるにもかかわらず、本判決後の通達改正(令和2年8月28日付課資4-2ほか1課共同「『所得税基本通達の制定について』の一部改正について(法令解釈通達)」。これに関する「趣旨説明(情報)」参照)でもその改善は末端的にしか実現しなかった。抜本的改善が望まれるところである。 (了)
#438(掲載号)
#谷口 勢津夫
2021/09/30
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