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プロフェッションジャーナル No.426が公開されました!~今週のお薦め記事~
2021年7月1日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.426を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
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monthly TAX views -No.102-「米国の富裕層増税、所得税か富裕税か」
monthly TAX views -No.102- 「米国の富裕層増税、所得税か富裕税か」 東京財団政策研究所研究主幹 森信 茂樹 米国では、非営利団体のプロパブリカが、IRS(内国歳入庁)から納税記録を非公式に入手し、次のようなタイトルで、アマゾン・ドット・コム創業者のジェフ・ベゾス氏ら富裕層が、莫大な資産に比べて所得税をほとんど払っていないことを公表した。 “The Secret IRS Files: Trove of Never-Before-Seen Records Reveal How the Wealthiest Avoid Income Tax” 米国(そして多くの先進諸国)では、資産保有に直接課税する富裕税は導入されておらず、彼らが保有する資産に対して税を払っていないことは、税制上なんら問題はない。 しかしこの事実は、米国民の公平感を逆なでし、民主党左派から、バイデン大統領の提案している富裕層の所得税(キャピタルゲイン)増税案では不十分だ、富裕税を導入すべきだという議論が生じている。 この議論は、今後のわが国税制を考えていく上で示唆に富むため、以下で紹介したい。 * * * バイデン大統領は4月に、10年間で1.8兆ドル(約200兆円)の歳出規模の「米国家族計画」を公表、その財源は、所得税最高税率の引上げ(37%から39.6%へ)や、世帯所得100万ドル(約1億1,000万円)超に対するキャピタルゲイン増税(20%から39.6%へ)などによる増収であり、10年間で1.5兆ドル(約170兆円)を充てるとしている。 この件について6月にはイエレン財務長官の公聴会が行われ、この中で民主党左派で予備選挙(プライマリー)に立候補し富裕税を主張したウォーレン上院議員は、富裕層の所得税を強化しても格差是正には効果がないことや、純資産が5,000万ドルを超える個人には2%、10億ドルを超える場合は3%の課税を適用する累進富裕税導入の必要性をあらためて主張した。 なぜキャピタルゲイン・資産所得への増税では格差是正効果がないのか。ウォーレン議員のブレーンであるエマニュエル・サエズ氏とガブリエル・ズックマン氏(いずれもUCバークレー教授)の著書である『つくられた格差』(山田美明訳,光文社,2020)から要旨を筆者なりに要約すると、以下のとおりだ。 一般的に考えてみよう。毎年3%の収益を生み出す資産があるとして、そこに40%の所得税をかけても、彼らの富は毎年1.8%増え続ける(3%×(1-0.4))ことになる。キャピタルゲイン課税強化では、資産格差の是正にはつながらないといえよう。 * * * 富裕税のデメリットとして、資本の国外逃避、資産評価の困難性、納税のキャッシュフローがないことの3つが挙げられるが、これに対して彼らは以下のように答える。 このような議論の背景にあるのは、資産保有額上位0.1%の世帯が、全世帯の保有株式の17%を保有し、上位1%の富裕層が全米総資産の4割を保有するという米国の巨大な資産格差と、権力と結びつき世論形成に大きな影響を与える富裕層の存在だ。 わが国にはそこまでの資産格差はないが、株式報酬やストックオプションの拡大など米国型グリーディー資本主義は拡大しつつある。まずは、所得税の累進機能を低下させている金融所得への分離課税の見直しから議論を始めていく必要がありそうだ。 (了)
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令和3年度税制改正における『連結納税制度』改正事項の解説 【第2回】「DX投資促進税制の創設」
令和3年度税制改正における 『連結納税制度』改正事項の解説 【第2回】 「DX投資促進税制の創設」 公認会計士・税理士 税理士法人トラスト 足立 好幸 [2] DX投資促進税制の創設 連結納税制度においても、デジタル技術を活用した企業変革を進める観点から、「つながる」デジタル環境の構築(クラウド化等)による企業変革に向けた投資について、税額控除又は特別償却ができる措置が創設されている(2年間の時限措置)。 連結納税制度におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)投資促進税制は、各連結法人を計算単位として税額控除額が計算され、各連結法人の税額控除額の合計額を連結法人税額から控除し、各連結法人の税額控除額が個別帰属額となる。 具体的には以下の取扱いとなる(新措法68の15の7①②④⑤)。 以上のとおり、税額控除の限度となる法人税額基準額について、連結グループ全体の連結法人税額を考慮すること、住民税の課税標準からの控除について、連結親法人が中小企業者(適用除外事業者を除く)に該当するかで判断することを除いて、単体納税制度と同様の取扱い(新措法42の12の7①②④⑤、新措令27の12の7①②)となる。 また、DX投資促進税制は、次に掲げる連結法人について適用できない(新措法68の15の7⑧)。 (了)
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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例31】「法人の破産手続きと破産債権に関する貸倒れの時期」
法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例31】 「法人の破産手続きと破産債権に関する貸倒れの時期」 国際医療福祉大学大学院教授 税理士 安部 和彦 【Q】 私は、中部地方において工作機械製造業を営む株式会社A(3月決算法人)で財務・経理部長を務めております。わが社の主要な取引先である自動車業界及び自動車部品業界は、わが国の製造業の中でもいわゆる「勝ち組」とされてきましたが、最近は将来の自動車に対する環境規制に関するグローバルスタンダードが、わが国企業が得意とする「ハイブリッド方式」や「水素エンジン」ではなく、欧米企業が注力している「電気自動車(EV車)」となる見込みで、そうなると自動車本体はもちろんのこと、エンジンをはじめとする自動車部品を製造しているわが国企業への影響は絶大なものとなり、業界の将来を考えると、正直いって頭が痛いところです。 そのような中、現在自動車部品メーカーの間では、様々な形の業務提携や事業再編が進行中であり、取引先の中には経営状況が悪化して事業の継続が困難となっている会社も現れております。残念ながら、わが社の取引先の中にもコロナ禍の前から急速に財務状態が悪くなり、経営破綻する企業が出てきております。当該企業(株式会社B)は3年ほど前に経営破綻し、管轄する地方裁判所から破産宣告を受けましたが、当社は、それまで再三にわたりコンタクトを取り1円でも多く売掛債権を支払うよう迫ってきたB社の元代表取締役との音信が不通となり、最早債権回収の手段は尽きたことを根拠に、2020(令和2)年2月に取締役会を開催し、B社に対する売掛債権38,000,000円につき、回収不能になったとして貸倒処理すべき旨を決議しました。そのため、当社は2020(令和2)年3月期に、当該売掛債権38,000,000円全額について貸倒損失として損金経理を行い、損金の額に算入しております。 ところが、先日受けた税務調査で調査官は、当社のB社に対する売掛債権が回収不能となったのは、裁判所による破産終結の決定があったときであり、本件の場合は官報によりB社の破産事件終結の旨の公示があった時点(2019(平成31)年3月4日)であるとして、当該売掛債権に係る貸倒損失は2019(平成31)年3月期に計上すべきといってきました。これは、当社の債権回収に係る努力を全く評価しない暴論であると考えるのですが、それでも調査官の主張に従うべきでしょうか、教えてください。 なお、本件に関し、取引先B社の経営破綻とA社の貸倒処理に関する時系列を示すと以下の通りとなっており、A社の2019(平成31)年3月期は、38,000,000円の貸倒損失計上前は、10,000,000円程度の黒字、2020(令和2)年3月期は1億円超の黒字決算となっております。 〇 取引先の経営破綻と貸倒処理の時系列 【A】 法人の破産手続きにおいては、配当されなかった部分の破産債権を法的に消滅させる免責手続きはなく、裁判所が破産法人に財産はないことを公証の上で出すところの廃止決定又は終結決定があり、当該法人の登記が閉鎖されることとされており、この決定がなされた時点で当該破産法人は消滅することからすると、当該決定等によりA社が破産法人(B社)に対して有する金銭債権もその全額が滅失したと解するのが妥当といえます。 したがって、本件の場合、A社のB社に対する売掛債権が回収不能となったのは、裁判所による破産終結の決定があったときであり、遅くとも官報によりB社の破産事件終結の旨の公示があった時点であると考えられることから、当該売掛債権に係る貸倒損失は、2020(令和2)年3月期ではなく2019(平成31)年3月期に計上すべきといえます。 ■ ■ ■ 解 説 ■ ■ ■ (1) 法律上の貸倒れに係る損失 法人の有する金銭債権に関する法律上の貸倒れには、大きく分けて、法的整理手続きに基づくものと、関係者の協議に基づくものとがある。このうち前者には、さらに以下の3種類の方法(及び破産)があり(※1)、法人税基本通達9-6-1によれば、それぞれ以下の事実が発生した日の属する事業年度において貸倒れとして損金の額に算入するものとされている。 (※1) 当該3種類の手続き及び破産は、さらに清算型(破産及び特別清算)及び再生型(民事再生及び会社更生)に分類できる。伊藤眞『破産法・民事再生法(第4版)』(有斐閣・2018年)29頁。 (2) 破産手続きと事実上の貸倒れ 一方で、同じ法的枠組みであっても、破産手続きの場合における貸倒損失の計上については注意を要する。すなわち、法人の破産手続きにおいては、配当されなかった部分の破産債権を法的に消滅させる免責手続きはなく(※2)、裁判所の終結決定があったとしても、法律的には債権が消滅したとはいえない。 (※2) 個人である債務者(破産者)については、破産手続開始申立てがあった日から破産手続開始決定が確定した日以後1月を経過する日までの間に、破産裁判所に対して、免責許可の申立てをすることができる(破産法248①)。 しかし、裁判所が破産法人に財産はないことを公証の上で出すところの廃止決定又は終結決定があり、それに基づき当該法人の登記が閉鎖されることとなるため、この決定がなされた時点で当該破産法人は消滅することから(※3)、破産法人にもはや分配可能利益は存在しないのは明らかといえる。したがって、この決定がなされた時点で、その全額が回収できないことが明らかになったといえることから、その事業年度において貸倒れとして損金経理をすることにより、その全額が損金に算入されることとなる(法基通9-6-2)。 (※3) 法人格の消滅に伴って、法人の債務負担が消滅する。伊藤前掲(※1)書752、762頁参照。 また、回収不能が明確になった場合においては、直ちに貸倒処理を行うというのが会社法ないし企業会計の考え方であり(会規5④)、企業の利益水準に合わせてそのタイミングを操作するという方法は、公正妥当な会計処理の基準から逸脱しているといわざるを得ないであろう。 (3) 破産債権に係る貸倒れの時期が争われた事例 上記(2)で見た通り、破産債権に係る貸倒れの時期の判断は必ずしも容易ではないが、その判断基準として参考になりそうな裁決事例(国税不服審判所平成20年6月26日裁決・TAINSコード:J75-3-21)があるので、以下で見ていきたい。 ① 事案の概要 本件は、製品製造業を営む同族会社である審査請求人(D社)が、売掛債権の全額が回収できなくなったとして損金の額に算入した貸倒損失の金額及び消費税の課税標準額に対する消費税額から控除した貸倒れに係る消費税額について、原処分庁が、当該売掛債権の全額につき回収ができないことが明らかになったのは当事業年度(平成17年10月1日~平成18年9月30日)より前の事業年度であるから、当事業年度の損金の額には算入できないなどとして行った法人税並びに消費税及び地方消費税の更正処分等に対し、請求人は、当該売掛債権の全額回収ができないことが明らかとなったのは当事業年度であるとして、同処分の一部の取消しを求めた事案である。 本件は破産債権に係る貸倒れの時期が問題となった事案であるが、その経緯は以下の通りである。 上記事実関係に基づき、本件破産事件と貸倒処理に関する時系列を示すと以下の通りとなる。 〇 本件破産事件と貸倒処理の時系列 なお、官報において、本件破産事件の破産を終結する旨公告されているタイミング(平成11年6月)と、取締役会において、F社に対する売掛債権16,231,609円(税抜金額)が回収不能となったとして、本件事業年度(平成17年10月1日~平成18年9月30日)において貸倒処理することが承認されたタイミング(平成18年9月15日)との間に相当の期間があるが、その理由について請求人(D社)は、以下のような経緯があった旨審判所に文書を提出している。 ② 事案の争点 請求人のF社に対する売掛債権が全額回収できないことが明らかとなった日はいつか。 ③ 審判所の判断 ④ 本事案から学ぶこと 法人の法的整理手続きには、会社更生法・民事再生法・会社法(特別清算)に基づくものと、破産法に基づくものとがある。ここで留意すべきは、破産法に基づく場合、会社更生法等とは異なり、債権の切捨て(免責)という概念(※4)がないため、裁判所の終結決定があったとしても、法律的には債権は消滅しないという点である。そうなると、破産法に基づく破産手続きの場合、債権の消滅をどの時点で認識し、貸倒処理を行い損金算入するのかが問題となり得る。 (※4) 例えば民事再生法の場合、再生計画の認可決定が確定したことにより、再生債務者は、原則としてすべての再生債権について免責となる(民事再生法178①)。 上記の裁決事例ではこの点が明確化されている。すなわち、「裁判所が破産法人の財産がないことを公証の上、出すところの廃止決定又は終結決定があり、当該法人の登記が閉鎖されることとされており、この決定がなされた時点で当該破産法人は消滅することからすると、この時点において、当然、破産法人に分配可能な財産はないのであり、当該決定等により法人が破産法人に対して有する金銭債権もその全額が滅失したとするのが相当であると解され、この時点が破産債権者にとって貸倒れの時点と考えられる」として、破産手続きの終結決定があった時点で貸倒損失が発生したとしている。 実務的には、裁判所は終結決定があったときには、直ちにその旨を公告し、破産者に通知しなければならない、とされている(破産法220②)。また、当該破産手続きの終結決定があった旨の公告によって、破産手続き終結の効果が生じる(※5)。したがって、仮に当該公告があった後において、債権者が売掛債権の回収を図ろうと様々な努力を行っていたとしても、それによって貸倒損失が発生した時期を遅らせることができるわけではないのである。これは、回収不能が明確になった場合においては、直ちに貸倒処理を行うというのが会社法ないし企業会計の考え方であるということからもいえるのであり(会規5④)、企業の利益水準に合わせてそのタイミングを操作するという方法は、公正妥当な会計処理の基準から逸脱しているといわざるを得ないであろう。 (※5) 伊藤前掲(※1)書750頁。 (4) 本件へのあてはめ 法人の破産手続きにおいては、配当されなかった部分の破産債権を法的に消滅させる免責手続きはなく、裁判所が破産法人に財産はないことを公証の上で出すところの廃止決定又は終結決定があり、当該法人の登記が閉鎖されることとされており、この決定がなされた時点で当該破産法人は消滅することからすると、当該決定等によりA社が破産法人(B社)に対して有する金銭債権もその全額が滅失したと解するのが妥当といえる。 したがって、本件の場合、A社のB社に対する売掛債権が回収不能となったのは、裁判所による破産終結の決定があったときであり、遅くとも官報によりB社の破産事件終結の旨の公示があった時点であると考えられることから、当該売掛債権に係る貸倒損失は(黒字決算の)2020(令和2)年3月期ではなく(赤字決算の)2019(平成31)年3月期に計上すべきである。これは、回収不能が明確になった場合においては、直ちに貸倒処理を行うというのが会社法ないし企業会計の考え方であるということからもいえる。 (了)
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〔Q&Aで解消〕診療所における税務の疑問 【第7回】「中小企業経営強化税制等の特例措置適用の可否と実務上の注意点」
〔Q&Aで解消〕 診療所における税務の疑問 【第7回】 「中小企業経営強化税制等の特例措置適用の可否と実務上の注意点」 税理士法人赤津総合会計 税理士・医業経営コンサルタント 赤津 剛史 【Q1】 医療法人が取得した医療機器は、中小企業経営強化税制に定める特別償却(即時償却)を適用できるのでしょうか。 【A1】 医療法人が取得した医療機器は、中小企業経営強化税制の適用要件に該当しないため、同税制の適用を受けることができません。 ● ● ● 解 説 ● ● ● 中小企業等経営強化法施行規則第8条第2項において、中小企業経営強化税制の前提となる経営力向上設備等の要件が定められています。その中で、器具備品については、括弧書きにおいて「医療機器にあっては医療保健業を行う事業者が取得又は製作をするものを除く。」と規定されています。 したがって、医療法人が取得した医療機器は、中小企業経営強化税制に定める特別償却(即時償却)の適用を受けることはできません。 【Q2】 医療法人が取得した医療機器は、中小企業投資促進税制に定める特別償却(いわゆる中小企業等の機械等の特別償却)を適用できるのでしょうか。 【A2】 医療法人が取得した医療機器は、中小企業投資促進税制に定める「機械及び装置」に該当しません。したがって、中小企業投資促進税制に定める特別償却の適用を受けることはできません。 ● ● ● 解 説 ● ● ● 医療機器は「器具及び備品」に該当し、「機械及び装置」には該当しないため、中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除の規定の適用はありません。 本制度の対象資産は次のとおりとされています。 医療機器は、耐用年数省令別表第一の「器具及び備品」のうち「8 医療機器」に該当し、「機械及び装置」には該当しません。また、上記に掲げる資産のいずれにも該当しないため、この規定の適用はありません。 ◆◇実務における注意点◇◆ 医療法人に適用される税務上の取扱いは、一般の会社と取扱いが異なるものが少なくありません。一般の会社と平行して、医療法人の業務を行っていると、ついつい同じ要件と思い込んでしまうことがあります。 特に今回の事例のような特例措置の適用にあたっては、先入観を持たず、条文に立ち戻り、適用要件を1つ1つ丁寧に確認していくという当たり前のことをきちんと実行していくことが、ミスを防ぐために重要なこととなります。 (了)
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〈判例・裁決例からみた〉国際税務Q&A 【第8回】「移転価格税制における「シークレット・コンパラブル」の取扱い」
〈判例・裁決例からみた〉 国際税務Q&A 【第8回】 「移転価格税制における「シークレット・コンパラブル」の取扱い」 公認会計士・税理士 霞 晴久 〔Q〕 課税当局には「シークレット・コンパラブル」の使用が認められるとのことですが、どのように取り扱われているのでしょうか。 〔A〕 課税当局が、同業他社から入手した非関連者間取引を比較対象取引として選定した場合には、守秘義務に抵触しない範囲内で、当該選定のために用いた条件、当該比較対象取引の内容、差異の調整方法等を法人に対し十分説明するという運用がなされています。 ●●●〔解説〕●●● 1 シークレット・コンパラブルとその問題点 シークレット・コンパラブル(Secret comparable)とは、課税庁が、類似の取引を行う第三者から提出された申告書や調査において入手した情報等の非公開情報に基づいて比較対象取引を証明すること(※1)とされている。シークレット・コンパラブルには次の3つの特徴があるといわれている(※2)。 (※1) 岡直樹「移転価格税制における情報義務と独立企業間価格の証明方法に関する考察-納税者・課税庁双方の利益を目指して-」『税大論叢』59号(2008年)587頁、660頁。 (※2) 井藤正俊「移転価格の実務Q&A」(清文社・2020年)449頁参照。 (※3) 国外関連取引を行った法人が、確定申告書の提出期限までに、独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類(6項文書又はローカルファイル)を作成・取得、保管する義務を「同時文書化義務」と呼ぶ。 (※4) 同業者調査は反面調査と異なり調査対象法人との取引関係の有無は問題とされず、単に調査対象法人と同種の事業を営んでいるかどうかが問われる(前掲(※2)参照)。 同業者調査を受ける側は、あくまで自発的に課税当局に協力して自らの取引価格に関する資料や情報を提出することとなるため、課税当局が同業者調査で得られた情報を調査対象法人の独立企業間価格の算定に用いたとしても、その内容が調査対象法人に開示されることはない。このことは、①課税当局にとって非常に強い権限であり恣意的に運用されるおそれがあること、②守秘義務を根拠に同業者情報の詳細が開示されないため、納税者側は防御の機会を奪われること、の2点の問題点が指摘されていた。 2 裁判例 シークレット・コンパラブルに基づく推定課税(※5)による更正処分が行われた過去の裁判例には、次の2つがある。 (※5) 「推定課税」とは、課税当局が、問題となる国外関連取引について、自ら機能・リスク分析を行い、納税者と異なる比較対象取引を選定した上、これを用いて課税を行うことをいい、所得税において白色申告者に対し行う推計課税に類似する取扱いである。 《アドビ事件》(※6) (※6) 第一審は、東京地裁平成19年12月7日判決(平成17年(行ウ)第213号、TAINSコード:Z257-10846)。その控訴審は東京高裁平成20年10月30日判決(平成20年(行コ)第20号、TAINSコード:Z258-11061)。 事案の概要については、【第7回】を参照されたい。本件は、X(原告・控訴人)が受領した手数料が独立企業間価格に該当するかどうかが争われたのと同時に、処分行政庁が質問検査権を行使して得られた非公開情報(シークレット・コンパラブル)を基に行った本件課税処分が違法といえるかについても争点となった。 後者につき、第一審では、次のように判示されたが、その控訴審では、納税者が逆転勝訴したことから、シークレット・コンパラブルの問題については、一切審議されなかった。 (1) 第一審判決の要旨 Xは、処分行政庁の調査時の求めに応じて「帳簿書類又はその写し」を提出しており、租税特別措置法66条の4第9項(当時)にいう「不提出」の要件を欠いているにもかかわらず、処分行政庁がシークレット・コンパラブルにより課税処分を行ったことは、憲法84条の租税法律主義及び適正手続を保障する憲法13条、同31条に違反し、かつ、申告納税主義を採用する法人税法74条及び国税通則法16条に違反すると主張した。 これに対し東京地裁は、租税特別措置法66条の4第9項は税務職員による比較対象法人に対する質問検査権限を創設的に規定するものであって、手続的要件に過ぎないことから、同項所定の要件を欠いて課税処分がなされたとしても、「当該質問検査に係る手続が刑罰法規に抵触し、又は公序良俗に反するような重大な違法がある場合に初めて」当該処分の取消事由になり得るとし、本件では重大な違法があるとはいえないと判示した。 (2) 第一審判決に対する批判 東京地裁の上記判示に従えば、シークレット・コンパラブルを用いた課税処分の違法性が認められるのは、刑罰法規に抵触し、又は公序良俗に反するといった、極めて特殊なケースに限定されることになる。このような限定的な解釈では、法がわざわざ「不提出」の要件を設けて納税者の保護を図る趣旨は忘れ去られ、質問検査権を濫用することにより取得したシークレット・コンパラブルに基づく恣意的な課税処分が横行する可能性があるという批判がなされた(※7)。 (※7) 北村導人「移転価格課税に関する裁判例の分析と実務上の留意点(下)」税務事例(Vol.41 No.1)2009年1月号48頁、村田守弘「移転価格税制適用事案の判例(アドビ事件)-裁判所が判断を下さなかったシークレットコンパラブルについて-」税務事例(Vol.42 No.3))2010年3月号42-43頁等。 《エスコ事件》(※8) (※8) 第一審は、東京地裁平成23年12月1日判決(平成19年(行ウ)第149号、TAINSコード:Z261-11823)。その控訴審は東京高裁平成25年3月14日判決(平成24年(行コ)第19号、TAINSコード:Z263-12166)。 (1) 事案の概要 本件は、モーター等の販売等を営むX(原告・控訴人)が、その国外関連者である香港法人との間で行ったモーターの仕入取引に関し、処分行政庁が、租税特別措置法66条の4第7項(当時)に規定する「推定課税」規定を適用して更正処分等をしたのに対し、Xが、同項による推定の要件を欠き、推定された独立企業間価格は相当なものではなく、税務調査手続に重大な違法があったなどとして、各更正処分等の取消しを求めた事案である。 (2) 裁判所の判断 本件の第一審である東京地裁平成23年12月1日判決は、国外関連者の財務書類は同社の機能を端的に知ることを可能とする客観的な書類であるとして、「独立企業間価格の算定に必要な書類」であるから、納税者が提示しなかったことにより、措置法66条の4第7項の要件を充足するとし、シークレット・コンパラブルが比較対象取引となり得るかについて、「(租税特別措置法)66条の4第9項(当時)は、推定課税を行う際に、税務当局の職員が同種事業類似法人に対する質問検査権を行使することを認めているところ、このことは、この質問検査権で得られた情報を推定課税において用いることが前提とされていると解するのが相当である。他方、これらの企業は、納税者とは関係のない第三者であることからすれば、その事業内容や財務状況等の詳細について、税務当局の職員が守秘義務を負っていることは当然である。これらによれば、租特法(筆者注:租税特別措置法のこと)は、税務当局がその事業内容や財務状況等について開示することができない同種事業類似法人を用いて推定課税をすることを予定しているというべきである。」と判示した。 本件の控訴審である東京高裁平成25年3月14日判決も、原判決を支持し、「税務当局がその事業内容や財務状況等について開示することができない同種事業類似法人に関する資料を用いて推定による課税がされることを予定しているものと解するべきである上、税務当局が、同種事業類似法人の同種性、類似性を主張立証する際に、職員が負う守秘義務に反しない限度でこれを立証し、それに対して納税者がその信用性を争うことも可能というべきであるから、前述した推定課税の制度趣旨と、推定課税を争う方法が確保されていることに照らすと、このような制度が、納税者にとって特に過酷で不合理なものであるとまでは解することができない。」と判示し、課税当局が、シークレット・コンパラブルを用いて推定課税することを容認したのである。 本件は、Xが上告及び上告受理の申立てをしたものの、最高裁が上告棄却・不受理としたことで、判決が確定した。 3 OECDガイドラインの改訂 上記の裁判が争われていた当時、OECDにおいても、同業者調査に関し、慎重な対応を課税当局に求めるべきという議論が進められており、そこでの結論は、「OECD移転価格ガイドライン2010年版」に反映された。同ガイドラインで新設されたパラグラフ3.36(「同ガイドライン2017年版」でも同一文言が維持されている)は、「税務当局は、他の納税者の調査から又は他の情報ソースから、納税者に開示できない情報を得るかもしれない。しかし、そのようなデータに基づいて移転価格算定手法を適用することは公平でないであろう。ただし、税務当局が国内の守秘義務の範囲内でそのようなデータを納税者に開示することができ、それによって、納税者が自己のポジションを守るための機会及び裁判所による効果的な司法的コントロールを守るための機会が納税者に与えられる場合、この限りではない。」と述べている。 同ガイドラインの改訂及びその後のBEPSプロジェクトの進展により、我が国においても移転価格同時文書化制度が導入され、シークレット・コンパラブルの取扱いについても次のように整理された。 4 移転価格文書化制度の導入とシークレット・コンパラブル (1) 移転価格事務運営要領の改訂 納税者の予見可能性を確保する観点から、「移転価格事務運営要領」の平成23年度改正において、シークレット・コンパラブルが適用される場合が一層明確化された。さらに、シークレット・コンパラブルを用いる際には、守秘義務の範囲内でその内容を納税者に説明するための指針が示された。 同事務運営要領は、その後、平成28年のBEPSプロジェクトによる移転価格文書の制度化を経て、その第3章調査3-5《推定規定又は同業者に対する質問検査規定の適用に当たっての留意事項》(6)で、「(租税特別措置法66条の4)第17項又は第18項の規定を適用して把握した非関連者間取引を比較対象取引として選定した場合には、当該選定のために用いた条件、当該比較対象取引の内容、差異の調整方法等を法人に対し十分説明するのであるが、この場合には、国税通則法第126条《職員の守秘義務規定》の規定に留意するとともに、当該説明を行った事実を記録する。(下線筆者)」と規定されている。 (2) シークレット・コンパラブル適用のための要件 課税当局が文書の提出がなかったとして同業者調査を行うための要件を要約すると、以下のとおりとなる。 ① 同時文書化対象国外関連取引(措法66の4⑰) (注) ローカルファイルは、前期の取引合計額が50億円以上、又は無形固定資産取引合計額3億円以上の企業が作成を求められ(措法66の4⑦)、それに該当する企業は、関連者間取引に係る詳細な情報及び特定の取引に関する財務情報、比較可能性分析、最適な移転価格算定方法の選定及び適用に関する情報の記載が求められる。 ② 同時文書化免除国外関連取引(措法66の4⑱) (了)
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居住用財産の譲渡損失特例[一問一答] 【第36回】「会社以外の法人に対する譲渡」-特殊関係者に対する譲渡-
居住用財産の譲渡損失特例[一問一答] 【第36回】 「会社以外の法人に対する譲渡」 -特殊関係者に対する譲渡- 税理士 大久保 昭佳 Q Xは、出資金額の60%の出資を有しているE医療法人に対して居住用家屋とその敷地を売却しました。 他の適用要件が具備されている場合、「居住用財産買換の譲渡損失特例(措法41の5)」を受けることができるでしょうか。 A 「居住用財産買換の譲渡損失特例」の適用を受けることはできません。 ●○●○解説○●○● 「居住用財産買換の譲渡損失特例」には、譲渡した資産の譲受者が、特殊関係にある法人などに該当する場合の適用除外規定(【Q29】の解説を参照)が定められています(措法41の5⑦一、措令26の7③、法令4②・③)。 本事例の場合、譲受者は医療法人ですが、租税特別措置法施行令第20条の3第1項第5号に規定する「会社その他の法人」には、例えば、出資持分の定めのある医療法人のようなものがある(措通31の3-25)とされており、特殊関係者とされる法人には、会社のみに限らず、会社以外の法人も含まれることとなります(措法41の5⑦一、措令26の7③、法令4②・③)。 したがって、Xは「居住用財産買換の譲渡損失特例」の適用を受けることはできません。 なお、「特定居住用財産の譲渡損失特例(措法41の5の2)」についても、譲渡した資産の譲受者に係る同様の除外規定が定められています(措法41の5の2⑦一、措令26の7の2③、法令4②・③)。 (了)
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〈Q&A〉印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第89回】「業務委託に関する契約書④(コンサルタント業務委託契約書)」
〈Q&A〉 印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第89回】 「業務委託に関する契約書④(コンサルタント業務委託契約書)」 税理士・行政書士・AFP 山端 美德 当社はコンサルタント会社です。ウェブサイトの運用等に関する助言等の受託をするにあたり、下記の「コンサルタント業務委託契約書」を作成する予定ですが、印紙税の取扱いはどうなりますか。 委任に関する契約書に該当し、課税文書には該当しない。 [検討1] コンサルタント業務の委託契約とは 一般的に、経営や技術などについて専門的な知識や経験に基づく助言を受け、これに対して報酬を毎月一定額支払う契約をいう。 このため委託者は、受託者の専門的な知識や経験を信頼して業務を委託するものであり、あらかじめ一定の仕事の完成を約するものではないことから、委任契約に該当する。 [検討2] 請負契約に該当する場合は コンサルタント業務の委託契約は[検討1]に記述のとおり、一般的には委任契約に該当し、不課税文書となるが、例えばウェブサイトに係る集客の調査書を作成し、委託者に提供することによって報酬が支払われる場合などは、仕事の結果と報酬の支払いが対応関係にあるものであり、請負契約に該当する。 ▷まとめ コンサルタント業務の委託契約は、委託者が受託者から経営、技術等の専門的な知識や経験に基づく助言を受け、これに対して報酬を支払うこととされている契約であることから、一般的には委任に関する契約に該当して不課税文書となる。しかし、特定の案件処理にあたり、あらかじめ企画書や報告書等を作成して委託者に提供し、これに対して報酬が支払われることが対応しているような契約等の場合は請負契約に該当する場合がある。 したがって、印紙税の課否判定を行う場合には、くれぐれも標題にまどわされず、その文書における個々の内容を検討したところで課否の判断をしなければならない。 (了)
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〔中小企業のM&Aの成否を決める〕対象企業の見方・見られ方 【第16回】「「中小M&A推進計画」を対象企業の見方・見られ方に活かす(中編)」
〔中小企業のM&Aの成否を決める〕 対象企業の見方・見られ方 【第16回】 「「中小M&A推進計画」を対象企業の見方・見られ方に活かす(中編)」 公認会計士・税理士 荻窪 輝明 《今回の対象者別ポイント》 買い手企業 ⇒「中小M&A推進計画」を売り手・支援機関に対する見方に活かす。 売り手企業 ⇒「中小M&A推進計画」を買い手・支援機関に対する見方に活かす。 支援機関(第三者) ⇒「中小M&A推進計画」を支援機関の体制づくりや今後の支援と助言に活かす。 その他の対象者 ⇒「中小M&A推進計画」を対象企業の見方・見られ方のヒントにする。 1 「中小M&A推進計画」が示す今後の対応の方向性 【第15回】では、中小企業庁が2021年4月28日に取りまとめた「中小M&A推進計画」のうち、主に中小M&Aの意義を通じて中小M&Aにおける対象企業の見方・見られ方のポイントを解説しました。今回も前回に続き「中小M&A推進計画」をテーマに解説します。 「中小M&A推進計画」は、経営者の高齢化や新型コロナウイルス感染症の影響といった現状の中小企業が抱える諸課題に対応し、将来に向けて中小M&Aを推進するため今後5年間に実施すべき官民の取組を示すものです。このため、本計画を読むと、中小M&Aに関してこれから何が行われようとしているのかを知ることができます。現状のM&Aの諸課題に対する今後の対応の方向性が示されていますので、今後M&Aを予定する、あるいは、M&Aに関心を抱く買い手・売り手や支援機関などのM&Aプレイヤーが、どういう姿勢で臨めばよいかの視点を磨くために活用できそうな内容が多く掲載されています。 今回は対象企業の見方・見られ方そのものからは少し外れるかもしれませんが、「中小M&A推進計画」のうち、今後の対応の方向性に記載された内容を今後のM&Aに活かすのは各当事者にとって有益ですので、本計画の内容にも触れつつご紹介します。 2 区分に応じた中小M&A対応の方向性とポイント 中小M&Aといっても、案件の規模によって異なるM&A支援機関の支援内容や、中小M&Aの実績が積み上がる中で明らかになった制度的な諸課題など、様々な状況に応じた対応が求められます。 そこで、本計画では次の区分による対応の方向性が示されていますので、この区分に沿って、各M&Aの当事者の立場から見たポイントを解説します。 〈図表〉中小M&Aの類型と検討の視点 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (出典) 中小企業庁「中小企業の経営資源集約化等に関する検討会取りまとめ(案)~中小M&A推進計画~(2021年4月28日)」17ページ (1) 小規模・超小規模M&Aの円滑化のポイント 売り手企業の売上高が1億円以下の案件を目安とする小規模・超小規模M&Aの区分における、本計画に基づく今後の対応の方向性のポイントは次のとおりです。 これらに伴うM&Aの各当事者から見たポイントは次のとおりです。 〈図表〉後継者人材バンクの登録者数及び成約件数の推移 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (出典) 中小企業庁「中小企業の経営資源集約化等に関する検討会取りまとめ(案)~中小M&A推進計画~(2021年4月28日)」21ページ (2) 大規模・中規模M&Aの円滑化のポイント 売り手企業の売上高が1億円超の案件を目安とする大規模・中規模M&Aの区分における、本計画に基づく今後の対応の方向性のポイントは次のとおりです。 〈図表〉M&Aプロセスにおいてやり直したい取組 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (出典) 中小企業庁「中小企業の経営資源集約化等に関する検討会取りまとめ(案)~中小M&A推進計画~(2021年4月28日)」26ページ これらに伴うM&Aの各当事者から見たポイントは次のとおりです。 (3) 中小M&Aに関する基盤の構築のポイント 本計画に基づく、中小M&Aに関する基盤の構築に関する今後の対応の方向性のポイントは次のとおりです。 〈図表〉中小M&Aガイドラインの浸透状況 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (出典) 中小企業庁「中小企業の経営資源集約化等に関する検討会取りまとめ(案)~中小M&A推進計画~(2021年4月28日)」35ページ 今後予定されるこれらの対応を通じて、M&Aに関わる各当事者が安心してM&Aを進められる環境の整備やM&A支援機関への信頼感醸成が期待できます。 * * * 次回も「中小M&A推進計画」をテーマに、中小M&Aの実施状況からみたM&A各当事者の対象企業の見方・見られ方について解説します。 (了)
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対面が難しい時代の相続実務 【第3回】「想定される場面(その1)」-オンラインでの相談対応-
対面が難しい時代の相続実務 【第3回】 「想定される場面(その1)」 -オンラインでの相談対応- クレド法律事務所 弁護士 栗田 祐太郎 これから数回にわたり、相続実務の場面を具体的に取り上げ、場面ごとのオンライン対応のノウハウや留意点を説明していくことにしたい。 今回は、相続に関する相談をオンラインで行う場面を取り上げる。 【想定される場面(その1) 相続に関する相談】 1 オンライン相談を実施してきた感想 第1回で紹介したように、筆者がオンラインでの相談に本格的に取り組み始めてから、2021年7月の時点でまだ1年数ヶ月程度しか経過していない。 オンライン相談を始める際には、「スマホの携帯電話回線をそのまま利用できれば簡単だが、途中でフリーズしてしまわないだろうか?」、「専門的な機器を用意せずにスマホだけで、満足いくオンライン会議ができるのだろうか?」、「相談者の満足度はどうであろうか?」等々いろいろな不安があった。 しかし、多数の機会でオンライン会議を実施した結果、思いのほか最低限の機器だけで十分間に合うということは第2回で紹介したとおりである。 会議の内容的な面を見ても、筆者の個人的な感想では、オンラインでの相談や会議も、感覚としてはリアルの場で対面して打ち合わせるのとほぼ変わりないと感じている。リアルタイムでお互いの顔や表情を見ながら会話をしているため、電話でのやり取りよりも更にリアルのコミュニケーションに近い感覚がある。 特に企業で働く方々にとっては、オンラインでの会議やコミュニケーションが日常的なものとなっているため、初対面でも始めからオンラインでの相談や打ち合わせを希望されるケースも多くなった。 また、頻繁に参照する書籍や参考資料を手元に置いておけば、それもまた打ち合わせ中に参照できるし、関連情報をその場でインターネット検索することも可能である。 これらを考え合わせると、コロナの状況が今後どう推移するかとは関係なく、将来的には相談や打ち合わせの場がますますオンラインへと移行していくことは間違いないであろう。 2 オンライン相談の導入・準備 筆者が使用している機器については、第2回で紹介した。 オンラインでの相談については、「You Tube」等で動画配信するのと異なり、最小限度の機器・設備で十分である。 使用するプラットフォームについては、筆者の場合はほぼ全件で「Zoom」を利用している。相談者や依頼者の側からのリクエストも「Zoom」がほとんどである。 なお、相談者・依頼者の側から特にオンラインでの打ち合わせの希望が出ない場合には、筆者の場合には、従来どおり対面か電話による相談で対応することにしている。相談の内容的なものがかかわっているのかもしれないが、あえてオンラインではなく対面で相談したいという希望も、相談者・依頼者によっては根強くある。 3 オンライン相談での工夫と留意点 オンラインでの相談を実施している中で、筆者自身が工夫してきたことや留意すべきと考える点を説明したい。 (1) できる限り前もって、親族関係図・遺産(所有財産)の一覧表・これまでの経緯の時系列表などの参考資料を、相談者に作成・送付してもらう リアルな対面の場での相談においては、相談者が持参してきた資料を一緒に見ながら、あるいは持参した大部の資料の中から相談に関係しそうなものをピックアップし、一緒に内容を確認しながら打ち合わせを進めていくのが通常である。 しかし、オンラインの場では、このような資料のやり取りをすることが難しい場合が多い。相談者にその場で手書きで図解してもらっても、映した画面が反転してしまうときもあるし、相談者が画面共有の操作になれていないことも多い。 そこで、オンライン会議をスムーズに進めるためには、上記の各種資料を事前に入手して検討しておき、相談内容全体のイメージを把握してから会議に臨めるようにしておきたい。そうした方が、会議における内容の充実化にもつながる。 (2) 表情・しぐさ・体勢といった「オンラインでの見え方」に注意を払い、相手に与える印象について意識する 特にオンラインの場で相談者と初対面となるケースでは、相談者は、画面に映る限定された範囲内から、こちらの態度や印象を判断することになる。 そのため、オンラインという特別な場において相談者に与える印象や見え方等について常に意識を向け、注意を払う必要がある。 筆者も始めは手探りでオンライン相談を始めたため、しばらくの期間は相談を無事にこなすことができるかが一番の関心事であった。その後、ひととおりこなせるようになってくると、次第に、相談中に画面に映る自分の姿が気になったり、あるいは他人の会議での仕草等を見ることで、改善を要する点が少なくないことに気づき始めた。 オンラインの場において効果的なコミュニケーションを図っていくためにはどうしたらよいか、また相談者・依頼者との信頼関係を築いていくためにはどうしたらよいかについては、現在、多数の書籍が出版されている。 筆者が接した中では、元NHKキャスターの経歴を持つスピーチコンサルタントである矢野香氏の書籍(『オンラインでの「伝え方」 ココが違います!』(すばる舎、2020年10月))が、すぐに取り組める実践的な方法をわかりやすく説明しており、大変参考になった。 ここでは、同書の中から特に重要と感じた以下の2点を紹介したい。 〈オンライン会議でのポイント〉 なお、同書では、他にも「映像のオン・オフの効果的な使い分け」、「ビジネスにふさわしい効果的な背景セットの仕方」、「3部構成で作る会議・ミーティングの時間配分」などのすぐに役立つ情報が豊富に説明されている。関心を持たれた方は、ぜひご参照いただきたい。 (3) 予定時間を設定し、相談中のタイムマネジメントを意識する オンラインでのやりとりは、自宅等で環境的にもリラックスした状態で話ができることに加え、移動の時間も要しないため、意識しないと打ち合わせの時間が長くなりがちである。 筆者が実際に聞いた例では、数十名の仲間内でのリラックスした雰囲気のオンライン勉強会で、夜9時に始まった講師の話が終わった後に、参加者からの質問がずっと続き、最終的に朝5時頃にようやく終了した会もあったそうである。 ビジネスの場ではさすがにここまでのことにはならないと思われるが、相談者のタイプによっては、途中から同じ話の繰り返しになったり、不安からか仮定のもとでの質問がいくつも続くなどして、打ち合わせ時間が長くなることもよくある。 このようなことも考えると、30分なり1時間なり、打ち合わせの内容を見越しておおよその予定時間や時間配分をあらかじめ考えておくべきであろう。 必要に応じて、打ち合わせの最初に、ある程度のタイムスケジュールをアナウンスしておくという配慮をしてもよいのではないかと思う。 (了)
