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従業員の解雇をめぐる企業対応Q&A 【第23回】「出社を拒否する従業員への対応と解雇の可否」
従業員の解雇をめぐる企業対応Q&A 【第23回】 「出社を拒否する従業員への対応と解雇の可否」 弁護士 柳田 忍 【Question】 当社においては、就業場所をオフィスと定めており、従業員は、会社の許可があった場合に在宅勤務を行うことが可能です。最近、複数の従業員(休職期間満了が近い者も含みます。)が、自宅でも業務の遂行は可能なのだから在宅勤務を許可すべきだ、などと主張して出社を拒んでおり、対応に困っています。 このような従業員を解雇または退職扱いとしても法的に問題はないでしょうか。 【Answer】 原則として、オフィス出社命令は正当な業務命令に当たり、従業員が正当な理由なくこれに従わない場合、服務規律違反(懲戒事由)となります。再三の指導や懲戒を行っても従わない場合、最終手段として解雇も検討可能です。 ただし、休職期間満了時に在宅勤務で業務可能な従業員の復職を認めず退職扱いとした場合、無効とされるおそれがあります。また、在宅勤務でも業務遂行が可能であるにもかかわらず、在宅勤務を検討せず解雇した場合、解雇の有効性が否定される可能性があります。 以上の点に留意し、各ケースで在宅勤務の可否等を慎重に判断した上で対応することが重要です。 ◆ ◇ ◆ 解 説 ◆ ◇ ◆ 1 はじめに コロナ禍においてかなり普及した在宅勤務であるが、ここ数年は様々な理由により、オフィス勤務に戻す会社が増えている。しかし、そのような会社の決定にもかかわらず、体調不良により出社が難しいことや、在宅勤務でも業務を遂行できることなどを理由に、頑として出社せず、在宅勤務を継続する従業員が一定数存在する。 この点、就業規則等において、就業場所をオフィスないし会社が指示する場所と指定したうえで、会社は従業員に対して、業務上の必要性がある場合は在宅勤務を命じることができること、また、従業員は会社が認めた場合には在宅勤務が可能であることなどを定める例がよく見られる。 このような場合、労使間においては就業場所をオフィス等とする合意が成立しており、在宅勤務を許可するかどうかは基本的には会社の裁量に委ねられることになる。よって、会社は、従業員から在宅勤務の希望があったとしても、裁量権の濫用等に該当しない限り、これに応じず、従業員に対してオフィス等に出社するように命じることが可能である。そのうえで、何度か出社命令を発したり、譴責処分等の軽い懲戒処分を科したりしたにもかかわらず当該従業員が出社しない場合には、当該従業員を解雇することを検討することになる。 以上のとおり、多くの会社において、在宅勤務を許可するか否かは会社の裁量に委ねられているといえるが、解雇ないし退職との関係で、かかる裁量が制限される場合がある。以下、そのような場合について説明する。 2 休職期間満了に伴う自然退職と在宅勤務について 就業規則等において、私傷病休職について、休職期間満了時に復職できない場合には退職とする旨の定めがある例がよく見られる。このような規定がある場合であっても、会社は、私傷病休職者が以下①ないし③のいずれかに該当する場合は、復職可能な健康状態に回復したものとして、復職を認めなければならない(片山組事件・最一小判平成10年4月9日)。すなわち、このような場合に、復職可能な健康状態に回復していないとして私傷病休職者を解雇や退職扱いとすると、それらの措置が無効となる(拙稿第14回参照)。 このうち、②について、休職者が、オフィスに出社することは難しいが、在宅で業務に従事することは可能であると主張し、同趣旨の医師の診断書を提出した場合、会社は②の要件を満たしていると判断し、復職を認めなければならないのかが問題となり得る。 この点、以下の裁判例に照らすと、当該休職者の勤務成績や勤務態度等に照らして在宅勤務が難しいといえる場合には、オフィスに出社できない以上は②には達していないとして退職扱いとすることができるのではないかと思われる。 3 解雇回避努力と在宅勤務について 従業員を勤務成績・勤務態度等を理由に解雇する場合には、(i)雇用契約上の労務提供義務の不履行に至っているといえるほどに労務提供能力や適格性が欠如している、ないし、雇用契約を継続することが困難なほどに信頼関係を破壊する程度の規律違反がある、といえる場合で、(ii)指導や教育訓練、配置転換や休職などによっても改善等が期待できず、解雇を回避することが難しいといえることが必要である(拙稿第2回参照)。この点、会社が、ハラスメントなどの問題行為を理由として従業員を解雇する場合、そのような問題行為を行う従業員を受け入れる部署がないことなどを理由に、配置転換等によっても解雇を回避することが難しいと主張することがある。「そのような問題行為を行う従業員を受け入れる部署がない」というだけで解雇を回避することが難しいといえるかは措くとして、以下の裁判例に照らすと、対象者の業務の内容が在宅勤務により遂行可能なものである場合には、在宅勤務を認めたとしても解雇を回避することが難しいといえなければ解雇が有効と認められないおそれがあるということになる。 (了)
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〈Q&A〉税理士のための成年後見実務 【第32回】「申立て書類について理解しよう」~「本人情報シート」、「診断書」について~
〈Q&A〉 税理士のための成年後見実務 【第32回】 「申立て書類について理解しよう」 ~「本人情報シート」、「診断書」について~ 司法書士法人F&Partners 司法書士 北詰 健太郎 【Q】 顧客の成年後見人候補者となることになりました。家庭裁判所への審判申立ての手続き自体は付き合いのある司法書士にお願いする予定ですが、申立てに必要な書類は数が多く、準備が大変だと聞いています。 ある程度は顧客にも説明ができるようにしておきたいのですが、申立てにはどのような書類が必要になるのでしょうか。 【A】 家庭裁判所への後見開始の審判の申立てには、申立書以外にも本人の戸籍謄本や住民票等が必要になるほか「本人情報シート」など、あまり聞きなれない書類を準備することも必要になります。 ● ● ● ● 解 説 ● ● ● ● 1 審判の申立てに必要となる書類 本人のために成年後見人を選任するためには、家庭裁判所に後見開始の審判を申立てる必要がありますが、人ひとりの生活に大きな影響を与える審判になるため、さまざまな資料を提出する必要があります。 税理士でも馴染みが無いものが多いでしょうが、日ごろ公的な手続に慣れていない顧客からすれば、より理解が難しくアドバイスが求められると思われます。申立てに必要になる主な申立て書類や添付書類は次のとおりです。 ① 後見開始等申立書 ② 申立事情説明書 ③ 親族関係図 ④ 親族の意見書 ⑤ 後見人等候補者事情説明書 ⑥ 財産目録 ⑦ 相続財産目録 ⑧ 収支予定表 ⑨ 本人の戸籍謄本・住民票等 ⑩ 成年後見人候補者の住民票等 ⑪ 本人に関する医師の診断書 ⑫ 本人情報シートの写し ⑬ 本人の健康状態に関する資料 ⑭ 本人の成年後見人等の登記がされていないことの証明書 ⑮ 本人の財産に関する資料 ⑯ 本人が相続人となっている相続財産に関する資料 ⑰ 本人の収支に関する資料 ⑱ 後見人等の候補者と本人が金銭の貸借等を行っている場合は、その関係書類 いずれも作成や収集にあたってのポイントがありますが、今回は取り付けに時間がかかると思われる「本人情報シート」と「医師の診断書」について解説をします。 2 「本人情報シート」とは 「本人情報シート」とは、本人の身近なところで支援を行っている社会福祉士等のソーシャルワーカーに作成してもらう書面です。本人や親族が作成するものではありません。 本人情報シートには本人の生活場所や介護認定の状況、日常生活にどのような支援が必要かについて記載されています。本人情報シートは医師に提供を行い、医師が診断書作成の参考にすることが想定されているほか、家庭裁判所が審判を行うに際しても参考にすることになります。 なお、突発的な病気や事故で判断能力を喪失してしまった方の場合は、作成を依頼できる人がいないということもあり得ます。そのため本人情報シートの提出ができなくても家庭裁判所への審判申立てを行うことは可能とされています。 3 本人に関する医師の診断書 本人の判断能力の程度を確認するために、医師の診断書が必要になります。医師の任意の書式ではなく、家庭裁判所の書式で作成をしてもらう必要があります。かかりつけ医などに事情を説明して、本人情報シートとともに診断書の書式を渡して作成をしてもらうことが多いようです。作成には1か月程度の時間が必要です。 (了)
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PJ Bookmark-July 2026- 「『自宅の相続』をめぐる論点、把握できていますか?」
B PJ Bookmark ── July 2026 ── ◇ 『自宅の相続』をめぐる論点、 把握できていますか? 今月1日、国税庁から令和8年分の路線価が公表されました。路線(道路)に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額を示す路線価は、相続税や贈与税の算定基準となり、身近な事案である自宅の相続の評価においても重要な要素となります。 ただし、自宅を相続する際には路線価以外にも気にすべきポイントが多様にあります。事前にどのような留意事項があるかをおさえておくと安心です。 そこで今回は「自宅の相続」をテーマに、自宅の相続前後における実務上のポイントに言及した5本の記事をご紹介します。 〇 「自宅の相続」に備えて、どんな論点があるか 自宅を含む相続税の財産評価については、原則として財産評価基本通達(以下「評価通達」)が適用され、画一的な評価が行われます。しかし、評価通達を適用した結果、著しく不適当な評価額となった場合には、他の合理的な方法による評価が認められ、その方法として「鑑定評価」が多く用いられます。ただし、鑑定評価が必ずしも容認されるわけではないため、鑑定評価の位置付けはしっかりとおさえておきたいところです →1本目。 法務 税理士が知っておきたい不動産鑑定評価の常識 【第20回】「相続税の財産評価における鑑定評価の位置付け」~「特別の事情」という大きな壁~ 執筆:黒沢泰 不動産鑑定士 相続税の財産評価において、評価通達ではなく例外的に他の評価方法(鑑定評価等)を適用する場合は、「特別の事情」が必要となります。本記事では、その「特別の事情」とは一体どのような内容を指すのか、また「特別の事情」が適用されるための判断基準についても先行研究をもとに検討します。その上で、「特別の事情」の認否に関する裁決事例等を取り上げ、相続税の財産評価における鑑定評価がどういった立ち位置にあるのかを明らかにします。 この記事を読む 相続税の財産評価に関する論点を把握した上で、相続時における優遇税制等の適用に関する注意点についてもおさえておくとよいでしょう。まずは、自宅を相続した場合に適用されることの多い小規模宅地等の特例に関する論点を確認します →2本目。 税務 〔事例で解決〕小規模宅地等特例Q&A 【第26回】「介護のために同居した場合の特定居住用宅地等の特例の適否」 執筆:柴田健次 税理士 介護に伴い一時的に被相続人と同居することは珍しいことではありません。本記事では、相続開始の1年前から同居を行い、住民票も被相続人の土地及び家屋のある住所に移したという想定事例をもとに、特定居住用宅地等に係る小規模宅地等特例の適用可能性について検討します。解説では、特例を適用するための要件を確認し、裁決事例や関係通達を参照のもと、生活拠点の判定に関する考え方を学びます。住民票の確認だけでは特例の判定は難しく、クライアントである相続人等とのコミュニケーションの重要性が浮かび上がります。 この記事を読む 自宅の相続に当たっては、ただ相続税が抑えられればよいというわけではなく、その後の相続人の暮らし方にも考えをめぐらせる必要があります。特に被相続人の配偶者については、生活環境を変えることなく現状の自宅に住み続けたいという意向を示すことが多いため、配偶者居住権の活用が考えられます →3本目。 税務 街の税理士が「あれっ?」と思う税務の疑問点 【第6回】「配偶者居住権と相続税及び被相続人の空き家特例との関係」 執筆:城東税務勉強会 大塚進一 税理士 本記事では、配偶者居住権の活用における相続税負担の軽減と、将来の自宅の売却時における「空き家特例」適用の注意点について言及します。被相続人の配偶者が法的に安定して現状の自宅に居住することが可能となる配偶者居住権については基本事項から解説します。また、目先の相続税負担の軽減だけでなく、将来の不動産売却という「出口戦略」まで見据えて遺産分割を検討し、クライアントへの提案力を一段階上げることができる内容となっています。 この記事を読む 自宅の相続を行った場合、税制以外にも気を付けるべきポイントがいくつかありますが、その一つとして「相続登記」があります。相続登記については2024年4月1日から申請義務化がされていますが、どのような注意点があるのでしょうか。確認してみましょう →4本目。 法務 《税理士のための》登記情報分析術 【第28回】「相続登記について」~相続登記の申請義務化~ 執筆:北詰健太郎 司法書士 相続登記の申請義務化から2年以上が経ちましたが、義務化の内容や注意点についてはしっかりと把握できているでしょうか。所有者不明土地の発生の予防を背景に整備された相続登記の申請義務化については、自宅の相続を行ったクライアントから問い合わせが寄せられることもあり、おさえておきたい内容です。本記事では、相続登記の申請義務化について、申請期限や過料、また義務違反となった場合の過料手続きについて解説。また、今後の制度運用の方向性についても検討します。 この記事を読む 上記4本については、自宅の相続時もしくは相続後の論点が中心となりますが、老後を見据えた相続前の対策についても重要です。事前の対策もケースによって様々ですが、ここでは家族信託の活用について見ていきましょう →5本目。 経営 家族信託による新しい相続・資産承継対策 【第20回】「家族信託の活用事例〈不動産編①〉(将来認知症になり自宅を売却できない場合に備えて、施設入居時に子へ信託する事例)」 執筆:荒木俊和 弁護士 日本では高齢化の進展とともに認知症の罹患者も増加しています。認知症になり、意思能力を失ったと判断されると自宅を売却できなくなってしまい、老後資金を捻出できないことがあります。本記事では、将来認知症になり自宅を売却できなくなる場合に備えて、施設入居時に子供へ不動産を信託しておく事例を解説。家族信託設定の手順として、①相談、②スキームの検討、③契約締結、④登記に注目し、それぞれの留意点について言及します。 この記事を読む Afterword 今回は「自宅の相続」を切り口に5本の記事をご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。プロフェッションジャーナルには、自宅の相続に関する記事がこのほかにもたくさん掲載されています。小規模宅地等の特例や配偶者控除、空き家特例について深掘りしているものや、上記で紹介した連載の別の回でも多様なケースに言及していますので、ご自身のクライアントの状況に近いものを探してみると参考になるかもしれません。 Profession Journal (了)
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《速報解説》 非上場株式評価改正に係る第4回有識者会議が開催~国税庁による論点整理と改正方向の明示~
《速報解説》 非上場株式評価改正に係る第4回有識者会議が開催 ~国税庁による論点整理と改正方向の明示~ 税理士 柴田 健次 国税庁は令和8年7月3日、「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」の第4回を開催し、その資料が公開された。 1 はじめに 第1回から第3回までの有識者会議では、会計検査院指摘の実態整理と国税庁が問題視する圧縮スキームの開示(第1回)、学術・実務家による評価通達本体への根本的問題提起(第2回)、中小企業・実務家・会計学の三者三様の視点(第3回)と、様々な角度からの問題提起がなされてきた。 これに対し、第4回有識者会議では、国税庁がこれまでの各委員意見を体系的に整理し、「当局として御意見いただきたい事項」として6項目の具体的な検討方向を提示するとともに、別添資料として8つの具体的スキーム事例(評価額圧縮効果を数値で明示)を開示した点で、これまでの3回とは性格を異にする会議となった。 本稿では、第4回資料の要点を整理し、改正の方向性を読み解く。改正時期については、これまでの速報においても申し上げたとおり、令和9年度税制改正大綱において法人版事業承継税制の見直しと併せて議論がなされ、令和9年中に非上場株式の評価方法を明らかにしたうえで、令和10年の相続・遺贈・贈与から適用されるものと筆者は推測している。 2 基本的・念頭に置くべき事項 第4回資料は、まず「基本的・念頭に置くべき事項」として、①「時価」の意義、②評価方法の見直しと事業承継税制の恒久化・拡充を同時・一体を前提条件とすること、③スキームへの対応、④評価方法の検討に当たって会社法やM&Aの算定方法を参考とすることについて、の4点を整理した。 ①「時価」の意義については、「取引相場のない株式」は明らかに「不特定多数の当事者間で自由な取引」ができる状態にないことから、相続税法第22条に規定する「時価」の定義の理解・整理が必要であるとの委員意見に対し、資料は「『不特定多数の当事者間で自由な取引ができる状態にあるかどうか』ということを問題とするのではなく『不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる』との想定に基づいて評価するもの」と整理し、時価評価原則の適用に関する疑義を明確に否定した。 ②評価方法の見直しと事業承継税制の恒久化・拡充について、資料は昭和58年度税制改正における小規模宅地等の特例の創設過程(「従来の通達による取扱いを発展的に吸収して相続税の課税上特別の配慮を加えることとし、小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例として法定化された」)を参考事例として提示するとともに、ドイツにおける2006年違憲判決および2009年改正相続税法の事例(「すべての財産について通常価額での評価を実現しつつ、評価後の特例措置の段階で、事業用財産を含む優遇を拡充」)を紹介した。これは、事業承継への配慮を「評価」から「税制」(特例措置)へ移行させるべきという方向性を強く示唆するものである。 ③スキームへの対応については、委員意見として「スキームに対処できるような方策を十分に講ずるべき」「スキーム対策を行っていない者に大きな影響が出ないようにする視点も必要」「評価通達6項の適用は評価の適正性を保つために必要であるが、納税者の予測可能性を確保する観点からも、評価方法について見直しを行うべき」との3点が整理された。第1回速報で取り上げた令和7年6月19日東京高裁判決等の総則6項適用事案の頻発を踏まえ、事後的な総則6項適用ではなく評価通達本体の見直しによる予測可能性確保という方向性が明確化されたといえる。 これに加え、国税庁は「主なスキームと実務における非上場株式の評価」として、具体的な対応方針を明示した。すなわち、(イ)グループ法人税制を用いたスキームに対しては「連結財務諸表を前提とした株式の評価を行い、子会社・孫会社の収益・資産状況を親会社の株価に反映」させる、(ロ)高額な役員報酬、節税目的の保険、オペレーティングリースなど節税商品等を活用したスキームに対しては「適正な状態に修正した上で株式を評価」するという方針が示された。これは、スキームへの具体的な対応方策として極めて重要であり、令和10年改正における評価通達本体の見直しの方向性を強く示唆するものである。第2回会議で熊谷委員(日本M&Aセンター)が指摘した「営業権算定上の損益修正(高額な役員報酬、節税目的の保険、オペレーティングリースなど節税商品の損益、非経常的な損益の修正)」の実務が、税務評価の場面にも反映されることを示唆する重要な整理といえる。 ④会社法やM&Aの算定方法との関係について、委員意見としては「評価をする局面(相続・売買など)に応じた評価方式というものを考えて議論すべき」「税務上の評価と実際の売買価額の乖離に起因する行為も行われておりルール変更も必要」「会社法やM&A価格との乖離を根拠に通達の見直しを論ずることには慎重であるべき」の3点が整理された。 (※) 国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議 2026年7月3日(第4回)資料」5頁~8頁より抜粋 3 評価の基本的体系の見直し方向 第4回資料の核心部分は、「評価の基本的体系」として現行の3方式(類似業種比準方式、純資産価額方式、配当還元方式)および特定の評価会社の判定について、抜本的な見直し方向を提示した点にある。 第一に、原則的評価方式の一本化についてである。現行の評価通達では、評価対象会社の規模(大会社・中会社・小会社)に応じて、類似業種比準方式、純資産価額方式または両者の併用方式が使い分けられている。このため、会社規模の判定が評価額を大きく左右し、規模操作による評価圧縮スキームが発生しやすい問題や大会社と中会社で評価額が逆転する現象が生じる等の構造的問題が指摘されてきた。第4回会議では、こうした複数評価方式の並存に伴う問題を根本的に解消する観点から、原則的評価方式を単一の評価方式に一本化することが検討課題として提起された。 一本化の具体的方式については、インカムアプローチ(残余利益モデル・DCF法等)への一本化、純資産価額方式への統一等の意見が示された。もっとも、DCF法については中小企業への実務適用上の懸念も指摘されている。 第二に、類似業種比準方式については、廃止推進派と廃止反対派の意見が対立している。廃止推進派の意見として、「類似業種比準方式には一定の理論的合理性はあるが、算定方法等に理論的・実証的な裏付けがないことから廃止した方がいいのではないか」との厳しい意見が示された。これは第2回会議で弥永委員が指摘した「類似業種比準方式は理論的根拠も実証的裏付けもない」との問題提起が、有識者会議の意見として整理されたものである。 他方、廃止反対派の意見として、「類似業種比準方式は、簡便性等の点から優れており、事業承継の役割を担ってきた一連の流れと歴史があることから、見直しには慎重であるべき」との現状維持論が示された。 なお、第4回会議の開催後に、日本商工会議所の阿部貴明委員・玉越賢治委員の連名で意見書が提出・公表された。同意見書では、①議論の出発点となる類似業種比準方式の実態把握について「直近の株価上昇を踏まえて、会計検査院の調査方式と同じ条件で改めて調査すべき」との要請、②類似業種比準方式の見直しについて「これまでの通達改正において『中小企業の円滑な事業承継へ配慮』されてきたことは事実」であり、「仮に現行の評価方式を大幅改正し、その中で類似業種比準方式が廃止となれば、大幅な税負担の増加を招き、中小企業の円滑な事業承継を阻害する」として、「円滑な事業承継への配慮を切り離した評価方式は導入すべきではない」との強い反対が表明された。③新評価方法導入時における負担増事業者の綿密なシミュレーションの実施要請、の3点が示された。 これは第3回会議で商工会議所が示した「一方的に評価方法のみを議論することには断固反対」との立場を、類似業種比準方式廃止の可能性が高まる第4回議論の展開を受けて、より明確な反対表明として提出されたものである。中小企業の円滑な事業承継への実務的影響は極めて大きく、今後の議論において重要な論点となる。 第三に、純資産価額方式についてである。純資産価額方式については、仙台地判平成3年11月12日において、「純資産価額方式は、株式の評価に対する基本的な方式である」と判示していることもあり、その存在自体を否定する意見は示されていない。もっとも、現行の純資産価額方式の内容については、以下のとおり複数の修正意見が委員から示された。 第四に、配当還元方式の見直しについて、「還元率(10%)を引き下げるとしても、従業員持株会が事実上設立できなくなったり、少数株主の整理がより難しくなりかねない」との慎重論、「無配当の場合の1株当たりの配当額を2円50銭(資本金等の額を50円として計算)とする取扱いについても問題があるのではないか(資本金が巨額でも低い株価が算出される)」、「固定価格制の従業員持株会の株式を譲渡する際に配当還元価額との差が問題となる」との第3回の日本税理士会連合会の指摘、「株主の議決権割合のみではなく持株割合も用いて対象株主を判定してはどうか」との判定方法見直し提案が併記された。 第五に、特定の評価会社の判定については、「特定の評価会社の判定を、原則として課税時期等の一時点のみで行うことは問題」「赤字が続くと特定の評価会社になり評価額が上昇するのは問題」との第3回日本税理士会連合会指摘(「不連続で不合理な時価評価」)が整理された。 (※) 国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議 2026年7月3日(第4回)資料」10頁~14頁より抜粋 4 当局として意見を求める6事項―改正の方向性 第4回資料では、上記の各委員意見の整理を踏まえて、「当局として御意見いただきたい事項」として国税庁が6点を提示した。これは、これまで4回にわたる議論を踏まえて国税庁が今後の方向性を整理し、委員に意見を求めた事項であり、この段階で改正内容が明示されたものではないが、今後の議論の方向性がある程度明らかになった点で重要な意義を有する。 第一に、「評価方法は評価理論の進捗や社会経済情勢の変化に応じて変遷するため、企業価値評価の学術的な研究、M&Aにおける評価方法等も参考として抜本的な見直しも視野に検討することについて」が提示された。「抜本的な見直しも視野に」との文言は、昭和39年の評価通達制定以来の抜本改正も選択肢として排除されていないことを示唆するものであり、注目される表現である。 第二に、「評価方式の一本化について検討することについて」が提示された。これは現行の3方式(大会社=類似業種比準方式、中会社=併用方式、小会社=純資産価額方式)から、単一の評価方式への一本化を検討課題とするものであり、評価通達178・179の見直しにつながる論点である。 第三に、「同じ企業価値評価を扱う会社法における訴訟やM&Aなどの実務でも用いられなくなってきたことも踏まえ、今後の類似業種比準方式の在り方をどう考えるか」が提示された。これは第2回会議で弥永委員が指摘した「会社法上の裁判例において類似業種比準方式は事実上『死に体』」との問題提起を踏まえたものであり、類似業種比準方式の在り方そのものが検討対象となりうる論点である。 第四に、「純資産価額方式を基本的な評価方式として維持するのではなく、特定の評価会社の株式の評価方式として存置することをどう考えるか」が提示された。これは、純資産価額方式について「基本的な評価方式としての位置づけを見直し、特定の評価会社(開業前・休業中の会社、清算中の会社、比準要素数1の会社、株式等保有特定会社、土地保有特定会社等)専用の評価方式として存置する」という位置づけの変更が検討課題として提起されたものである。 第五に、「配当還元方式は『特別の例外的措置』であり、還元率や計算方法だけではなく、その趣旨が貫徹できるよう対象株主の範囲や派生する従業員持株会の関係も整理することについて」が提示された。これは、配当還元方式が本来「同族株主以外の株主等」に対する例外的措置であるにもかかわらず、無議決権株式の大量発行や株主構成の操作等により配当還元方式を濫用するスキームが存在することを踏まえ、対象株主の判定方法を含めた見直しが検討課題として提起されたものである。 第六に、「一般の評価会社の評価見直しに応じ、特定の評価会社の範囲と評価方法について検討が必要となるところ、少なくとも資産管理会社については、純資産価額方式で評価することについて」が提示された。これは、資産管理会社について、類似業種比準方式による評価の余地を排除し、純資産価額方式に統一する方向性が検討課題として提起されたものと理解される。問題視されたスキームの多くが資産管理会社を活用したものであることを踏まえた論点と考えられる。 (※) 国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議 2026年7月3日(第4回)資料」16頁より抜粋 5 具体的スキーム事例の開示 上記の6事項として示された改正の方向性の背景・裏付けとして、第4回資料の別添2では、「具体的なスキーム事例(事例を簡略化したもの)」として8つの事例が開示された。これらの事例には、第1回会議で概要が示されていたスキーム(グループ法人税制を用いた圧縮スキーム、無議決権株式を用いた配当還元方式の濫用等)に加え、第4回会議で新たに具体化されたスキーム(会社規模操作、循環貸付、オペレーティングリース活用、不動産取得後3年経過活用等)も含まれており、その具体的手法および評価額圧縮効果・税額減少効果を数値で明示したものである。その規模の大きさから、改正必要性の裏付けとして極めて重要な資料となっている。 以下では、実務上比較的よく見られる3つの事例(事例③・⑥・⑧)を詳細に解説する。その他の5事例(事例①・②・④・⑤・⑦)については、内容が多岐にわたり複雑であるため、詳細は資料の別添2を参照されたい。 まず、実務上よく見られる第一の事例として、事例③「会社規模操作による株価圧縮」がある。これは、株式交換による純粋持株会社化、海外子会社からの多額配当による資金吸収、多額借入による株式等保有特定会社該当の回避(いわゆる「株特外し」)、吸収分割による管理部門承継(従業員数増加)により、評価対象会社の評価方式を純資産価額方式から類似業種比準方式へ変更させるスキームである。純資産価額方式(清算価値ベースで一般に高評価)から類似業種比準方式(会計検査院指摘のとおり中央値で純資産価額の27.2%)へ評価方式が変更されることにより、評価額が大きく減少する。本事例では評価額約20億円、税額約10億円の圧縮効果が示された。「株特外し」については、実務家であれば聞き覚えのある手法であり、資産管理会社を活用した相続対策として広く行われてきた面があるが、今後の改正議論において重点的な対象となる可能性が高い。 (※) 国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議2026年7月3日(第4回)」34頁より一部抜粋 第二に、事例⑥「株主構成の操作により配当還元方式により評価」がある。これは、資産管理会社の株主構成を創業家一族および元役員等の関係者で構成し、どのグループも15%以上の議決権を保有しないようにすることで「同族株主のいない会社」かつ「議決権割合の合計が15%未満のグループに属する株主」に該当させ、すべての株式を配当還元方式により評価させるスキームである。本事例では評価額約98%減という劇的な効果が示された。第3回の日本税理士会連合会指摘のとおり、無配当の場合には配当還元価額の最低額(2円50銭)が適用されるため、資本金が巨額であっても極めて低い株価が算定されることになる。この事例は、第4回資料が提示した「配当還元方式は『特別の例外的措置』であり、その趣旨が貫徹できるよう対象株主の範囲や派生する従業員持株会の関係も整理する」との検討課題に直接対応するものである。 第三に、事例⑧「法人が貸付用不動産購入の3年経過後に株式を移転」がある。これは、HD会社が金融機関借入により貸付用不動産を購入し、評価通達185の「課税時期前3年以内」の取扱いを回避するため4年6か月経過するまで継続保有した上で、取得価額と相続税評価額(土地は路線価等の8割、建物は固定資産税評価額)の差額を利用してHD会社株式の評価額を圧縮するスキームである。本事例では評価額約5.4億円、税額約3億円の圧縮効果が示された。これは、令和4年最高裁判決(マンション評価事案)における個人での不動産購入スキームを、法人経由で実行する形態であり、実務家にとって最も馴染みのある類型といえる。「3年以内」という現行の期間制限を単純に経過させれば通達評価が可能となる現行制度の在り方について、根本的な見直しが議論される可能性が高い。もっとも、相続開始前5年以内に取得または新築した賃貸用不動産については、令和9年の相続等から取得価額を基に地価変動等を考慮した価額の80%で評価する改正が予定されているが、3年以内の評価通達185の整理も必要とされる最中ではある。 なお、上記3事例以外の5事例(事例①・②・④・⑤・⑦)についても、いずれも数億円から数十億円規模の税額圧縮効果が示されている。これらの事例が国税庁から具体的数値で開示されたことは、改正の必要性を極めて説得的に裏付けるものであると同時に、今後の総則6項適用および評価通達本体の見直しにおいて、これらのスキームが具体的な対象として想定されることを示唆するものである。 (※) 国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議 2026年7月3日(第4回)別添2(具体的なスキーム事例)」32頁~39頁より抜粋 6 総括(私見) 最後に、第4回会議の資料を踏まえた筆者の私見を述べておきたい。 第一に、第4回会議は、これまでの3回の議論を国税庁が体系的に整理し、今後の議論の方向性として6項目を提示した点で、これまでの問題提起の段階から一歩踏み込み、今後の議論の方向性がある程度明らかになった会議といえる。ただし、この段階では国税庁が委員に意見を求めているものであり、改正の具体的内容が示されているわけではないため、今後の会議における議論の推移を注視する必要がある。もっとも、「抜本的な見直しも視野に」「評価方式の一本化」「類似業種比準方式の在り方」「純資産価額方式の位置づけ変更」「配当還元方式の見直し」「資産管理会社の純資産価額方式評価」の6点が検討課題として提示されたことは、今回の改正が単なる部分改正ではなく相当程度大きな見直しとなりうる可能性を示唆するものである。 第二に、事業承継への配慮について、第4回資料が昭和58年度税制改正の小規模宅地等特例の創設過程(従来の通達による取扱いを発展的に吸収して法定化)およびドイツの2006年違憲判決以降の対応(評価は通常価額とし特例措置で優遇拡充)を明示的に参考事例として提示した点は極めて重要である。これは、事業承継への配慮を「評価」の中で実現する現行の構造から、「評価は時価評価とし、特例措置(事業承継税制等)で税負担軽減を図る」という構造への転換を強く示唆するものであり、筆者が第1回速報以来一貫して主張してきた方向性と一致する。 第三に、第4回資料が別添2として8つの具体的スキーム事例を評価額圧縮効果・税額減少効果の数値付きで開示した点は、改正必要性の裏付けとして極めて説得的である。8事例合計での税額圧縮効果は総額約118億円超(事例①~⑤・⑧の合計)に及び、これらのスキームが放置されている現状は、租税公平主義の観点から到底看過できないことが具体的数値で示された。今後の総則6項適用および評価通達本体の見直しにおいて、これらの事例が具体的検討対象として想定されることを、実務家は強く認識すべきである。 今後の有識者会議の議論を引き続き注視していきたい。 (了) ↓お勧め連載記事↓
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《速報解説》 ASBJ、「法人税等に関する会計基準」等を公表~課税対象利益を基礎とする税金に該当しない税金に関する会計処理及び開示の定めも示す~
《速報解説》 ASBJ、「法人税等に関する会計基準」等を公表 ~課税対象利益を基礎とする税金に該当しない税金に関する会計処理及び開示についても示す~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2026年7月7日、企業会計基準委員会は、「法人税等に関する会計基準」(改正企業会計基準第27号。以下「法人税等会計基準」という)等を公表した。 これにより、2026年1月9日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。公開草案に対する主なコメントの概要とそれらに対する対応(以下「コメント対応」という)も公表されている。 改正前の「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」(企業会計基準第27号)では、具体的な税金を挙げて、当該税金について規定する税法を参照することにより、適用対象となる税金を特定して会計処理及び開示について定めていた。 法人税等会計基準は、法人税等に関する原則的な定めを置き、具体的な税金を特定しない方法で改正されている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 目的及び範囲 法人税等会計基準は、主として法人税その他の課税対象利益を基礎とする税金に関する会計処理及び開示を定めることを目的とする(法人税等会計基準1項、2項)。 上記に加え、課税対象利益を基礎とする税金に該当しない次の税金に関する会計処理及び開示に適用する(法人税等会計基準2-2項)。 法人税額等の表示については、「企業会計原則」(企業会計原則注解を含む)及び「連結財務諸表原則」に定めがあるが、法人税等会計基準が優先して適用される(法人税等会計基準1項)。 コメント対応では、外国子会社合算税制の取扱いの明確化のコメントが寄せられている(コメントNo.6)。 当該コメントに対して、親会社の個別財務諸表では、当該親会社の納税申告書において外国子会社等の所得が合算され、課税される事業年度に当期税金として費用計上することとなると考えられること、現行の会計基準等では、外国子会社合算税制に関する個別の定めは置かれていないと考えられるところ、上記の当期税金の扱いに加えて税効果会計の取扱いを明らかにすることは本プロジェクトの範囲を超えることとなると考えられるため、本プロジェクトでは、特段の対応は行わないこととしたと記載されている。 Ⅲ 定義 次の定義を規定する(法人税等会計基準4項)。 用語 定義 課税対象利益 課税当局の定めに従って算定された特定の事業年度の利益であり、当該利益を対象として税金が課されるものをいう。 課税対象利益を基礎とする税金 課税対象利益を基礎として、課税当局の定めに従って算定された税金及びその付加税をいう。 課税対象利益を基礎とする税金には、例えば、我が国の法人税、住民税のうち法人税額を課税標準として課すもの(住民税(法人税割))及び事業税のうち所得によって課すもの(事業税(所得割))が含まれる。 Ⅳ 課税対象利益を基礎とする税金の会計処理 当事業年度の課税対象利益を基礎とする税金については、次を除いて、納付済みの額に納付予定の額を加算した額(又は還付が見込まれる額を減算した額。これには税務上の欠損金の繰戻しにより還付を請求する額及び税額控除の際に法人税額等から控除しきれないことにより還付される額を含む)を、法令を適用して算定し、損益に計上する(法人税等会計基準5項~5-3項)。 Ⅴ 課税対象利益を基礎とする税金に該当しないものの会計処理 当事業年度の住民税(均等割)、事業税(付加価値割)及び事業税(資本割)については、法令を適用して算定した額を損益に計上する(法人税等会計基準8-3項)。 受取利息及び受取配当金等に課される源泉所得税等の額については、損益に計上する(法人税等会計基準8-4項)。 親会社及び国内子会社が外国の法令に従い納付する税金で課税対象利益を基礎とする税金に該当しないものの額については、損益に計上する(法人税等会計基準8-5項)。 Ⅵ 開示 当事業年度の課税対象利益を基礎とする税金について、法人税等会計基準5項、5-3項及び5-5項に基づき損益に計上する課税対象利益を基礎とする税金の額は、損益計算書の税引前当期純利益(又は損失)の次に、「法人税等」などの適切な科目をもって表示する(法人税等会計基準9項)。 課税対象利益を基礎とする税金のうち納付されていない税額について、貸借対照表日の翌日から起算して1年以内に支払の期限が到来するものは、貸借対照表の流動負債の区分に、「未払法人税等」などその内容を示す科目をもって表示する(法人税等会計基準11項)。 また、貸借対照表日の翌日から起算して1年を超えて支払の期限が到来するものは、貸借対照表の固定負債の区分に、「長期未払法人税等」などその内容を示す科目をもって表示する(法人税等会計基準11項)。 課税対象利益を基礎とする税金に該当しないものについても、詳細に規定されている。 例えば、法人税等会計基準8-3項に基づき損益に計上する当事業年度の住民税(均等割)、事業税(付加価値割)及び事業税(資本割)は、損益計算書の「法人税等」に含めず、その内容に応じた適切な表示区分に表示すると規定されている(法人税等会計基準18-2項)。 公開草案では、住民税(均等割)は課税対象利益を基礎とする税金に該当しないため、従来の取扱いとは異なり、売上原価、販売費及び一般管理費又は営業外費用のうち適切な表示区分に表示することを提案していた。 当該提案に対して寄せられたコメント(コメントNo.15、16)を受け、法人税等会計基準18-2項は公開草案から修正されている。 Ⅶ 税効果会計の対象となる税金 法人税等会計基準において「課税対象利益を基礎とする税金」を定義したことを受け、これと整合するよう「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正(その3)」(企業会計基準第43号)により、税効果会計基準の「第一 税効果会計の目的」の定めを改正し、法人税その他の課税対象利益を基礎とする税金を「法人税等」としている。 「税効果会計に係る会計基準の適用指針」(改正企業会計基準適用指針第28号)において「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正(その3)」にあわせて法人税等の定義を見直しているが、法人税等に該当する税金は従来と同様であり、税効果会計の対象となる税金に関して変更を意図するものではない。 「税効果会計に係る会計基準の適用指針」では、「法定実効税率」の定義に関して具体的な税金の名称を使用した算式を削除し、代わりに「課税対象利益に対する法令上規定された税率に基づく税負担の比率」としている(「税効果会計に係る会計基準の適用指針」4項(11))。 Ⅷ 補足文書 次の項目に関する「<補足文書>我が国における課税対象利益を基礎とする税金及び税効果会計における税率に関する取扱いについて」を公表している。 上記②からに④に関連して、補足文書の別紙1から別紙3において、税効果会計における税率に関する取扱いについて示しており、防衛特別法人税の創設を反映したものとしている。 Ⅸ 適用時期等 2028年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。 ただし、公表日(2026年7月7日)以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することができる。 法人税等会計基準の適用初年度においては、会計方針の変更の取扱い及び比較情報の取扱いに注意する(特に、法人税等会計基準48項に注意する)。 (了)
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《速報解説》 令和8年度税制改正に伴う事務運営指針・法人税基本通達が公表される~関連者間取引に係る書類の整理保存の特例の“国税上の考え方”が明らかに~
《速報解説》 令和8年度税制改正に伴う事務運営指針・法人税基本通達が公表される ~関連者間取引に係る書類の整理保存の特例の“国税上の考え方”が明らかに~ 太陽グラントソントン税理士法人 ディレクター 税理士 川瀬 裕太 1 はじめに 令和8年度税制改正により「関連者間取引に係る書類の整理保存の特例」が創設された。 この改正に伴って、国税庁より「関連者間取引に係る書類の整理保存の特例の運用に当たっての基本的な考え方及び取扱いについて(事務運営指針)」、「『法人の青色申告の承認の取消しについて』の一部改正について(事務運営指針)」及び「法人税基本通達等の一部改正について(法令解釈通達)」が令和8年6月30日付で公表されたため、以下に概説する。 2 「関連者間取引に係る書類の整理保存の特例の運用に当たっての基本的な考え方及び取扱いについて(事務運営指針)」 (1) 基本的な考え方 本特例は、関連者間取引を行った場合に、支払いを行う法人の課税所得の計算上、保存が義務付けられている書類等にその取引に関する資産又は役務の提供の明細、その取引における支払金額の計算の明細及びその取引に係る支払金額を算定するために必要な事項の記載等がないときは、これらの事項(特定事項)を明らかにする書類等(特定事項記載書類)を取得等することを義務付けるものである。 その運用に当たっては、本特例の趣旨及び内容を踏まえ、取引の実態に即して特定事項記載書類の保存等の義務の履行の状況を個別具体的に判断するとともに、社会通念も踏まえ、事実関係、保存可能性等の具体的事情を総合的に勘案される。 (2) 損金算入との関係 本特例は書類保存に関する制度であり、損金算入の要件を新たに設けるものではないため、特定事項記載書類が保存されていないことのみを理由として、直ちに損金算入が否認されるものではないことを示している。 (3) 記載内容の程度に関する基本的な考え方と特定事項記載書類の取扱い 必要記載事項は、第三者が取引の内容を客観的に理解できる程度で足りるとされ、資産又は役務提供の内容及びその資産の果たす機能等を踏まえ、実態に即して個別具体的に判断される。 また、移転価格税制のローカルファイルや電子帳簿保存法に基づく保存資料などで必要事項を確認できる場合は、本特例は適用されず、追加の書類作成は不要とされている。 (4) 実地調査時における対応 税務調査では、特定事項記載書類が保存されていることが原則であるが、関連者から速やかに取得・提示できる体制であれば特定事項記載書類が保存されているものとして取り扱う方針が示された。 特定事項記載書類の保存等がない又は不十分な場合には、調査担当者が必要な事項を明示した上で、合理的な期間を設けて提出や作成を求めることとなる。 (5) 青色申告の承認の取消しに係る取扱い 特定事項記載書類の保存義務違反は青色申告の承認の取消し対象となり得るが、直ちに取消しを行うのではなく、違反の程度などを踏まえて判断することとしている。 (6) 青色申告法人以外の普通法人等に係る取扱い 本特例は青色申告法人以外にも適用され、特定事項記載書類を含む帳簿書類等の保存が不十分で、取引実態や所得金額の算定が困難な場合には、青色申告の承認取消しはなくても、推計課税の適用が検討されることとなる。 また、当初青色申告書を提出していた事業年度でも、取消処分に係る事由に該当する事実がある場合には、その事業年度に遡ってその承認が取り消されることがあるため、取消処分の対象となる事業年度以後の事業年度については推計課税の適用対象となる。 3 「『法人の青色申告の承認の取消しについて』の一部改正について(事務運営指針)」 青色申告の承認の取消しの要否を判断する場合には「関連者間取引に係る書類の整理保存の特例の運用に当たっての基本的な考え方及び取扱いについて(事務運営指針)」の内容を踏まえて取り扱うこととしている。 4 「法人税基本通達等の一部改正について(法令解釈通達)」 (1) 特定事項記載書類の性質 特定事項を明らかにするためのものであるから、関連者間取引について、その内容の全てを記載する必要はなく、特定事項が明らかにされていれば足りることとし、特定事項がない場合には、特定事項記載書類の取得等を不要とされた(法基通17-3-6)。 (2) 特定事項記載書類の取得等を要しない場合 関連者間取引に係る必要記載事項について、複数の取引関係書類に記載又は記録されている事項を総合して確認することができる場合には、特定事項はなく、特定事項記載書類の取得等を要しないこととされた(法基通17-3-7)。 (3) その他 関連者は、移転価格税制における関連者と同様の基準により判定することとされているため、移転価格税制の措置法通達66の4(1)-1から66の4(1)-3で規定している発行済株式、直接又は間接保有の株式、実質的支配関係があるかどうかの判定と同様の内容が法人税基本通達17-3-1から17-3-3で規定された。 また、法人税基本通達の改正では、このほか以下の事項の意義や具体的な例示が明確化されている。 (4) さいごに 本特例の創設に伴う具体的な実務への影響や留意点については、近日中に本誌にて別途、詳細な解説記事を掲載する予定である。ぜひそちらを参照されたい。 (了)
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プロフェッションジャーナル No.675が公開されました!~今週のお薦め記事~
2026年7月2日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.675を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
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monthly TAX views -No.161-「雇用的自営業者の申告利便の向上を」
monthly TAX views -No.161- 「雇用的自営業者の申告利便の向上を」 東京財団 シニア政策オフィサー 森信 茂樹 前回、給付付き税額控除が導入される前提として、低所得の個人事業者の所得把握が重要になることに言及した。タックス・ギャップ(無申告・過少申告)の解消というより、彼らのセーフティネットを効果的なものにしていくという観点から考えていく必要がある。 これを進めていくには、彼らの申告の利便性を向上させていくことが重要だ。そのためには、まずマイナポータルを活用した「(収入)情報連携の一層の拡大」と「法定調書制度の拡充」が必要となる。 前者については、プラットフォーム経由で働く個人(いわゆるギグワーカー)の場合、その収入情報を提供することができるプラットフォーマーから個人のマイナポータルへの情報連携が有益だ。マイナポータルは民間同士の情報連携が可能なので、当事者間でこれを進めることができる。実際、ふるさと納税などでプラットフォーマーと納税者の情報連携はできている。 フリーランスの場合、事業を発注する企業とのマイナポータルでの情報連携の活用が考えられる。その場合、現行制度で定められている報酬・料金の支払調書の対象となる役務提供の範囲(源泉徴収の範囲と同じ)を、広くフリーランス全体に広げていくことが有益だ。 その先を見据えると、デジタル手続法の「ワンスオンリー原則」に則り、企業が行政側に(認定クラウド経由で)従業員や契約するフリーランスの所得データなどを提出すれば、後は行政側で必要な部署が活用するという設計を進めていく必要がある。 その上で、申告する個人事業者に申告のインセンティブを与える必要がある。それは、給与所得者と比べて申告の手間・負担が異なる現行制度の見直しである。 * * * 給与所得者は、経費に関する概算控除(給与所得控除)が導入され、源泉徴収と年末調整により、医療費控除などがある場合を除き、原則申告不要となるが、自営業者は、自ら税務申告を行う義務を負い、経費は実額控除となる。 しかし、ギグワーカーを含む「雇用的自営業者」には申告経験のない者が多く含まれ、帳面を付ける習慣もないことから申告には後ろ向きとなりがちだ。 双方の負担の不公平を是正するには、2つの対処法が考えられる。 第1の方法は、平成30年度税制改正の方向で、給与所得控除を縮小しその分を基礎控除に付け替えるという税制改革を継続することである。 もう一つの方法は、資本や人を雇い事業をする「伝統的自営業者」と異なり、インターネットやプラットフォーマー経由で、主として労務の提供を行うことで所得を得て、実質的に会社員と変わらない働き方をする者である「雇用的自営業者」を対象に、給与所得控除の最低保障と同額の経費の概算控除を与えることである。この結果、負担の公平性が向上するとともに、彼らの申告利便の向上にも役立つ。 筆者は長年ギグワーカーやフリーランスの申告利便の向上ため、マイナポータルの活用と申告に際しての概算控除の導入を提言してきた(財務省・財務総合政策研究所 フィナンシャルレビュー143号「シェアリング・エコノミー、ギグ・エコノミーの発達と税制の課題」(2020年)参照)。 参考となるのは、租税特別措置法第27条の「家内労働者等の事業所得等の所得計算の特例」である。これは、家内労働者等の事業所得・雑所得(公的年金以外)の実際にかかった費用の合計額が65万円に満たないときは、65万円を必要経費として控除できる。パート労働者(給与所得者)との課税上のバランスに配慮する観点から導入されたものである。ここで定める家内労働者とは、「家内労働法に規定する家内労働者や、外交員、集金人、電力量計の検針人のほか、特定の人に対して継続的に人的役務の提供を行うことを業務とする人」とされ、ヤクルトの訪問販売員や音楽教室のピアノの先生などが含まれる。 改めて税制調査会の中期答申、「わが国税制の現状と課題―令和時代の構造変化と税制のあり方―」(令和5年6月)を読むと、「近年では、後述するような働き方の多様化に伴い、雇用的自営・副業者など多くの個人が確定申告を行っていることもあり、簡便な方法で申告・納付ができる納税環境の整備を進めることが不可欠です。」との記述がある。 フリーランスなどの実態を調査しつつ、検討を進めていくことが望まれる。 (了)
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令和8年度税制改正における『グループ通算制度』改正事項の解説 【第1回】
令和8年度税制改正における 『グループ通算制度』改正事項の解説 【第1回】 公認会計士・税理士 税理士法人トラスト 足立 好幸 ~はじめに~ 令和8年度税制改正では、グループ通算制度独自の税制(※1)についての改正が行われている。また、単体制度(※2)及び通算制度に共通の税制(※3)について、グループ通算制度特有の取扱いの改正が行われている。 (※1) グループ通算制度独自の税制とは、損益通算、欠損金の通算、通算承認に係る時価評価、通算承認に係る繰越欠損金の切捨て、通算承認に係る特定資産譲渡等損失額の損金算入制限、投資簿価修正など単体制度に存在しない税制を意味している。 (※2) 単体制度とは、グループ通算制度を適用しない法人(以下、「単体法人」という)の課税制度をいう。 (※3) 単体制度及び通算制度に共通の税制とは、研究開発税制、外国税額控除、特定税額控除規定の不適用措置等を意味している。 令和8年度のグループ通算制度に係る改正事項は次のとおりとなる。 本稿では、令和8年度税制改正における『グループ通算制度』に係る改正事項について次回以降詳しく解説する。 なお、本稿の意見に関する部分は、筆者の個人的な見解であることをあらかじめお断りする。 (続く)
