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〈ベテラン社員活躍のための〉高齢者雇用Q&A 【第6回】「高齢者の雇用・待遇改善に活用できる助成金」

〈ベテラン社員活躍のための〉 高齢者雇用Q&A 【第6回】 「高齢者の雇用・待遇改善に活用できる助成金」   Be Ambitious社会保険労務士法人 代表社員 特定社会保険労務士 飯野 正明   ― 解 説 ― 1 65歳超雇用推進助成金とは 「65歳超雇用推進助成金」には、生涯現役社会の実現に向けて、65歳以上への定年年齢の引上げ等を実施した事業主に助成される「65歳超継続雇用促進コース」、高年齢者の雇用管理制度の整備等を実施した事業主に助成される「高年齢者評価制度等雇用管理改善コース」、高年齢の有期雇用労働者を無期雇用労働者に転換した事業主に助成される「高年齢者無期雇用転換コース」の3種類があります。 各コースとも、助成金の対象となる措置について、就業規則等に規定すること、当該規定改正にあたっては、社会保険労務士等に相談指導を委託し経費を支出すること、高年齢者雇用推進者の選任を実施していること等の支給要件が定められています。 (※) なお、本稿では、2025年3月末までに支給申請を行う場合に活用できる「令和6年度65歳超雇用推進助成金」について解説しています。   2 助成金の支給要件と支給額 (1) 65歳超継続雇用促進コース 65歳超継続雇用促進コースでは、以下のいずれかを実施した事業主に対して助成を行います。 支給額は、措置内容に応じて下表の通りとされています。 ① 65歳以上への定年年齢の引上げ ② 定年の定めの廃止 ③ 希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入 ④ 他社による継続雇用制度の導入 「他社による継続雇用制度の導入」とは、助成金申請事業主の雇用する者について、定年後または継続雇用制度終了後に他の事業主が引き続いて雇用する制度のことで、制度導入に要した経費の2分の1の額を助成します。ただし、下表の額を限度とします。 なお、各表にある「被保険者数」とは、支給申請日の前日において1年以上継続して雇用されている60歳以上の雇用保険被保険者の数となります。また、①~④のいずれの措置を実施するときも、実施前の定年または継続雇用年齢(④の場合、他の事業主における継続雇用年齢も同様)が70歳未満である場合に支給の対象となります。 (2) 高年齢者評価制度等雇用管理改善コース 高年齢者評価制度等雇用管理改善コースでは、55歳以上の高年齢者を対象とする雇用管理制度の整備等に係る措置を実施した事業主に対して、一部経費の助成を行います。 対象となる措置は以下の通りで、実施期間は1年以内となります。 支給額は、上記の支給対象経費の額に以下の助成率を乗じた額とします。 なお、支給対象経費は、Ⓐ雇用管理制度の導入等に必要な専門家等に対する委託費やコンサルタントとの相談に要した経費のほか、Ⓑ上記のいずれかの措置の実施に伴い必要となる機器、システム及びソフトウェア等の導入に要した経費となっています。 また、支給対象経費は初回に限り50万円とみなされますので、支給額は中小企業で30万円、中小企業以外で22.5万となります。2回目以降の申請は、ⒶとⒷを合わせて50万円を上限とする経費の実費に、助成率を乗じた額が支給されます。 (3) 高年齢者無期雇用転換コース 高年齢者無期雇用転換コースは、50歳以上かつ定年年齢未満の有期雇用労働者を無期転換させた事業主に対して助成を行うものです。 実施期間は2年から3年の間となっており、有期雇用労働者として締結された契約期間が「通算5年以内」の者を無期雇用労働者に転換するものに限られます。 支給額は以下の通りとし、1支給申請年度1適用事業所当たり10人までとします。   3 助成金の支給手続き 上記助成金の支給手続きは、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が行っており、相談・申請の窓口は、各都道府県支部の高齢・障害者業務課(東京支部・大阪支部は高齢・障害者窓口サービス課)となっています。 JEEDのホームページには、助成金のパンフレットや支給申請の手引き、申請書類の書き方等を説明した動画などが掲載されています。申請を検討される場合には、必ずご確認ください。 *  *  * なお、JEEDに設置されている「生産性向上人材育成支援センター」では、従業員の能力開発に関して「人材育成プラン」を提案し、それに基づいた、「能力開発セミナー」や「生産性向上支援訓練」を実施しています。 こちらは、高齢者のみを対象とした支援ではありませんが、従業員の生涯キャリアの形成に役立ちます。筆者の事務所でも「生産性向上支援訓練」を活用しており、民間の教育訓練機関と連携して、企業が抱える課題や要望についてカリキュラムをカスタマイズした研修を実施しています。金額も安価ですので、65歳超雇用推進助成金とあわせて、ぜひ活用をご検討ください。 (了)
#601(掲載号)
#飯野 正明
2025/01/09
労務・法務・経営 法務

空き家をめぐる法律問題 【事例63】「「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を踏まえた賃貸借契約の留意点」-契約の全体像-

空き家をめぐる法律問題 【事例63】 「「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を踏まえた 賃貸借契約の留意点」 -契約の全体像-   弁護士 羽柴 研吾   - 事 例 - 私は、賃貸業を営んでおりますが、過去に高齢の入居者が孤独死していることが判明して、契約解除やそれに伴う残置物の撤去等に苦労したことがあります。このような事態が発生した場合に備えて、賃貸人としては、どのような対策をとることが考えられますか。   1 検討の視点 わが国の単身世帯数は従前から増加傾向にあったところ、このうち単身高齢者世帯数は令和12年に900万世帯に迫る見通しであるとされている。単身高齢者等が賃借物件内で孤独死した場合、発見が遅れる問題のほかに、賃貸借契約をどのように終了させ、残置物の撤去をどのように行うか等といった問題も生じやすい。このような問題に対応するため、国土交通省及び法務省は、令和3年6月に「残置物の処理等に関するモデル契約条項」(以下「モデル契約条項」という)を公表し、死後事務委任契約を活用した対応を推奨している。そこで、本事例では、モデル契約条項を踏まえて、賃貸人が単身高齢者と賃貸借契約を締結する場合の留意点を検討することにしたい。   2 想定される法的問題 賃貸借契約は、賃借人が死亡しても当然には終了しない。賃借人に相続人や保証人がいる場合には、これらの者との間で賃貸借契約の終了等の処理をできることもあるが、相続人の存否が不明な場合や保証人が存在しない場合には、賃貸借契約の終了や残置物の撤去の問題が顕在化しやすい。 このような場合に、賃貸人が賃貸借契約を解除しようとしても、郵便等によって有効に賃貸借契約の解除の意思表示を通知できないため、訴訟を提起して解除の意思表示を通知することが必要となる。また、賃貸借契約を解除できたとしても、建物内の残置物は、賃貸人以外の所有物であるため、賃貸人のみの判断で撤去することは違法となりうる。この点、契約終了時の残置物を賃貸人が処分できる旨の条項(以下「自力救済条項」という)に基づいて、賃貸人が残置物を撤去することも考えられるが、自力救済条項は、無制限に認められるものではなく、賃借人が任意に退去した後の残置物に限定して認められるものなどと解されている(東京高判平成3年1月29日判時1376号64頁)。そのため、賃借人が単に死亡した場合にまで、自力救済条項に基づいて残置物を撤去することは違法となるおそれがある。   3 対応方法 上記2のような解除や残置物に関する問題があると、民間賃貸事業者が単身高齢者との賃貸借契約を躊躇する要因となる。そこで、モデル契約条項では、次の(1)や(2)のような死後事務委任契約を、賃貸借契約を締結する前提条件とすることが提案されている(なお、各死後事務委任契約の詳細については別途取り上げる予定である)。 (1) 解除に関する問題の予防方法 解除に関する問題を予防する方法として、賃借人である委任者が受任者に対し、賃貸借契約の存続中に賃借人が死亡することを停止条件として、合意解除をするための代理権や賃貸人からの解除の意思表示を受ける代理権を授与する死後事務委任契約(以下「解除関係事務委任契約」という)を締結することが考えられる。 これによって、賃貸人は、賃借人の死亡の事実を把握した後、その旨を受任者に通知することによって、受任者との間で速やかに賃貸借契約を合意解除することが可能となる。なお、受任者の権限に合意解除の権限に加えて、賃貸人からの解除の意思表示を受ける権限も含めているのは、単身高齢者が建物内で孤独死しているような事案では賃料が滞納になっていることがあり、賃貸人から債務不履行に基づく解除を行うこともありうるためである。 受任者の適格者は、受任者が善管注意義務を負うことや、受任者の属性が委任者である賃借人やその相続人の利害にも影響しうることから、推定相続人が存在する場合には推定相続人とし、推定相続人がいない場合には居住支援法人や社会福祉法人等の第三者とするのが好ましいと考えられている。 なお、単身高齢者が建物内で孤独死するような事案では遺体の発見が遅れることもあるため、発見した時点によっては建物が心理的瑕疵物件になる可能性もありうる。このようなリスクに対応するために、見守りサービスや特殊清掃費用の保険を活用することも考えられる。 (2) 残置物の撤去に関する問題の予防方法 残置物の撤去に関する問題を予防する方法として、賃借人である委任者が受任者に対し、賃貸借契約が終了するまでに賃借人が死亡することを停止条件として、賃貸借契約の終了後に残置物の処理事務を委託する死後事務委任契約(以下「残置物関係事務委託契約」という)を利用することが考えられる。 残置物の中には様々なものが含まれるため、モデル契約条項では、残置物を①指定残置物、②非指定残置物、③金銭に分類し、原則として、①の指定残置物は委任者の指定する送付先に送付し、②の非指定残置物は廃棄等の処理、③金銭は相続人に送金するものとされている。もっとも、指定残置物も非指定残置物も換価することが定められている場合には、換価し、その代金を③の金銭として相続人に送付するように指定するものとされている。なお、金銭の受領権者である相続人の存否が不明の場合には、受任者は、債権者不確知を理由として供託をすることができる。   4 本件において 相談者は、単身高齢者との賃貸借契約の解除やそれに伴う残置物の撤去等に苦労したことがあるとのことであるから、今後も単身高齢者との賃貸借契約を検討する場合には、解除や残置物の撤去のリスクに備えるために、モデル契約条項を参考に、解除関係事務委任契約や残置物関係事務委託契約を導入することが考えられる。 もっとも、モデル契約条項は単身高齢者との賃貸借契約を念頭に置いたものであり、保証人がいる場合のように、残置物の撤去を期待できる場合にまで残置物関係事務委託契約の締結を必須条件とすることは、賃貸人に特段の不利益がないにもかかわらず、賃借人の財産管理に一定の負担を課することになるため、民法第90条や消費者契約法第10条違反になる可能性が指摘されている点に留意が必要である。 (了)
#601(掲載号)
#羽柴 研吾
2025/01/09
読み物 連載

〈小説〉『所得課税第三部門にて。』 【第88話】「川崎重工業の裏金問題と国税通則法」

〈小説〉 『所得課税第三部門にて。』 【第88話】 「川崎重工業の裏金問題と国税通則法」 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一   「修正申告か・・・」 中尾統括官は、広げた新聞を見ながら、呟く。 (※) 朝日新聞デジタル2024年12月23日掲載記事より抜粋。 「ようやく修正申告をするのですね」 傍らにいた浅田調査官が、新聞を覗きながら、頷く。 「・・・この事件は、2024年7月3日の新聞に大きく載っていたのだが・・・結局、12億円の全額が所得隠しと認定されることになったのか・・・」 中尾統括官は、新聞を見ながら言う。 新聞では、「税務調査に関わる内容は回答を控えるが、修正申告は年度内にしたいと考えている」と川崎重工業は答えている。 「・・・会社が自ら修正申告をすると答えているので・・・会社は全面的に大阪国税局の主張を認めているということですね」 浅田調査官は、中尾統括官の顔を覗く。 「そりゃあそうだろう・・・12億円の裏金を海上自衛隊員への贈答品や飲食費に使っていたのだから・・・弁明の余地はない」 中尾統括官は、自信たっぷりに言う。 「・・・新聞によると、修正申告が6年間となっていますが、一番古い2017年3月期が国税通則法70条5項1号から外れたということで、現時点で、会社の確定申告の法定申告期限から7年が過ぎてしまったのですね」 浅田調査官は、国税通則法70条5項1号を見る。 「そして、この12億円が所得隠しとして重加算税の対象になる見通しだと報道されている・・・すなわち、隠蔽・仮装に該当するということですね」 浅田調査官は、国税通則法68条1項を、カッコ書きを飛ばして読み上げる。 「・・・川崎重工業のケースは、『偽りその他不正』であって、また『隠蔽・仮装』にも該当するので、税負担はかなり重くなるだろう・・・更に、『偽りその他不正』の場合、延滞税の額の計算の基礎となる期間の特例を受けることができない」 今度は、中尾統括官が税務六法を開き、国税通則法61条1項を見る。 「・・・通常の場合、延滞税の計算は特例計算で1年間のみだけど、『偽りその他不正』の場合には、その特例がなくなる・・・」 そう言うと、中尾統括官は、机の上で、図を描く。 「・・・このように、通常の場合、特例計算で、延滞税の計算期間を1年間のみとしているのは、①納税者に対して負担が重いことと、②税務調査の時期によって納税者の負担が異なり、不公平となることが理由だ・・・ただし、『偽りその他不正の行為』に該当する場合は、この図のように全期間に延滞税が課せられる・・・したがって、最長7年間に延滞税が課せられると、その負担は、重加算税を超えることになる・・・」 中尾統括官は、そう言うと、再び、新聞に目を落とす。 「・・・川崎重工業は追加の税金負担を見越し、費用として約6億円を計上している・・・と新聞で報道されているが、所得隠しとして12億円が認定されているから、それだけで足りるのか、少し疑問だけれど・・・納税者は、不正行為をすると、そのツケが大きいことを認識しなければならない・・・」 中尾統括官は、新聞を畳んで、ポンと机の上に置く。 (つづく)
#601(掲載号)
#八ッ尾 順一
2025/01/09
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《速報解説》 基礎控除・給与所得控除の見直し及び特定親族特別控除の創設~令和7年度税制改正大綱~

 《速報解説》 基礎控除・給与所得控除の見直し及び特定親族特別控除の創設 ~令和7年度税制改正大綱~   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   令和6年12月27日に閣議決定された令和7年度税制改正大綱では、物価上昇局面における税負担の調整の観点から、基礎控除及び給与所得控除の見直しが示されるとともに、就業調整対策の観点から、大学生年代の子等に係る新たな控除の創設が示された。 これらの見直しにより、いわゆる「103万円の壁」が引き上げられることになる。 以下、解説を行う。   【1】 基礎控除の引上げ(最高額を10万円引上げ) 基礎控除について、合計所得金額2,350万円以下である個人の控除額を10万円引き上げることが示された。 この見直しは、令和7年分以後の所得税に適用されるが、給与等及び公的年金等の源泉徴収については、令和8年1月1日以後に支払うものから適用される。 〈基礎控除の額(現行と見直し後)〉   【2】 給与所得控除の引上げ(最低保障額を10万円引上げ) 給与所得控除について、55万円の最低保障額を65万円に引き上げることが示された。 この見直しは、令和7年分以後の所得税に適用される。 なお、見直しに伴い、①給与所得の源泉徴収税額表(月額表、日額表)、②賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表、③年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表等の改正も行われるが、①と②の表の改正は、令和8年1月1日以後に支払うべき給与等について適用される。   【3】 特定親族特別控除(仮称)の創設 大学生年代の子等について、控除対象扶養親族としての所得制限を超えた場合にも、一定の所得控除を受けられる仕組みの導入が示された。 この見直しは、令和7年分以後の所得税に適用される。なお、控除額が一定額以上の場合には、給与等及び公的年金等の源泉徴収の際に適用できることとなるが、その適用は、令和8年1月1日以後に支払うべき給与等又は公的年金等からとなる。   【4】 扶養親族等の合計所得金額要件等の調整(【1】から【3】の見直しに伴う措置) 上記【1】から【3】までの見直しに伴う措置として、扶養親族の合計所得金額等の金額要件が引き上げられる。 〈合計所得金額等の金額要件(現行と令和7年分以後)〉 *  *  * なお、上記の見直し等については、自由民主党、公明党及び国民民主党の3党による協議が引き続き行われる見通しであるため、今後の3党協議や税制改正関連法案の審議動向を注視したい。 (了)
#篠藤 敦子
2025/01/09
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《速報解説》 事業承継税制における役員就任要件等の見直し(贈与税)~令和7年度税制改正大綱~

 《速報解説》 事業承継税制における役員就任要件等の見直し(贈与税) ~令和7年度税制改正大綱~   太陽グラントソントン税理士法人 パートナー 税理士 佐藤 達夫   令和6年12月20日に公表された「令和7年度税制改正大綱」(与党大綱)において、贈与税に係る事業承継税制の役員就任要件等について、以下の改正が織り込まれた。 この改正は、2025年(令和7年)1月1日以後の贈与より適用となる。 なお、法人版事業承継税制(特例措置)及び個人版事業承継税制の適用期限は、それぞれ2027年(令和9年)12月31日、2028年(令和10年)12月31日であり、「令和7年度税制改正大綱」において適用期限を延長しないことが改めて明記された。 あわせて「事業承継による世代交代の停滞や地域経済の成長への影響に係る懸念も踏まえ、事業承継の在り方については今後も検討する」と記載されている(与党大綱9頁)。 【参考:事業承継税制(贈与)を適用するための手続期限】 (了)
#佐藤 達夫
2025/01/09
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《速報解説》グローバル・ミニマム課税への対応~令和7年度税制改正大綱~

《速報解説》 グローバル・ミニマム課税への対応 ~令和7年度税制改正大綱~   公認会計士・税理士 霞 晴久   政府与党(自由民主党・公明党)が昨年12月20日に公表した「令和7年度税制改正大綱」では、前年に「国際的な議論を踏まえ、令和7年度以降の法制化を検討する」とされていたグローバル・ミニマム課税(「第2の柱」)の3つのルールの内の残りの2つ(※1)、①軽課税国ルール及び②国内ミニマム課税が導入されることとなった。 (※1) 3つのルールのうちの所得合算ルール(IIR:Income Inclusion Rule)は、令和5年度税制改正で国際最低課税額に対する法人税として導入され、2024(令和6)年4月1日以降開始会計年度から適用されている。 1 軽課税国ルール(UTPR:Undertaxed Profits Rule)(※2) (※2) 多国籍企業グループの親会社等の所在地国における実効税率が最低税率を下回る場合に、子会社等の所在地国でその税負担が最低税率相当に至るまで課税する仕組みであり、令和5年度の改正で導入された所得合算ルール(IIR)を補完する機能を果たすといわれている。 (1) 概要 ① 名称 国際最低課税残余額に対する法人税(仮称) ② 納税義務者 特定多国籍企業グループ等(※3)に属する内国法人及び外国法人の恒久的施設等 (※3) 特定多国籍企業グループ等とは、多国籍企業グループ等のうち、各対象会計年度の直前の4対象会計年度のうち2以上の対象会計年度の総収入金額が連結ベースで7億5,000万ユーロ以上であるものをいう。 ③ 国際最低課税残余額 (a) 内国法人に係る国際最低課税残余額 内国法人に係る国際最低課税残余額は、特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等(※4)である内国法人の各対象会計年度に係る国内グループ国際最低課税残余額(下記(b)参照)に、当該内国法人の従業員数及び有形資産の額を勘案して計算した一定割合(※5)を乗じて計算した金額をいう。 (※4) 構成会社等とは、①企業グループ等に属する会社等、②企業集団に属さない会社等で恒久的施設等がその会社等の所在地国以外の国又は地域にあるもの、及び③上記①及び②の会社等の恒久的施設等をいう(法82十三参照)。 (※5) 従業員数の割合及び有形資産の額の割合はそれぞれ50%で加重平均される。 (b) 国内グループ国際最低課税残余額 国内グループ国際最低課税残余額は、各対象会計年度に係る特定多国籍企業グループ等のグループ国際最低課税残余額(下記(c)参照)に、我が国を所在地国とする構成会社等の従業員数及び有形資産の額を勘案して計算した一定割合を乗じて計算した金額をいう。ここでいう構成会社等には、UTPRを導入する一定の国若しくは地域に所在するものを含む。 (c) グループ国際最低課税残余額 グループ国際最低課税残余額は、各対象会計年度に係る特定多国籍企業グループ等のグループ国際最低課税額から、その特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等に係る国際最低課税額(共同支配会社に係るものを含む)等を控除した残額となる。 ④ 税額の計算 各対象会計年度の国際最低課税残余額に対する法人税の額は、各対象会計年度の国際最低課税残余額(課税標準)に100分の90.7の税率を乗じて計算した金額となる。 (2) 必要事項の見直し UTPR導入に伴い、特定基準法人税額(※6)に対する地方法人税及び特定多国籍企業グループ等報告事項等の提供制度(※7)について、所要の措置が講じられる。 (※6) 特定基準法人税額とは、国際最低課税額確定申告書を提出すべき内国法人の各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税の額をいう。 (※7) 拙稿「《速報解説》 グローバル・ミニマム課税に関する様式として、国税庁が「特定多国籍企業グループ等報告事項等の記載要領」を公表~GIRにおける報告様式は主に3つのセクションから構成~」を参照 (3) 適用関係(申告及び納付等) 各対象会計年度の国際最低課税残余額に対する法人税(上記(2)も同様)は、法人の令和8年4月1日以降開始する対象会計年度から適用され、同申告及び納付は、各対象会計年度終了の日の翌日から1年3ヶ月(一定の場合は1年6ヶ月)以内に行うこととされる。 ただし、当該対象会計年度の国際最低課税残余額がない場合は、申告を要しないほか、適用免除基準として、特定多国籍企業グループ等の判定対象会計年度が、特定多国籍企業グループ等に該当することとなった最初の対象会計年度開始の日以後5年以内に開始し、かつ、国際的な事業活動の初期の段階にあるものとされる対象会計年度に該当する場合には、その対象会計年度に係るグループ最低課税残余額は、零とされる。   2 国内ミニマム課税(QDMTT:Qualified Domestic Minimum Top-up Tax)(※8) (※8) 多国籍企業グループに属する会社等について、その所在地国における実効税率が最低税率を下回る場合に、当該所在地国において当該会社に対して、その税負担が最低税率に至るまで課税する仕組みであり、我が国でQDMTTが課税された場合、IIRやUTPRの課税はされないことになる。 (1) 概要 ① 名称 国内最低課税額に対する法人税(仮称) ② 納税義務者 ③ 構成会社等に係る国内最低課税額 国内最低課税額の対象となる事業体には特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等である内国法人(※9)又は過去対象会計年度においてその特定多国籍企業グループ等の属する構成会社等であった内国法人で当該対象会計年度においてその構成会社等でないものが含まれ(以下「ケースE」という)、次の各区分に応じそれぞれ次に定める金額とされる。なお、特定多国籍企業グループ等に係る国内グループ純所得の金額がない場合は、紙面の都合上割愛する。 (※9) 構成会社等に係る国内最低課税額の分類のほか、共同支配会社等に係る国内最低課税額というカテゴリーも存在するが、基本的に構成会社等に係る国内最低課税額と同様に計算した金額となる。 (a) 国内実効税率が基準税率(15%)を下回り、かつ、その特定多国籍企業グループ等に係る国内グループ純所得の金額がある場合:次の(イ)~(ハ)の合計額(ケースEは(ロ)の金額) (※10) 用語の意義等は大綱では明示されていない。 (b) 国内実効税率が基準税率以上であり、かつ、その特定多国籍企業グループ等に係る国内グループ純所得の金額がある場合:次の(イ)~(ロ)の合計額(ケースEは(イ)の金額) ④ 税額の計算 各対象会計年度の国内最低課税額に対する法人税の額は、各対象会計年度の国内最低課税額(課税標準)に100分の75.3の税率を乗じて計算した金額となる。 (2) 国内最低課税制度に係る特定基準法人税額に対する地方法人税(仮称)の創設 特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等である法人又は共同支配会社等である法人の各課税対象会計年度の国内最低課税額に係る特定基準法人税額には、753分の247の税率で国内最低課税制度に係る特定基準法人税額に対する地方法人税が課せられる。 (3) グループ国内最低課税額報告事項等の提供制度の創設 グループ国内最低課税額報告対象法人は、特定多国籍企業グループ等の最終親会社等の名称、その特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等の所在地国の名称、その特定多国籍企業グループ等に係る国内最低課税額に関する事項等を、下記(4)に定める期間内に、e-taxにより、納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。 (4) 適用関係(申告及び納付等) 各対象会計年度の国内最低課税額に対する法人税(上記(2)及び(3)も同様)は、法人の令和8年4月1日以降開始する対象会計年度から適用され、同申告及び納付は、各対象会計年度終了の日の翌日から1年3ヶ月(一定の場合は1年6ヶ月)以内に行うこととされる。また、上記1のUTPR同様、国際的な事業活動の初期の段階における適用免除基準が設けられている。 (了)
#霞 晴久
2025/01/07
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《速報解説》 スピンオフ等に伴うグループ通算離脱時の分配割合等の計算の見直し~令和7年度税制改正大綱~

 《速報解説》 スピンオフ等に伴うグループ通算離脱時の分配割合等の計算の見直し ~令和7年度税制改正大綱~   公認会計士・税理士 税理士法人トラスト 足立 好幸   令和6年12月20日(金)に与党(自由民主党・公明党)より令和7年度税制改正大綱(以下「大綱」という)が公表され、グループ通算制度については、スピンオフ等に伴うグループ通算離脱時の分配割合等の計算の見直しが明記された。 大綱によると、この改正内容は次のとおりであるが、簡潔に述べると、通算法人の株主がその通算法人の行った株式分配により完全子法人の株式等の交付を受けた場合の所有株式の譲渡損益の計算の基礎となる完全子法人株式対応帳簿価額等について、株式分配の直前の所有株式の帳簿価額に乗ずる割合等につき、その分母及び分子に簿価修正相当額の金額を加減算する等の見直しを行うというものである(分割型分割についても同様の見直しを行うことになる)。 [スピンオフ等に伴うグループ通算離脱時の分配割合等の計算の見直し] これは、次の[ケース1][ケース2]のように、スピンオフのために行われる株式分配又は分割型分割で、完全子法人株式又は分割承継法人株式が通算子法人株式であり、株式分配又は分割型分割直後にその通算子法人が通算グループから離脱する場面で適用される取扱いとなる。 [ケース1]通算親法人が通算子法人株式を株式分配(スピンオフ)するケース [ケース2]通算親法人が通算子法人に分割型分割を行うケース(分割対価が分割承継法人株式のケース) そして、現行法令では、株式分配([ケース1])について、被株式分配法人(株式分配法人の株主)及び株式分配法人において次のような税務仕訳で処理されることになる(法法23①、24①三、61の2⑧、62の5③④、法令8①十五・十六・十七、9①十一、23①二・三、119①八、119の3㉔、119の4①、119の8の2①②)。 なお、ここでは、金銭等不交付株式分配を対象とする(この場合、被株式分配法人において株式分配法人株式の譲渡損益は発生しない)。また、パーシャルスピンオフには該当しないものとする。   (1) 被株式分配法人(株式分配法人の株主) ① 非適格株式分配 (注1) 完全子法人株式対応帳簿価額は、次の計算による。 (※1) 分配割合(※2)=完全子法人株式の帳簿価額(※3)/株式分配法人の簿価純資産総額(※4) (※2) 分配割合は、分子が0を超え、かつ、分母が0以下である場合には1とし、その割合に小数点以下3位未満の端数があるときはこれを切り上げる。なお、株式分配法人から被株式分配法人に対して分配割合は通知される。 (※3) 株式分配法人の株式分配の直前の完全子法人の株式の帳簿価額(その金額が0以下である場合には0とし、その金額が分母の金額を超える場合(分母の金額が0に満たない場合を除く)には分母の金額)とする。 (※4) 株式分配法人の簿価純資産総額とは、株式分配法人の株式分配の日の属する事業年度の前事業年度(その株式分配の日以前6ヶ月以内に仮決算による中間申告書を提出し、かつ、その提出の日からその株式分配の日までの間に確定申告書を提出していなかった場合には、その中間申告書に係る期間)終了時の資産の帳簿価額から負債(新株予約権及び株式引受権に係る義務を含む)の帳簿価額を減算した金額(その終了時からその株式分配の直前の時までの間に資本金等の額又は利益積立金額(当期の所得金額等に基づく留保金額に係るもの及び投資簿価修正額を除く)が増加し、又は減少した場合には、その増加した金額を加算し、又はその減少した金額を減算した金額)をいう。 (注2) みなし配当の額は、次の計算による。 (※5) 株式分配法人の分配資本金等の額は、次の計算による。 株式分配法人の分配資本金等の額=株式分配の直前の資本金等の額×分配割合(※6) (※6) 分配割合(※7)=完全子法人株式の帳簿価額(※8)/株式分配法人の簿価純資産総額(※8) (※7) 分配割合は、株式分配の直前の資本金等の額が0以下である場合には0と、株式分配の直前の資本金等の額及び分子の金額が0を超え、かつ、分母の金額が0以下である場合には1とし、その割合に小数点以下3位未満の端数があるときはこれを切り上げる。なお、株式分配法人から被株式分配法人に対して分配割合は通知される。 (※8) (注1)の(※3)(※4)と同じ。 ② 適格株式分配 (注1) 完全子法人株式対応帳簿価額は、上記①と同様の計算方法による。また、適格株式分配の場合には所得税の源泉徴収は要しない(所法24①、174①二、212③)。   (2) 株式分配法人 ① 非適格株式分配 (注1) 資本金等の額の減少額は、次の計算による。 (※1) 分配割合は、上記(1)①と同様の計算方法とする。 ② 適格株式分配 (注1) 適格株式分配の場合には所得税の源泉徴収は要しない(所法24①、174①二、212③)。 上記のとおり、分配割合は、被株式分配法人(株式分配法人の株主)におけるみなし配当の額や交付を受ける完全子法人株式の帳簿価額(金銭等交付株式分配に該当する場合、株式分配法人株式の譲渡損益を含む)、株式分配法人における資本金等の額から減算する金額の計算要素になるものであり、今回の改正は、この分配割合の計算において、分子及び分母に離脱法人となる完全子法人の株式に係る簿価修正相当額を加減算するという内容となっている。 なお、「簿価修正相当額」については、離脱法人株式を有する通算法人の株式分配の日の属する事業年度の前事業年度終了の時(前期期末時)における離脱法人の簿価純資産価額を基礎に計算される点で、離脱法人株式の投資簿価修正額とは相違することになる。 そして、『[ケース2]通算親法人が通算子法人に分割型分割を行うケース(分割対価が分割承継法人株式のケース)』においても分割割合の計算において同様の取扱いとなる。 以上が大綱からわかる[スピンオフ等に伴うグループ通算離脱時の分配割合等の計算の見直し]の改正内容となる。 この改正については、執筆時点で、大綱以外の情報が公表されていないため、最終的に改正法令が公表された場合、上記と異なる取扱いが生じる可能性もあるため、その点、留意してほしい。   (了)
#足立 好幸
2025/01/07
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《速報解説》 外国人旅行者向け消費税免税制度(輸出物品販売場制度)の見直し~令和7年度税制改正大綱~

《速報解説》 外国人旅行者向け消費税免税制度(輸出物品販売場制度)の見直し ~令和7年度税制改正大綱~   税理士 石川 幸恵   消費税の外国人旅行者向け免税制度(輸出物品販売場制度)については、免税購入品が国外に持ち出されず、国内で横流しされたと疑われる事例が多発している。この問題を受け、令和6年度の税制改正大綱においてリファンド方式への見直しが示されており、令和7年度税制改正大綱(令和6年12月27日閣議決定)に具体的な内容が盛り込まれた。 本稿では大綱で示されたリファンド方式の内容及び施行までのスケジュールについて概説する。   1 背景 (1) 輸出物品販売場(以下「免税店」と表記する場合も同じ意味である)の不正事例 令和4年4月から令和6年3月における免税購入額と税関の検査状況の資料によると、1億円以上の免税高額購入者が690人いたことがわかっている。この全ての者が不正を行っているとまでは言えないが、税関や国税当局で捕捉し、検査を行ったほぼ全ての者について免税品の持ち出しが確認されず、国内での横流しが疑われる。購入者にはこの時点で消費税が賦課決定されるが、賦課した消費税のほぼ全てが滞納のまま海外へ出国されているのが現状である。 (2) 海外の対応 欧州連合(EU)や韓国をはじめ、海外では出国時に免税分を後から払い戻すリファンド方式が主流である。   2 現行の輸出物品販売場制度 (1) 現行制度では購入時に消費税が免税 現行制度では以下の手続きにより免税販売が行われている。 (2) 免税販売手続の電子化 ① 免税販売手続の電子化 令和3年10月1日に免税販売手続が電子化された。購入記録情報の送信については、自社でシステムを構築する自社送信と承認送信事業者(※)に委託する他社送信があり、他社送信が大半である。 (※) 承認送信事業者とは、一定の承認要件を満たしたうえで輸出物品販売場を経営する事業者が行うべき購入記録情報の提供を行うことにつき、納税地の所轄税務署長の承認を受けた事業者をいう(輸出物品販売場に関するQ&A問104)。電子化に対応した免税システム事業者情報は国土交通省のホームページにリストが掲載されている。 ② 免税販売手続システムの基本的な機能 承認送信事業者各社が免税販売手続のシステムを提供しているが、いずれも次の機能を基本的な機能として備えており、付加価値としてPOSシステムとの連動、誘客プロモーションなどのサービスを提供している。   3 リファンド方式 (1) リファンド方式の概要 リファンド方式とは出国時に税関において持ち出しが確認された場合に免税販売が成立する制度である。実務上、免税店を経営する事業者が消費税相当額を含めた価格で販売(下図①)し、出国時に持ち出しが確認(下図③)された場合に免税店を経営する事業者から免税購入対象者に対し消費税相当額を返金(下図⑦)する。返金手続きは承認送信事業者等に委託され、クレジットカード等でキャッシュレス返金をしたり、空港で現金で返金することが想定されている。 また、購入日から90日内に税関での確認を受けることとされる。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (※) 「自由民主党税制調査会資料」(令和6年12月12日)より抜粋 (2) リファンド方式に向けたシステム対応のスケジュール 制度の詳細が確定後、国税庁が免税販売管理システムの使用を公表する予定である。公表後に承認送信事業者や免税店がシステム改修を進める。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (※) 「自由民主党税制調査会資料」(令和6年12月12日)より抜粋 (3) 免税販売要件の見直し等 リファンド方式への見直しと併せて、一般物品と消耗品の区分の廃止、購入上限額及び特殊包装の廃止が予定されている。これは、免税店の事務負担軽減、外国人旅行者の利便性向上といった観点によるものである。 ただし、「別送」(免税購入対象者が免税店で購入した免税対象物品を郵便局等から国外へ配送し、配送に係る書類により輸出したことを確認する取扱い)は不正に多用されていることから廃止する。   4 適用時期 システム改修等の準備期間を考慮し、令和8年11月1日以後に行われる免税対象物品の譲渡等について適用とされている。 上記3(3)の「別送」のみ前倒しで、令和7年3月31日をもって廃止する。 (了)
#石川 幸恵
2025/01/06
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《速報解説》 中小企業向け設備投資減税の延長・拡充等~令和7年度税制改正大綱~

《速報解説》 中小企業向け設備投資減税の延長・拡充等 ~令和7年度税制改正大綱~   Profession Journal編集部   令和6年12月27日に閣議決定された令和7年度税制改正大綱では、中小企業関連税制として既報のとおり中小企業に対する軽減税率が対象の一部見直しとともに2年延長された他、令和7年3月31日に適用期限を迎える各設備投資減税制度について、下記の改正案が示されている。 まず中小企業投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却(30%)又は税額控除(7%)(措法42の6))は、一部見直しとともに(※)、適用期限が令和9年3月31日まで2年延長される。 (※) 関係法令の改正を前提に、みなし大企業の判定における大規模法人の有する株式又は出資から、「その判定対象である法人が農地法に規定する農地所有適格法人である場合で、かつ、一定の承認会社(農林漁業法人等に対する投資の円滑化に関する特別措置法に規定する承認会社のうち地方公共団体、農業協同組合、農業協同組合連合会、農林中央金庫又は株式会社日本政策金融公庫がその総株主の議決権の過半数を有しているもの)がその農地所有適格法人の発行済株式又は出資の総数又は総額の50%を超える数又は金額の株式又は出資を有する場合におけるその株式又は出資」が除外される。 【参考図①】 (※) 経済産業省ホームページ 次に中小企業経営強化税制(中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却(即時償却)又は税額控除(7%又は10%)(措法42の12の4))についても適用期限が令和9年3月31日まで2年延長される他、下記の見直しが行われる。 【参考図②】 (※) 経済産業省ホームページ 【参考図③】 (※) 経済産業省ホームページ また、中小企業防災・減災投資促進税制(特定事業継続力強化設備等の特別償却(16%)(措法44の2))は、対象資産から「感染症の発生が事業活動に与える影響の軽減に資する機能を有する減価償却資産(サーモグラフィ装置)」を除外した上で、適用期限が令和9年3月31日まで2年延長される。 【参考図④】 (※) 経済産業省ホームページ 最後に先端設備等導入計画の認定を受けた中小企業者に対する固定資産税の軽減措置(地法附15㊹)については、対象資産を「雇用者給与等支給額の引上げの方針を位置づけた同計画に基づき取得する一定の機械・装置等」に限定し(現行は賃上げ方針表明により軽減の上乗せ)、軽減割合の見直しを行った上で、適用期限が令和9年3月31 日まで延長される。 【参考図⑤】 (※) 経済産業省ホームページ (了)
#Profession Journal 編集部
2025/01/06
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《速報解説》 金融庁、法人税等会計基準等の改正案を受け、「財務諸表等規則等の一部を改正する内閣府令(案)」等を公表

《速報解説》 金融庁、法人税等会計基準等の改正案を受け、「財務諸表等規則等の一部を改正する内閣府令(案)」等を公表   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2024(令和6)年12月27日、金融庁は、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)」等を公表し、意見募集を行っている。財務諸表等規則ガイドライン及び連結財務諸表規則ガイドラインも改正する。 これは、2024年11月21日に公表された「2024年年次改善プロジェクトによる企業会計基準等の改正(案)」において、「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準(案)」(企業会計基準公開草案第82号。企業会計基準第27号の改正案)等が示されたことを受けたものである。 意見募集期間は2025年1月27日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 財務諸表等規則等の主な改正 主に次の改正を行う(連結財務諸表規則も同様)。   Ⅲ 施行日等 企業会計基準委員会において、公開草案の結果を踏まえ公表される「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」等の適用日を踏まえて、財務諸表等規則等を施行する予定である。 (了)
#阿部 光成
2025/01/06

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