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〈平成30年度改正対応〉賃上げ・投資促進税制(旧・所得拡大促進税制)の適用上の留意点Q&A 【Q10】「比較雇用者給与等支給額に関する調整計算」-(3)分割等が行われた場合の調整計算(分割法人等)-
〈平成30年度改正対応〉 賃上げ・投資促進税制(旧・所得拡大促進税制)の 適用上の留意点Q&A 【Q10】 「比較雇用者給与等支給額に関する調整計算」 -(3)分割等が行われた場合の調整計算(分割法人等)- 公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎 [Q10] (再掲) 平成30年度の税制改正によって、組織再編を行った場合の比較雇用者給与等支給額に関する調整計算はどのように変更されたのでしょうか。 [A10] (再掲) ◆新たに「基準日」という概念が設けられ、基準日から適用年度開始の日の前日までの期間が「調整対象年度」と定義されました。 ◆具体的な調整計算については大きな変更はありませんが、計算期間が「前年度」から「各調整対象年度」に変更されています。 【解説】 (3) 分割等が行われた場合の調整計算(分割法人等) ① 適用年度において分割等が行われた場合 適用年度に分割等(分割、現物出資、現物分配)が行われた場合、分割等の日の属する月以後、分割承継法人等に引き継いだ国内雇用者に対する給与等支給額が発生しなくなることから、雇用者給与等支給額が大きく減少することとなる。 このとき、分割法人等の比較雇用者給与等支給額については、調整対象年度ごとに、分割承継法人等に移転したと考えられる金額として、各調整対象年度に係る分割法人の移転給与等支給額のうち、分割等の日から適用年度終了日までの期間の月数に対応する金額を減算調整した金額に基づき計算することとされた。これにより適切な大小比較を可能とする(下図参照)。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 比較雇用者給与等支給額の調整 分割法人等の各調整対象年度に係る給与等支給額から、以下の算式によって計算した金額を控除する(措令27の12の5⑨一イ)。 ここで「移転給与等支給額」とは、その分割等に係る分割法人等の当該分割等の日前に開始した各事業年度等に係る給与等支給額(分割事業年度等にあっては、当該分割等の日の前日を当該分割事業年度等の終了の日とした場合に損金の額に算入される給与等支給額)に当該分割等の直後の当該分割等に係る分割承継法人等の国内雇用者(当該分割等の直前において当該分割法人等の国内雇用者であった者に限る)の数を乗じて、これを当該分割等の直前の当該分割法人等の国内雇用者の数で除して計算した金額をいう(措令27の12の5⑪)。 計算式で表現すると以下のようになる。 このように、分割等によって分割承継法人等に移転した分割法人等の国内雇用者の数に対応する給与等支給額を「移転給与等支給額」として計算し、これに月数補正を加味したものを、調整対象年度における分割法人等の給与等支給額から控除するという調整を行っているということである。 ② 基準日から適用年度開始の日の前日までの期間に分割等が行われた場合 適用年度は年度を通じてすべて分割等実施後の規模で給与等支給額が発生することとなるが、引き続き、前年度の給与等支給額について調整が必要となる(下図参照)。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 比較雇用者給与等支給額の調整 基準日から適用年度開始の日の前日までの期間内において分割等が行われている場合、分割法人等の調整対象年度に係る給与等支給額から、当該分割法人等の当該調整対象年度に係る移転給与等支給額を控除する(措令27の12の5⑨一ロ)。 この点に関し、移転給与等支給額の計算基礎となる分割法人等の各事業年度の給与等支給額の算定に当たり、その事業年度が分割等の日を含む事業年度(分割事業年度等)である場合には、「当該分割等の日の前日を当該分割事業年度等の終了の日とした場合に損金の額に算入される給与等支給額」とされている点に留意が必要である。 これは、移転給与等支給額の按分計算が必要なのは、あくまでも、分割前の企業規模を前提に支給された給与等の額のみであって、分割後の給与等支給額を按分計算に含めるのは適切でないという考え方によるものである。 したがって、調整対象年度に分割等の日が含まれている場合における移転給与等支給額の計算は、基準日から分割等の日の前日を1事業年度とみなして、その事業年度中に損金の額に算入される給与等支給額を基礎として計算することとなる。 (了)
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〈事例で学ぶ〉法人税申告書の書き方 【第30回】「別表6(24) 中小企業者等が給与等の引上げを行った場合の法人税額の特別控除に関する明細書」
〈事例で学ぶ〉 法人税申告書の書き方 【第30回】 「別表6(24) 中小企業者等が給与等の引上げを行った場合の 法人税額の特別控除に関する明細書」 公認会計士・税理士 菊地 康夫 Ⅰ はじめに 本連載では、法人税申告書のうち、税制改正により変更もしくは新たに追加となった様式、実務書籍への掲載頻度が低い様式等を中心に、簡素な事例をもとに記載例と書き方のポイントを解説していく。 前々回より、平成30年度の税制改正により見直しが行われたことによりその様式も改正された、賃上げ・投資促進税制(改正前 所得拡大促進税制)関連の別表を次の適用パターンごとに分けて採り上げている。 ※ 中小企業者とは、資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人でその発行済株式又は出資の総数又は総額の一定割合以上を大規模法人に所有されていない法人及び資本又は出資を有しない法人で常時使用する従業員の数が1,000 人以下の法人をいい、それ以外を大企業等という。 今回は、パターン③の場合における、「別表6(24) 中小企業者等が給与等の引上げを行った場合の法人税額の特別控除に関する明細書」の記載の仕方を採り上げる。 Ⅱ 概要 この別表は、青色申告書を提出する中小企業者等が平成30年度改正後の租税特別措置法第42条の12の5第2項の規定の適用を受ける場合に作成する。 本制度は、平成30年度改正のいわゆる賃上げ・投資促進税制のうち、前回解説した大企業等向けの制度より要件等が緩和された中小企業者等に対する措置であり、平成30年4月1日から平成33年3月31日までの間に開始する各事業年度において、以下の要件を満たした場合、国内雇用者(注1)に対する給与等支給額(注2)の対前年度増加額について、その一定割合の税額控除ができる(当期の法人税額の20%が上限)制度である。 (注1) 国内雇用者とは、法人の使用人(法人の役員及びその役員の特殊関係者を除く)のうち国内事業所に勤務する雇用者(労働基準法第108条に規定する賃金台帳に記載された者)をいう。 (注2) 給与等支給額とは、各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額(その給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額がある場合はその金額を控除した額)をいう。 (注3) 継続雇用者給与等支給額とは、雇用者給与等支給額のうち継続雇用者(適用年度及び適用年度の前事業年度の期間内の各月において給与等の支給を受けた国内雇用者)に対する当該適用年度の給与等の支給額をいう。 ▼ 注意!▼ 上記の継続雇用者は、雇用保険の一般被保険者に該当するものに限られる。また、継続雇用制度(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律第9条第1項第2号に規定する制度)の対象者は除く。 ▼ 注意!▼ 改正前の旧所得拡大促進税制における「継続雇用者」は、適用年度及びその前年度において給与等を受けた国内雇用者をいうので、当期と前期にそれぞれ1ヶ月以上の支給実績があれば継続雇用者に該当したが、改正後の新制度では2期間内のすべての月で支給実績がなければ該当しないことに留意する。 この制度による税額控除限度額は、次のとおりである。 給与等支給増加額(給与等支給額-前事業年度の給与等支給額)×15%+加算額※1 ※1 さらに以下の(イ)及び(ロ)の要件を満たした場合、15%の税額控除に10%上乗せした25%の税額控除とすることができる(当期の法人税額の20%が上限)。 (注4) 教育訓練費とは、国内雇用者の職務に必要な技術又は知識を習得させ、又は向上させるための費用で次のものをいう。 (注5) 中小企業比較教育訓練費の額とは、適用年度開始の日の前1年以内に開始した各事業年度の所得の計算上損金の額に算入される教育訓練費の額(当該各事業年度の月数とその適用年度の月数とが異なる場合には、その各事業年度の教育訓練費の額にその適用年度の月数を乗じてこれをその各事業年度の月数で除して計算した金額とする)の合計額を当該1年以内に開始した各事業年度の数で除して計算した金額をいう。 (注6) 具体的には、以下の書類を確定申告書等に添付する必要がある。 Ⅲ 「別表6(24)」の書き方と留意点 (1) 設例 (2) 今回の別表が適用される事業年度 平成30年4月1日以後開始する事業年度。 (3) 別表の記載例 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます。 (4) 別表の各記載欄の説明 〔継続雇用者給与等支給増加割合の計算〕欄 〔教育訓練費増加割合の計算〕欄 〔中小企業者等税額控除限度額の計算〕欄 〔比較雇用者給与等支給額の計算〕欄 〔継続雇用者給与等支給額及び継続雇用者比較給与等支給額の計算〕欄 〔中小企業比較教育訓練費の額の計算〕欄 (了)
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措置法40条(公益法人等へ財産を寄附した場合の譲渡所得の非課税措置)を理解するポイント 【第2回】「非課税措置の対象となる公益法人等とは」
措置法40条(公益法人等へ財産を寄附した場合の 譲渡所得の非課税措置)を理解するポイント 【第2回】 「非課税措置の対象となる公益法人等とは」 公認会計士・税理士・社会保険労務士 中村 友理香 - 質 問 - 非課税措置の対象となる公益法人等とは、どのような法人ですか。 - 回 答 - 非課税措置の対象となる「公益法人等」とは、国又は地方公団体、 公益社団法人、公益財団法人、特定一般法人(一般社団法及び一般財団法人のうち法人税法に掲げる一定の要件を満たす法人)及びその他公益を目的とする事業を行う法人(例えば、社会福祉法人、学校法人、宗教法人など)をいいます。 ○●○◆ 解 説 ◆○●○ 非課税措置の対象となる法人は、国・地方公共団体、公益社団・財団法人、特定一般法人及びその他公益を目的とする事業を行う法人となっています(措法40①後段)。 特定一般法人とは、一般社団法人・一般財団法人のうち、以下の要件のすべてを満たす法人をいいます。 なお、一般法人のうち税務上の非営利型法人(※)には、 の2種類がありますが(法法2九の二、法令3)、特定一般法人はこのうち①の非営利性が徹底された法人となります。 (※) 非営利型法人とは、収益事業のみ課税される法人をいいます。 また、その他公益を目的とする事業を行う法人とは、 を行う法人をいい、その事業の遂行に伴い収益を生じているかどうかは問われません。 具体的には、学校法人、社会福祉法人等が該当します。 (了)
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国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第21回】「国外転出時課税と贈与、低額譲渡」
国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第21回】 「国外転出時課税と贈与、低額譲渡」 税理士 菅野 真美 - 質 問 - 私甲は外国籍ですが、日本に永住者として長年住んでいます。また、日本で会社(日本法人)を経営していますが、株式の評価額が高く、将来の相続税対策が心配です。 最近、株価が下がってきているので、海外に在住して子会社経営をしている次男乙(外国籍)へ、今のうちに贈与したいと考えています。 この場合、贈与税だけを考えればよいのでしょうか。国外転出時課税も問題になるのですか。それでは低額で譲渡をした場合はどうなるのでしょうか。 ◆ ◆ 解 説 ◆ ◆ ▷国外転出時課税とは 国外転出時課税は平成27年に創設された制度である。 この制度が創設される前は、居住者が有価証券を売却した場合、譲渡所得として所得税等を課税できるにもかかわらず、有価証券を保有したまま外国に移住した後に売却した場合は、国内法において所得税課税の対象外となり、あるいは、国内法で所得税課税の対象となっても租税条約によっては課税対象外となるため、これらを利用した節税策が富裕層の間で行われているとの指摘があり、当局も頭を悩ましていた。 そこで、平成27年度の税制改正で、平成27年7月1日以後に、1億円以上の有価証券を有している者が外国に移住して居住者から非居住者になる場合、出国時において、保有する有価証券を譲渡したものとみなして所得税課税を行う制度、国外転出時課税制度が創設された。 ▷なぜ贈与の場合も国外転出時課税があるのか? 国外転出時課税は、有価証券を有している本人が海外移住するケースのみ適用される制度のように思われるが、実は、居住者が非居住者に有価証券を贈与した場合や、居住者が死亡して非居住者である相続人や受遺者が有価証券を取得した場合においても、国外転出時課税の適用がある。贈与した居住者が外国籍の場合は在留資格により適用の有無があるものの、永住者の場合は日本人と同様と考え国外転出時課税が適用される(所法170の2①、170③一)。 なぜならば、贈与や相続の時点では譲渡所得課税は生じず、相続人や受贈者は被相続人や贈与者の取得費を引き継ぐためである(所法59②、60)。つまり、贈与や相続によって非居住者に有価証券が移転した後に、その非居住者が海外で有価証券を売却した場合は、本人が海外に移住して有価証券を売却した場合と同様に、日本での所得税課税の課税漏れという現象が起こる可能性がある。 そこで、平成27年度の税制改正では、本人が外国に移住した場合と同様の制度が、非居住者に贈与や相続により有価証券が移転した場合にも創設されることとなった(所法60の3)。 本事例においても、贈与者甲が保有する有価証券の評価額が1億円以上の場合で、有価証券を非居住者である次男乙へ贈与した場合は、たとえ贈与した有価証券の評価額が1億円未満であったとしても、国外転出時課税の対象となる(所法60の3)。 ここで注意すべき点は、この有価証券の評価額は、相続税評価額と必ずしも一致するとは限らないということだ。例えば、非上場株式の場合で譲渡者が発行法人にとって中心的同族株主に該当する場合の株式の評価額は小会社(原則的には純資産価額)で評価し、法人が有する土地や上場株式は時価で評価し、かつ評価差額の法人税等控除は認められない(所基通60の2-7、59-6)。 なお、贈与から5年内に受贈者が日本に帰国した場合は、将来、日本で所得税課税ができることから、課税を取り消すことができる(所法170の2⑥)。 ▷贈与の場合の課税関係 本事例において、贈与の場合の課税関係はどうなるのだろうか。贈与であるから、もちろん贈与税の課税について考えなければならない。本事例では、贈与者も受贈者も外国籍である。外国籍の贈与者が贈与時に日本に住所を有したとしても贈与財産が国内財産に該当するケースもあるが、本事例では贈与者が永住者であるから日本国籍の人と同様に取り扱われ、国内外財産いずれであったとしても日本での贈与税課税の対象となる(相法1の4①・③一)。 このため乙は、贈与年の翌年3月15日までに贈与税の申告書を提出しなければならない(相法28)。ただし、乙は非居住者であることから、申告納税については納税管理人が行うことになる(国通法117)。 また、国外転出時課税に係る申告納税は甲が行うこととなるが、甲は居住者であることから、一般的な所得税の確定申告と同様に、贈与した年の翌年の3月15日までに所得税の確定申告を行わなければならない(所法120)。 このように贈与の場合は、贈与税の納税義務者と所得税の納税義務者が異なることから、相続税の債務控除のような二重課税を防ぐ方法がない。 ▷国外転出時課税に係る納税猶予 国外転出時課税はみなし譲渡課税であり、対価の支払いがないことから担税力に乏しい場合も考えられるが、その解決方法として納税猶予を選択することができる(所法137の3)。納税猶予期間は5年間が原則で、10年間に延長することができる(所法137の3①③)。 納税猶予を選択する場合は、贈与税の確定申告期限までに担保を提供しなければならない(所法137の3①)。担保提供については国税通則法において定められており、非上場株式も可能だが、担保提供をするためには株券を発行して供託しなければならない(所基通137の3-2、137の2-8、国通法54、国通達54②)。また、株券不発行会社が株券を発行するには、定款変更のため株主総会の特別決議が必要となる(会社法466、309②)。 ▷低額譲渡の場合の課税関係 上述したように、有価証券を非居住者に贈与した場合は、贈与税及び国外転出時課税による二重の負担(Wパンチ)となる。ここで、贈与と似たような方法として、時価よりも低い価格で売買した場合、つまり低額譲渡がある。相続税法においては、低額譲渡の場合もみなし贈与として、相続税法上の時価と対価の差額について贈与税が課税される(相法7)。では、国外転出時課税における取扱いはどうなるのか。 所得税法においては、贈与と低額譲渡は別ものとして取り扱われ(所法59、60)、低額譲渡を贈与に含めるという文言はどこにもない。もちろん、国外転出時課税の贈与の規定においても、低額譲渡という文言は見られない。このため、贈与という文言に低額譲渡も含まれていると解釈するのは無理があるようにも思えることから、低額譲渡の場合は国外転出時課税の適用外と考えられる。 (了)
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「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例66(所得税)】 「法人において支給した退職金のうち個人事業時代に該当する部分につき、退職金支給日の翌日から2ヶ月以内に所得税の更正の請求を行わなかったため、経費計上ができなくなってしまった事例」
「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例66(所得税)】 税理士 齋藤 和助 《基礎知識》 ◆法人において個人事業当時の退職金も含めて支給した場合(原則) 個人事業当時に雇用していた使用人が法人成り後も使用人として勤務していた場合において、その使用人が退職した時に支払う退職金は、個人事業当時の勤続年数分は個人事業主の必要経費になり、法人成り後の勤続年数分は法人の損金の額に算入する。 ◆法人において個人事業当時の退職金も含めて支給した場合(特例)(法基通9-2-39) 個人事業を引き継いで設立された法人が個人事業当時から引き続き在職する使用人の退職により退職給与を支給した場合において、その退職が設立後相当期間経過後に行われたものであるときは、その支給した退職給与全額を法人の損金の額に算入することができる。 ◆事業を廃止した場合の必要経費の特例(所法63) 居住者が事業所得等を生ずべき事業を廃止した後において、当該事業に係る費用又は損失で当該事業を廃止しなかったとしたならばその者のその年分以後の各年分の事業所得等の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額が生じた場合には、当該金額は、その者のその廃止した日の属する年分又はその前年分の事業所得等の金額の計算上、必要経費に算入する。 ◆個人事業を引き継いで設立された法人の損金に算入されない退職給与(所基通63-1) 個人事業を引き継いで設立された法人が、個人事業当時から引き続き在職する使用人の退職により退職給与を支給した場合において、その支給した金額のうちに、個人事業当時の事業主の負担すべきものとして当該法人の所得の金額の計算上損金に算入されなかった金額があるときは、その金額については、その者のその廃止した日の属する年分又はその前年分の事業所得等の金額の計算上、必要経費に算入する。 ◆各種所得の金額に異動を生じた場合の更正の請求の特例(所法152) 確定申告書を提出した居住者は、当該申告書に係る年分の各種所得の金額につき、事業を廃止した場合の必要経費の特例に規定する事実が生じたことにより、更正の請求に該当する事由が生じたときは、当該事実が生じた日の翌日から2月以内に限り、税務署長に対し、更正の請求をすることができる。 (了)
会計
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財務会計
企業結合会計を学ぶ 【第2回】「取得の会計処理の概要」
企業結合会計を学ぶ 【第2回】 「取得の会計処理の概要」 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 【第1回】では、企業結合の分類として、取得、共同支配企業の形成、共通支配下の取引があることを解説した。 今回は、吸収合併の例を用いて、「企業結合に関する会計基準」(企業会計基準第21号。以下「企業結合会計基準」という)及び「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第10号。以下「結合分離適用指針」という)に規定する「取得」の会計処理の概要について解説する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 吸収合併 吸収合併とは、会社が他の会社とする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併後存続する会社に承継させるものである(会社法2条27号)。 〔例〕 次の条件による吸収合併を行った。 Ⅲ 取得の会計処理に関する論点 「取得」とは、ある企業が他の企業又は企業を構成する事業に対する支配を獲得することをいう(企業結合会計基準9項)。 取得の会計処理は、パーチェス法となり、被取得企業から受け入れる資産及び負債の取得原価を、原則として、対価として交付する現金及び株式等の時価を用いて会計処理する(企業結合会計基準17項、結合分離適用指針29項)。 パーチェス法は、取得企業の観点から企業結合をみるもので、取得企業は企業結合日において被取得企業が企業結合日前に認識していなかったものも含めて、受け入れた資産及び引き受けた負債のうち識別可能なものに取得原価を配分する(結合分離適用指針30項)。 取得原価と取得原価の配分額との差額がのれん(又は負ののれん)であり、のれんについては20年以内のその効果の及ぶ期間にわたり、合理的な方法により規則的に償却する(企業結合会計基準32、33項)。 例えば、上記〔例〕の吸収合併を行う場合には、次の事項を検討し、会計処理することになる。 Ⅳ 取得企業の決定方法 取得とされた企業結合においては、いずれかの結合当事企業を取得企業として決定する(企業結合会計基準18項)。 「結合当事企業」とは、企業結合に係る企業をいう。このうち、他の企業又は他の企業を構成する事業を受け入れて対価(現金等の財産や自社の株式)を支払う企業を「結合企業」といい、当該他の企業を「被結合企業」という。また、企業結合によって統合された1つの報告単位となる企業を「結合後企業」という(企業結合会計基準13項)。 取得企業の決定は次のように行う(企業結合会計基準18項、78項)。 (了)
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M&Aに必要なデューデリジェンスの基本と実務-財務・税務編- 【第10回】「固定資産の分析(その3)」-その他固定資産-
M&Aに必要な デューデリジェンスの基本と実務 -財務・税務編- 【第10回】 「固定資産の分析(その3)」 -その他固定資産- 公認会計士・公認不正検査士 松澤 公貴 ←(前回) | (次回)→ ▷その他固定資産 〔分析の対象となる主な勘定科目〕 その他固定資産は、貸借対照表上無形固定資産や投資その他の資産に表示されており、法律上の権利などの物理的な実体や具体的な形のないものである。主な会計上のその他固定資産の内容は、下記のとおりである(法律上の正確な定義ではなく、会計上の概念である)。 ▷通常の会計処理 特許権、意匠権、実用新案権、商標権、ソフトウェアなどの償却資産の償却については、以下のような特徴がある。 ソフトウェアについては、有形固定資産と同様に過去の投資の状況の確認が必要である。例えば、基幹システム等の重要なシステムに、適切なアップデートが行われていない場合に、投資後メンテナンス費用が多額にかかる場合がある。 また、地上権、借地権、電話加入権などについては、有形固定資産の土地と同様に減価償却を行わない。ただし、無形固定資産としては、のれんや借地権など、投資その他の資産としては長期前払費用に計上されている権利金などが減損処理の対象となることに留意を要する。 ◆主な対象資産の耐用年数表 (出典) 無形減価償却資産の耐用年数表(別表第三) ▷その他固定資産のデューデリジェンスにおける主な調査手続 主な調査手続やポイントの考え方は、基本的に有形固定資産と概ね同一である。 例えば、借地権などについては、有形固定資産の土地同様に不動産鑑定評価のような時価評価が必要な場合がある(有形固定資産のデューデリジェンスにおける主な調査手続については【第8回】を参照)。 ▷重要な知的財産権を保有する場合の評価 対象会社が重要な知的財産権を保有している場合、必要に応じて法務デューデリジェンスチームと連携して、当該権利の内容や存続期間等を詳細に把握する必要が生じてくる。 つまり、通常であれば、知的財産権が生み出すキャッシュフローを独立して捉えるのではなく、他のキャッシュフローに含有し営業キャッシュフロー全体と捉えて評価すれば足りると考えられるが、重要であれば独立して捉えて評価する必要がある。 ◆知的財産評価フロー及び評価項目(例) (筆者作成) このような重要な知的財産権の評価は、一般的な他の資産の評価方法と同様、大きく分類してコストアプローチ、マーケットアプローチ及びインカムアプローチの3つの方法が存在する。評価対象となる知的財産権の性質や、評価目的等を勘案し、多面的な検討を行う必要がある。 例えば、特許権の場合は、特許を確立する技術開発資金と特許権価値の関連性を把握するのが困難であることや、類似特許の売買事例が検出不能であることから、コストアプローチ及びマーケットアプローチによる評価方法は採用されないことが多い。 特許権の評価においては、下記の条件がそろった場合に、インカムアプローチによる評価方法を採用することが一般的である。 また、例えば、商標権の場合は、広告宣伝費や販売促進費を費やしても現在と同じ商標の地位が確立され、同じ経済的便益が享受されるとは限らないこと、また、評価対象会社を含む商標権の関係当事者が価値構築のために支出した金額の推定も困難であることから、このような場合には、コストアプローチによる評価は採用されない。 また、評価対象会社が保有する商標権の譲渡やライセンス取引もないケースが多く、このような場合には、マーケットアプローチによる評価は採用されない。評価対象の商標権が、事業展開において中核をなす権利と考えられ、商標権を核とした製品・事業の収益性に着目してその価値評価を行うことが妥当である場合が多く、このような場合にはインカムアプローチを採用することが一般的である。 (了)
労務・法務・経営
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今から学ぶ[改正民法(債権法)]Q&A 【第3回】「法定利率」
今から学ぶ [改正民法(債権法)]Q&A 【第3回】 「法定利率」 堂島法律事務所 弁護士 奥津 周 司法書士法人F&Partners 司法書士 北詰 健太郎 【Q】 法定利率に関して改正があったようですが、具体的にどのような点が変更されるのでしょうか。 【A】 法定利率に関する主な変更点は次のとおりである。 (1) 法定利率の概要 法定利率とは、利息を生ずべき債権について、当事者間で合意した利率(約定利率)がない場合に適用される金利である。約定の弁済期より支払いが遅れた場合などに遅延損害金として適用されるケースや、交通事故のように不法行為による損害賠償金に対する遅延損害金として適用されるケースなどがある。 法定利率が存在することにより、債権者の立場から見れば、支払いが遅れてなされた場合でも、本来の期日に支払いがあれば生み出すことができた運用益が確保できるという利点がある。債務者の立場からみれば支払いが遅れることにより、支払う金額が多くなるため、定められた期日に支払いを行う動機づけとなる。 現行法における法定利率は年5%(民事法定利率、現行法404条)、商取引等商行為に基づく債権については年6%(商事法定利率、現行商法514条)とされている。 (2) 法定利率の引き下げと変動制の導入 現行法の法定利率は、民法が制定された明治期に定められたものであり、実勢金利と比較して非常に高いこと、また固定金利であるため、実勢金利の変動があっても反映できない点が問題点として指摘されていた。一方で、実勢金利に合わせて細かく金利を変更すると社会の混乱を招くことになる。 そこで改正法では、法定金利の引き下げを行い(施行時年3%、改正法404条2項)、3年ごとに、貸出約定平均金利の過去5年間の平均値を指標とし、この数値に前回の変動時と比較して1%以上の変動があった場合にのみ、1%刻みの数値で法定利率が変動される“緩やかな変動制"を導入することとした(改正法404条3項~5項)。 具体的には、まず日本銀行が公表している貸出約定平均金利の過去5年間における短期貸付けの平均金利の合計を60で除して計算した割合(0.1%未満は切捨て)を「基準割合」とする。「過去5年間」とは、各期の初日の属する年の6年前の年の1月から前々年の12月までの各月のことを指し、例えば平成35年4月1日が期の初日である場合には、平成29年1月~平成33年12月の各月ということになる。そして、直近変動期の基準割合と当期の基準割合との差(1%未満は切捨て)に相当する割合を、直近変動期における法定利率に加算し、又は減算する。 変動のイメージは下記のとおりである。 【基準割合の上昇局面でのイメージ】 【基準割合の下降局面でのイメージ】 (出典) 法務省民事局資料「民法(債権関係)の改正に関する説明資料(p.14)」より 原則として、1つの債権には当該債権が発生した時点での法定利率が適用され、事後的に変動することはない。遅延損害金が発生した場合には、債務者が遅滞に陥った最初の時点での法定利率が適用され、交通事故の場合は、交通事故があった時点の法定利率が適用される(改正法419条1項)。 一方で、多数の債権を保有している場合、その債権の発生時期や弁済期により、債権ごとに適用される遅延損害金の利率が異なるということがありうる。 実務的には、各期の法定利率はウェブサイト等で容易に把握できるような形にはなると思うが、自社の保有する債権のうち、どの債権にどの金利が適用されるかは管理上明確にする必要がある。また、管理の統一のためには、約定で一律の遅延損害金を定めておく必要がある。 (3) 商事法定利率の廃止 商事法定利率は、商取引における法定利率だけを区別して定める合理的な理由が乏しい等の指摘もあり、廃止されることとなった。これにより商取引における法定利率も民法の法定利率が適用されることとなる。 (4) 中間利息控除 例えば、交通事故により後遺症が残ったときなど、後遺症がなく正常に稼働すれば得られていたはずの収入(逸失利益という)についても、交通事故の時点から請求が可能である。 このとき、将来の逸失利益全額をそのまま交通事故時に受け取ることができるとすれば、本来であれば将来においてしか受け取ることができなかった金銭を、現時点で一度に取得して運用することが可能となり、バランスを欠くこととなる。 そこで、将来において取得すべき利益の損害賠償の金額を算定するにあたっては、将来の運用益を控除するために、中間利息控除がなされる。そして、現行法においては、この中間利息控除をするときの控除の割合は、法定利率(年5%)とされている(最判平成17年6月14日第三小法廷判決)。 改正の議論においては、中間利息控除については現行法を維持するべきなどの意見が出されたが、結論としては損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率が適用されることとなった(改正法722条1項)。これにより少なくとも改正法の施行時は、現行法より法定利率が下がるため、被害者としては中間利息控除される金額が下がり、受け取る金額が多くなる。保険商品等の保険料等の金額の見直しが行われる可能性も考えられる。 (5) その他 法定利率の改正において、企業としては金利の把握、計算の事務が煩雑になる。約定利率が契約に定められていれば、約定利率が適用されるため、今後は契約において約定利率を定めておくことが望ましいといえる。 (了)
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〔検証〕適時開示からみた企業実態 【事例29】出光興産株式会社「経営統合に関する合意書の締結のお知らせ」(2018.7.10)
〔検証〕 適時開示からみた企業実態 【事例29】 出光興産株式会社 「経営統合に関する合意書の締結のお知らせ」 (2018.7.10) 事業創造大学院大学 准教授 鈴木 広樹 1 今回の適時開示 今回取り上げる適時開示は、出光興産株式会社(以下「出光興産」という)が、平成30年7月10日、昭和シェル石油株式会社(以下「昭和シェル石油」という)と連名で開示した「経営統合に関する合意書の締結のお知らせ」である。 この連載で出光興産の開示を取り上げるのは2回目であり、【事例19】で同社が平成29年7月5日に開示した「株主による新株式発行の差止め仮処分の申立てに関するお知らせ」を取り上げた。 今回の開示は、その平成29年7月5日の開示で問題とされていた昭和シェル石油との経営統合について、合意書を締結したという内容である。しかし、その合意の内容が、何ともすっきりとしない、いびつな印象を与えるものなのだ。 2 創業家への配慮 それは、平成29年7月5日の開示にも登場していた出光興産の創業家に配慮した結果である。同社は、今回の開示と同時に「当社大株主との間の合意書の締結に関するお知らせ」を開示しているが、そこには、以下のとおり、創業家から受け入れた、昭和シェル石油との経営統合を行うに当たってのいくつかの条件が記載されている。 なお、平成27年11月12日に出光興産と昭和シェル石油が連名で開示した「出光興産株式会社と昭和シェル石油株式会社の経営統合に関する基本合意書締結のお知らせ」では、「本経営統合の方式については、合併によることを基本方針」とするとされていたが、今回の開示では、出光興産が親会社、昭和シェル石油が子会社となる株式交換とすることになったとされている。これも創業家への配慮の1つだろう。 3 トレードネーム? 今回の開示には、「『出光昭和シェル』を本経営統合の実行後のトレードネームとする予定」とある。トレードネーム(trade name)とは、日本語では「商号」のことだが、「当社大株主との間の合意書の締結に関するお知らせ」では、経営統合後も出光興産の「商号は維持する」とされている。 出光興産と昭和シェル石油のそれぞれの正式な商号は変えず、両社共通のブランド名として「出光昭和シェル」を使用するという意図なのだろうか。しかし、「当社大株主との間の合意書の締結に関するお知らせ」では、経営統合後も出光興産の「ブランドは継続して使用する」ともされている。果たしてどうなるのか。 4 自己株式取得の本当の目的 創業家が提示した条件のうち、③と④の自己株式取得は、株主への利益還元のためであるとされている。出光興産が今回の開示と同時に開示した「自己株式取得に係る事項の決定に関するお知らせ(会社法第459条第1項の規定による定款の定めに基づく自己株式の取得)」にも、次のように記載されている。 しかし、それは表向きの目的で、創業家の本当の意図が、自身の議決権比率の維持と向上であることは明らかだろう。昭和シェル石油との株式交換に当たり、同社の株主に対して新株を発行すれば、創業家の議決権比率は低下する。それを可能な限り避けるために、新株の発行に代えて、③で取得した自己株式を交付するのである。そして、更に④の自己株式取得を通じて(その後、消却してしまうかもしれない)、創業家の議決権比率を向上させようというのである。 5 創業家が推薦する者を取締役に 創業家が提示した条件のうち①は、自身が推薦する者(おそらく創業家の者)を出光興産の取締役に据えろというものである。経営統合後の同社の取締役は10名程度になるようであり、そのうち2名では、同社の経営に与える影響は小さいかもしれない。 しかし、創業家以外の株主が同社の取締役に対して求めるのは、当然のことながら、創業家出身であることではなく、取締役として必要な資質である。今回の開示には次のような記載があるが、創業家が推薦する者を取締役とするのは、この記載と矛盾するのではないだろうか。 6 経営理念を維持しようとするのか? 出光興産は、「当社大株主との間の合意書の締結に関するお知らせ」において、創業家を「出光という名を冠する当社にとって当社の象徴的存在である」としている。単なる象徴ならば、同社を精神的にまとめるといった存在意義を見出せるかもしれない。しかし、実際は、象徴としての存在にとどまらず、同社の経営に関わり続けようとしている。 今後、創業家は、同社の経営に関わり続け、本当に同社の従来の経営理念を維持しようとするのだろうか。同社にとってプラスとなるのかマイナスとなるのかは分からないが、同社の経営に関わり続けようとするならば、当初からの主張どおり、そうした姿勢をしっかりと見せて欲しいと思う。 (了)
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《速報解説》 証券取引等監視委員会、平成30年度版の「開示検査事例集」を公表~売上をめぐる不正会計等、最新7事例を追加~
《速報解説》 証券取引等監視委員会、平成30年度版の「開示検査事例集」を公表 ~売上をめぐる不正会計等、最新7事例を追加~ 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 証券取引等監視委員会事務局は、去る9月19日、「開示検査事例集」を公表した。 一昨年まで、「金融商品取引法における課徴金事例集~開示規制違反編~」という名称で公表されてきたものを、昨年10月の公表から、「課徴金納付命令勧告を行った事例だけでなく、さまざまな事例を積極的にご紹介することとした」ために名称を変更したと説明されている。 本稿では、公表された「開示検査事例集(以下「事例集」と略称する)」のうち、最近の開示検査の動向を知るうえで参考になると思われるⅠからⅢまでを中心にその内容をご紹介したい。 とりわけ、「最新の検査事例」については、7つの事例について、開示規制違反の内容、その背景・原因やその是正策の概要がまとめられている(事例集冒頭「証券取引等監視委員会からのメッセージ」より)ということであり、本稿の解説もこの事例を中心としたい。 Ⅰ 最近の開示検査の取組みについて 事例集「Ⅰ 最近の開示検査の取組みについて」では、証券取引等監視委員会(以下「監視委」と略称する)の開示検査の取組みついて、以下の3項目を挙げている。 平成29事務年度(29年7月~30年6月)に、監視委が行った開示検査は30件であり、前年実績(25件)を5件上回っており、そのうち、開示検査終了件数は13件(うち、課徴金納付命令勧告が3件、訂正報告書の自主的提出2件)であった。 Ⅱ 最新の検査事例 次に、事例集は「最新の検査事例」として、具体的事例を7件、公表している。 なお、事例集では、会社名等は公表されていないが、課徴金納付命令勧告の対象となった開示書類の虚偽記載事例3件について会社名を記しておくと、【事例1】は株式会社ソフィアホールディングス、【事例2】は五洋インテックス株式会社、【事例3】はピクセルカンパニーズ株式会社である。 監視委は、「再発防止策の履行状況確認」の項で、過去に開示規制違反に関して課徴金納付命令勧告を行った上場会社等のうち、平成29事務年度に実施したヒアリング又は検査において、大きな問題は認められないとしている。 また、「内部統制の不備」の事例では、監視委による検査の結果、重要な虚偽記載等は認められなかったものの、公認会計士・監査審査会への情報提供や金融商品取引所に対する問題提起を行っていることが説明されている。 Ⅲ 最新の事例の特色・傾向 監視委によれば、平成29事務年度の開示規制違反はすべて、不適正な会計処理による有価証券報告書等の虚偽記載であり、架空売上の計上、売上の過大計上など、売上をめぐる不適正な会計処理が目立ったということである。 監視委は、開示検査では、開示規制違反が行われた会社自身による適正な情報開示を行うための実効性をもった体制整備が進められることを期待し、その開示規制違反が発生した根本原因及び背景について検査対象会社の経営陣幹部と議論を行い、認識の共有を図ってきた結果、開示規制違反の背景として、平成29年10月公開の事例集と同じく、 を挙げるとともに、次のような原因による開示規制違反を把握したということである。 事例集の最初に《証券取引等監視委員会からのメッセージ》として、事例集の目的と会計監査人に対する監視委の期待が述べられている。引用して、本稿を締め括りたい。 平成29年10月公開の事例集における「メッセージ」との大きな違いは、いずれも、上場会社経営陣との活発なコミュニケーションを通じて、開示規制違反の未然防止・再発防止を図っていきたいと監視委の姿勢が強調されていることである。 (了)
