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《速報解説》 国税庁、会社役員賠償責任保険の税務上の取扱いについて会社法解釈指針を踏まえた回答(情報)を公表~新たなD&O保険特約の会社負担分は一定手続により役員への給与課税を行わず

《速報解説》 国税庁、会社役員賠償責任保険の税務上の取扱いについて 会社法解釈指針を踏まえた回答(情報)を公表 ~新たなD&O保険特約の会社負担分は一定手続により役員への給与課税を行わず   Profession Journal編集部   国税庁は2月24日付、経済産業省からの照会に対する回答を公表し、会社役員賠償責任保険(D&O保険)のうち株主代表訴訟担保特約部分の保険料を会社が負担した場合、一定の条件のもと、役員個人に対する給与課税を行わないことを明らかにした。経済産業省からも国税庁からの回答があった旨の情報が公表されている。 会社役員賠償責任保険とは一般的に、株主や取引先等から役員に対する損害賠償請求訴訟(第三者訴訟・株主代表訴訟)が提起された場合に、役員が被る損害を補填する保険であり、企業と保険会社との契約によるもので、金融庁の審査を受けた保険商品が損害保険会社各社から販売されている。 会社役員賠償責任保険では、株主代表訴訟に敗訴した場合の損害賠償金と争訟費用は基本契約では担保されておらず、別途「株主代表訴訟担保特約」を付ける必要がある。ただしこの特約部分の保険料を会社が負担することは会社法上利益相反・忠実義務違反の懸念があるため、実務では役員個人が負担することとなっていた。 また、株主代表訴訟担保特約の保険料を会社が負担した場合、従前の税務上の取扱いでは下記個別通達の通り、会社から役員に対して経済的利益の供与があったものとして給与課税の対象とされていた。 一方、昨今のコーポレート・ガバナンス重視の傾向や多重代表訴訟制度の導入で株主代表訴訟が提起されるケースは増加すると見られこの保険のニーズが高まるなか、役員自らが特約部分の保険料を負担しなければならない上記の実務は新たな就任要請を躊躇させる一因となり、改正会社法等で社外取締役の活用が求められている企業にとって足かせとなっていた。 そこで経済産業省研究会が昨年7月に公表した会社法の解釈指針では、会社が利益相反の問題を解消するための次の手続を行えば、会社がこの特約部分に係る保険料を会社法上適法に負担することができるとの解釈が示されていた。 そこで今回経済産業省は、上記の解釈を踏まえると、株主代表訴訟敗訴時担保部分を特約として区分する必要がなくなることから、普通保険約款等においてこの部分の免責条項を設けない「新たな会社役員賠償責任保険」(一部暫定的な取扱いによるものを含む)の税務上の取扱いについて照会したところ、国税庁から、新たな会社役員賠償責任保険の保険料を会社が上記①②の手続きを行うことにより会社法上適法に負担した場合には、役員に対する経済的利益の供与はないと考えられることから、役員個人に対する給与課税を行う必要はないと回答した。 なお、上記以外の会社役員賠償責任保険の保険料を会社が負担した場合には、従前の取扱いのとおり経済的利益の供与があったものとして役員個人に対し給与課税が行われる。 すでに当該保険契約を締結している企業及び現在導入を検討している企業は、今回の国税庁情報を踏まえた各損害保険会社による保険サービス内容の見直し等の動きに注視されたい。 (了) ↓お勧め連載記事↓
#158(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2016/02/25
お知らせ 会計 会計情報の速報解説 内部統制監査 監査 税務・会計 速報解説一覧

《速報解説》 意見募集を経て「上場会社における不祥事対応のプリンシプル」が正式決定 ~コメント対応も同時公表~

《速報解説》 意見募集を経て 「上場会社における不祥事対応のプリンシプル」が正式決定 ~コメント対応も同時公表~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成28年2月24日、日本取引所自主規制法人は「『上場会社における不祥事対応のプリンシプル』の策定について」を公表した。 これにより、平成28年1月22日から意見募集していた公開草案が確定することになる。 公表に際して、「「上場会社における不祥事対応のプリンシプル」(案)に寄せられたパブリック・コメントの結果について」も公表されている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 「上場会社における不祥事対応のプリンシプル」は、趣旨と本文をあわせて2ページであるので、ぜひ原文をお読みいただきたい。 1 公開草案からの主な変更点 2 寄せられたコメントの例 「不祥事」の定義はないが、プリンシプル・ベースのアプローチにおいては、関係者が尊重すべき基本的な原則を明らかにするとともに、個々の用語等の意義・解釈は、当事者がその趣旨を踏まえつつ個別の状況等に即して適切に判断することが想定されていると説明されている。 「調査環境の整備」の内容は、調査に必要な情報の入手等が円滑かつ適切に行われるように対応することを想定したものであり、例えば、役員・社員等に対して資料提出やヒアリング等に適切に応じるよう求めることや、調査に関する情報提供窓口の設置や通報者の保護等が考えられる(これに限られるわけではない)と説明されている。 不祥事の調査方法は、第三者委員会による調査に限られず、いわゆる社内調査も含み、個々の不祥事の内容等に照らして上場会社において適切に選択する必要があると説明されている。 仮に第三者委員会を設置しない上場会社は、その理由を開示する等の説明が求められることになるのかについては、本プリンシプルは、第三者委員会を設置しない場合にその理由の開示を一律に求めるものではないと説明されている。 (了)
#158(掲載号)
#阿部 光成
2016/02/25
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《速報解説》会計士協会より「公益法人会計基準に関する実務指針」の公開草案が公表~各委員会報告を改訂・統合~

《速報解説》 会計士協会より 「公益法人会計基準に関する実務指針」の公開草案が公表 ~各委員会報告を改訂・統合~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成28年2月24日、日本公認会計士協会は非営利法人委員会報告「公益法人会計基準に関する実務指針」(公開草案)を公表し、意見募集を行っている。 これは、平成27年4月24日に内閣府公益認定等委員会委員長から日本公認会計士協会会長あてに「公益法人の会計に関する諸課題の更なる検討について(協力依頼)」が発出されたことを受けたものである。また、非営利法人委員会報告第28号、第29号、第31号及び第32号に必要な改訂を行った上で、各委員会報告を統合している。 意見募集期間は平成28年3月8日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 公開草案は、Q&A形式で、次の事項に関する49項目を取り上げている。 社団法人・財団法人は、法令によって特定の会計基準の適用が強制されていないため、自らの判断によって、採用する財務報告の枠組み(会計基準)を選択適用することになる(公開草案Q1)。 ただし、「新たな公益法人制度への移行等に関するよくある質問」(FAQ)(平成27年4月版内閣府)問Ⅵ-4によれば、いずれの法人類型も利潤の獲得と分配を目的としない非営利法人であることから、「通常は、公益法人会計基準を企業会計基準に優先して適用することになる」と述べられている。 また、公益法人会計基準について(平成20年4月11日内閣府公益認定等委員会、平成21年10月16日改正)別紙公益法人会計基準を選択適用している法人が多いと思われると述べられている。 公開草案は、寄付の取扱いとその会計処理、有価証券の評価とその会計処理、固定資産の減損会計、税効果会計などについて、設例と仕訳を用いて丁寧に記載している。   Ⅲ 適用時期等 公表日から適用することを予定している。 (了)
#158(掲載号)
#阿部 光成
2016/02/25
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プロフェッションジャーナル No.158が公開されました!~今週のお薦め記事~

2016年2月25日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.158を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
#Profession Journal 編集部
2016/02/25
法人税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

山本守之の法人税“一刀両断” 【第20回】「寄附金の課税要件を考える」

山本守之の 法人税 “一刀両断” 【第20回】 「寄附金の課税要件を考える」   税理士 山本 守之   〔事 例〕 この事例は、平成21年5月21日の国税不服審判所の裁決例を参考にしています。 税務調査において寄附金の損金算入が否定され、国税不服審判所の審査請求で全部取消しとなって、更正処分が取り消される例が少なくありませんが、そのほとんどが不開示となっています。そこで、TAINSで情報公開法により公開された事例を中心にその内容を取り上げてみましょう。 資産取得のための条件として寄附をした場合は、その寄附金が国等に対する寄附金や指定寄附金であっても、その資産の取得のために要した費用であるから、損金の額に算入できず、資産の取得価額を構成するという主張が税務の第一線からなされましたが、それだけの理由で損金算入を否認してよいものでしょうか。   〔争 点〕 本件はA社が、全額損金の額に算入したP国立大学法人へ寄附した建物に係る建築費用の額(指定寄附金)について、原処分庁(O税務署長)が、国等に対する寄附金の支出はA社がP国立大学法人から土地を取得するための条件として行われたものであるから、国等に対する寄附金は、土地の購入のために要した費用であり、土地の取得価額に算入されるとして法人税の更正処分等を行ったのに対して、A社が、原処分庁の認定には誤りがあり違法であるとして同処分等の全部の取消しを求めた事案ですから、本件寄附金が、土地の取得価額に算入されるか否かが争点です。   〔寄附金認定の問題点〕 法人税法37条で寄附金の損金不算入とする規定は、昭和17年2月の旧臨時租税措置法の改正によって設けられました。創設の当時は太平洋戦争の最中(太平洋戦争は昭和16年12月8日に始まりました)であり、寄附金が激増し、他面においても税率が非常に高率であったことから、法人の支出する寄附金を損金算入するとすれば、国の財政収入の確保を阻害するばかりではなく、寄附金の出捐による法人の負担が、法人の減収を通じて国に転嫁され課税の公平上適当ではないとする考え方でした。 現在でも資産の低廉譲渡、無利息貸付、子会社の人件費の親会社負担などが寄附金課税の対象となり、これらの取引が何故行われたかという取引の背景を検討しないまま課税されるので、課税庁と納税者の間のトラブルの種になっています。 この制度が創設された際の寄附金を損金の額に算入することを規制する趣旨については、次のように説明されていました(鈴木保雄他著『臨時租税措置法解説』)。 (注) 創設当時は国防献金や恤兵金は全額損金算入とし、限度超過額も寄附金審査委員会の質問により法人税を免除することにしていました。 この考え方は現在も、次のような取扱い(法人税基本通達7-3-3)に生きています。 この取扱いは、固定資産の取得に関連して地方公共団体に寄附金を支出しても、単純に指定寄附金となるのではなく、寄附金を支出することが条件とされているため著しく低い価額で固定資産を購入できた等、その支出した金額が実質的にみてその固定資産の代価を構成すべきものであると認められるときは、その支出した金額を取得価額に算入しなければならないという趣旨でしょう。 これらから考えれば、寄附金がその資産(土地)を取得するための条件となっている(原処分庁主張)だけではなく、事例の場合に「指定寄附金が固定資産の代価を構成するか否かについては、その支出した金額が、寄附金を支出することが条件とされているため著しく低い価額で固定資産を購入できた等、実質的にみてその資産の代価を構成しているか否かによって判断するのが相当である。」とする国税不服審判所の裁決が正しいと考えられます。 こうなると、寄附金を支出することが資産取得の条件となっているだけでなく、「著しく低い価額」で購入したことが、寄附金(建物の価額)が土地の取得価額と認定するための要件となります。 本件の場合の取引価額は、財産評価基本通達に基づく財産評価基準書路線価図による評価額及び固定資産税評価額を上回っており、不動産鑑定士の評価額から建物解体費3,500万円を控除した金額を基礎としたもので、適正であり、「著しく低い価額」とはなっていません。 また、本件の取引の背景については「本件土地の売買については、A社から持ちかけたものであり、A社には建物建替えのために土地を取得したい希望があり相手方も会館を建て替えたい希望があったと認められ、双方の希望を実現させるべく、本件土地を時価相当額で売買することとした上で、本件寄附金を授受することに合意したものと認めるのが相当である。」と判断しています。 土地等を取得するための条件になっている寄附金については、その取引条件だけでなく、「著しく低い価額」である等の立証が課税庁に求められますが、本事例ではそれがなされておらず、裁決文では次のように指摘されています。 寄附を条件とした資産の売買におけるその資産の取引価額は、その条件だけではなく、「著しく低い価額」が立証されなければなりません。 資産を取得するための条件として寄附金を支払った場合でも、その寄附金の額を資産の取得価額に含めるためには、次の3つの要件が必要となります。 上記の①~③は租税法における「課税要件法定主義」を示しています。 税理士が調査の立会いをするときは、調査官に対していたずらに「認めて下さい」と陳情することではなく、課税庁の主張を「課税要件を具備していますか」と指摘することです。   ▷この事件のコメント A社が国立大学に建物建設費用を寄附しました。A社は通常であれば国等に対する寄附金でありますから全額損金の額に算入されると考えていたのです。 しかし、この寄附は、国立大学の土地を払い下げる場合の条件となっていました。このため課税庁では建物建設費用の寄附部分を土地の取得価額に算入し、損金としたA社の処理を否認したというわけです。 この更正処分の根拠は「・・・その取得に関連して都道府県若しくは市町村又はこれらの指定する公共団体等に寄附金又は負担金の名義で金銭を支出した場合においても、その支出した金額が実質的にみてその資産の代価を構成すべきものと認められるときは、その支出した金額はその資産の取得価額に算入する。」という通達(法人税基本通達7-3-3)です。 気をつけたいのは、通達をみる前に課税要件のあり方を考えることです。 こうなると、通達の「・・・その支出した金額が実質的にみてその資産の代価を構成すべきもの」という表現を考える必要があります。 このため裁決では寄附金の額が取得価額となるためには、寄附金が資産を取得するための要件となっていることだけではなく、資産の取得のための価額が、一般の場合に比べて著しく低く定められていることが必要です。 結果は納税者の主張を受け入れ更正処分が取り消されました。 (了)
#158(掲載号)
#山本 守之
2016/02/25
所得税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例35(所得税)】 「平成26年分の所得税につき、平成25年分の確定申告書を期限後申告しなかったため、平成24年に生じた上場株式に係る譲渡損失の繰越控除の適用ができなくなってしまった事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例35(所得税)】   税理士 齋藤 和助       《基礎知識》 ◆上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除(租税特別措置法第37条の12の2) 上場株式等に係る譲渡損失は、その年分の上場株式等に係る配当所得の金額と損益通算ができ、損益通算してもなお控除しきれない譲渡損失の金額は、翌年以後3年間にわたり確定申告をすることにより株式等に係る譲渡所得等の金額及び上場株式等に係る配当所得の金額から繰越控除できる。 なお、上場株式等に係る譲渡損失の金額を繰り越す場合には、譲渡損失が生じた年分以後、株式等の譲渡がない場合であっても連続してその繰り越す譲渡損失の金額を記載した確定申告書に確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)を添付して提出しなければならない。 また、上場株式に係る譲渡損失の金額は平成27年分までは無条件で未公開株式の譲渡損益との通算もできる。   ◆確定申告書を提出していない場合 譲渡損失が発生した年分やその後の年分において確定申告書を提出していない場合には、期限後申告により株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書と確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)を添付して、発生年分から使用年分まで確定申告書を提出すれば、譲渡損失を使用することができる。   ◆確定申告書を提出しているが譲渡損失の申告をしなかった場合 ① 特定口座(源泉徴収なし)・一般口座の場合 株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書と確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)を添付して更正の請求をすれば、損失があったこととされる。 ② 特定口座(源泉徴収あり)の場合 申告するかしないかの選択が可能であり、申告しなかったのは納税者の選択とみなされるため、更正の請求はできない。       (了)
#158(掲載号)
#齋藤 和助
2016/02/25
法人税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

〈事例で学ぶ〉法人税申告書の書き方 【第1回】「別表6(22) 生産性向上設備等を取得した場合の法人税額の特別控除に関する明細書」

〈事例で学ぶ〉 法人税申告書の書き方 【第1回】 「別表6(22) 生産性向上設備等を取得した場合の 法人税額の特別控除に関する明細書」   公認会計士・税理士 菊地 康夫   Ⅰ はじめに 本稿では、法人税申告書のうち、税制改正により変更もしくは新たに追加となった様式、複数の書き方パターンがある様式、実務書籍への掲載頻度が低い様式等を中心に、簡素な事例をもとに記載例と書き方のポイントを解説していくことにする。 第1回目は、比較的書籍等で解説される機会が少ない「別表6(22) 生産性向上設備等を取得した場合の法人税額の特別控除に関する明細書」を採り上げる。   Ⅱ 概要 この別表は、いわゆる生産性向上設備投資促進税制(生産性向上設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除)のうち、税額控除を適用する場合に記載する。 本制度は、法人が産業競争力強化法の施行の日(平成26年1月20日)から平成29年3月31日までの期間(指定期間という)内に、特定生産性向上設備等の取得等をして国内にある当該法人の事業の用に供した場合に、その事業の用に供した日を含む事業年度において、特別償却又は税額控除を認めるものである。 なお、産業競争力強化法の施行の日(平成26年1月20日)から平成28年3月31日までの期間(特定期間という)内に、取得等をして、国内にある当該法人の事業の用に供した特定生産性向上設備等については、特別償却又は税額控除の上乗せ措置がある。 適用期間と設備等の種類の関係をまとめると以下のようになる。 (注) 上記の税額控除額が、控除の適用を受けようとする事業年度の法人税額の20%相当額を超える場合には、その20%相当額を限度とする。 特定生産性向上設備等とは、生産等設備を構成する機械及び装置、工具、器具及び備品、建物、建物附属設備、構築物並びに一定のソフトウエアで、先端設備(A類型)又は生産ラインやオペレーションの改善に資する設備(B類型)として、産業競争力強化法第2条第13項に規定するものをいう。 この生産性向上設備等の範囲など産業競争力強化法に関する内容については、経済産業省のホームページを参照のこと。   Ⅲ 「別表6(22)」の書き方と留意点 (1) 設例 (2) 今回の別表が適用される事業年度 平成26年4月1日から平成29年3月31日のうち、いずれかの日を含む事業年度。 (3) 別表の記載例 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます。 (4) 別表の各記載欄の説明 「法人税額の特別控除額の計算」 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます。 (了)
#158(掲載号)
#菊地 康夫
2016/02/25
法人税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

包括的租税回避防止規定の理論と解釈 【第9回】「創設規定と確認規定③」

包括的租税回避防止規定の 理論と解釈 【第9回】 「創設規定と確認規定③」   公認会計士 佐藤 信祐   前回では、大阪高裁昭和39年9月24日判決の解説を行った。本稿では、最高裁昭和45年7月16日判決の解説を行うこととする。 本判決は、株主優待金の損金性について争われた事件であるが、むしろ東京地裁判決で傍論ではあるものの、同族会社等の行為計算の否認の適用対象として非同族会社も含まれるものとしている点が重要であり、同規定を確認規定であると考えている意味で興味深い判決であると言える。   (4) 最高裁昭和45年7月16日判決(TAINSコード:Z060-2590) ①  第一審(東京地裁昭和40年12月15日判決・TAINSコード:Z041-1442) 第一審では、昭和30年10月1日から昭和31年9月30日までの事業年度分法人税の審査決定の取消しを求める訴えは、出訴期間を徒過した不適法な訴えであるとして却下されたものの、昭和31年10月1日開始事業年度以降の部分については、以下の理由により、原告の主張を認めた。 ②  控訴審(東京高裁昭和43年8月9日判決・TAINSコード:Z053-1936) 控訴審は、第一審判決をほぼ踏襲していることから、本稿では解説を省略する。 ③ 上告審 ④  評釈 本事件は、株主優待金の損金性について争われた事件であるが、株主としての地位に基づいて行われたのであれば、法人税基本通達1-5-4において、「法第22条第5項《資本等取引の意義》の規定により資本等取引に該当する利益又は剰余金の分配には、法人が剰余金又は利益の処分により配当又は分配をしたものだけでなく、株主等に対しその出資者たる地位に基づいて供与した一切の経済的利益を含むものとする。」と規定されていることから、損金の額に算入できないことになる。 しかしながら、現在の税実務では、支払配当ではなく、交際費として取り扱うことの方が多いように見受けられる(ex.平成25年10月1日非公開裁決事例・TAINSコード:F0-2-528)。 本事件でむしろ問題とすべきは、東京地裁判決において、非同族会社であっても同族会社等の行為計算の否認を適用することができるとしている点である。この点については、いずれの判決にも直接的に繋がっていないだけでなく、現行法上は、前述のように、同族会社等の行為計算の否認を適用せずに否認をしていることから、傍論ともいうべき箇所ではあるが、このような判断が当時の東京地裁でなされていたということは注目に値する。 さらに、「経済人の行為として不合理、不自然なものと認められるかどうかを基準としてこれを判定すべき」としていることから、経済合理性基準に近い判断がなされていることが分かる。また、東京地裁判決を細かく見ていくと、租税回避目的で行われた場合だけでなく、「直接法人税の回避軽減を目的としないときでも、経済的合理性をまったく無視したような異常、不自然な行為計算をとることにより(たとえば、債権者を詐害する目的で、会社資産を不当に低い価格で会社役員に譲渡した場合)、不当に法人税を回避軽減したこととなる場合には」としていることから、租税回避目的の立証は不要であるとの判断がなされていることが分かる。 同族会社等の行為計算の否認の適用対象を同族会社等に限るべきであるとするのが現在の通説であるとしても、その適用される場面としては、非同族対比説と経済合理性基準説の2つが挙げられるが、経済合理性基準説を適用する根拠としては、非同族会社に対しても同族会社等の行為計算の否認が適用されるとする説とは当然に異なるものである。 東京地裁判決は、非同族会社に対しても同族会社等の行為計算の否認が適用されると考えているようであるから、そのための基準として、非同族対比説はあり得ず、経済合理性基準説を採用したことは極めて自然な理論構成であったと言える。 次回は、広島高裁昭和43年3月27日判決について解説を行う予定である。 (了)
#158(掲載号)
#佐藤 信祐
2016/02/25
国税通則 税務 税務・会計 解説 解説一覧

改正電子帳簿保存法と企業実務 【第12回】「これからの「帳簿書類の電子化」の検討方法」

改正電子帳簿保存法と企業実務 【第12回】 (最終回) 「これからの「帳簿書類の電子化」の検討方法」   税理士 袖山 喜久造   電子帳簿保存法とは、紙で保存すべき帳簿書類に代えて電磁的記録による保存を可能とする帳簿書類の保存方法の特例であるとともに、電子取引を行った場合の、当該電磁的記録の保存義務を規定している法律である。 これまで11回にわたり、電子帳簿保存法で規定されている帳簿書類等の保存方法等について解説してきた。最終回は、税法で保存義務のある帳簿書類を電子化するための検討方法について解説する。   1 申請する帳簿書類の特定 電子帳簿保存法4条1項から3項のいずれかの申請をする場合、どの帳簿を電子化するのか、また、どの書類を電子化するのかを明確にしなければならない。 先の回でも述べたが、各税法で備付け及び保存が義務付けられている帳簿又は書類は紙で作成されることが前提である。したがって、保存されている紙の帳簿書類のうち、「どの部分を電磁的記録で保存するか」を申請するのである。 電子帳簿保存法は帳簿書類の保存方法の特例である。この特例を受けるためには、「本来税法で備付け、保存が義務づけされている帳簿や書類の保存がきちんとできていること」が前提である。その上で、電子帳簿保存法の要件に則したシステムにおいて作成された帳簿や書類に係る電磁的記録や、決められた手順に基づいたスキャニングにより電子化された書類の電磁的記録を保存する、という承認申請を行うのである。 電子帳簿保存法4条1項では、「保存義務者は、国税関係帳簿の全部又は一部について、自己が一貫して電子計算機を使用する場合であって、」とされている。国税関係帳簿の電子化を検討するのであれば、仕訳帳、総勘定元帳、その他の帳簿のうち、電子化する帳簿はどのシステムで作成されたどのデータなのかを特定する。すべての帳簿データの保存を申請する場合には、会計システムに連携される仕訳データが作成される上位システムすべてを把握し、申請書に記載する必要がある。 電子帳簿保存法4条2項においても同様に「自己が一貫して電子計算機を使用して作成する場合であって、」とされている。国税関係書類の電子化を検討する場合も、どこのシステムで作成されたどの業務におけるどの書類を電子化するのかについて、明確にする必要がある。 電子帳簿保存法4条3項は、1項及び2項とは異なり、国税関係書類のスキャナ保存に関する規定である。スキャナ保存制度では、紙の書類を電子化するのであって、条文では、 とされている。すなわち承認を受けた当該書類については紙であった原本が、電磁的記録に代わるのである。 このため、どの業務で受領若しくは作成されたどの書類をスキャナ保存するかについて特定し、承認を受けた当該書類については、法令に基づいたスキャニングを行ったうえで保存する。一旦承認を受けた承認済国税関係書類は、原本が電磁的記録となるため、すべてを電子化しなければならない。   2 入力環境の整備 税務署に提出された電子帳簿保存法の承認申請書は、所轄税務署又は所轄国税局調査部の担当部門等において書面審査される。審査にあたって重要になるのが「どのようなルールに基づいて帳簿書類に係る電磁的記録が作成されて保存されるか」という社内環境である。 電子帳簿保存法施行規則で定められた入力方法、保存方法等の要件の大部分は、使用するシステムで対応すべきものである。審査にあたっては、当該システムが法令要件を満たすかどうかを審査するのは当然であるが、当該システムを使用するにあたって、国税関係書類に係るスキャンデータがどのような手順で入力や保存がされるのか、どのような環境で承認されるのか等について審査することに重点が置かれる。 したがって、入力の最初の記録段階からの入力手順等が示された業務フローや入力処理規程等の規程類を整備し、内部統制がとれた環境で電磁的記録が作成され保存されることが必要である。 国税関係書類のスキャナ保存に関しては、平成27年度税制改正において規制緩和され、電子帳簿保存法施行規則が改正された。その際に新たに加わった要件のうち、重要なのが「適正事務処理要件」を定めた規則3条5項4号である。改正前には申請書の審査項目であった内部統制がとれているかということが、当該条項が追加されて法令要件となったのである。   3 電子化導入の理由 帳簿書類の電子化を検討する理由は企業それぞれ異なると思うが、これら帳簿書類の電子化によるメリットは多い。しかし、電子化に当たっては一定程度のシステム投資や業務改善の検討等の作業が必要であり、導入決定までは様々なハードルがある。このため、導入によるメリットを明確にして、電子化が必要な理由を具体的に説明できることが望まれる。 帳簿書類のデータ保存であれば、紙の帳簿書類のアウトプットにあたっての経費、保管場所等の費用などの削減効果があるほか、帳簿データの訂正削除履歴の保存など内部統制の強化というメリットも考えられる。 国税関係書類のスキャナ保存については、会社の業務改革という位置づけが強い。業務改革を行って何のメリットがあるのかについて明確にすることも必要である。例えば全国の営業拠点で受け取った請求書をスキャナ保存する場合、これまで紙の請求書を本社に送付し月に1回支払を行っている業務手順であれば、37日以内に入力完了するような業務フローの作成が必要である。今現状で行っているそのままの業務手順によりスキャナ保存を導入することは難しい。 文書電子化のメリットは経理業務や税務調査対応業務の効率化、経費削減、内部統制強化、情報共有、BCP対策など様々である。 これらのメリットを具体的に説明できるかどうかが、電子化実現のコツであろう。   4 法令要件対応システムの選定 これまで電子帳簿保存法で規定されている国税関係帳簿書類の電子化に係る法令要件等について解説してきたが、これらの要件は帳簿書類に係る電磁的記録の作成時、保存時に対応するべき要件がほとんどであり、システム側で対応する要件が多い。 企業が帳簿書類の電子化を検討する場合に、これらのシステムの要件を一から対応することは、時間と費用が必要である。自社開発システムで、自社における対応が必要な場合もあるが、法令要件を具備したシステムを導入することをお勧めしたい。 国税関係帳簿書類のデータ保存であれば、訂正削除の履歴の確保方法や、法定保存年数の期間中のデータ閲覧の措置などを満たすシステム改修やシステムの導入が必要である。本連載【第5回】で取り上げた「サブDBシステム」などを導入し、現状のシステム以外に帳簿書類のデータの保存システムを検討することも有効である。 また、国税関係書類のスキャナ保存については、これまではスキャナ保存の導入を検討する企業が少なかったことから、各ベンダーでも製品として開発し販売されるものは少なかった。独自にシステムを構築してスキャナ保存を導入する企業はあったが、そのほとんどが導入効果の高い大企業の場合であった。 スキャナ保存を導入する場合には、法令要件に対応した会計システムや電子ワークフローの導入を検討することが必要であるが、これからは更なる規制緩和も予定されており、導入を検討する企業が大企業はじめ中小企業においても多くなると推測される。 検討に当たっては、法令要件をきちんと満たしたシステムやソフトウエアを選定し、内部統制が図られた社内環境において、あらかじめ決められた入力手順で作成されたデータを保存することが必要である。 (連載了)
#158(掲載号)
#袖山 喜久造
2016/02/25
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平成28年3月期決算における会計処理の留意事項 【第2回】「税効果会計の改正」

平成28年3月期決算における会計処理の留意事項 【第2回】 「税効果会計の改正」   仰星監査法人 公認会計士 西田 友洋   平成27年12月10日に企業会計基準適用指針公開草案第55号「税効果会計に関する税率に関する適用指針(案)(以下、「税率適用指針案」という)」が公表されている。また、平成27年12月28日に企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(以下、「回収適用指針」という)」が公表されている。今回は、公表された2つの適用指針について解説する。   1 「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」の主な改正点 回収適用指針では、以下の実務指針について、基本的にその内容を引き継いだ上で、必要と考えられる見直しが行われている。 ここでは、以下の主な改正点について解説する。 (1) 企業の分類 監委66号において、企業を5つに分類することが求められていた。回収適用指針においても基本的に踏襲した上で一部必要な見直しが行われている。 繰延税金資産の回収可能性を判断する際に、回収適用指針第16項から第32項に従って、要件に基づき企業を「分類1」~「分類5」に分類し、当該分類に応じて、回収が見込まれる繰延税金資産の計上額を決定する(回収適用指針15)。 「分類1」~「分類5」の要件は、監委66号と回収適用指針で以下のように異なる(回収適用指針15、17、19、22、26、30)。ポイントは将来の状況が要件に入っていること、及び会計上の指標である利益要件から税務上の指標である課税所得要件へ変更されていることである。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます。 (※1) 営業損益項目に係る益金及び損金は通常の事業活動から生じたものであることから、原則として、「臨時的な原因により生じたもの」に該当しないと考えられる。一方、営業外損益項目及び特別損益項目に係る益金及び損金のうち、企業が置かれた状況等に基づいて検討した場合に将来において頻繁に生じることが見込まれないものは「臨時的な原因により生じたもの」に該当することが考えられる。 また、営業外損益項目に係る益金及び損金は毎期生じるものが多く、通常は「臨時的な原因により生じたもの」に該当しないと考えられるが、項目の性質によっては「臨時的な原因により生じたもの」に該当するものが含まれることがあると考えられる。特別損益項目に係る益金及び損金であっても必ずしも「臨時的な原因により生じたもの」に該当するとは限らず、企業が置かれた状況や項目の性質等を勘案し、将来において頻繁に生じることが見込まれるかどうかを個々に項目ごとに判断することになると考えられる(回収適用指針71)。 (※2) 課税所得から臨時的な原因により生じたものを除いた数値は、負の場合となる場合を含む(回収適用指針22)。 (※3) 一時差異等加減算前課税所得とは、将来の事業年度における課税所得の見積額から、当該事業年度において解消することが見込まれる当期末に存在する将来加算(減算)一時差異の額及び税務上の繰越欠損金の額を除いた額をいう(回収適用指針3(9))。 なお、上記の「分類1」~「分類5」に示された用件をいずれも満たさない企業は、過去の課税所得又は税務上の欠損金の推移、当期の課税所得又は税務上の欠損金の見込み、将来の一時差異等加減算前課税所得(※3)の見込み等を総合的に勘案し、各分類の要件からの乖離度合いが最も小さいと判断されるものに分類する(回収適用指針16)。 この判断は、各分類の要件からの乖離度合いを定量的に検討することを意図していない(回収適用指針65)。ここでのポイントは、過去、当期、将来の情報から総合的に判断することである。 (2) 「分類2」に該当する企業におけるスケジューリング不能な将来減算一時差異 監委66号では、「分類2」に該当する企業でスケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産について、回収可能性がないものとされていた。一方、回収適用指針では、取扱いが以下のように変更されている。 「分類2」に該当する企業において、スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産は、原則として、回収可能性がない。ただし、スケジューリング不能な将来減算一時差異のうち、税務上の損金の算入時期が個別に特定できないが将来のいずれかの時点で損金に算入される可能性が高いと見込まれるものについて、当該将来のいずれかの時点で回収できることを企業が合理的な根拠をもって説明する場合、当該スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産は回収可能性がある(回収適用指針21)。 例えば、スケジューリング不能な株式の減損損失、役員退職慰労引当金について、将来のいずれかの時点で回収できることを企業が合理的な根拠をもって説明する場合、繰延税金資産を計上できる(回収適用指針75、106)。 (3) 「分類3」に該当する企業における将来の一時差異等加減算前課税所得の合理的な見積可能期間 監委66号では、「分類3」に該当する企業では、課税所得の見積期間がおおむね5年とされていた。しかし、実務上はおおむね5年ではなく、一律5年を限度として課税所得の見積りを行うことが多かったと考えられる。このような硬直的な運用では、企業の実態を反映しない可能性もあるため、回収適用指針では以下のように見直されている。 「分類3」に該当する企業は、合理的な見積可能期間(おおむね5年)以内の一時差異等加減算前課税所得の見積額に基づいて、繰延税金資産の回収可能性を検討する(回収適用指針23)。 ただし、臨時的な原因により生じたものを除いた課税所得が大きく増減している原因、中長期計画(回収適用指針では、おおむね3年から5年を想定)、過去における中長期計画の達成状況、過去(3年)及び当期の課税所得の推移等を勘案して、5年を超える見積可能期間においてスケジューリングされた一時差異等に係る繰延税金資産が回収可能であることを企業が合理的な根拠をもって説明する場合、当該繰延税金資産は回収可能性があるものとする(回収適用指針24)。 (4) 「分類4」に係る分類の要件を満たす企業が「分類2」又は「分類3」に該当する場合 上記(1)の「分類4」の要件を満たす企業で、重要な税務上の欠損金が生じた原因、中長期計画、過去における中長期計画の達成状況、過去(3年)及び当期の課税所得又は税務上の欠損金の推移等を勘案して、将来の一時差異等加減算前課税所得を見積り、以下の①に該当する場合は「分類2」に、②に該当する場合は「分類3」に該当するものとして取り扱う。 ① 「分類4」に係る分類の要件を満たす企業が「分類2」に該当する場合 重要な税務上の欠損金が生じた原因、中長期計画(回収適用指針では、おおむね3年から5年を想定)、過去における中長期計画の達成状況、過去(3年)及び当期の課税所得又は税務上の欠損金の推移等を勘案して、将来の一時差異等加減算前課税所得を見積る場合、将来において5年超にわたり一時差異等加減算前課税所得が安定的に生じることを企業が合理的な根拠をもって説明するときは、「分類2」に該当するものとして取り扱う(回収適用指針28)。 この場合、スケジューリング可能な一時差異等に係る繰延税金資産は回収可能性がある(回収適用指針20)。さらに、上記(2)のとおり、スケジューリング不能な一時差異等に係る繰延税金資産も回収可能性ありと判断する場合がある(回収適用指針21)。 例えば、過去において「分類2」に該当していた企業が、当期において災害による損失により重要な税務上の欠損金が生じる見込みであることから「分類4」に係る分類の要件を満たしたが、将来の一時差異等加減算前課税所得を見積った場合に、将来において5年超にわたり一時差異等加減算前課税所得が安定的に生じることを企業が合理的な根拠をもって説明するときが該当する(回収適用指針91)。 ② 「分類4」に係る分類の要件を満たす企業が「分類3」に該当する場合 重要な税務上の欠損金が生じた原因、中長期計画(回収適用指針では、おおむね3年から5年を想定)、過去における中長期計画の達成状況、過去(3年)及び当期の課税所得又は税務上の欠損金の推移等を勘案して、将来の一時差異等加減算前課税所得を見積る場合、将来においておおむね3年から5年程度は一時差異等加減算前課税所得が生じることを企業が合理的な根拠をもって説明するときは、「分類3」に該当するものとして取り扱う(回収適用指針29)。 この場合、合理的な見積可能期間(おおむね5年)以内の一時差異等加減算前課税所得の見積額に基づいて、繰延税金資産の回収可能性を検討する(回収適用指針23、29)。 これは、監委66号における例示区分「4ただし書」に相当する。 例えば、過去において業績の悪化に伴い重要な税務上の欠損金が生じており「分類4」に該当していた企業が、当期に代替的な原材料が開発されたことにより、業績の回復が見込まれ、その状況が将来も継続することが見込まれる場合に、将来においておおむね3年から5年程度は一時差異等加減算前課税所得が生じることを企業が合理的な根拠をもって説明するときが該当する(回収適用指針92)。 なお、「分類4」の要件を満たす企業で「分類3」に該当する企業には、上記(3)のただし書の部分(回収適用指針24)については、適用されない(回収適用指針89)。 また、「分類4」に係る分類の要件を満たす企業が「分類2」に該当するケースは、「分類3」に該当するものとして取り扱われるケースに比べて多くはないものと考えられる(回収適用指針89)。   (5) 会計方針の変更 回収適用指針の適用により、すべての企業が会計方針の変更に該当するわけではない。回収適用指針の適用初年度の期首(下記(6)参照)において、以下の①~③の項目を適用することにより、これまでの会計処理と異なることとなる場合には、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱う(回収適用指針49(3))。 本解説投稿日時点の会社計算規則では、上記と同一の注記内容の規定はない。しかし、会計基準等の改正による会計方針の変更に関する注記であることは、計算書類においても変わらないため、計算書類においても同様の注記を行うことが考えられる。 また、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更に該当しない場合、会計方針の変更の注記は不要である。しかし、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更に該当しなくても、回収適用指針を適用していることには変わりはない。そのため、追加情報で回収適用指針を適用している旨等について注記することも考えられる。 (6) 適用時期 回収適用指針は、平成28年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。ただし、平成28年3月31日以後終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用することができる(回収適用指針49(1))。 早期適用した連結会計年度及び事業年度の翌年度に係る四半期連結財務諸表及び四半期個別財務諸表においては、早期適用した連結会計年度及び事業年度の四半期連結財務諸表及び四半期個別財務諸表について回収適用指針を当該年度の期首に遡って適用する(回収適用指針49(2))。 また、回収適用指針が公表されたことを受け、監委66号及び監委70号が平成28年1月19日付けで廃止されている。 ただし、平成28年4月1日前に開始する連結会計年度及び事業年度の連結財務諸表及び個別財務諸表については、回収適用指針を早期適用する場合を除き、従前のとおり監委66号及び監委70号を適用する。 (7) 未適用の会計基準等に関する注記 既に公表されているものの、未だ適用されていない新しい会計基準等がある場合には、以下の項目を注記する。なお、連結財務諸表で注記を行っている場合は、個別財務諸表での注記は必要ない(遡及基準12)。連結財務諸表作成会社では、子会社における影響についても算出する必要がある。 例えば、早期適用をしない12月決算の会社の場合、平成27年12月期及び平成28年12月期で、1月決算の会社の場合、平成28年1月期及び平成29年1月期で、2月決算の会社の場合、平成28年2月期及び平成29年2月期で、3月決算の場合、平成28年3月期において当該注記が必要となる。 なお、会社計算規則では、未適用の会計基準等に関する注記の定めはない。 (前ページへ戻る) 2 「税効果会計に適用する税率に関する適用指針(案)」の主な内容 現行では、繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率は、決算日時点で公布されている税率である。しかし、決算日以前に税制改正の法律が成立していても、公布されていなければ改正前の税率で繰延税金資産及び繰延税金負債を計算することになり、有用な情報とはいえない(税率適用指針案15)。また、改正地方税等が決算日時点で公布されていても改正条例が決算日時点で成立していない場合の取扱いが明確になっていないなどの意見がある(税率適用指針案16)。そのため、以下の改正が提案されている。 なお、本解説は公開草案をもとに解説しているため、「税効果会計に適用する税率に関する適用指針」が正式に公表された際には、公開草案からの変更点について確認する必要がある。 (1) 法人税、地方法人税及び地方法人特別税に関する税率 法人税、地方法人税及び地方法人特別税について、繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率は、決算日において国会で成立している法人税法等(法人税、地方法人税及び地方法人特別税の税率が規定されている法)に規定されている税率とすることが提案されている(税率適用指針案5)。 (2) 住民税(法人税割)及び事業税(所得割)に関する税率 住民税(法人税割)及び事業税(所得割)(以下、「住民税等」という)について、繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率は、決算日において国会で成立している税法(住民税等の税率が規定されているもの(以下「地方税法等」という))に基づく税率によることが提案されている(税率適用指針案6)。 また、決算日において国会で成立している地方税法等に基づく税率とは、以下の税率をいうと提案されている(税率適用指針案7)。 ① 当事業年度において地方税法等を改正するための法律が成立していない場合(地方税法等を改正するための法案が国会に提出されていない場合を含む) ② 当事業年度において地方税法等を改正するための法律が成立している場合   1 法人事業税(超過税率)の算定 上記(2)②(ⅱ)(イ)のとおり、算出方法は2つある。 (1) 数値加算法 現行の条例で平成29年3月期に適用される予定であった標準税率(1.9%)と超過税率(2.14%)の差を平成29年3月期以降の法人事業税(標準税率)に加算する。 平成29年3月期:0.7%+(2.14%-1.9%)=0.94% 平成30年3月期以降:3.6%+(2.14%-1.9%)=3.84% (2) 割合法 現行の条例で平成29年3月期に適用される予定であった標準税率(1.9%)と超過税率(2.14%)の割合を平成29年3月期以降の法人事業税(標準税率)に乗じる。 割合法には、地方法人特別税を含む法人事業税率で計算する方法と含まない法人事業税率で計算する方法がある。 ここでは、地方法人特別税を含まない法人事業税率で計算する方法のみ取り上げる。 平成29年3月期 : 0.7%×(2.14%÷1.9%)=0.79% 平成30年3月期以降: 3.6%×(2.14%÷1.9%)=4.05% 当該設例では、(1)数値加算法による数値を採用し、上記表に記載している。   2 法定実効税率の算定 法人事業税(及び法人住民税)について超過税率適用の場合は、以下のように計算する。 【平成29年3月期まで】 【平成30年3月期以降】 (参考)法人事業税(及び法人住民税)について標準税率適用の場合は、以下のように計算する。 【平成29年3月期まで】 【平成30年3月期以降】 計算の結果は以下のとおりである。 法定実効税率が低下することで、繰延税金資産及び繰延税金負債が減少する。 (3) 適用時期 平成28年3月31日以後終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用することが提案されている(税率適用指針案10)。 (了)
#158(掲載号)
#西田 友洋
2016/02/25
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